▼3月11日に東日本大震災が発生すると不思議なことに円高になった。「保険会社が保険金支払いのために一時的に円高に」との報道が多かった。確かに復興のためにはお金が必要で、海外に売っていた円を買い戻す必要があるが、これを先読みし円を売って差益を得ようとした投機筋が出てきたのは間違いない。円高は必ずしもだめではないが、輸出関連企業の多い日本には迷惑な話である。
▼米投資情報週刊誌「バロンズ」は3月20日付で「日本は買い」と題する記事を掲載した。「大震災以前でも割安だった日本の株はさらに安くなっており、絶好の投資機会」と書いた。
▼日本の復興を期待してのありがたい話ではない。大震災後、日本は株価暴落で株式市場だけで50兆円が消えた。売りを浴びせた外国人投資家たちがいたことは間違いない。それで「いま日本は買い」というわけなのだ。
▼日本銀行は東日本大震災後の3月14日から7営業日連続で大規模な資金供給を続け、総額は100兆6千億円に達した。震災による経済の先行き不安で銀行が手元資金を抱え込む傾向が出ていると分析しており、 潤沢に供給することで金融面の不安解消を目指したわけだ。
▼ではこのお金、日本の復興に役立っているのか? 日銀が資金供給した金融機関は三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大メガバンクと野村、大和の2大証券会社だが、回収リスクがあったりリターンが低い案件には融資も投資もしない。
▼大部分がゴールドマン・サックス、シティグループ、メリル・リンチなど外資系に「円のキャリートレード」として低金利で貸し出されていると思われる。外資系企業は新興国に投資や先進国の株、債権に投資する。日本には回らず原油、食料などのコモディティの買占めに走り、価格をつり上げている可能性すらあるのだ。
▼投資の世界は冷徹といえばそれまでだが、こうしたマネーゲームの中で、金融は翻弄される現実がある。復興は市場には任せられない、国の強力な政策が不可欠だ。
Saturday, April 16, 2011
Saturday, April 02, 2011
「原発に殺された」
▼福島第一原発の事故の影響で、政府が一部の福島県産野菜について「摂取制限」の指示を出した翌日の24日朝、福島県須賀川市で野菜農家の男性(64)が自宅で首をつり命を絶った。
▼男性は農業高校を卒業後、有機栽培にこだわり米やキュウリなどを作ってきた。8年ほど前から始めたキャベツはほかの農家から栽培方法を尋ねられるほど評判が高く、地元の小中学校の学校給食にも使われていた。
▼「野菜も米も人の口に入るものなので、農薬はなるべく使いたくない」というのが口癖だったという。地震で母屋や納屋が壊れたが、畑の約7500株のキャベツは無事で、出荷直前だった。
▼次男(35)の話では、福島第一原発が爆発したニュースを見た時、「最悪の時代に生まれた。日本の農業はおしまいだ」とつぶやいていたという。次男は「原発のせいで殺された。地震だけなら死ぬことはなかった」と憤る。
▼深刻な炉心溶融に至った1979年のペンシルベニア州スリーマイルアイランド原発事故から32年に当たる28日早朝、地元住民や反原発グループなど約30人が同原発前で集会を開き、米国の原発停止を求めるとともに福島の原発事故で苦難のなかにある人々のために祈りをささげた。(CAPITAL4月2日号より転載)
▼男性は農業高校を卒業後、有機栽培にこだわり米やキュウリなどを作ってきた。8年ほど前から始めたキャベツはほかの農家から栽培方法を尋ねられるほど評判が高く、地元の小中学校の学校給食にも使われていた。
▼「野菜も米も人の口に入るものなので、農薬はなるべく使いたくない」というのが口癖だったという。地震で母屋や納屋が壊れたが、畑の約7500株のキャベツは無事で、出荷直前だった。
▼次男(35)の話では、福島第一原発が爆発したニュースを見た時、「最悪の時代に生まれた。日本の農業はおしまいだ」とつぶやいていたという。次男は「原発のせいで殺された。地震だけなら死ぬことはなかった」と憤る。
▼深刻な炉心溶融に至った1979年のペンシルベニア州スリーマイルアイランド原発事故から32年に当たる28日早朝、地元住民や反原発グループなど約30人が同原発前で集会を開き、米国の原発停止を求めるとともに福島の原発事故で苦難のなかにある人々のために祈りをささげた。(CAPITAL4月2日号より転載)
Saturday, March 19, 2011
相反する日本への評価
▼3月11日午後2時46分(日本時間)に発生した東日本大震災。16日時点で、死者は宮城や岩手など12都道県で3771人、行方不明者は岩手や福島など6県で8181人、避難者は55万人を超えている(警察庁まとめ)。余震も続き、首都圏も計画停電、放射線検出などで混乱している。
▼まさに未曾有の大天災となったが、海外では日本人の冷静さやマナーを賞賛する声が相次いだ。中国では、非常事態にもかかわらず、日本人は「冷静で礼儀正しい」「マナーは世界一」「人類で最高の先進性が日本にある」と絶賛する声がネットの書き込みやツイッターなどに寄せられた。ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本は。いかにすれば人間の計画と産業社会が自然災害に対処できるかの証」と論じ、ニューヨーク・タイムズは「奮い立つ日本(大和)魂」と題し、日本が災害復興に全力を尽くしていることを紹介した。
▼海外からの支援が相次いだ。国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「国連は日本の支援に全力を尽くしていく」と声明を発表。オバマ大統領は「米国は可能なあらゆる支援をする準備がある」と述べた。米軍の支援作戦の名称は「TOMODACHI(友達)」。三陸沖に原子力空母ロナルド・レーガンを展開、空軍や海兵隊が自衛隊と共同で捜索活動や救援物資の輸送に当たっている。
▼領土や歴史認識問題など外交面で日本と対立する中国やロシア、韓国でも「日本を救え」という声が広がり、支援物資や救助部隊が到着した。被災地支援の海外からの申し入れは114カ国・地域と24国際機関になった。うち11カ国は援助隊を派遣し被災地で活動中だ。
▼だが、福島第一原発事故をめぐっては、海外からの評価は一気に下がる。東京電力の対応のまずさが危機拡大につながっているとの見方が大勢を占めている。
▼原発の「安全神話」が壊れるのを恐れるあまり、楽観的な発表を繰り返し、対応が後手後手の対応になったのではないか。海外の協力もあおぎ、日本、いや世界の総力をあげてチェルノブイリに次ぐといわれる今回の原発被害拡大を食い止めてほしい。(CAPITAL127号-3月19日号より転載)
▼まさに未曾有の大天災となったが、海外では日本人の冷静さやマナーを賞賛する声が相次いだ。中国では、非常事態にもかかわらず、日本人は「冷静で礼儀正しい」「マナーは世界一」「人類で最高の先進性が日本にある」と絶賛する声がネットの書き込みやツイッターなどに寄せられた。ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本は。いかにすれば人間の計画と産業社会が自然災害に対処できるかの証」と論じ、ニューヨーク・タイムズは「奮い立つ日本(大和)魂」と題し、日本が災害復興に全力を尽くしていることを紹介した。
▼海外からの支援が相次いだ。国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「国連は日本の支援に全力を尽くしていく」と声明を発表。オバマ大統領は「米国は可能なあらゆる支援をする準備がある」と述べた。米軍の支援作戦の名称は「TOMODACHI(友達)」。三陸沖に原子力空母ロナルド・レーガンを展開、空軍や海兵隊が自衛隊と共同で捜索活動や救援物資の輸送に当たっている。
▼領土や歴史認識問題など外交面で日本と対立する中国やロシア、韓国でも「日本を救え」という声が広がり、支援物資や救助部隊が到着した。被災地支援の海外からの申し入れは114カ国・地域と24国際機関になった。うち11カ国は援助隊を派遣し被災地で活動中だ。
▼だが、福島第一原発事故をめぐっては、海外からの評価は一気に下がる。東京電力の対応のまずさが危機拡大につながっているとの見方が大勢を占めている。
▼原発の「安全神話」が壊れるのを恐れるあまり、楽観的な発表を繰り返し、対応が後手後手の対応になったのではないか。海外の協力もあおぎ、日本、いや世界の総力をあげてチェルノブイリに次ぐといわれる今回の原発被害拡大を食い止めてほしい。(CAPITAL127号-3月19日号より転載)
Wednesday, March 02, 2011
国境なき自由と民主主義の新勢力
▼クリントン国務長官がインターネット上でも表現の自由、信教の自由、欠乏からの自由、恐怖からの自由が守られるべきであり、そのためにはネットに接続する自由が不可欠と演説した。オバマ政権はツイッターなどの利用に熱心だが、演説はチュニジアやエジプトなど中東政変での経験を踏まえたものだ。
▼中東政変ではネットが大きな役割を果たし「フェイスブック革命」「ツイッター革命」だとの声もある。しかし、それらはあくまでも便利な道具に過ぎなく、ネットで政治革命が起きるわけではない、過大評価すべきではないという声も根強い。
▼とはいえ、エジプト政変で主導的役割を果たした「4月6日運動」は数年前からチェニジア、リビア、アルジェリア、モロッコ、そしてイランの若者たちともフェイスブックで交流をし、デモをどうやって行うなどを熱心に議論していたという。ネットがなければ中東のドミノ的政変はなかったと言える。
▼1月下旬にエジプト政府がフェイスブックなどを遮断した際は、グーグルが電話線を通じての回路を提供、また謎のハッカー集団アノニマスがエジプト政府、内務省、通信・情報技術省のサイトなどに大量のデータを送信し機能を停止させる攻撃を行った。ネットは繋がれた。アノニマスは「言論の自由を脅かす検閲行為には容赦しない」とサイトに宣言を残した。
▼クリントン長官の演説に対し、中国は「ネットの自由を口実に他国の内政干渉はすべきでない」と批判した。米国が外交政策の目標達成のためにネットを活用することが見え見えだからだ。
▼徹底したネットの自由を求めるアノニマスは、ネットの自由を脅かしたり、人権を擁護しない国家や組織に対しては今後も容赦ないサイバー攻撃をすると明言している。アノニマスは英語の巨大掲示板である「4chan」に集まっていたメンバーがもとだといわれているが、ネット社会から生まれた国境なき自由と民主主義の新勢力である。(CAPITAL126号3月5日号より)
▼中東政変ではネットが大きな役割を果たし「フェイスブック革命」「ツイッター革命」だとの声もある。しかし、それらはあくまでも便利な道具に過ぎなく、ネットで政治革命が起きるわけではない、過大評価すべきではないという声も根強い。
▼とはいえ、エジプト政変で主導的役割を果たした「4月6日運動」は数年前からチェニジア、リビア、アルジェリア、モロッコ、そしてイランの若者たちともフェイスブックで交流をし、デモをどうやって行うなどを熱心に議論していたという。ネットがなければ中東のドミノ的政変はなかったと言える。
▼1月下旬にエジプト政府がフェイスブックなどを遮断した際は、グーグルが電話線を通じての回路を提供、また謎のハッカー集団アノニマスがエジプト政府、内務省、通信・情報技術省のサイトなどに大量のデータを送信し機能を停止させる攻撃を行った。ネットは繋がれた。アノニマスは「言論の自由を脅かす検閲行為には容赦しない」とサイトに宣言を残した。
▼クリントン長官の演説に対し、中国は「ネットの自由を口実に他国の内政干渉はすべきでない」と批判した。米国が外交政策の目標達成のためにネットを活用することが見え見えだからだ。
▼徹底したネットの自由を求めるアノニマスは、ネットの自由を脅かしたり、人権を擁護しない国家や組織に対しては今後も容赦ないサイバー攻撃をすると明言している。アノニマスは英語の巨大掲示板である「4chan」に集まっていたメンバーがもとだといわれているが、ネット社会から生まれた国境なき自由と民主主義の新勢力である。(CAPITAL126号3月5日号より)
Thursday, September 02, 2010
小沢氏出馬
▼民主党代表選(14日投開票)は小沢一郎前幹事長が名乗りを上げ、再選を目指す菅直人首相との一騎打ちとなった。これで1年に3人も総理が変わるようなことになっては国際社会で信頼をなくすという見方もあるが、歴史的政権交代後の混乱は想定内だろう。
▼先の参院選で敗北し、衆参ねじれの菅政権では、すぐに国会運営が行き詰まるのは目に見えていた。「豪腕」小沢氏に期待する向きは多いが、「政治と金」疑惑で検察審査会の審査待ちではだめだという「反小沢」の声も強い。
▼振り返れば「政治とカネ」というのは自民党時代より、政敵潰しなど、政策不在で政局しかない状況において使われてきた。米国の「ネガティブキャンペーン」による世論誘導とほぼ同じだ。
▼一般市民で構成される検察審査会の意義はあるだろうが、検察特捜部の1年にも及ぶしらみつぶしの捜査でも小沢氏を起訴に持ち込めなかった。この事実を重く受け止めるべきではないのか。
▼ここに来て、相変わらず「政治とカネ」で批判するのは政策不在の証拠だろう。小沢氏はあくまで「国民の生活が第一」とした昨年の民主党マニュフェスト履行にこだわっており、菅首相は財源不足で履行は無理と消費税論議をしたがっている。
▼とにもかくにも20年あまりにわたり日本の政治は小沢氏を中心に回ってきた。昨年、検察の捜査がなければ小沢政権だった日本。今度はさて、どうなるか。 (た)
▼先の参院選で敗北し、衆参ねじれの菅政権では、すぐに国会運営が行き詰まるのは目に見えていた。「豪腕」小沢氏に期待する向きは多いが、「政治と金」疑惑で検察審査会の審査待ちではだめだという「反小沢」の声も強い。
▼振り返れば「政治とカネ」というのは自民党時代より、政敵潰しなど、政策不在で政局しかない状況において使われてきた。米国の「ネガティブキャンペーン」による世論誘導とほぼ同じだ。
▼一般市民で構成される検察審査会の意義はあるだろうが、検察特捜部の1年にも及ぶしらみつぶしの捜査でも小沢氏を起訴に持ち込めなかった。この事実を重く受け止めるべきではないのか。
▼ここに来て、相変わらず「政治とカネ」で批判するのは政策不在の証拠だろう。小沢氏はあくまで「国民の生活が第一」とした昨年の民主党マニュフェスト履行にこだわっており、菅首相は財源不足で履行は無理と消費税論議をしたがっている。
▼とにもかくにも20年あまりにわたり日本の政治は小沢氏を中心に回ってきた。昨年、検察の捜査がなければ小沢政権だった日本。今度はさて、どうなるか。 (た)
Tuesday, August 03, 2010
米国をさまよう日本兵の遺品と遺骨
▼8月15日、65年目の終戦の日を迎える。大戦での日本兵の死者は200万人にのぼり、その多くは中国、東南アジア、南アジア諸島で戦死しているが、米兵が「お土産」「記念品」として持ち帰った日本兵の遺品が米国内に10万点以上あるといわれる。
▼今でも遺産を処分するステートセールやミリタリー・ショーなどで軍刀、千人針、武器類、日章旗などが売られている。ネットのオークションサイト「イーベイ」でも手帳や日記、写真など含めさまざまなものが売られている。
▼最近では、戦争に行った元米兵も高齢あるいは故人となり、日系新聞社や在米領事館などに遺族に返したいという問い合わせが時々あり、無事に戻ったことが日本の地元のニュースを飾ることも珍しくない。
▼オハイオ州トレドに住む、医師の加治安彦さんは過去30年以上にわたり、ミリタリー・ショーなどで日本兵の遺品を自費で買い集め、遺族へ返してきた。収集点数は300を超え、50点ほどが遺族のもとに帰ったという。
▼遺品は戦利品として金銭目的もあったらしいが、驚くべきは戦没者の頭蓋骨を持ち帰った人々がいることだ。最近では2003年にコロラドで、2005年にはメイン州ホールデンで見つかっている。
▼これらは「頭蓋骨トロフィー」として表面には当時の署名や書き込みがあった。メイン州のものは入手したアメリカ人が日本に帰したいとボストン総領事館にあずけている。
▼昨年にはカリフォルニア大学バークレー校の人類博物館に頭蓋骨など数点が保管されていることが分かった。海軍医が1974年に寄贈したもので、収納した箱には「サイパン」「自決を遂げた日本人」と書かれていた。
▼日米の考え方の違いもあるが、遺骨である。米国には日本兵の遺骨が人知れずさまよっているのである。
▼今でも遺産を処分するステートセールやミリタリー・ショーなどで軍刀、千人針、武器類、日章旗などが売られている。ネットのオークションサイト「イーベイ」でも手帳や日記、写真など含めさまざまなものが売られている。
▼最近では、戦争に行った元米兵も高齢あるいは故人となり、日系新聞社や在米領事館などに遺族に返したいという問い合わせが時々あり、無事に戻ったことが日本の地元のニュースを飾ることも珍しくない。
▼オハイオ州トレドに住む、医師の加治安彦さんは過去30年以上にわたり、ミリタリー・ショーなどで日本兵の遺品を自費で買い集め、遺族へ返してきた。収集点数は300を超え、50点ほどが遺族のもとに帰ったという。
▼遺品は戦利品として金銭目的もあったらしいが、驚くべきは戦没者の頭蓋骨を持ち帰った人々がいることだ。最近では2003年にコロラドで、2005年にはメイン州ホールデンで見つかっている。
▼これらは「頭蓋骨トロフィー」として表面には当時の署名や書き込みがあった。メイン州のものは入手したアメリカ人が日本に帰したいとボストン総領事館にあずけている。
▼昨年にはカリフォルニア大学バークレー校の人類博物館に頭蓋骨など数点が保管されていることが分かった。海軍医が1974年に寄贈したもので、収納した箱には「サイパン」「自決を遂げた日本人」と書かれていた。
▼日米の考え方の違いもあるが、遺骨である。米国には日本兵の遺骨が人知れずさまよっているのである。
Sunday, July 18, 2010
不可解な敗北
▼参院選が終わった。昨年の政権交代から10か月あまり、与党民主党に対する国民の審判となる選挙だと思われた。
▼民主党は当選44議席と改選議席を10議席も減らした。国民新党と合わせた与党の議席は非改選を含め過半数を割り込んだ。一方自民は51議席を獲得し、13議席増やした。ただし比例と選挙区合わせた総得票数では民主が約2276万票に対し、自民は約1950万票と300万票以上の差がある。
▼もちろん民主は二人区に二人擁立など立候補者数が多いからだが、国民の多くが民主党にノーをつきつけたとまでは言えない。
▼不思議なことがある。「政治と金」と普天間基地移設問題で鳩山首相と小沢幹事長が辞任した後の参院選だったが、この二つは選挙の争点にならなかった。あれほど大騒ぎしたにも関わらず、一体どうしたのか?
▼菅首相が消費税増税に触れたことで、そうした問題は脇に追いやられた格好だ。消費税上げが焦点になるかと思われた。民主党が後退したのは、消費税増税を言い出したからだという分析も多い。みんなの党の躍進は消費税上げに反対だったことが大きいとも。だが増税を唱える自民党は議席を増やした。
▼政治と金、普天間問題の他に、「郵政改革法案」も忘れてはならない。衆議院はすでに通過し参議院審議に回っていた。
▼日本は現在、岐路に立っていると言える中、安定した強力な政権ができない状態だ。不安定な暗中模索がしばらく続くのだろうか。(CAPITAL#111,2010年7月17日号より)
▼民主党は当選44議席と改選議席を10議席も減らした。国民新党と合わせた与党の議席は非改選を含め過半数を割り込んだ。一方自民は51議席を獲得し、13議席増やした。ただし比例と選挙区合わせた総得票数では民主が約2276万票に対し、自民は約1950万票と300万票以上の差がある。
▼もちろん民主は二人区に二人擁立など立候補者数が多いからだが、国民の多くが民主党にノーをつきつけたとまでは言えない。
▼不思議なことがある。「政治と金」と普天間基地移設問題で鳩山首相と小沢幹事長が辞任した後の参院選だったが、この二つは選挙の争点にならなかった。あれほど大騒ぎしたにも関わらず、一体どうしたのか?
▼菅首相が消費税増税に触れたことで、そうした問題は脇に追いやられた格好だ。消費税上げが焦点になるかと思われた。民主党が後退したのは、消費税増税を言い出したからだという分析も多い。みんなの党の躍進は消費税上げに反対だったことが大きいとも。だが増税を唱える自民党は議席を増やした。
▼政治と金、普天間問題の他に、「郵政改革法案」も忘れてはならない。衆議院はすでに通過し参議院審議に回っていた。
▼日本は現在、岐路に立っていると言える中、安定した強力な政権ができない状態だ。不安定な暗中模索がしばらく続くのだろうか。(CAPITAL#111,2010年7月17日号より)
Thursday, July 01, 2010
「国民の生活が第一」ではなかったのか?
▼明日の日本を占う第22回参院選が始まった。7月11日の投開票まで熱い戦いが繰り広げられる。
▼論戦テーマに消費税率引き上げ問題が浮上している。増税は有権者から常に不評なので、選挙前は避けられることが多かったが、菅首相は、財政破綻回避のため消費税率引き上げが必要とし、セットであるかのように法人税減税に言及した。
▼G8やG20を前に、日本の財政赤字を諸外国から問われた場合に備えたにせよ、民主党は昨年の衆院選で、任期中の4年間は消費税は上げない、まずその前に政府支出の無駄の削減に取り組むとしていたのではないか。
▼政府に無駄が多いのは共通点だが、ギリシャの財政危機を日本に当てはめるのはおかしい。大まかにに言えば、日本は国と地方自治体を合わせ約950兆円の借金を抱えているが、この借金は90%以上が赤字国債で賄われており、3大メガバンクなど日本の銀行が半ば自動的に購入している。つまり総額1450兆円ともいわれる国民自身の預金で支えている。国の金融資産は505兆円あり、計算すると対外純債権367兆円の世界最大の債権国である。国民一人当たりの負債は20万円ほどだ。
▼日本は国際競争力の低下した輸出関連の大企業を優遇、法人税減税や輸出戻し税で助けてきた。消費税が始まって22年間。消費税税収は累計224兆円の一方、同時期の法人3税による税収は208兆円も下がっている。
▼日本の会社のほとんどは中小零細、自営業である。民主党の子供手当や農家個別所得補償、高速道路無料化などは、単なるバラマキではなく、税金使途の効率化と所得再分配の改善でもあったはずだ。
▼日本は国民総生産(GDP)500兆円に占める輸出割合は15%ほどで、企業の設備投資と政府支出が25%、残り60%が個人消費だ。消費者が1割財布の紐を締めただけで消費税どころか、GDPの6%が消える計算になる。
▼増税で財政赤字を解決した国はひとつもない。GNPの2倍となった財政赤字を放っておいていいわけではないが、明日にでも破綻するわけではない。政府支出の無駄をなくしつつ、成長戦略を実現していくことが先決だろう。 (CAPITAL#110より転載)
Monday, June 14, 2010
「反小沢左翼政権」か「選挙管理内閣」か
▼まさに絵に描いたような民主党のV字回復である。共同通信が菅内閣発足を受け8日〜9日にかけて実施した全国緊急電話世論調査で、内閣支持率は61・5%に上った。鳩山政権末期の5月末調査の19・1%から一気に回復し、昨年9月の鳩山政権発足時の70%超に迫った。12〜13両日実施の全国電話世論調査(第1回トレンド調査)でも菅内閣の支持率は64・8%に上り、郵政改革法案の扱いをめぐり国民新党代表の亀井静香前金融・郵政改革担当相が辞任した影響は見られなかった。
▼まるで誰かがシナリオを書いたかのような展開である。普天間基地問題と「政治と金」で追い込まれた鳩山首相と小沢幹事長の満を期してのダブル辞任だったとしか言いようがない。自民党は低迷のまま、新党もかすんでしまった感がある。
▼菅内閣は、普天間基地の辺野古移転推進派とされる岡田外相、前原国土交通相、北沢防衛相など鳩山内閣から半分以上の11人が留任。 「反小沢クーデター」という声もあるほど、党の人事含め、いわゆる「反小沢派」が占めた。特徴としては、菅首相を筆頭に、政治家や官僚などの家系ではない普通のサラリーマン家庭出身者が多いことがあげられる。
▼自民党の安倍、麻生両元首相からは「左翼政権」と批判されている。確かに菅首相は市民運動出身だし、仙谷官房長官が元東大全共闘だったことなどは有名だが、世代的なものであって現実に今、何をやるかだろう。
▼では「反小沢左翼政権」のその中身は何なのだろう? まさか「クリーン」だけではあるまい。財政再建と景気刺激を両立させようのは分かるが、郵政改革法案の先送り、子ども手当の満額断念、消費税増税の動きなど、辺野古移転推進を加えて、なにやら自民党に回帰したようなところがある。
▼菅内閣は参院選のための単なる選挙管理内閣(田中真紀子議員)という見方もある。いずれにせよ9月の民主党の代表選が終わるまでは安定政権にはならないようだ。(た)
▼まるで誰かがシナリオを書いたかのような展開である。普天間基地問題と「政治と金」で追い込まれた鳩山首相と小沢幹事長の満を期してのダブル辞任だったとしか言いようがない。自民党は低迷のまま、新党もかすんでしまった感がある。
▼菅内閣は、普天間基地の辺野古移転推進派とされる岡田外相、前原国土交通相、北沢防衛相など鳩山内閣から半分以上の11人が留任。 「反小沢クーデター」という声もあるほど、党の人事含め、いわゆる「反小沢派」が占めた。特徴としては、菅首相を筆頭に、政治家や官僚などの家系ではない普通のサラリーマン家庭出身者が多いことがあげられる。
▼自民党の安倍、麻生両元首相からは「左翼政権」と批判されている。確かに菅首相は市民運動出身だし、仙谷官房長官が元東大全共闘だったことなどは有名だが、世代的なものであって現実に今、何をやるかだろう。
▼では「反小沢左翼政権」のその中身は何なのだろう? まさか「クリーン」だけではあるまい。財政再建と景気刺激を両立させようのは分かるが、郵政改革法案の先送り、子ども手当の満額断念、消費税増税の動きなど、辺野古移転推進を加えて、なにやら自民党に回帰したようなところがある。
▼菅内閣は参院選のための単なる選挙管理内閣(田中真紀子議員)という見方もある。いずれにせよ9月の民主党の代表選が終わるまでは安定政権にはならないようだ。(た)
Saturday, June 05, 2010
鳩山首相が辞任
▼鳩山首相が辞任した。政権交代を成し遂げた後の初の歴史的内閣だったが、細川政権とほぼ8か月しかもたなかった。鳩山首相は「身を引くことが国益につながると判断」したという。
▼首相は米軍普天間基地移設問題で「最低でも県外」と事実上の首相公約を反古にした。これにより社民党が連立離脱、3党連立政権は崩れた。「社民党を連立政権離脱に追い込んだ責任を取らないといけない」(首相)のは当然だ。
▼もちろん首相はこの普天間問題を辞任理由としているが、やや奇異に映るのはもうひとつの辞任理由の「政治とカネ」である。小沢幹事長にも辞めてもらう「手柄話」のようになっているが、自身の母親からの巨額資金提供の問題は一応の決着がついており、小沢幹事長は検察がおよそ1年にわたり調べ上げた上で不起訴としている。
▼首相が辞任するなら幹事長はもちろん執行部解散は当然だろう。内閣は総辞職するのである。選挙を前に、国民の間にくすぶる「政治とカネ」問題の幕引きを図ったということだろうか。
▼やり残したこととして、日ロ関係の進展をあげたが、これは普天間問題で米国との距離を取ろうとしたからであり、続投しても北方領土問題が前進したか疑問である。
▼一方で「国が上で、地域が下にあるなんて社会はおかしい」と訴え、「中央集権の世の中」の変えることに「少なくとも風穴が開いた」と、政権の意義も述べている。しかし政治は結果責任、あの不人気では、議員内閣制のもと辞任は当然の成り行きである。市場は好感し株価は上がった。政権交代第二幕が上がる。
▼首相は米軍普天間基地移設問題で「最低でも県外」と事実上の首相公約を反古にした。これにより社民党が連立離脱、3党連立政権は崩れた。「社民党を連立政権離脱に追い込んだ責任を取らないといけない」(首相)のは当然だ。
▼もちろん首相はこの普天間問題を辞任理由としているが、やや奇異に映るのはもうひとつの辞任理由の「政治とカネ」である。小沢幹事長にも辞めてもらう「手柄話」のようになっているが、自身の母親からの巨額資金提供の問題は一応の決着がついており、小沢幹事長は検察がおよそ1年にわたり調べ上げた上で不起訴としている。
▼首相が辞任するなら幹事長はもちろん執行部解散は当然だろう。内閣は総辞職するのである。選挙を前に、国民の間にくすぶる「政治とカネ」問題の幕引きを図ったということだろうか。
▼やり残したこととして、日ロ関係の進展をあげたが、これは普天間問題で米国との距離を取ろうとしたからであり、続投しても北方領土問題が前進したか疑問である。
▼一方で「国が上で、地域が下にあるなんて社会はおかしい」と訴え、「中央集権の世の中」の変えることに「少なくとも風穴が開いた」と、政権の意義も述べている。しかし政治は結果責任、あの不人気では、議員内閣制のもと辞任は当然の成り行きである。市場は好感し株価は上がった。政権交代第二幕が上がる。
Thursday, May 13, 2010
官房機密費とジャーナリズムの死
▼小渕内閣で官房長官を務めた自民党の野中広務元幹事長(84)が、長官在任中(98年7月から翌年10月)に内閣官房機密費を「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と講演会やインタビューで発言した。首相に1千万円、国会で野党工作などに当たる 自民党国対委員長や参院幹事長に各500万円程度のほか、政治評論家や野党議員らにも配っていたという。
▼野党対策をはじめ、外遊する議員への餞別代、飲み食い、女性問題の後始末に使われたなど、昔から噂はあった。注目すべきは政治評論家である。「(政治)評論をしておられる方々に盆暮れにお届け」と 明かしたことだ。これも過去、週刊誌などで取り上げられたことがあるが元官房長官から明言されたのは初めてだ。
▼「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と 言って受け取られる」「持っていって返し てきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と述べている。
▼官房機密費は「国の事業を円滑に遂行するために状況 に応じて機動的に使う経費」として、毎年約14億円が予算計上され、内閣情報調査室に使う2億円ほどを差し引いた残りの12億円余りを官房長官の裁量で使ってきた。使途は公表されず、領収書もない。
▼野中氏は「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」と述べている。お金をもらうことが何を意味するかは自明だ。有権者は歪んだ言論を受け取ってしまう。これはジャーナリズムの死を意味し、民主主義を毀損するものだ。貰った評論家は即刻名乗り出て返金し、言論活動停止、筆を折るべきだろう。
▼野党対策をはじめ、外遊する議員への餞別代、飲み食い、女性問題の後始末に使われたなど、昔から噂はあった。注目すべきは政治評論家である。「(政治)評論をしておられる方々に盆暮れにお届け」と 明かしたことだ。これも過去、週刊誌などで取り上げられたことがあるが元官房長官から明言されたのは初めてだ。
▼「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と 言って受け取られる」「持っていって返し てきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と述べている。
▼官房機密費は「国の事業を円滑に遂行するために状況 に応じて機動的に使う経費」として、毎年約14億円が予算計上され、内閣情報調査室に使う2億円ほどを差し引いた残りの12億円余りを官房長官の裁量で使ってきた。使途は公表されず、領収書もない。
▼野中氏は「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」と述べている。お金をもらうことが何を意味するかは自明だ。有権者は歪んだ言論を受け取ってしまう。これはジャーナリズムの死を意味し、民主主義を毀損するものだ。貰った評論家は即刻名乗り出て返金し、言論活動停止、筆を折るべきだろう。
Sunday, May 02, 2010
「核密約」と普天間基地移転問題
▼ライシャワー元駐日米大使(在任1961?66年)の特別補佐官だったジョージ・パッカード氏とパッカード氏と話す機会があった。日本でいわゆる「核密約」が問題となっているが、氏は外交専門誌フォーリン・アフェアーズ3・4月号で、米軍が返還前の沖縄にあった核兵器を1966年、移動させ岩国基地沿岸で少なくとも3カ月間核兵器を保管していたと述べている。
▼氏は、これ以外の保管の事実は知らないとしつつ、核兵器を積んだ船が日本に寄港していたのは疑いようがないと示唆。その上で、「日本に核は必要だったと思う」と語った。当時冷戦はきわめて危険なものであり、ソ連や中国の脅威から日本を守る必要があった。「核密約は強く望まれたものではなかったが、当時の東アジアに必要だが日本が反核である中で、ベストの解決法であった」との認識を示した。
▼では普天間基地問題についてはどうか。ゲーツ国防長官が発足したばかりの鳩山政権に約束履行を迫ったのは「ばかげている」と一蹴。しかしそれにびっくりした鳩山首相がオバマ大統領に「トラスト・ミー」「5月までになんとかする」などと「言わなくてもいいことを言って、日米の信頼関係を損なった」と批判。冷戦の時代から大きく東アジアは変化しており、「開かれた場であらゆる可能性と選択肢を検討すべき」と語った。
▼サイパン島など14の島からなる北マリアナ連邦の上院議会(9議員)が16日、国防総省と日本国政府に対し、米軍普天間飛行場の移設先の最適地として北マリアナを検討するよう求める誘致決議を全会一致で可 決した。米軍の準機関紙である「スター・アンド・ストライプス紙」は21日付で、これに好意的な内容の記事を掲載している。こういった選択肢をほとんどの日本のメディアが取り上げないのは何故だろうか。
▼氏は、これ以外の保管の事実は知らないとしつつ、核兵器を積んだ船が日本に寄港していたのは疑いようがないと示唆。その上で、「日本に核は必要だったと思う」と語った。当時冷戦はきわめて危険なものであり、ソ連や中国の脅威から日本を守る必要があった。「核密約は強く望まれたものではなかったが、当時の東アジアに必要だが日本が反核である中で、ベストの解決法であった」との認識を示した。
▼では普天間基地問題についてはどうか。ゲーツ国防長官が発足したばかりの鳩山政権に約束履行を迫ったのは「ばかげている」と一蹴。しかしそれにびっくりした鳩山首相がオバマ大統領に「トラスト・ミー」「5月までになんとかする」などと「言わなくてもいいことを言って、日米の信頼関係を損なった」と批判。冷戦の時代から大きく東アジアは変化しており、「開かれた場であらゆる可能性と選択肢を検討すべき」と語った。
▼サイパン島など14の島からなる北マリアナ連邦の上院議会(9議員)が16日、国防総省と日本国政府に対し、米軍普天間飛行場の移設先の最適地として北マリアナを検討するよう求める誘致決議を全会一致で可 決した。米軍の準機関紙である「スター・アンド・ストライプス紙」は21日付で、これに好意的な内容の記事を掲載している。こういった選択肢をほとんどの日本のメディアが取り上げないのは何故だろうか。
Thursday, April 01, 2010
国を二分する国民皆保険
▼国民の保険加入を義務付けた医療保険改革法が23日に成立した。「国民の和解」を訴えて登場したオバマ大統領が、国を二分する課題に取り組んだ。米国史上初の国民皆保険である。
▼世論調査機関ギャラップとUSAトゥデーは23日、法案可決に対する世論調査の結果を発表、「評価する」が49%で、「評価しない」の40%を上回った。
▼共和党の反対は強く、採決前の17日、「(ペロシ下院議長は民主党議員全員を)酒で酔わせ、自殺攻撃をさせようとしている」と第二次大戦時の日本軍の特攻隊になぞらえたグラム上院議員が、日系のホンダ議員らから批判を浴びる一幕もあった。
▼下院民主党のホイヤー院内総務らは24日、同法に賛成した同党下院議員に対し、脅迫や中傷を受けた同党下院議員は10人以上に上ると発表した。
▼スローター議員の地元事務所にはれんがが投げ付けられ窓ガラスが破壊された。同法成立のため中絶反対議員らの取り込みに動いた黒人議員のクライバーン副院総務には、首つりの縄と「赤ちゃん殺害犯は人間の手か神の御手によって見苦しい最期を迎える」と書かれたファックスが送付された。
▼ある保守系のラジオ・パーソナリティーは「(抵抗運動に備え)体を鍛えて銃の手入れをしておけ」とまで呼び掛けた。殺害予告など深刻な内容については、連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出し、首都警察は議員に対し、自身や家族の身を守るための方法を指導しているという。
▼米国には、個人の自由を尊重し「大きな政府」に反対する伝統があり、日本や西欧のような国民皆保険制度が育たなかった。フロ リダ州など14州の司法長官は連邦政府を相手取り、同法は個人の自由と州の主権を侵害し、違憲だとして無効の訴えを連邦地裁に起こした。野党共和党内では、11月の中間選挙で多数派に返り咲き、法の撤廃を目指す声が上がっている。
▼世論調査機関ギャラップとUSAトゥデーは23日、法案可決に対する世論調査の結果を発表、「評価する」が49%で、「評価しない」の40%を上回った。
▼共和党の反対は強く、採決前の17日、「(ペロシ下院議長は民主党議員全員を)酒で酔わせ、自殺攻撃をさせようとしている」と第二次大戦時の日本軍の特攻隊になぞらえたグラム上院議員が、日系のホンダ議員らから批判を浴びる一幕もあった。
▼下院民主党のホイヤー院内総務らは24日、同法に賛成した同党下院議員に対し、脅迫や中傷を受けた同党下院議員は10人以上に上ると発表した。
▼スローター議員の地元事務所にはれんがが投げ付けられ窓ガラスが破壊された。同法成立のため中絶反対議員らの取り込みに動いた黒人議員のクライバーン副院総務には、首つりの縄と「赤ちゃん殺害犯は人間の手か神の御手によって見苦しい最期を迎える」と書かれたファックスが送付された。
▼ある保守系のラジオ・パーソナリティーは「(抵抗運動に備え)体を鍛えて銃の手入れをしておけ」とまで呼び掛けた。殺害予告など深刻な内容については、連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出し、首都警察は議員に対し、自身や家族の身を守るための方法を指導しているという。
▼米国には、個人の自由を尊重し「大きな政府」に反対する伝統があり、日本や西欧のような国民皆保険制度が育たなかった。フロ リダ州など14州の司法長官は連邦政府を相手取り、同法は個人の自由と州の主権を侵害し、違憲だとして無効の訴えを連邦地裁に起こした。野党共和党内では、11月の中間選挙で多数派に返り咲き、法の撤廃を目指す声が上がっている。
Sunday, March 14, 2010
日本人は野蛮?
▼「『日本人は野蛮』というメッセージになっており、残念」。クロマグロが規制対象として上がったドーハでのワシントン条約締約国会議開催を前に、赤松広隆農相の言葉だ。
▼日本の調査捕鯨船団の監視船に侵入した反捕鯨団体「シー・シェパード」のメンバー (44)を艦船侵入容疑で逮捕の事態が発生、 和歌山県太地町のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞などを一連の出来事として捉え、発言したものだ。
▼オーストラリアはじめ捕鯨反対国は多いが、アラスカなどの北方先住民による捕鯨は「原住民生存捕鯨」として国際捕鯨委員会(IWC)でも認められている。イルカは鯨類に分類されるが、IWCの管轄外。「ザ・コーヴ」でイルカ漁を隠し撮りされた太地町は古式捕鯨発祥の地で、「ジャパニーズ・マフィア」とまで言われた町民からは「(受賞に)怒りを覚える」といった反発の声が上がった。
▼確かに入り江が血に染まるシーンはショッキングだ。デンマークのあるクジラ漁師は「分業が進み、牛や豚の処理現場を一般に見ることはないが、漁はそうでもないから不利」と言う。
▼「イルカやクジラは知能が高い」ことを反対理由のひとつにあげる声がある。では知能の低い人間は殺してもいいのか。障害者抹殺を図ったナチスの「優生思想」を彷彿とさせる。
▼大西洋・地中海のクロマグロはピークの年間30万トンから8万トン弱まで激減しており、乱獲が原因であることに議論の余地はない。また、イルカ(クジラ)やマグロに高濃度の水銀があれば問題だ。
▼とはいえ、大企業による畜産業の恐るべき実態を描いた「フード・インク」はアカデミー賞を逃した。反捕鯨には自然保護団体だけでなく、漁業とは無関係の企業もスポンサーについている。自然保護や文化問題はあるにせよ、漁民には国以外頼るものがない。
▼日本の調査捕鯨船団の監視船に侵入した反捕鯨団体「シー・シェパード」のメンバー (44)を艦船侵入容疑で逮捕の事態が発生、 和歌山県太地町のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞などを一連の出来事として捉え、発言したものだ。
▼オーストラリアはじめ捕鯨反対国は多いが、アラスカなどの北方先住民による捕鯨は「原住民生存捕鯨」として国際捕鯨委員会(IWC)でも認められている。イルカは鯨類に分類されるが、IWCの管轄外。「ザ・コーヴ」でイルカ漁を隠し撮りされた太地町は古式捕鯨発祥の地で、「ジャパニーズ・マフィア」とまで言われた町民からは「(受賞に)怒りを覚える」といった反発の声が上がった。
▼確かに入り江が血に染まるシーンはショッキングだ。デンマークのあるクジラ漁師は「分業が進み、牛や豚の処理現場を一般に見ることはないが、漁はそうでもないから不利」と言う。
▼「イルカやクジラは知能が高い」ことを反対理由のひとつにあげる声がある。では知能の低い人間は殺してもいいのか。障害者抹殺を図ったナチスの「優生思想」を彷彿とさせる。
▼大西洋・地中海のクロマグロはピークの年間30万トンから8万トン弱まで激減しており、乱獲が原因であることに議論の余地はない。また、イルカ(クジラ)やマグロに高濃度の水銀があれば問題だ。
▼とはいえ、大企業による畜産業の恐るべき実態を描いた「フード・インク」はアカデミー賞を逃した。反捕鯨には自然保護団体だけでなく、漁業とは無関係の企業もスポンサーについている。自然保護や文化問題はあるにせよ、漁民には国以外頼るものがない。
Saturday, February 20, 2010
オリンピックと国籍変更
▼バンクーバー冬季オリンピックの真っ最中である。主な競技が毎年世界選手権を行うようになっても、4年の一度のオリンピックは特別である。やはり国単位で競い合うから盛り上がる。
▼好きな選手は国を問わないとしても、米国在住でも日本人ならたいていの人が日本選手を、次に米国選手応援しているだろう。その次はカナダ、いやアジア諸国だろうか。ショートトラックのアポロ・オーノのように日系人(父親が日本人)だと親近感も増す。両親が日本人でカリフォルニア育ちの長洲未来は「米国を代表できて誇りに思う。日本勢との対戦も楽しみ」と頼もしい。
▼最近は国籍を変えて五輪出場する選手が増えた。男子モーグルは、アレクサンドル・ビロドーが開催国カナダに大会初の金メダルもたらし会場は大いに沸いたが、2位になったデイル・ベッグスミスが優勝していたらどうだっただろう。彼はオーストラリア代表だが、実は地元バンクーバー出身で税金問題などを理由に国籍変更した選手だ。
▼フィギュア・ペアの川口悠子は五輪で表彰台に立ちたい一心でアレクサンドル・スミルノフと組んでロシア代表として出場した。昨年2月にロシア国籍を取得している。結果は4位でロシア勢連覇を12で止めてしまったが、熱意は認めるべきだろう。
▼米国生まれでも日本代表として出ているのが、アイスダンスのキャシー・リード(22)とクリス・リード(20)の姉弟ペアだ。2人は日本人の母とアメリカ人の父の間にミシガンで生まれた日米二重国籍者だが、キャシーは21歳の時点で日本国籍を選んだ。
▼練習の拠点が本国でない選手は多いし、コーチも外国人というのは珍しくない。グローバル化が進むスポーツ界だが、自国の選手を応援することは今後も変わらないだろう。
▼好きな選手は国を問わないとしても、米国在住でも日本人ならたいていの人が日本選手を、次に米国選手応援しているだろう。その次はカナダ、いやアジア諸国だろうか。ショートトラックのアポロ・オーノのように日系人(父親が日本人)だと親近感も増す。両親が日本人でカリフォルニア育ちの長洲未来は「米国を代表できて誇りに思う。日本勢との対戦も楽しみ」と頼もしい。
▼最近は国籍を変えて五輪出場する選手が増えた。男子モーグルは、アレクサンドル・ビロドーが開催国カナダに大会初の金メダルもたらし会場は大いに沸いたが、2位になったデイル・ベッグスミスが優勝していたらどうだっただろう。彼はオーストラリア代表だが、実は地元バンクーバー出身で税金問題などを理由に国籍変更した選手だ。
▼フィギュア・ペアの川口悠子は五輪で表彰台に立ちたい一心でアレクサンドル・スミルノフと組んでロシア代表として出場した。昨年2月にロシア国籍を取得している。結果は4位でロシア勢連覇を12で止めてしまったが、熱意は認めるべきだろう。
▼米国生まれでも日本代表として出ているのが、アイスダンスのキャシー・リード(22)とクリス・リード(20)の姉弟ペアだ。2人は日本人の母とアメリカ人の父の間にミシガンで生まれた日米二重国籍者だが、キャシーは21歳の時点で日本国籍を選んだ。
▼練習の拠点が本国でない選手は多いし、コーチも外国人というのは珍しくない。グローバル化が進むスポーツ界だが、自国の選手を応援することは今後も変わらないだろう。
Thursday, February 04, 2010
小沢対検察の落としどころ?
▼政治上の危機分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」(本部・ニューヨーク)が、最も影響力を持つ世界の指導者10人を発表、1位は中国の温家宝首相、2位はオバマ米大統領で、民主党の小沢幹事長が3位に入った。
▼日本の首相は小沢氏のはずだった。昨年、小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(48)が政治資金規正法違反で逮捕されていなければ、である。
▼1月13日、大久保秘書の第二回公判が開かれ、西松建設の元幹部が検察の主張を否定する証言を連発、収賄どころか大久保秘書は無罪の可能性が高いという。微罪、いや「冤罪」もどきで日本の政治が翻弄されたということなのか?
▼ところが2日後の15日、検察は元秘書石川知裕衆議院議員を政治資金規正法の虚偽記載容疑で逮捕する。 これまで「虚偽記載」は修正で許されてきたのに、なぜ現職国会議員逮捕までしたのか明確な説明はない。
▼検察対小沢の権力闘争と見る向きは多い。小沢周辺は「検事総長を国会同意人事にする」「民主主義的な統制下に置く」と主張、また取り調べの可視化も検討されている。昨年末、特捜部検事を含む法務官僚が集まった宴会では、「小沢許さん」の大合唱だったという。
▼公務員の守秘義務違法(国家公務員法第100条)の疑いのある「検察リーク」を連日マスコミは垂れ流し、負のイメージで小沢幹事長が追いつめられるという構図になった。18日前後の大手新聞社の世論調査はどれも、小沢氏は幹事長を辞任すべきだが7割を占めた。
▼小沢氏失脚か特捜部廃止かのような全面対決の様相を示し、法相ないし首相による指揮権発動も取り沙汰される中、さすがに検察のあまりに恣意的な行き過ぎた捜査に疑問視する声が多くなってきた。例えば、御厨貴・東大教授は「いまの小沢一郎という人物を追いつめることで、検察はこの国をどうしようとしているのか」と疑問を呈した。
▼2月4日、検察は小沢幹事長について「有罪判決を得る証拠がなかった」不起訴処分とすると発表した。捜査云々ではなく、事実上政治問題化している以上、その「落としどころ」ではないのか? 検察の仕事とは何なのだろうか。
▼日本の首相は小沢氏のはずだった。昨年、小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(48)が政治資金規正法違反で逮捕されていなければ、である。
▼1月13日、大久保秘書の第二回公判が開かれ、西松建設の元幹部が検察の主張を否定する証言を連発、収賄どころか大久保秘書は無罪の可能性が高いという。微罪、いや「冤罪」もどきで日本の政治が翻弄されたということなのか?
▼ところが2日後の15日、検察は元秘書石川知裕衆議院議員を政治資金規正法の虚偽記載容疑で逮捕する。 これまで「虚偽記載」は修正で許されてきたのに、なぜ現職国会議員逮捕までしたのか明確な説明はない。
▼検察対小沢の権力闘争と見る向きは多い。小沢周辺は「検事総長を国会同意人事にする」「民主主義的な統制下に置く」と主張、また取り調べの可視化も検討されている。昨年末、特捜部検事を含む法務官僚が集まった宴会では、「小沢許さん」の大合唱だったという。
▼公務員の守秘義務違法(国家公務員法第100条)の疑いのある「検察リーク」を連日マスコミは垂れ流し、負のイメージで小沢幹事長が追いつめられるという構図になった。18日前後の大手新聞社の世論調査はどれも、小沢氏は幹事長を辞任すべきだが7割を占めた。
▼小沢氏失脚か特捜部廃止かのような全面対決の様相を示し、法相ないし首相による指揮権発動も取り沙汰される中、さすがに検察のあまりに恣意的な行き過ぎた捜査に疑問視する声が多くなってきた。例えば、御厨貴・東大教授は「いまの小沢一郎という人物を追いつめることで、検察はこの国をどうしようとしているのか」と疑問を呈した。
▼2月4日、検察は小沢幹事長について「有罪判決を得る証拠がなかった」不起訴処分とすると発表した。捜査云々ではなく、事実上政治問題化している以上、その「落としどころ」ではないのか? 検察の仕事とは何なのだろうか。
Thursday, January 14, 2010
沖縄利権と海兵隊普天間基地移設問題
▼米海兵隊は相手国を襲うための部隊であり、日本を防衛している軍隊ではない。にらみを効かしているといっても、実際、戦争になれば空爆から始まるのはイラクなどをみれば分かる通りだ。北朝鮮の暴発の可能性はあるが、それなら海兵隊は北海道や日本海側に置くべきだろう。訓練も北朝鮮の気候に近いところでやった方がいいに決まっている。では何故、沖縄の普天間に駐留しているのか。端的に言えば、日本がお金(おもいやり予算)を出してくれているからだ。
▼これを後押ししているのがいわゆる「沖縄利権」だ。もともと辺野古へのキャンプ・シュワプ沖の埋め立て計画は米国が希望したものではなく日本側が進めたものだ。96年に橋本政権で日米特別委員会(SACO)で辺野古移転が決まり、基地建設費とは別に10年で1千億円の公共事業が決まる。この配分権は自民党経世会(旧橋本派)が握ったといわれる。
▼しかし地元の反対などで計画は進まなかった。米国は沖縄の海兵隊をヘリ部隊も含め一体としてグアムに移転する計画を模索し始める(06年5月「再編実施のための日米ロードマップ」)。再び辺野古移転を進めていた小泉政権は、米国の長さ45メートルのヘリパッドの要求を、なんと総工費5千億円ともいわれる2本のV字巨大滑走路に拡張する。
▼鳩山首相や小沢幹事長が県外移設にこだわったのは社民党のためというより、この自民党の沖縄利権を白紙に戻したかったからだ。当然、自民党、防衛省(旧防衛庁)、軍需専門商社、建設会社など旧利権派はそろって民主党を攻撃。これには小泉政権に食い込んだ米国の企業、ロビイスト、ネオコンらが含まれており、いたずらな「日米同盟のきしみ」の発信源になっている。
▼基本はやはり民意である。そもそも普天間基地返還が日米で決まったのは、12歳の少女が海兵隊員にレイプされたことに沖縄住民が怒りの声を上げたことからだった。これは民主主義の問題である。利権絡みや怪しげな安全保障論に惑わされていない本当の民意に鳩山首相は耳を傾けることができるだろうか。
▼これを後押ししているのがいわゆる「沖縄利権」だ。もともと辺野古へのキャンプ・シュワプ沖の埋め立て計画は米国が希望したものではなく日本側が進めたものだ。96年に橋本政権で日米特別委員会(SACO)で辺野古移転が決まり、基地建設費とは別に10年で1千億円の公共事業が決まる。この配分権は自民党経世会(旧橋本派)が握ったといわれる。
▼しかし地元の反対などで計画は進まなかった。米国は沖縄の海兵隊をヘリ部隊も含め一体としてグアムに移転する計画を模索し始める(06年5月「再編実施のための日米ロードマップ」)。再び辺野古移転を進めていた小泉政権は、米国の長さ45メートルのヘリパッドの要求を、なんと総工費5千億円ともいわれる2本のV字巨大滑走路に拡張する。
▼鳩山首相や小沢幹事長が県外移設にこだわったのは社民党のためというより、この自民党の沖縄利権を白紙に戻したかったからだ。当然、自民党、防衛省(旧防衛庁)、軍需専門商社、建設会社など旧利権派はそろって民主党を攻撃。これには小泉政権に食い込んだ米国の企業、ロビイスト、ネオコンらが含まれており、いたずらな「日米同盟のきしみ」の発信源になっている。
▼基本はやはり民意である。そもそも普天間基地返還が日米で決まったのは、12歳の少女が海兵隊員にレイプされたことに沖縄住民が怒りの声を上げたことからだった。これは民主主義の問題である。利権絡みや怪しげな安全保障論に惑わされていない本当の民意に鳩山首相は耳を傾けることができるだろうか。
Saturday, January 02, 2010
2010年、軌道修正し、建て直しのとき
▼AP通信による2009年の10大ニュースの1位に不況から抜け出せない米経済が選ばれた。2位にオバマ大統領就任、3位が医療保険改革、4位に経営破綻などが続いた米自動車産業と続いた。
▼5位は新型(豚)インフルエンザ、6位はオバマ大統領が3万人の増派を発表したアフガニスタン問題、7位に歌手のマイケル・ジャクソンさん急死、8位に13人が殺害されたテキサス州陸軍基地の銃乱射事件が、9位にエドワード・ケネディ上院議員の死去が入った。傾く超大国とそれを軌道修正し建て直ししようとする姿が浮かんでくる。
▼10位には明るいニュースが入った。旅客機が川に不時着し、155人全員が無事救出された「ハドソン川の奇跡」だ。イラク問題は16位で、10年以来、初めてトップ10圏外になった。なお昨年の1位はオバマ大統領誕生だった。
▼一方、日本はどうだろう。共同通信による国内トップ10は①衆院選で民主党圧勝。政権交代で鳩山政権誕生②裁判員裁判がスタート③新型インフルエンザが大流行、死者も増加④円高。デフレ宣言。日航の経営危機など企業業績悪化⑤事業仕分け、八ツ場ダム中止など新政権の政策続々と⑥年越し派遣村に多くの人。失業率最悪レベルで雇用不安⑦足利事件でDNA不一致の菅家さん釈放、再審開始⑧WBCで日本が連覇。イチロー、松井秀もメジャーで活躍⑨核持ち込みなどの外交密約で元次官らの証言、相次ぐ⑩地方の高速道路が土日祝日、千円で乗り放題〈次点〉のりピーら芸能人らの薬物、大麻事件相次ぐ。
▼日本も経済問題の深刻さを感じさせるが、政権交代や裁判員裁判開始、密約暴露など、新しい取り組みが並んだ。明るいニュースは国際的に通用した日本人の野球だった。
▼2010年も日米共、国の建て直しが続くようだ。中国などの台頭はめざましいが、この二国の底力に期待したい。
▼5位は新型(豚)インフルエンザ、6位はオバマ大統領が3万人の増派を発表したアフガニスタン問題、7位に歌手のマイケル・ジャクソンさん急死、8位に13人が殺害されたテキサス州陸軍基地の銃乱射事件が、9位にエドワード・ケネディ上院議員の死去が入った。傾く超大国とそれを軌道修正し建て直ししようとする姿が浮かんでくる。
▼10位には明るいニュースが入った。旅客機が川に不時着し、155人全員が無事救出された「ハドソン川の奇跡」だ。イラク問題は16位で、10年以来、初めてトップ10圏外になった。なお昨年の1位はオバマ大統領誕生だった。
▼一方、日本はどうだろう。共同通信による国内トップ10は①衆院選で民主党圧勝。政権交代で鳩山政権誕生②裁判員裁判がスタート③新型インフルエンザが大流行、死者も増加④円高。デフレ宣言。日航の経営危機など企業業績悪化⑤事業仕分け、八ツ場ダム中止など新政権の政策続々と⑥年越し派遣村に多くの人。失業率最悪レベルで雇用不安⑦足利事件でDNA不一致の菅家さん釈放、再審開始⑧WBCで日本が連覇。イチロー、松井秀もメジャーで活躍⑨核持ち込みなどの外交密約で元次官らの証言、相次ぐ⑩地方の高速道路が土日祝日、千円で乗り放題〈次点〉のりピーら芸能人らの薬物、大麻事件相次ぐ。
▼日本も経済問題の深刻さを感じさせるが、政権交代や裁判員裁判開始、密約暴露など、新しい取り組みが並んだ。明るいニュースは国際的に通用した日本人の野球だった。
▼2010年も日米共、国の建て直しが続くようだ。中国などの台頭はめざましいが、この二国の底力に期待したい。
Monday, December 21, 2009
太った猫は恩返ししない?
▼「太った猫の銀行員を助けるために選挙を戦ったわけじゃない」。オバマ米大統領が13日放映のCBSテレビとのインタビューで怒気を含んだ声で語った。太った猫とは俗語で、金持ちを指す。
▼発言は、公的資金による救済を受けた銀行の一部が、幹部らの高額ボー ナスを復活させる動きを見せていることに対してのものだ。
▼ウォール街は株高を背景に業績が回復し、公的資金を返済が進んでいる。半国有化されていた金融大手シティグループが14日、金融危機時に注入を受けた公的資金200億ドルを返済することで米政府と合意、政府は半年から1年後をめどに保有するシティ株をすべて売却、同社は政府管理下から完全に脱する。米銀大手ウェルズ・ファーゴも同日、普通株の新規発行などを通じて資金を調達し、公的資金250億ドルを全額返済すると発表した。
▼これで米大手金融機関上位6社が公的支援から脱することが決まり、金融健全化への取り組みは大きな節目を迎えた。
▼高給復活はこうしたことを背景にしているわけだが、大統領は「米国が数十年に一度の不況を経験し、その原因をつくった人たちが1千万から2千万ドル(約8億9千万〜約17億8千万円)のボーナスを受け取るのか」「ウォール街の人々は、まだ分かっていない」と批判した。
▼さらに「一番頭にくるのは、納税者の助け(公的資金)の恩恵を受けた銀行が、議会で金融規制改革に反対して戦っていることだ」と強調した。金融業界は高い報酬でロイビスを雇い、規制改革を骨抜きにしようと躍起である。
▼米国の失業率は10%に達している。日本同様、米国の雇用の主要な担い手は中小企業である。中小への貸し出しが一向に回復しない現状に対しに、大統領は強いいらだち示した。
▼14日には、ホワイトハウスでウォール街の大手金融機関の首脳を呼び、中小企業向けの融資を拡大するよう要求した。「昨年、米銀は納税者から並々ならぬ支援を受けた。その結果、回復した彼らに、米経済を建て直すため並々ならぬ取り組みを期待している」と大統領。
▼だが、金融機関の首脳らは、貸し出しが増えない原因について、借り手の需要低迷と当局の監督強化にあると訴えた。自分たちに責任はないと言わんばかりだ。
▼納税者から助けてもらっておいて、業績回復すれば、もうその恩は忘れ、自分の懐だけを潤すのがウォール街ということか。(た)
▼発言は、公的資金による救済を受けた銀行の一部が、幹部らの高額ボー ナスを復活させる動きを見せていることに対してのものだ。
▼ウォール街は株高を背景に業績が回復し、公的資金を返済が進んでいる。半国有化されていた金融大手シティグループが14日、金融危機時に注入を受けた公的資金200億ドルを返済することで米政府と合意、政府は半年から1年後をめどに保有するシティ株をすべて売却、同社は政府管理下から完全に脱する。米銀大手ウェルズ・ファーゴも同日、普通株の新規発行などを通じて資金を調達し、公的資金250億ドルを全額返済すると発表した。
▼これで米大手金融機関上位6社が公的支援から脱することが決まり、金融健全化への取り組みは大きな節目を迎えた。
▼高給復活はこうしたことを背景にしているわけだが、大統領は「米国が数十年に一度の不況を経験し、その原因をつくった人たちが1千万から2千万ドル(約8億9千万〜約17億8千万円)のボーナスを受け取るのか」「ウォール街の人々は、まだ分かっていない」と批判した。
▼さらに「一番頭にくるのは、納税者の助け(公的資金)の恩恵を受けた銀行が、議会で金融規制改革に反対して戦っていることだ」と強調した。金融業界は高い報酬でロイビスを雇い、規制改革を骨抜きにしようと躍起である。
▼米国の失業率は10%に達している。日本同様、米国の雇用の主要な担い手は中小企業である。中小への貸し出しが一向に回復しない現状に対しに、大統領は強いいらだち示した。
▼14日には、ホワイトハウスでウォール街の大手金融機関の首脳を呼び、中小企業向けの融資を拡大するよう要求した。「昨年、米銀は納税者から並々ならぬ支援を受けた。その結果、回復した彼らに、米経済を建て直すため並々ならぬ取り組みを期待している」と大統領。
▼だが、金融機関の首脳らは、貸し出しが増えない原因について、借り手の需要低迷と当局の監督強化にあると訴えた。自分たちに責任はないと言わんばかりだ。
▼納税者から助けてもらっておいて、業績回復すれば、もうその恩は忘れ、自分の懐だけを潤すのがウォール街ということか。(た)
Sunday, December 06, 2009
流行語大賞は「政権交代」よりも「事業仕分け」?
▼今年流行した言葉を決める「ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)がこのほど発表され、「政権交代」(鳩山由紀夫首相)が年間大賞に決定した。
▼まったく妥当なところだろう。ベスト10はこども店長(子役、加藤清史郎)▽新型インフルエンザ(厚生労働省医系技官、木村盛世)▽草食男子(タレントの小池徹平、コラムニストの深沢真紀)▽脱官僚(みんなの党、渡辺喜美代表)▽ファストファッション(タレント、益若つばさ)▽ぼやき(前楽天監督の野村克也)▽歴女(レキジョ)となった。(50音順、敬称略)
▼「脱官僚」など政治絡みのものが多いのが今年の特徴だろう。11月後半に行われた「事業仕分け」は急遽入った格好で、作家の藤本義一さんやタレントのやくみつるさんら5人の選考委員は国民の関心の高さを考慮したに違いない。鳩山首相も「政権交代よりも事業仕分けだね」と述べた。なお、首相が提唱する「友愛」については、(96年に)「取っているので、もう結構です」と答えている。
▼事業仕分けは、過去最高の95兆円超に膨らんだ2010年度概算要求の無駄を洗い出す延べ9日間の作業。「『無駄』の基準がよく分からない。ルールなきショー」(言論NPOの工藤泰志代表)などの声もあり、「科学技術予算を減らすのは論外」(野依良治)などノーベル賞受賞者らから強い批判を浴びたりもした。一般傍聴者は初日の11日の400人から日を追うごとに増加し、終盤は初日の4倍以上の1745人が詰めかけた。
▼共同通信の集計では「廃止」「凍結」「半減」などによる圧縮額は約7500億円。国庫返納を求めた独立行政法人の基金など約1兆400億円の「埋蔵金」発掘と合わせると約1兆8000億円を捻出できる計算になる。共同通信社が11月28、29両日に行った全国電話世論調査によると、事業仕分けについて「評価する」が77・3%だった。
▼まったく妥当なところだろう。ベスト10はこども店長(子役、加藤清史郎)▽新型インフルエンザ(厚生労働省医系技官、木村盛世)▽草食男子(タレントの小池徹平、コラムニストの深沢真紀)▽脱官僚(みんなの党、渡辺喜美代表)▽ファストファッション(タレント、益若つばさ)▽ぼやき(前楽天監督の野村克也)▽歴女(レキジョ)となった。(50音順、敬称略)
▼「脱官僚」など政治絡みのものが多いのが今年の特徴だろう。11月後半に行われた「事業仕分け」は急遽入った格好で、作家の藤本義一さんやタレントのやくみつるさんら5人の選考委員は国民の関心の高さを考慮したに違いない。鳩山首相も「政権交代よりも事業仕分けだね」と述べた。なお、首相が提唱する「友愛」については、(96年に)「取っているので、もう結構です」と答えている。
▼事業仕分けは、過去最高の95兆円超に膨らんだ2010年度概算要求の無駄を洗い出す延べ9日間の作業。「『無駄』の基準がよく分からない。ルールなきショー」(言論NPOの工藤泰志代表)などの声もあり、「科学技術予算を減らすのは論外」(野依良治)などノーベル賞受賞者らから強い批判を浴びたりもした。一般傍聴者は初日の11日の400人から日を追うごとに増加し、終盤は初日の4倍以上の1745人が詰めかけた。
▼共同通信の集計では「廃止」「凍結」「半減」などによる圧縮額は約7500億円。国庫返納を求めた独立行政法人の基金など約1兆400億円の「埋蔵金」発掘と合わせると約1兆8000億円を捻出できる計算になる。共同通信社が11月28、29両日に行った全国電話世論調査によると、事業仕分けについて「評価する」が77・3%だった。
Wednesday, November 18, 2009
オバマ大統領が初訪日
▼オバマ米大統領が初訪日した。訪日を前に、12日付英紙フィナンシャル・タイムズが、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題をめぐる米国の強圧的態度を批判した。ゲーツ米国防長官が日米合意の履行を迫った件に触れ、ブッシュ前政権が約束したミサイル防衛(MD)施設の東欧配備計画をオバマ政権が撤回した例を上げて、米国のご都合主義を批判した。他国から見れば「政権交代したからには政策見直しは当然ある」ということである。
▼13日の東京で日米首脳会談後、大統領は、閣僚級の作業グループを設け、普天間移設問題を協議していくことを表明したが、米紙ニューヨーク・タイムズは、オバマ米大統領がこの問題をめぐり「一定の譲歩を示した」と報じた。
▼オバマ大統領が14日に皇居で天皇、皇后両陛下と面会した際、深々とお辞儀したことはご愛嬌だったが、外国の要人に頭を下げるのは「米国の大統領として不適切」とFOXテレビが報じるなど、保守系を中心に批判が相次いだ。大統領が「ぺこぺこと頭を下げた」と非難したサイトもあった。
▼作業グループ設置だけで「譲歩」だの、外交儀礼で「ぺこぺこ」だのとは、なにやらこれまでの日本の米国従属ぶりを物語るようである。
▼大統領は、14日に都内で行った演説で「米国は太平洋国家。この大洋と固く結び付いている」とし、アジア諸国との関係を強化していくと宣言。日本がアジア安定の「要」で、日米の「揺るぎなき同盟」がアジア関与の基本になるとの考えを示した。
▼大統領は2日間滞在しただけでアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向かった。鳩山首相が提唱した「東アジア共同体」構想に対抗するかのように、米国はAPECに力を入れようとしている。「同盟関係」を維持しつつ、経済面では巨大なアジア市場の主導権争いが日米で始まっている。
▼13日の東京で日米首脳会談後、大統領は、閣僚級の作業グループを設け、普天間移設問題を協議していくことを表明したが、米紙ニューヨーク・タイムズは、オバマ米大統領がこの問題をめぐり「一定の譲歩を示した」と報じた。
▼オバマ大統領が14日に皇居で天皇、皇后両陛下と面会した際、深々とお辞儀したことはご愛嬌だったが、外国の要人に頭を下げるのは「米国の大統領として不適切」とFOXテレビが報じるなど、保守系を中心に批判が相次いだ。大統領が「ぺこぺこと頭を下げた」と非難したサイトもあった。
▼作業グループ設置だけで「譲歩」だの、外交儀礼で「ぺこぺこ」だのとは、なにやらこれまでの日本の米国従属ぶりを物語るようである。
▼大統領は、14日に都内で行った演説で「米国は太平洋国家。この大洋と固く結び付いている」とし、アジア諸国との関係を強化していくと宣言。日本がアジア安定の「要」で、日米の「揺るぎなき同盟」がアジア関与の基本になるとの考えを示した。
▼大統領は2日間滞在しただけでアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向かった。鳩山首相が提唱した「東アジア共同体」構想に対抗するかのように、米国はAPECに力を入れようとしている。「同盟関係」を維持しつつ、経済面では巨大なアジア市場の主導権争いが日米で始まっている。
Sunday, November 08, 2009
普天間基地問題は先送り
▼沖縄県宜野湾市の中心にある在日米海兵隊普天間基地は2800mの滑走路を持ち市面積の25%を占める。攻撃ヘリなど100機以上が配備され、離着陸訓練により騒音被害で学校の授業中断は日常茶飯事である。かねてより県は返還を強く求めて来た。
▼沖縄は面積で日本の0・6%だが、在日米軍基地の75%が集中。うち75%が海兵隊の基地で、師団規模での駐留は米本国以外では日本のみである。
▼1995年、海兵隊の兵士3名が12歳の女子小学生を拉致、集団レイプする事件が起き、県民の怒りが爆発。日米で在沖縄米軍を全面的に見直すことになり96年、代替施設を条件に普天間基地の全面返還が決まった。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部が移設先とされたが、名護市の住民投票で反対が過半数を占めるなど反対運動が続いている。当地はジュゴンの北限生息地で環境破壊との声がある。
▼県外、国外移設の方針を主張してきた民主党が政権を取ったため、ゲーツ米国防長官が10月に来日し「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」「グアム移転なしに、沖縄で兵員の縮小と土地の返還もない」とあくまで日米合意の履行を要求。その後、岡田外相は米軍嘉手納基地との統合案を出したが、米国防総省のモレル報道官は「日本の防衛に必要なもの(軍事力)を提供できない」として実現可能性を重ねて否定。空軍戦闘機による騒音被害に苦しむ周辺自治体は「いかなる条件でも断固反対」(宮城篤実嘉手納町長)との姿勢だ。
▼10月31日と11月1日に沖縄県民を対象に行われた毎日新聞と琉球新報による世論調査では反対が67%、賛成20%で、鳩山首相は「県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきだ」が70%を占めた。
▼仲井沖縄県知事は「政府方針の早急な提示」を要求。だが、鳩山首相は2日、この問題について「(12日の)オバマ米大統領の来日までに決めなければならないとは思っていない」と述べ、先送りした。(た)
▼沖縄は面積で日本の0・6%だが、在日米軍基地の75%が集中。うち75%が海兵隊の基地で、師団規模での駐留は米本国以外では日本のみである。
▼1995年、海兵隊の兵士3名が12歳の女子小学生を拉致、集団レイプする事件が起き、県民の怒りが爆発。日米で在沖縄米軍を全面的に見直すことになり96年、代替施設を条件に普天間基地の全面返還が決まった。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部が移設先とされたが、名護市の住民投票で反対が過半数を占めるなど反対運動が続いている。当地はジュゴンの北限生息地で環境破壊との声がある。
▼県外、国外移設の方針を主張してきた民主党が政権を取ったため、ゲーツ米国防長官が10月に来日し「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」「グアム移転なしに、沖縄で兵員の縮小と土地の返還もない」とあくまで日米合意の履行を要求。その後、岡田外相は米軍嘉手納基地との統合案を出したが、米国防総省のモレル報道官は「日本の防衛に必要なもの(軍事力)を提供できない」として実現可能性を重ねて否定。空軍戦闘機による騒音被害に苦しむ周辺自治体は「いかなる条件でも断固反対」(宮城篤実嘉手納町長)との姿勢だ。
▼10月31日と11月1日に沖縄県民を対象に行われた毎日新聞と琉球新報による世論調査では反対が67%、賛成20%で、鳩山首相は「県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきだ」が70%を占めた。
▼仲井沖縄県知事は「政府方針の早急な提示」を要求。だが、鳩山首相は2日、この問題について「(12日の)オバマ米大統領の来日までに決めなければならないとは思っていない」と述べ、先送りした。(た)
Thursday, October 15, 2009
広島・長崎五輪とオバマ大統領のノーベル平和賞
▼2016年の五輪は南米初となるリオデジャネイロに決まり東京は落選してしまった。再挑戦が不確かな中、秋葉広島市長と田上長崎市長は11日、広島市役所で記者会見し、2020年夏季五輪について被爆した両市による共同開催を柱に招致する意向を正式に表明した。
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)
Thursday, October 01, 2009
鳩山首相が鮮烈国連デビュー
▼鮮烈国連デビューと言っていいだろう。鳩山首相が国連気候変動首脳会合で22日、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減すると表明、途上国への資金や省エネ技術の積極的供与を明示した「鳩山イニシアチブ」も提唱した。
▼数値に関しては実現をいぶかる向きもあるが、鳩山首相は戦後初の「理系」出身の首相である。「(日本)国民、企業の能力の高さを信頼している。産業革命以来続いた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることこそが、次の世代に対する責務だ」と訴えた。
▼たどたどしさはあるものの明瞭な発音の英語で演説する鳩山首相に、日本が初めて世界をリードする姿を感じた人も多いのではないだろうか。
▼ロシアはじめEUや途上国などの各国首脳から高い評価を受けたにも関わらず、米国の大手メディアがあまり大きく取り上げなかったところに、温暖化問題への取り組みにおいてリーダーとなれない米国の微妙な立場を表しているようだ。
▼24日には国連安全保障理事会が、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択した。
▼「核兵器のない世界」は日本が一貫して主張してきたことである。鳩山首相は「広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んで欲しい」と世界の指導者に呼び掛けた。北朝鮮の核問題に直面しながらも、唯一の被爆国として核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし非核三原則の堅持を表明した。
▼世界はオバマ米大統領が掲げた理想の実現へ向け踏み出した。今こそ日本は米国と共に、率先して「核兵器のない世界」実現に向け積極的に取り組む時だ。
▼すべての分野でリードする必要はない。日本が温暖化や核廃絶などでリードすることが「国際貢献」となる。(た)
▼数値に関しては実現をいぶかる向きもあるが、鳩山首相は戦後初の「理系」出身の首相である。「(日本)国民、企業の能力の高さを信頼している。産業革命以来続いた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることこそが、次の世代に対する責務だ」と訴えた。
▼たどたどしさはあるものの明瞭な発音の英語で演説する鳩山首相に、日本が初めて世界をリードする姿を感じた人も多いのではないだろうか。
▼ロシアはじめEUや途上国などの各国首脳から高い評価を受けたにも関わらず、米国の大手メディアがあまり大きく取り上げなかったところに、温暖化問題への取り組みにおいてリーダーとなれない米国の微妙な立場を表しているようだ。
▼24日には国連安全保障理事会が、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択した。
▼「核兵器のない世界」は日本が一貫して主張してきたことである。鳩山首相は「広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んで欲しい」と世界の指導者に呼び掛けた。北朝鮮の核問題に直面しながらも、唯一の被爆国として核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし非核三原則の堅持を表明した。
▼世界はオバマ米大統領が掲げた理想の実現へ向け踏み出した。今こそ日本は米国と共に、率先して「核兵器のない世界」実現に向け積極的に取り組む時だ。
▼すべての分野でリードする必要はない。日本が温暖化や核廃絶などでリードすることが「国際貢献」となる。(た)
Sunday, September 20, 2009
国民皆保険は社会主義か
▼オバマ大統領の医療保険改革が正念場を迎えている。米国にとり医療保険改革は「トルーマン大統領以来、歴代大統領が口にしながら実現できなかった」(オバマ大統領)悲願のテーマだ。
▼首都ワシントンで12日に行われた反オバマ集会には10万人(議会警察及び消防当局調べ)が集まったという。そのプラカードには「オバマニズムはコミュニズム」「社会主義はいらない」などと書かれていた。ほとんどが白人でいわゆる「大きな政府」に反対する人たちである。
▼オバマ政権の目玉である医療保険改革はいうまでもなく、全国民の15・4%に当たる4630万人が無保険(08年)という他の先進国では見られない状態を変えることにある。さらに、財務省の推計によれば向こう10年間で65歳未満の米国民のおよそ半分が無保険を経験することになるという。
▼ほとんどの先進国は公的医療保険制度を導入しているが、米国は高齢者対象のメディケア以外は自由診療である。このため、保険業界の寡占構造もあり負担医療額が高く、民間保険会社加入者ですら医療費が払えず破産する人が多い。低所得者向けにはメディケイドがあるが、これは財政赤字を膨らませる要因になっている。
▼公的医療保険制度を導入すると、役人が個人に対しどういう治療を受けさせるか決めることになるという批判があるが、現状こそ、民間保険会社が保険でカバーするしないをコントロールしているため、受けたい治療を断念することが多いのだ。
▼医療保険改革に伴う「増税反対」の声も根強いが、改革のために今後10年間で必要な約9千億ドルは、「イラクとアフガニスタンの戦費より少額」(オバマ大統領)なのである。
▼無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だとオバマ大統領は強調、公的保険導入など政府の関与度については柔軟な姿勢を示し始め「社会主義色」を消そうとしている。
▼首都ワシントンで12日に行われた反オバマ集会には10万人(議会警察及び消防当局調べ)が集まったという。そのプラカードには「オバマニズムはコミュニズム」「社会主義はいらない」などと書かれていた。ほとんどが白人でいわゆる「大きな政府」に反対する人たちである。
▼オバマ政権の目玉である医療保険改革はいうまでもなく、全国民の15・4%に当たる4630万人が無保険(08年)という他の先進国では見られない状態を変えることにある。さらに、財務省の推計によれば向こう10年間で65歳未満の米国民のおよそ半分が無保険を経験することになるという。
▼ほとんどの先進国は公的医療保険制度を導入しているが、米国は高齢者対象のメディケア以外は自由診療である。このため、保険業界の寡占構造もあり負担医療額が高く、民間保険会社加入者ですら医療費が払えず破産する人が多い。低所得者向けにはメディケイドがあるが、これは財政赤字を膨らませる要因になっている。
▼公的医療保険制度を導入すると、役人が個人に対しどういう治療を受けさせるか決めることになるという批判があるが、現状こそ、民間保険会社が保険でカバーするしないをコントロールしているため、受けたい治療を断念することが多いのだ。
▼医療保険改革に伴う「増税反対」の声も根強いが、改革のために今後10年間で必要な約9千億ドルは、「イラクとアフガニスタンの戦費より少額」(オバマ大統領)なのである。
▼無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だとオバマ大統領は強調、公的保険導入など政府の関与度については柔軟な姿勢を示し始め「社会主義色」を消そうとしている。
Wednesday, September 02, 2009
ついに日本も新しいページがめくられた
▼ワシントン・ポスト紙は「政治的競争のない民主主義はない」と書いた。言うまでもなく今回の日本の総選挙についてだ。そうした意味で民主党の勝利を好意的に受け止めている。
▼日本は1955年から、細川内閣の263日間を除き、一貫して自民党政権だった。民主主義国家としては世界でも珍しい「一党独裁国」だったわけがついに崩れた。共同通信社が行った全国緊急電話世論調査で、新首相となる民主党の鳩山由紀夫代表に「期待する」と答えた人は71・1%だった。
▼それにしても、予想されていたとはいえ民主党が308議席を獲得するとは。自民党は選挙前の300議席から119議席に落ち込む歴史的惨敗であり、「二大政党制」は日本に根付かないのではとさえ思わせる結果だ。
▼日本国民は「弱体化した経済と高齢化社会」への対処を民主党に委ねたと解説したのはウォールストリート・ジャーナル。自民党長期政権による政・官・財の癒着は社会の活力を失わせるという弊害を生むようになった。選挙結果はそれへの国民の回答だ。
▼民主党は単独過半数を獲得したが、国民新党、社民党との3党連立は崩さず、9月16日に鳩山内閣が成立する。数にものを言わせた民主党の独走はひとまずなさそうだ。
▼焦っているのは米国だろう。民主党は日米地位協定の見直しや海上自衛隊によるインド洋での給油活動の停止を訴えており、鳩山代表が自公政権の対米姿勢を「従属的」と批判し、「対等な日米関係」を主張していることの意味を図りかねている。米国はゲーツ国防長官と次期防衛相との会談を10月中旬に東京で開く方向で調整を始めた。
▼なにせ始めての政権運営である。多少ぎくしゃくもするだろうが、新生日本の誕生としてまずはじっくりと見守りたい。
▼日本は1955年から、細川内閣の263日間を除き、一貫して自民党政権だった。民主主義国家としては世界でも珍しい「一党独裁国」だったわけがついに崩れた。共同通信社が行った全国緊急電話世論調査で、新首相となる民主党の鳩山由紀夫代表に「期待する」と答えた人は71・1%だった。
▼それにしても、予想されていたとはいえ民主党が308議席を獲得するとは。自民党は選挙前の300議席から119議席に落ち込む歴史的惨敗であり、「二大政党制」は日本に根付かないのではとさえ思わせる結果だ。
▼日本国民は「弱体化した経済と高齢化社会」への対処を民主党に委ねたと解説したのはウォールストリート・ジャーナル。自民党長期政権による政・官・財の癒着は社会の活力を失わせるという弊害を生むようになった。選挙結果はそれへの国民の回答だ。
▼民主党は単独過半数を獲得したが、国民新党、社民党との3党連立は崩さず、9月16日に鳩山内閣が成立する。数にものを言わせた民主党の独走はひとまずなさそうだ。
▼焦っているのは米国だろう。民主党は日米地位協定の見直しや海上自衛隊によるインド洋での給油活動の停止を訴えており、鳩山代表が自公政権の対米姿勢を「従属的」と批判し、「対等な日米関係」を主張していることの意味を図りかねている。米国はゲーツ国防長官と次期防衛相との会談を10月中旬に東京で開く方向で調整を始めた。
▼なにせ始めての政権運営である。多少ぎくしゃくもするだろうが、新生日本の誕生としてまずはじっくりと見守りたい。
Saturday, August 15, 2009
政権交代で日米同盟も変わる?
▼クリントン元大統領の電撃訪朝による米国人女性記者2人釈放は、「北朝鮮がプロパガンダで勝利」(ジョン・ボルトン元国連大使)、「北朝鮮が国際社会に受け入れられたと発信できるようになる」(キッシンジャー元国務長官)などの批判はあるものの、米国民の多くはおおむね納得しているようだ。
▼米政府としては、あくまで私人での行動と区別を強調しつつ、裏では細かい指示をしており、金正日総書記の健康状態や後継者問題などの情報を得たようだ。建前より実を取ったということか。
▼こうした柔軟なアプローチも駆使する米国に対し、日本はどうか。「北朝鮮ペースになる」という批判もあるが、拉致被害者の家族たちからは「私人でもいいから北朝鮮と交渉してほしい」(横田滋さん)、「うらやましい」(市川健一さん)といった声があがった。
▼今月30日に行われる総選挙で与党になるのはほぼ確実の民主党は、外交において現実路線を取り始めている。これまでの主張通りインド洋で給油活動に当たる海上自衛隊を来年1月で撤退させるが、代わりにアフガニスタン本土での民生、復興支援を強化。また、①在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)削減②日米地位協定改定③米軍普天間飛行場の県外移転の3つの方針ついても、直ちに交渉入りは求めないことに決めた。
▼米国との「信頼関係の構築を優先」(鳩山氏)し、さらに「現実路線」へ踏み出したわけだ。では現実路線とは一体何か。それは自民党が作って来た対米従属という日米同盟のことではないのか。
▼今年も8月15日の終戦記念日を迎えた。日米が戦争を終えて64年目となる。世界は変わった。米国も変わろうとしている中、日米同盟の中身も変わるべき時が来ているのではないだろうか。
▼米政府としては、あくまで私人での行動と区別を強調しつつ、裏では細かい指示をしており、金正日総書記の健康状態や後継者問題などの情報を得たようだ。建前より実を取ったということか。
▼こうした柔軟なアプローチも駆使する米国に対し、日本はどうか。「北朝鮮ペースになる」という批判もあるが、拉致被害者の家族たちからは「私人でもいいから北朝鮮と交渉してほしい」(横田滋さん)、「うらやましい」(市川健一さん)といった声があがった。
▼今月30日に行われる総選挙で与党になるのはほぼ確実の民主党は、外交において現実路線を取り始めている。これまでの主張通りインド洋で給油活動に当たる海上自衛隊を来年1月で撤退させるが、代わりにアフガニスタン本土での民生、復興支援を強化。また、①在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)削減②日米地位協定改定③米軍普天間飛行場の県外移転の3つの方針ついても、直ちに交渉入りは求めないことに決めた。
▼米国との「信頼関係の構築を優先」(鳩山氏)し、さらに「現実路線」へ踏み出したわけだ。では現実路線とは一体何か。それは自民党が作って来た対米従属という日米同盟のことではないのか。
▼今年も8月15日の終戦記念日を迎えた。日米が戦争を終えて64年目となる。世界は変わった。米国も変わろうとしている中、日米同盟の中身も変わるべき時が来ているのではないだろうか。
Monday, August 03, 2009
米大統領が広島を訪れる日
▼世界的に活躍するデザイナーの三宅一生さん(71)が、7月14日付けのニューヨーク・タイムズ紙に、オバマ米大統領に広島を訪れるよう呼びかけた。三宅さんは7歳の時、広島で被爆した。黒い雲が上がり人々が逃げまどう光景が今も目に浮かぶ、と自らの被爆体験を綴っている。放射能を浴びた母親は3年後に亡くなったという。
▼オバマ大統領の「核兵器のない世界」を訴えた4月のプラハでの演説以来、核兵器廃絶に向けた動きが活発化している。オバマ大統領は7月6日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で、戦略核弾頭の上限を現状の2500前後から1500〜1675へ、核弾頭の運搬手段を現状の1600から500〜1100へ削減する事を合意した。戦略核の上限数は過去最低水準となる。
▼主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)では7月8日、米国とロシアによる戦略核弾頭の削減合意を歓迎しオバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」に向けた状況をつくることを約束。北朝鮮の再核実験やミサイル発射を「最も強い表現で非難」した。
▼少数ながら日本には、北朝鮮の核兵器などに対抗するために日本核武装を主張する人たちがいるが、偶発的核戦争の危険を高めるだけで、現在の世界の流れからはかけ離れた論議である。米ソ冷戦は過去の話となったが、北朝鮮の核、イランの核開発疑惑、テロリストへの核兵器流出の懸念など、依然として核は人類を脅かしている。
▼折しも「核の番人」ともいわれる国際原子力機関(IAEA)の事務局長に天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選、12月から就任する。日本の発言力がIAEAを舞台に強まることが期待される。
▼今年もまた広島(8月6日)、長崎(8月9日)の原爆の日が来る。戦争による唯一の被爆国である日本が、米国と共に「核兵器のない世界」への取り組みをリードしていくことを望みたい。
▼オバマ大統領の「核兵器のない世界」を訴えた4月のプラハでの演説以来、核兵器廃絶に向けた動きが活発化している。オバマ大統領は7月6日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で、戦略核弾頭の上限を現状の2500前後から1500〜1675へ、核弾頭の運搬手段を現状の1600から500〜1100へ削減する事を合意した。戦略核の上限数は過去最低水準となる。
▼主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)では7月8日、米国とロシアによる戦略核弾頭の削減合意を歓迎しオバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」に向けた状況をつくることを約束。北朝鮮の再核実験やミサイル発射を「最も強い表現で非難」した。
▼少数ながら日本には、北朝鮮の核兵器などに対抗するために日本核武装を主張する人たちがいるが、偶発的核戦争の危険を高めるだけで、現在の世界の流れからはかけ離れた論議である。米ソ冷戦は過去の話となったが、北朝鮮の核、イランの核開発疑惑、テロリストへの核兵器流出の懸念など、依然として核は人類を脅かしている。
▼折しも「核の番人」ともいわれる国際原子力機関(IAEA)の事務局長に天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選、12月から就任する。日本の発言力がIAEAを舞台に強まることが期待される。
▼今年もまた広島(8月6日)、長崎(8月9日)の原爆の日が来る。戦争による唯一の被爆国である日本が、米国と共に「核兵器のない世界」への取り組みをリードしていくことを望みたい。
Wednesday, July 15, 2009
政権交代のカウントダウンが始まった
▼12日投開票された東京都議選で、民主党が20増の54議席を獲得し第1党に躍進、自民党は過去最低に並ぶ10減の38議席と激減、23議席を維持した公明党と合わせても61議席と過半数を割り込んだ。
▼投票率は前回の43・99%から54・49%とアップした。民主党は名古屋、さいたま、千葉の各市長選、静岡県知事選の地方選4連勝に続き、首都決戦で勝利した。
▼国民の多数が政権交代を望んでいることは明らかだろう。「蟹工船」ブームで党員も増えたという共産党が13議席から8議席に後退したことからも逆に窺える。民主党の小沢元代表や鳩山代表の政治資金問題をつつくより、国民が求めているのは政権交代による現実的な変革だ。
▼衆院選出馬要請をした東国原宮崎県知事に「次期総裁候補として衆院選を戦う」と言われ、自民党もそこまで落ちたかと失笑を買った古賀自民党選対委員長は一連の敗北の責任を取って辞任を表明した。
▼ワシントン・ポスト紙は、麻生首相が「奇跡でも起こさない限り日本の選挙民は自民党を下野させる」と書いた。ニューヨーク・タイムズ紙は、自民党は「時代の変化に適応できなくなっている」と書いた。
▼民主、共産、社民、国民新、新党日本の野党5党が提出した麻生首相に対する問責決議が14日の参院本会議で賛成多数で可決され、野党は衆参両院で全面的な審議拒否に入り、解散を待たずに国会は閉会状態となった。公明党の意向を受けた麻生首相は21日の週に衆院を解散、衆院選を8月18日公示、30日投開票とする日程を表明した。
▼「日本は戦後最大の政変に向かっている」と報じたのは英タイムズ紙。与野党は事実上の選挙戦に突入、歴史的政権交代のカウントダウンが始まった。
▼投票率は前回の43・99%から54・49%とアップした。民主党は名古屋、さいたま、千葉の各市長選、静岡県知事選の地方選4連勝に続き、首都決戦で勝利した。
▼国民の多数が政権交代を望んでいることは明らかだろう。「蟹工船」ブームで党員も増えたという共産党が13議席から8議席に後退したことからも逆に窺える。民主党の小沢元代表や鳩山代表の政治資金問題をつつくより、国民が求めているのは政権交代による現実的な変革だ。
▼衆院選出馬要請をした東国原宮崎県知事に「次期総裁候補として衆院選を戦う」と言われ、自民党もそこまで落ちたかと失笑を買った古賀自民党選対委員長は一連の敗北の責任を取って辞任を表明した。
▼ワシントン・ポスト紙は、麻生首相が「奇跡でも起こさない限り日本の選挙民は自民党を下野させる」と書いた。ニューヨーク・タイムズ紙は、自民党は「時代の変化に適応できなくなっている」と書いた。
▼民主、共産、社民、国民新、新党日本の野党5党が提出した麻生首相に対する問責決議が14日の参院本会議で賛成多数で可決され、野党は衆参両院で全面的な審議拒否に入り、解散を待たずに国会は閉会状態となった。公明党の意向を受けた麻生首相は21日の週に衆院を解散、衆院選を8月18日公示、30日投開票とする日程を表明した。
▼「日本は戦後最大の政変に向かっている」と報じたのは英タイムズ紙。与野党は事実上の選挙戦に突入、歴史的政権交代のカウントダウンが始まった。
Wednesday, July 01, 2009
世紀のスーパースターの死
▼マイケル・ジャクソンが急死した。享年50歳。ジャクソン・ファイブのボーカルとして11歳でデビューし、全世界で7億5千万枚のレコード・CDを売った稀代の歌手である。マドンナやエリザベス・テイラーら歌手、俳優だけでなくサルコジ仏大統領や金大中元韓国大統領まで、世界中が彼の死を惜しんだ。
▼米下院本会議では黒人議員団が呼び掛け、黙とうが捧げられた。だが同じ黒人でもあるにも拘わらずオバマ大統領の反応は鈍かった。大統領は遺族に哀悼の手紙を送ったが、ホワイトハウスは大統領名での追悼声明も出さなかった。
▼ギブズ米大統領報道官によれば、大統領が「すばらしい歌手だった」と讃える一方、スキャンダルに見舞われるなど「哀れで悲劇的な側面も」あったと評していたという。少年への性的虐待疑惑や奇行で知られたマイケルから距離を取ったと見られる。
▼クレーン作業員だった父ジョセフ・ジャクソンが貧困から抜け出すために子どもたちを音楽をやらせ成功させた。一方で、子どもへの虐待もあったとされる。マイケルは11歳での成功後、声変わりとやたら伸びた身長、ひどいニキビで可愛くなくなったことでひどく悩んだ時期があるという。しかしその後、ソングライティングと人間離れしたダンスをものにし、空前の世界的大成功を収め、克服したかに見えた。
▼だが、自身に対する醜悪恐怖に悩み、鼻のケガをきっかけに整形を続け、皮膚の病気のためとされているが肌を白くした。あり余る名声と富の一方で、数々の醜聞、膨大な借金、千件を超える訴訟を起こされた。最後は拒食症だったという報道もある。
▼彼ほどユニバーサルな人間はいないだろう。黒人なのか白人なのか、男女の区別すら超えた印象のマイケルは国、人種問わず世界中の老若男女に愛されたが、自分を愛することは出来なかったのだろうか。7月の復帰を目前にして心と体に傷を負ったまま世紀のスータースターが逝った。
▼米下院本会議では黒人議員団が呼び掛け、黙とうが捧げられた。だが同じ黒人でもあるにも拘わらずオバマ大統領の反応は鈍かった。大統領は遺族に哀悼の手紙を送ったが、ホワイトハウスは大統領名での追悼声明も出さなかった。
▼ギブズ米大統領報道官によれば、大統領が「すばらしい歌手だった」と讃える一方、スキャンダルに見舞われるなど「哀れで悲劇的な側面も」あったと評していたという。少年への性的虐待疑惑や奇行で知られたマイケルから距離を取ったと見られる。
▼クレーン作業員だった父ジョセフ・ジャクソンが貧困から抜け出すために子どもたちを音楽をやらせ成功させた。一方で、子どもへの虐待もあったとされる。マイケルは11歳での成功後、声変わりとやたら伸びた身長、ひどいニキビで可愛くなくなったことでひどく悩んだ時期があるという。しかしその後、ソングライティングと人間離れしたダンスをものにし、空前の世界的大成功を収め、克服したかに見えた。
▼だが、自身に対する醜悪恐怖に悩み、鼻のケガをきっかけに整形を続け、皮膚の病気のためとされているが肌を白くした。あり余る名声と富の一方で、数々の醜聞、膨大な借金、千件を超える訴訟を起こされた。最後は拒食症だったという報道もある。
▼彼ほどユニバーサルな人間はいないだろう。黒人なのか白人なのか、男女の区別すら超えた印象のマイケルは国、人種問わず世界中の老若男女に愛されたが、自分を愛することは出来なかったのだろうか。7月の復帰を目前にして心と体に傷を負ったまま世紀のスータースターが逝った。
Saturday, June 20, 2009
足利事件ー嘘の自白とDNA鑑定
▼1990年に栃木県足利市で起きた女児(当時4)誘拐殺害事件で無期懲役が確定し、再審請求中だった菅家利和さん(62)が釈放された。菅家さんと女児の着衣に付着していた体液のDNAについて、異なる最新の方法による2つの鑑定でいずれもが不一致だったとの結果が出たためである。
▼最高検及び栃木県警は謝罪したが、謝罪して済む問題ではないだろう。逮捕から17年と半年が経過しているのだ。
▼事件当時、足利では79年と84年にも同様の幼女殺害事件があり未解決だった。栃木県警の威信をかけた大捜査が行われたが手掛かりはなし。県警は、元幼稚園バス運転手の菅家さんがアダルトビデオを多数所有、「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」などの聞き込みから犯人と目星をつけ一年間尾行。幼児への声かけすら皆無だった菅家さんのゴミ箱のティッシュを無断で押収しDNA鑑定、「被害者の下着に付いていた精液とDNA型が一致」という理由で連行した。
▼「『おまえがやった』と怒鳴られたり、机をたたかれたりして、刑事たちが怖くなり、もういいやと思った」菅家さんは「自分がやりました」と「自白」してしまう。
▼一審では弁護人までもがこのDNA鑑定を絶対視。菅家さんは「罪を認めて情状酌量を勝ち取る」弁護方針に逆らえず、検察側証拠をほぼ全部認めてしまう。
▼県警は「幼女殺害事件全面解決」と打ち上げた。自白内容と現場の状況の矛盾点が多々あったにも拘わらず、マスコミもなんの検証もしなかった。
▼今回、「任意性のない自白」の信用性を問う声が上がり、取り調べの録音・録画による「可視化」が論議されているが、この冤罪事件には警察、検察、裁判官、弁護士、マスコミすべてが加担していたのである。このままでは、始まったばかりの裁判員制度で一般市民まで冤罪の片棒を担がされてしまう可能性がある。
▼最高検及び栃木県警は謝罪したが、謝罪して済む問題ではないだろう。逮捕から17年と半年が経過しているのだ。
▼事件当時、足利では79年と84年にも同様の幼女殺害事件があり未解決だった。栃木県警の威信をかけた大捜査が行われたが手掛かりはなし。県警は、元幼稚園バス運転手の菅家さんがアダルトビデオを多数所有、「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」などの聞き込みから犯人と目星をつけ一年間尾行。幼児への声かけすら皆無だった菅家さんのゴミ箱のティッシュを無断で押収しDNA鑑定、「被害者の下着に付いていた精液とDNA型が一致」という理由で連行した。
▼「『おまえがやった』と怒鳴られたり、机をたたかれたりして、刑事たちが怖くなり、もういいやと思った」菅家さんは「自分がやりました」と「自白」してしまう。
▼一審では弁護人までもがこのDNA鑑定を絶対視。菅家さんは「罪を認めて情状酌量を勝ち取る」弁護方針に逆らえず、検察側証拠をほぼ全部認めてしまう。
▼県警は「幼女殺害事件全面解決」と打ち上げた。自白内容と現場の状況の矛盾点が多々あったにも拘わらず、マスコミもなんの検証もしなかった。
▼今回、「任意性のない自白」の信用性を問う声が上がり、取り調べの録音・録画による「可視化」が論議されているが、この冤罪事件には警察、検察、裁判官、弁護士、マスコミすべてが加担していたのである。このままでは、始まったばかりの裁判員制度で一般市民まで冤罪の片棒を担がされてしまう可能性がある。
Friday, June 05, 2009
GMというアメリカン・ドリームの終わり
▼「華氏911」などのドキュメンタリーで知られるマイケル・ムーア監督のデビュー作品は「ロジャー&ミー」(89年制作)である。GM(ゼネラルモーターズ)の工場が閉鎖され、生まれ故郷ミシガン州フリントが崩壊の危機にあることを描いている。
▼非情な合理化を行うGMを徹底的に批判しているが、20年後にそのGMが倒産しようとは、当時のムーア監督も思わなかったに違いない。6月1日、GMは連邦倒産法第11章適用を申請、負債額1728億ドル(約17兆4千億円)を抱え経営破綻した。この額は製造業としては世界最大だ。
▼自動車産業は戦後米国の経済繁栄の象徴的存在だった。GMは米自動車ビッグスリーの中でも最大で、50年代には年10億ドル以上を稼ぐ米国最大の企業となった。だがその後は日本車などに押され長期没落傾向になる。
▼GM倒産の原因のひとつとして労務コストの高さが挙げられている。勤続30年余りとはいえ高卒でも年収10万ドルを超える従業員は珍しくない。手厚い福利厚生でも知られ、過去の従業員の退職年金や医療費負担が財務を圧迫した。
▼GMはブルーカラーにとって「アメリカンドリーム」だった。高卒でもコツコツ働けば車も家も持てる。「GMにとってよいことは米国にとって良いこと」(黄金時代の有名な文句)だった。
▼もちろん労務コストで倒産したわけではない。最大の理由は利益率の高いSUVなど大型車中心の販売戦略の失敗だ。またメーカーなのに財務畑出身者ばかりがトップに就き、現場を軽視。現場は日本車に比べ品質の劣るものを作るようになった。メーカーなのに「もの作り」を軽視した。
▼手厚い福利厚生など社会主義国ソ連に対抗しうる米国資本主義企業だったGMが、国と労働組合に所有され、再出発することになったのは歴史の皮肉である。最盛期の1986年に63万人以上いた米国内の人員は10分の1になる。
▼非情な合理化を行うGMを徹底的に批判しているが、20年後にそのGMが倒産しようとは、当時のムーア監督も思わなかったに違いない。6月1日、GMは連邦倒産法第11章適用を申請、負債額1728億ドル(約17兆4千億円)を抱え経営破綻した。この額は製造業としては世界最大だ。
▼自動車産業は戦後米国の経済繁栄の象徴的存在だった。GMは米自動車ビッグスリーの中でも最大で、50年代には年10億ドル以上を稼ぐ米国最大の企業となった。だがその後は日本車などに押され長期没落傾向になる。
▼GM倒産の原因のひとつとして労務コストの高さが挙げられている。勤続30年余りとはいえ高卒でも年収10万ドルを超える従業員は珍しくない。手厚い福利厚生でも知られ、過去の従業員の退職年金や医療費負担が財務を圧迫した。
▼GMはブルーカラーにとって「アメリカンドリーム」だった。高卒でもコツコツ働けば車も家も持てる。「GMにとってよいことは米国にとって良いこと」(黄金時代の有名な文句)だった。
▼もちろん労務コストで倒産したわけではない。最大の理由は利益率の高いSUVなど大型車中心の販売戦略の失敗だ。またメーカーなのに財務畑出身者ばかりがトップに就き、現場を軽視。現場は日本車に比べ品質の劣るものを作るようになった。メーカーなのに「もの作り」を軽視した。
▼手厚い福利厚生など社会主義国ソ連に対抗しうる米国資本主義企業だったGMが、国と労働組合に所有され、再出発することになったのは歴史の皮肉である。最盛期の1986年に63万人以上いた米国内の人員は10分の1になる。
Thursday, May 14, 2009
小沢代表辞任とネガティブキャンペーン
▼小沢一郎氏が、民主党代表を辞任した。小沢代表が公設秘書の起訴後も続投していることに「納得できない」人が71%に達した(読売新聞社の世論調査)というのでは致し方ないのだろう。しかし数字の信憑性はともかく、逮捕理由の「政治資金報告書の虚偽記載」がどうゆうものか、また「推定無罪」の段階であることを、その71%の人たちはどの程度分かっているだろうか。
▼ここにあるのは、“なにやらお上に起訴されたんだから、きっと悪い事をしているに違いない”という「大衆感覚」だろう。大手メディアですら“自民党以来の金権体質までは変えられず、最後に足をすくわれた”といった論調なのだから無理もない。
▼感じるのは陰謀説や「国策捜査」よりも米国の大統領選などでよく使われるネガティブキャンペーンとの類似だ。対立候補を叩くためあらゆるスキャンダルを探し出し、場合によってはありもしないことで誹謗・中傷する運動だ。
▼2000年の米大統領共和党候補予備選では、「マケインは黒人女性との間に婚外子を設けた(実際はバングララディッシュから養子)」などのデマが流された。清廉潔白な人柄で知られるマケイン候補は、あまりの卑劣なやり方に戦意消失、ブッシュ候補に敗北した。04年の大統領選挙でも、ベトナム軍歴をめぐるネガティブキャンペーンでケリー候補は支持率を落とした。
▼あまりの汚さに前回の大統領選では減ったが、選挙が人気取りであり投票である以上、こうしたことはついて回る。政権交代を目指すというが、本当に政権を取るつもりなら日本の民主党もこうしたことを学ぶ必要があるだろう。
▼それにしてもである。米国のネガティブキャンペーンでも検察特捜部といった国家権力が使われることはない。マスメディアは、何故この時期に秘書を逮捕・起訴したのかという検察への追及を怠った。国民はこのことにもっと疑問を持つべきだ。フェア(公平)でなければ民主主義ではない。
▼ここにあるのは、“なにやらお上に起訴されたんだから、きっと悪い事をしているに違いない”という「大衆感覚」だろう。大手メディアですら“自民党以来の金権体質までは変えられず、最後に足をすくわれた”といった論調なのだから無理もない。
▼感じるのは陰謀説や「国策捜査」よりも米国の大統領選などでよく使われるネガティブキャンペーンとの類似だ。対立候補を叩くためあらゆるスキャンダルを探し出し、場合によってはありもしないことで誹謗・中傷する運動だ。
▼2000年の米大統領共和党候補予備選では、「マケインは黒人女性との間に婚外子を設けた(実際はバングララディッシュから養子)」などのデマが流された。清廉潔白な人柄で知られるマケイン候補は、あまりの卑劣なやり方に戦意消失、ブッシュ候補に敗北した。04年の大統領選挙でも、ベトナム軍歴をめぐるネガティブキャンペーンでケリー候補は支持率を落とした。
▼あまりの汚さに前回の大統領選では減ったが、選挙が人気取りであり投票である以上、こうしたことはついて回る。政権交代を目指すというが、本当に政権を取るつもりなら日本の民主党もこうしたことを学ぶ必要があるだろう。
▼それにしてもである。米国のネガティブキャンペーンでも検察特捜部といった国家権力が使われることはない。マスメディアは、何故この時期に秘書を逮捕・起訴したのかという検察への追及を怠った。国民はこのことにもっと疑問を持つべきだ。フェア(公平)でなければ民主主義ではない。
Thursday, April 30, 2009
パンデミックと過剰反応
▼現在、世界中を揺るがしている豚インフルエンザ。世界保健機関(WHO)が警戒レベルを「フェーズ4」から世界的大流行(パンデミック)の一歩手前である「フェーズ5」に引き上げた。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。
Wednesday, April 15, 2009
核兵器を使った国の道義的責任
▼オバマ米大統領が5日、チェコの首都プラハで、国家の安全保障に占める核兵器の役割を減らし、「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と宣言、他の核保有国にも同調を求めた。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
Wednesday, April 01, 2009
「人工衛星」でも緊張する東アジア
▼自民党の菅義偉選対副委員長は28日、「米国から北朝鮮のミサイルの情報をもらっている。日米安全保障条約の信頼感の下で国民の生命と財産を守るのは当たり前だ。小沢氏でこの国を守れるのか」と語った。小沢民主党代表が在日米軍削減に言及したことについて語ったものだ。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
Saturday, March 14, 2009
「国策捜査」か「検察ファッショ」か
▼西松建設の違法献金問題で、民主党の小沢代表の事務所が東京地検特捜部に家宅捜査され、公設第1秘書の大久保隆規が逮捕された。政治資金規正法の厳格化を進め、自ら透明化してきた小沢代表だっただけに、皮肉である。共同通信社が7、8両日に実施した全国電話世論調査で、「小沢氏は代表を辞めた方がよい」との回答が61・1%と続投支持の28・9%を上回った。
▼だが、小沢代表が言う通り、この種の捜査では今まで強制捜査や逮捕が行なわれたことは一度もない。献金者の違法・脱法行為があった場合、献金を返し報告書の記載を修正すれば済んでいた。小沢は議員辞職しろとの声が自民党から出ないのは、そんなことになれば大半の自民党員が辞めなくてはならなくなるからだ。
▼西松の偽装献金と見られる4億8千万円のうち小沢氏へは2億円とされるが、残りの2億8万円は森喜朗、二階俊博、尾身幸次、藤井孝男らほとんどが自民党の議員への献金だ。検察は「時効が近かった」「額が大きかった」というが、それで納得する人はいまい。半年以内には総理大臣になるのはほぼ確実だった小沢代表に対し何故この時期か。「国策捜査」(民主党幹部)、「検察ファッショ」(亀井静香国民新党代表)という声が聞かれたのは無理もない。
▼漆間巌官房副長官(元警察庁長官)が「事件が自民党議員に波及しない」と述べたことが火に油を注いだ。自民と検察が結託した小沢潰しという疑惑だ。検察は世論の動きに反応してか、二階経済産業相ら自民党議員にも捜査を進め始めた。
▼小沢代表自らも語っているが、企業献金だという認識があったなら合法的に受け取れる政党支部を使えばいい話である。そもそも贈収賄を成立させるような権限が小沢氏とはいえ野党の政治家にあるのか。政治資金規正法違反しか問えないのであれば「検察の敗北」と批判にさらされるのは検察は分かっているはずだ。やはり誰かが検察をそそのかしたのだろうか。
▼だが、小沢代表が言う通り、この種の捜査では今まで強制捜査や逮捕が行なわれたことは一度もない。献金者の違法・脱法行為があった場合、献金を返し報告書の記載を修正すれば済んでいた。小沢は議員辞職しろとの声が自民党から出ないのは、そんなことになれば大半の自民党員が辞めなくてはならなくなるからだ。
▼西松の偽装献金と見られる4億8千万円のうち小沢氏へは2億円とされるが、残りの2億8万円は森喜朗、二階俊博、尾身幸次、藤井孝男らほとんどが自民党の議員への献金だ。検察は「時効が近かった」「額が大きかった」というが、それで納得する人はいまい。半年以内には総理大臣になるのはほぼ確実だった小沢代表に対し何故この時期か。「国策捜査」(民主党幹部)、「検察ファッショ」(亀井静香国民新党代表)という声が聞かれたのは無理もない。
▼漆間巌官房副長官(元警察庁長官)が「事件が自民党議員に波及しない」と述べたことが火に油を注いだ。自民と検察が結託した小沢潰しという疑惑だ。検察は世論の動きに反応してか、二階経済産業相ら自民党議員にも捜査を進め始めた。
▼小沢代表自らも語っているが、企業献金だという認識があったなら合法的に受け取れる政党支部を使えばいい話である。そもそも贈収賄を成立させるような権限が小沢氏とはいえ野党の政治家にあるのか。政治資金規正法違反しか問えないのであれば「検察の敗北」と批判にさらされるのは検察は分かっているはずだ。やはり誰かが検察をそそのかしたのだろうか。
Sunday, March 01, 2009
米国は日本の政権交代を織り込み済み?
▼クリントン国務長官は就任後初の訪問国に日本を選び、訪日した。このことを日本政府・外務省は「オバマ政権の日米同盟重視の姿勢が明らかになった」とした。また、オバマ政権は発足後初の外国要人として麻生首相をホワイトハウスに招いた。これも日米同盟重視の姿勢ということになるのだろう。
▼しかし、23日夜にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した首相を出迎えたのはボルーダ国務省儀典長代行だった。24日は大統領の議会演説とも重なったこともあるだろうが、両首脳による会談後の共同記者会見なども見送られ、大統領主催の会食もなかった。
▼クリントン長官は訪日中、小沢民主党代表に会ったが、これは長官が希望していたと言われている。国務長官が野党党首と会談するのは極めて珍しいことだ。
▼日米首脳会談について与党は、世界的経済危機への対応で合意したことなどを歓迎した。細田幹事長は「大変意義があった」と評価、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の包括的解決に関し「大統領も十分な認識を持っている」と強調した。
▼だが、民主党の小沢代表は「国民の信頼を失っている首相に、有効な外交交渉ができるわけがない」と断言。鳩山幹事長は「外国の首相として最も早く招かれたことに喜びすぎると、米国追随外交が始まる」と述べた。
▼経済危機を乗り切るために米国は大量の国債を発行せざるを得ず、それを引き受けてくれるのは日本と中国しかない。これに限らず日本との協力体制は不可欠には違いないが、麻生政権を支えているというイメージを避けているのは明白だ。日本の政権交代を織り込んで対応していると見て間違いない。
▼石破農水相すら「早く民意を問うべきだ」と述べている。支持率9・7%(日本テレビ調査)まで記録した麻生政権はいつまで続くのか。
▼しかし、23日夜にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した首相を出迎えたのはボルーダ国務省儀典長代行だった。24日は大統領の議会演説とも重なったこともあるだろうが、両首脳による会談後の共同記者会見なども見送られ、大統領主催の会食もなかった。
▼クリントン長官は訪日中、小沢民主党代表に会ったが、これは長官が希望していたと言われている。国務長官が野党党首と会談するのは極めて珍しいことだ。
▼日米首脳会談について与党は、世界的経済危機への対応で合意したことなどを歓迎した。細田幹事長は「大変意義があった」と評価、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の包括的解決に関し「大統領も十分な認識を持っている」と強調した。
▼だが、民主党の小沢代表は「国民の信頼を失っている首相に、有効な外交交渉ができるわけがない」と断言。鳩山幹事長は「外国の首相として最も早く招かれたことに喜びすぎると、米国追随外交が始まる」と述べた。
▼経済危機を乗り切るために米国は大量の国債を発行せざるを得ず、それを引き受けてくれるのは日本と中国しかない。これに限らず日本との協力体制は不可欠には違いないが、麻生政権を支えているというイメージを避けているのは明白だ。日本の政権交代を織り込んで対応していると見て間違いない。
▼石破農水相すら「早く民意を問うべきだ」と述べている。支持率9・7%(日本テレビ調査)まで記録した麻生政権はいつまで続くのか。
Thursday, February 26, 2009
政府紙幣という「打ち出の小槌」
▼オーストラリアで昨年末にスロットマシンに記録的な金額がつぎ込まれたことがこのほど判明した。同国政府は景気刺激策としてクリスマス前に年金受給者や低所得家庭など一時給付金を配ったが、カジノを潤しただけという批判が巻き起こった。
▼支給したのは1人当たり1000〜1400豪ドル(約6万〜8万3千円)。日本では一人1万2千円の定額給付金が決まったものの、どの程度経済効果があるのか疑問視されている。
▼もっと大規模にお金をばらまかねば景気浮揚策にはならないという声は強い。だが、財源はどうするのか。これ以上赤字国債を増やすわけにはいかない。
▼そこで注目を浴びているのが「政府紙幣」だ。硬貨は政府が発行しているが高額紙幣は日銀が発行している。これを政府が日銀とは別に景気対策の財源としての政府紙幣を発行しようというわけだ。
▼日銀の通貨供給では、例えば国債を購入する代金として日銀券を発行すると購入した国債の金利は、経費差し引いて最終的に政府に納付金として納められる。これが通貨発行益だ。しかし政府紙幣の場合は、発行額を政府の負債とする必要がないから、発行経費を差し引いた全額が政府の発行益となる。それを景気対策に活用しようというわけだ。
▼国債を発行せずに財政を賄えて資金供給量を増やせるというまさに「打ち出の小槌」。発行しすぎればハイパーインフレを起こす可能性があるが、デフレスパイラルに陥っている今の日本に心配は無用、むしろ需給ギャップを埋めることが求められていると、提唱者の一人、元財務官僚の高橋洋一東洋大教授(財政学)はその額、25兆円発行を提言している。
▼10年以上前から経済学者の丹羽春喜氏が提言し、ノーベル賞受賞の米経済学者スティグリッツ・コロンビア大教授も勧めているいる政府紙幣発行だが、政府は「取るに足らない話だ」(与謝野馨経済財政担当相)と応じる気配はない。
▼支給したのは1人当たり1000〜1400豪ドル(約6万〜8万3千円)。日本では一人1万2千円の定額給付金が決まったものの、どの程度経済効果があるのか疑問視されている。
▼もっと大規模にお金をばらまかねば景気浮揚策にはならないという声は強い。だが、財源はどうするのか。これ以上赤字国債を増やすわけにはいかない。
▼そこで注目を浴びているのが「政府紙幣」だ。硬貨は政府が発行しているが高額紙幣は日銀が発行している。これを政府が日銀とは別に景気対策の財源としての政府紙幣を発行しようというわけだ。
▼日銀の通貨供給では、例えば国債を購入する代金として日銀券を発行すると購入した国債の金利は、経費差し引いて最終的に政府に納付金として納められる。これが通貨発行益だ。しかし政府紙幣の場合は、発行額を政府の負債とする必要がないから、発行経費を差し引いた全額が政府の発行益となる。それを景気対策に活用しようというわけだ。
▼国債を発行せずに財政を賄えて資金供給量を増やせるというまさに「打ち出の小槌」。発行しすぎればハイパーインフレを起こす可能性があるが、デフレスパイラルに陥っている今の日本に心配は無用、むしろ需給ギャップを埋めることが求められていると、提唱者の一人、元財務官僚の高橋洋一東洋大教授(財政学)はその額、25兆円発行を提言している。
▼10年以上前から経済学者の丹羽春喜氏が提言し、ノーベル賞受賞の米経済学者スティグリッツ・コロンビア大教授も勧めているいる政府紙幣発行だが、政府は「取るに足らない話だ」(与謝野馨経済財政担当相)と応じる気配はない。
Saturday, January 31, 2009
オバマ就任演説は肩すかしか?
▼オバマ新大統領の就任式とパレードは大盛況だったが、就任演説にはちょっと肩すかしを食らった人も多かったようだ。「イスエ・ウィ・キャン」などはなく、これまでの熱狂をいさめるような印象を受けた人も多いだろう。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。
Tuesday, January 13, 2009
オバマ次期大統領に降りかかる国際的な危機
▼またしても中東が火を吹いた。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザのハマスへ空爆を開始、地上軍も投入し、女性や子どもなど民間人を多く含むパレスチナ人の死者は600人を超えた。イスラエルにも死者が出ている。国連などによる停戦調停は米国の拒否により芳しくない。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
Tuesday, January 06, 2009
資本主義は終わるのか?
▼イランのアフマディネジャド大統領は現下の世界的金融危機を「資本主義の終わりの始まりだ」と指摘した。19世紀中頃にカール・マルクスが資本主義の崩壊を予言して以来、大きな不況が来るたびに資本主義の危機が叫ばれた。
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
Saturday, December 13, 2008
チーム・オブ・ライバルズ
▼オバマ氏が勝利した米大統領選についてニューヨーク・タイムズの有名コラムニスト、トマス・フリードマンは「1863年にペンシルベニア州ゲティズバーグの戦いで大体のケリのついた南北戦争は145年後に同じ州の投票箱で完全に終了した」と書いた。
▼ブルーステート(民主党)とレッドステート(共和党)など、米国はまだ南北戦争の続きをやっているかのような対立の様相を示していたが、「国民融和」を掲げるオバマ氏の勝利で決着がついたというわけだ。
▼だが、8年にわたるブッシュ政権の負の遺産ともいうべきイラク戦争、金融危機、世界同時不況など難題が山積みである。
▼オバマ氏は選挙期間中から「民主党や無党派層、共和党を含む組閣人事を行うつもり」と言明していた。3日、商務長官にニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事を指名。これで、副大統領となるバイデン、国務長官に指名したヒラリー・クリントン上院議員と合わせ指名争いのライバルだった3人を政権に引き入れた。
▼オバマ氏はリンカーン第16代大統領を大変尊敬しており、愛読書のひとつに歴史学者ドリス・グッドウィンによるリンカーンの評伝『政敵が集まった政権(Team of Rivals)』がある。
▼大統領となったリンカーンは、予備選のライバルだった4人をそっくり主要閣僚(国務、財務、司法、陸軍長官)に起用する奇手を用いて、南北戦争という未曾有の国難を切り抜けたのである。
▼オバマ氏はこの「チーム・オブ・ライバルズ」に倣ったようだ。またゲーツ国防長官を留任させるなどオールスター布陣に閣内対立の懸念もあるが、「今は、世界で指導的立場にある米国にとり、21世紀の諸課題に立ち向かうための新たな夜明けの時期にある」と意に介さない。
▼ともすればイエスマンで固めたがる政権や組織は一度参考にするといいかも知れない。(武)
▼ブルーステート(民主党)とレッドステート(共和党)など、米国はまだ南北戦争の続きをやっているかのような対立の様相を示していたが、「国民融和」を掲げるオバマ氏の勝利で決着がついたというわけだ。
▼だが、8年にわたるブッシュ政権の負の遺産ともいうべきイラク戦争、金融危機、世界同時不況など難題が山積みである。
▼オバマ氏は選挙期間中から「民主党や無党派層、共和党を含む組閣人事を行うつもり」と言明していた。3日、商務長官にニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事を指名。これで、副大統領となるバイデン、国務長官に指名したヒラリー・クリントン上院議員と合わせ指名争いのライバルだった3人を政権に引き入れた。
▼オバマ氏はリンカーン第16代大統領を大変尊敬しており、愛読書のひとつに歴史学者ドリス・グッドウィンによるリンカーンの評伝『政敵が集まった政権(Team of Rivals)』がある。
▼大統領となったリンカーンは、予備選のライバルだった4人をそっくり主要閣僚(国務、財務、司法、陸軍長官)に起用する奇手を用いて、南北戦争という未曾有の国難を切り抜けたのである。
▼オバマ氏はこの「チーム・オブ・ライバルズ」に倣ったようだ。またゲーツ国防長官を留任させるなどオールスター布陣に閣内対立の懸念もあるが、「今は、世界で指導的立場にある米国にとり、21世紀の諸課題に立ち向かうための新たな夜明けの時期にある」と意に介さない。
▼ともすればイエスマンで固めたがる政権や組織は一度参考にするといいかも知れない。(武)
Tuesday, December 02, 2008
元厚生次官宅襲撃事件と裁判員制度
▼「おれがクビになったのは社会が悪いからだ。この国を動かしているのは官僚だ。官僚を何とかしてやろうと、職を失ったころ思った」
▼元厚生次官宅襲撃事件(4面に関連記事)で出頭した小泉毅容疑者(46)の弁である。34年前の「保健所に殺された犬の仇討ち」と主張するなど不可解な部分はいまだ多いが、不遇をかこった自分の社会に対する恨みからであることは間違いないだろう。
▼元厚生次官の次は文部次官が狙われるとインターネットで噂が広がった。29日、ブログに「文部科学省の局長らを一週間以内に順次、自宅で刺殺する」などと書き込んだとして、東京都に住む無職前田記宏容疑者(25)が脅迫容疑で逮捕された。
▼前田容疑者は東大卒業後、職がなく「理想を持って勉強してきたが、教科書の内容と違う現実があるのを知り文科省に詐欺をされたと感じた」などと供述しているという。
▼6月に秋葉原で起きた無差別殺傷事件(7人死亡、10人負傷)の加藤智大容疑者(25)は「勤務先のリストラ計画や処遇に不満があった。世の中が嫌になった。誰でもよかった」と供述した。
▼これらに共通するのは、社会や体制(官僚)に対する社会的脱落者の恨みだ。社会はこれにどう向き合えばいいのか。
▼そんな折、日本で来年5月より裁判員制度が始まる。最高裁は28日、各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を全国の約29万5千人に発送した。
▼有権者から無作為に選ばれた原則6人がプロの裁判官3人と審理するが、対象は殺人、強盗致傷など最高刑が死刑、無期懲役などの重大事件だけである。
▼今の日本の市民社会を否定する「テロ」を、これからは一般市民が裁くことになる。
▼元厚生次官宅襲撃事件(4面に関連記事)で出頭した小泉毅容疑者(46)の弁である。34年前の「保健所に殺された犬の仇討ち」と主張するなど不可解な部分はいまだ多いが、不遇をかこった自分の社会に対する恨みからであることは間違いないだろう。
▼元厚生次官の次は文部次官が狙われるとインターネットで噂が広がった。29日、ブログに「文部科学省の局長らを一週間以内に順次、自宅で刺殺する」などと書き込んだとして、東京都に住む無職前田記宏容疑者(25)が脅迫容疑で逮捕された。
▼前田容疑者は東大卒業後、職がなく「理想を持って勉強してきたが、教科書の内容と違う現実があるのを知り文科省に詐欺をされたと感じた」などと供述しているという。
▼6月に秋葉原で起きた無差別殺傷事件(7人死亡、10人負傷)の加藤智大容疑者(25)は「勤務先のリストラ計画や処遇に不満があった。世の中が嫌になった。誰でもよかった」と供述した。
▼これらに共通するのは、社会や体制(官僚)に対する社会的脱落者の恨みだ。社会はこれにどう向き合えばいいのか。
▼そんな折、日本で来年5月より裁判員制度が始まる。最高裁は28日、各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を全国の約29万5千人に発送した。
▼有権者から無作為に選ばれた原則6人がプロの裁判官3人と審理するが、対象は殺人、強盗致傷など最高刑が死刑、無期懲役などの重大事件だけである。
▼今の日本の市民社会を否定する「テロ」を、これからは一般市民が裁くことになる。
Thursday, November 13, 2008
南北戦争に終止符か
▼これほどまでに興奮を呼んで勝利した大統領候補はいただろうか。オバマ候補の勝利を祝福する著名人の声を紹介しよう。
▼政界からは、「昨日は紛れもなく非常に大きな前進だ。アフリカ系米国人として、特に誇りに思う」(ライス米国務長官)。破れたもののマケイン候補の弁は清々しかった。「米国は常に、努力する人に機会を与える国だ」。
▼オバマ支持者が多い映画界からは「今ほど自分の国を誇りに思ったことはないし、米国人であることを誇りに思う」(レオナルド・ディカプリオ)、「喜びで涙が止まらない。深い失望の時代に、希望がよみがえった」(マイケル・ムーア監督)。なお「セックス・アンド・ザ・シティ」主演のサラ・ジェシカ・パーカーはDCで選挙活動をボランティアで手伝ったそうだ。
▼音楽界も多い。敢えて黒人を外して二人。「歴史的な夜を共有出来て幸せです」(マドンナ)、「今まで公に選挙に関与したことはないが、オバマ氏という人間に鼓舞させられた」(ジャスティン・ティンバーレイク)。
▼テレビ界では「米国が正しいことをしたと思う。人々の意識に大きな変化が起こった」(オプラ・ウィンフリー)。スポーツ界からは、「(亡くなった)父はずっと、有色人種の大統領を夢見ていた」(タイガー・ウッズ)。
▼友好国は割愛する。宿敵イランは「あなたが国民の真の利益と正義を優先させることにより、名声を得ることを希望する」(アハマディネジャド大統領)。変わったところでは「イスラムの教えを共に信じよう」(イラクのアルカイダ系グループ「イラク・イスラム国」)。
▼「オバマ氏の勝利はケニアにとっての勝利でもある」と言ったのはオバマ氏の父親の故郷ケニアのキバキ大統領。6日を国民の祝日にしてしまった。
▼日本人もあげておこう。「ブッシュさんと違って環境問題にも熱心だし、頑張って欲しい」(選挙当日ニューヨークにいた女優の藤原紀香)。
▼政界からは、「昨日は紛れもなく非常に大きな前進だ。アフリカ系米国人として、特に誇りに思う」(ライス米国務長官)。破れたもののマケイン候補の弁は清々しかった。「米国は常に、努力する人に機会を与える国だ」。
▼オバマ支持者が多い映画界からは「今ほど自分の国を誇りに思ったことはないし、米国人であることを誇りに思う」(レオナルド・ディカプリオ)、「喜びで涙が止まらない。深い失望の時代に、希望がよみがえった」(マイケル・ムーア監督)。なお「セックス・アンド・ザ・シティ」主演のサラ・ジェシカ・パーカーはDCで選挙活動をボランティアで手伝ったそうだ。
▼音楽界も多い。敢えて黒人を外して二人。「歴史的な夜を共有出来て幸せです」(マドンナ)、「今まで公に選挙に関与したことはないが、オバマ氏という人間に鼓舞させられた」(ジャスティン・ティンバーレイク)。
▼テレビ界では「米国が正しいことをしたと思う。人々の意識に大きな変化が起こった」(オプラ・ウィンフリー)。スポーツ界からは、「(亡くなった)父はずっと、有色人種の大統領を夢見ていた」(タイガー・ウッズ)。
▼友好国は割愛する。宿敵イランは「あなたが国民の真の利益と正義を優先させることにより、名声を得ることを希望する」(アハマディネジャド大統領)。変わったところでは「イスラムの教えを共に信じよう」(イラクのアルカイダ系グループ「イラク・イスラム国」)。
▼「オバマ氏の勝利はケニアにとっての勝利でもある」と言ったのはオバマ氏の父親の故郷ケニアのキバキ大統領。6日を国民の祝日にしてしまった。
▼日本人もあげておこう。「ブッシュさんと違って環境問題にも熱心だし、頑張って欲しい」(選挙当日ニューヨークにいた女優の藤原紀香)。
Sunday, November 02, 2008
米国で暴動が起きる?
▼あまり表立って報道されていないようだが、10月1日より、州兵ではなく米陸軍の実戦部隊が米国内に展開されることとなった。名目はテロ対策だが、陸軍は市民が起こすかも知れない暴動の鎮圧訓練をするという。
▼米国史上初の黒人大統領が誕生するかも知れない大統領選を控え、全米各地で不穏な動きが広まっているのは事実だ。
▼ノースカロライナ州の大学のキャンパスに20日、頭を撃たれた黒い子グマの死骸が放置されていた。子グマにはオバマ氏のポスターが添えられた。オレゴン州の大学では、オバマ氏に似せた段ボール製の等身大人形が縛り首の状態で木にぶら下げられた。テネシー州では、銃不法所持などの疑いで逮捕された白人の若者二人が、オバマ氏の暗殺を計画していたことが27日、明らかになった。
▼一方、24日には、共和党のマケイン候補陣営の女性運動員(20)が、オバマ候補の支持者とみられる黒人男性に暴力をふるわれ、金を奪われたなどと虚偽の通報をする事件が起きた。
▼オバマ氏優位のまま大統領選を迎えるが、それだけにもしオバマ氏が破れれば黒人暴動の可能性も取沙汰される。オバマ氏が当選してもしなくても何かが起きる可能性があると、治安当局は警戒を強めているという。
▼これだけでない。大恐慌以来ともいわれる金融危機の問題だ。こちらの方がより深刻かも知れない。JPモルガン・チェース銀行の全米各地の支店や事業所には、白い粉入りを含む30通を超す脅迫状が送り付けられた。
▼ウォール街や大企業のエリートたちを救うために何故、庶民のなけなしの税金が使われなければならないのか、不満を募らせる者は少なくはないはずだ。
▼不況はすでに始まっている。貧困、失業、差別—。連邦政府への憎しみが渦巻き、武装したネオナチやミリシア(民兵)も多数存在する米国。多様な米国民をまとめ上げ希望の持てる社会にすることが次期大統領に求められている。(武)
▼米国史上初の黒人大統領が誕生するかも知れない大統領選を控え、全米各地で不穏な動きが広まっているのは事実だ。
▼ノースカロライナ州の大学のキャンパスに20日、頭を撃たれた黒い子グマの死骸が放置されていた。子グマにはオバマ氏のポスターが添えられた。オレゴン州の大学では、オバマ氏に似せた段ボール製の等身大人形が縛り首の状態で木にぶら下げられた。テネシー州では、銃不法所持などの疑いで逮捕された白人の若者二人が、オバマ氏の暗殺を計画していたことが27日、明らかになった。
▼一方、24日には、共和党のマケイン候補陣営の女性運動員(20)が、オバマ候補の支持者とみられる黒人男性に暴力をふるわれ、金を奪われたなどと虚偽の通報をする事件が起きた。
▼オバマ氏優位のまま大統領選を迎えるが、それだけにもしオバマ氏が破れれば黒人暴動の可能性も取沙汰される。オバマ氏が当選してもしなくても何かが起きる可能性があると、治安当局は警戒を強めているという。
▼これだけでない。大恐慌以来ともいわれる金融危機の問題だ。こちらの方がより深刻かも知れない。JPモルガン・チェース銀行の全米各地の支店や事業所には、白い粉入りを含む30通を超す脅迫状が送り付けられた。
▼ウォール街や大企業のエリートたちを救うために何故、庶民のなけなしの税金が使われなければならないのか、不満を募らせる者は少なくはないはずだ。
▼不況はすでに始まっている。貧困、失業、差別—。連邦政府への憎しみが渦巻き、武装したネオナチやミリシア(民兵)も多数存在する米国。多様な米国民をまとめ上げ希望の持てる社会にすることが次期大統領に求められている。(武)
Sunday, October 19, 2008
金融資本主義の終焉か
▼東京証券取引所一部の株式時価総額は、3日から10日までの一週間で約66兆円が消えた。欧米やアジア、新興国の株価も軒並み大幅下落、実体経済を脅かし、世界同時不況の様相が鮮明になった。
▼この1年で世界各地の株式市場で消えたお金は時価総額にしておよそ21兆ドル(2200兆円)以上。07年の世界全体のGDP(国内総生産)約54兆ドル(約5800兆円)の40%に匹敵する。一日1ドル以下で生活している10億人も入れた世界人口66億人で割ると、一人当たり約3300ドル(約35万円)を失ったことになる。
▼米国は金融安定化策による7千億ドル(約75兆円)の公的資金負担を決めた。米国一人当たり2300ドル、一世帯当たり6千ドルの税負担になるが、救済される米大手企業500社のCEO(最高経営責任者)の平均報酬は07年だけでも1280万ドル(約13億7千万円)、金融危機のきっかけをつくった米証券大手5社の経営者の過去5年間の報酬は計30億ドル(約3200億円)だ。
▼映画監督のマイケル・ムーア氏によれば、米富裕層上位400人の資産が、1億5千万人分の資産の半分に相当しており、救済経費は富裕者に負担させろと主張している。
▼米国がモノ作りを捨て、金融を国家戦略とした80年代以降、ドルの印刷機はフル回転し、過剰流動性が世界中で定着した。各国に一時の繁栄をもたらしたもののバブルはすべて崩壊した。
▼現在、世界の株式市場の規模は約7200兆円、債券市場が約5500兆円、そしてデリバティブの総額は約5京円である。実体経済(GDP)の10倍、決済に必要な金額の100倍ものお金が動いている。
▼お金はしばしば血液にたとえられる。血液の流れがよければ経済活動は活発になる。しかし体(実体経済)あっての血液(お金)なのだ。私たちは実体経済無視どころか、それを破壊する金融資本主義(=マネーゲーム)の終焉に立ち会っているのかも知れない。
▼この1年で世界各地の株式市場で消えたお金は時価総額にしておよそ21兆ドル(2200兆円)以上。07年の世界全体のGDP(国内総生産)約54兆ドル(約5800兆円)の40%に匹敵する。一日1ドル以下で生活している10億人も入れた世界人口66億人で割ると、一人当たり約3300ドル(約35万円)を失ったことになる。
▼米国は金融安定化策による7千億ドル(約75兆円)の公的資金負担を決めた。米国一人当たり2300ドル、一世帯当たり6千ドルの税負担になるが、救済される米大手企業500社のCEO(最高経営責任者)の平均報酬は07年だけでも1280万ドル(約13億7千万円)、金融危機のきっかけをつくった米証券大手5社の経営者の過去5年間の報酬は計30億ドル(約3200億円)だ。
▼映画監督のマイケル・ムーア氏によれば、米富裕層上位400人の資産が、1億5千万人分の資産の半分に相当しており、救済経費は富裕者に負担させろと主張している。
▼米国がモノ作りを捨て、金融を国家戦略とした80年代以降、ドルの印刷機はフル回転し、過剰流動性が世界中で定着した。各国に一時の繁栄をもたらしたもののバブルはすべて崩壊した。
▼現在、世界の株式市場の規模は約7200兆円、債券市場が約5500兆円、そしてデリバティブの総額は約5京円である。実体経済(GDP)の10倍、決済に必要な金額の100倍ものお金が動いている。
▼お金はしばしば血液にたとえられる。血液の流れがよければ経済活動は活発になる。しかし体(実体経済)あっての血液(お金)なのだ。私たちは実体経済無視どころか、それを破壊する金融資本主義(=マネーゲーム)の終焉に立ち会っているのかも知れない。
Tuesday, September 30, 2008
アメリカ後の世界
▼現下の金融危機について、多くの専門家が「世界大恐慌以降最大の危機」とまで語っている。ドルの一極支配体制の終焉や米政府の財政破綻まで取り沙汰されている。加えてイラク戦争の泥沼化、イラン問題、米ロの確執といった不安定要素がうごめいている。唯一の超大国の没落を指摘する声は多い。
▼米国はどうなっていくのか。これに答えたものとして、「ニューズウィーク」国際版の編集長であるファリード・ザカリア氏が”The Post-American World”(アメリカ後の世界)という本を今春出している(徳間書店より邦訳予定)。
▼同氏は、米国の没落ではなく、他の国が台頭していると認識すべきで、「アメリカ後の世界」は「かつてない平和と繁栄ムードに満ちた国際社会」になると言う。実際、80年代以降、戦争は減少し組織的暴力は50年代以降で最低レベル、世界人口の8割の国々で貧困が減少しているという。
▼にもかかわらず何故、人は現在を恐ろしい時代だと感じるのか。それは情報革命で情報量が爆発的に増大したこどが大きいと言う。中国やロシアがアメリカに敵対姿勢を取ったところで、その脅威の程度は知れている、BRICS(ブリクス=ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国は、過去の大国(米英仏独日など)に比べれば穏健であり、既存の国際秩序の中で豊かさをもとめようとしていると指摘する。イスラム原理主義も影響力を増してはおらず、冷静に対応すべきと主張する。
▼米国が影響力を行使できる範囲は狭まるが、米国の強さの源泉は移民であり、内向きになってはいけない。国際社会のプレイヤーが増えて多様化していることへの新しい国際協調の枠組みが必要で、米国が世界の先導役であり続けるなら、ルールの順守が欠かせない。そうすれば21世紀は再び「アメリカの世紀」となるというものだ。
▼世界の多極化を肯定的に捉えたものだが、イラン侵攻、米ロ冷戦など、力に頼った方法で米国の優位を保とうとする勢力もあるのではなかろうか。
▼米国はどうなっていくのか。これに答えたものとして、「ニューズウィーク」国際版の編集長であるファリード・ザカリア氏が”The Post-American World”(アメリカ後の世界)という本を今春出している(徳間書店より邦訳予定)。
▼同氏は、米国の没落ではなく、他の国が台頭していると認識すべきで、「アメリカ後の世界」は「かつてない平和と繁栄ムードに満ちた国際社会」になると言う。実際、80年代以降、戦争は減少し組織的暴力は50年代以降で最低レベル、世界人口の8割の国々で貧困が減少しているという。
▼にもかかわらず何故、人は現在を恐ろしい時代だと感じるのか。それは情報革命で情報量が爆発的に増大したこどが大きいと言う。中国やロシアがアメリカに敵対姿勢を取ったところで、その脅威の程度は知れている、BRICS(ブリクス=ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国は、過去の大国(米英仏独日など)に比べれば穏健であり、既存の国際秩序の中で豊かさをもとめようとしていると指摘する。イスラム原理主義も影響力を増してはおらず、冷静に対応すべきと主張する。
▼米国が影響力を行使できる範囲は狭まるが、米国の強さの源泉は移民であり、内向きになってはいけない。国際社会のプレイヤーが増えて多様化していることへの新しい国際協調の枠組みが必要で、米国が世界の先導役であり続けるなら、ルールの順守が欠かせない。そうすれば21世紀は再び「アメリカの世紀」となるというものだ。
▼世界の多極化を肯定的に捉えたものだが、イラン侵攻、米ロ冷戦など、力に頼った方法で米国の優位を保とうとする勢力もあるのではなかろうか。
Sunday, September 14, 2008
いつまで経っても暫定政権?
▼洞爺湖サミットに参加したブッシュ米大統領は、よもや福田首相が自分より先に辞めるとは思いもしなかっただろう。内閣改造をしておいて、いきなりの辞任である。
▼前の安倍首相に続き、福田首相も1年ほどで政権を放り投げた。国のトップである首相の立場は、確かに本人でなければ分からないプレッシャーもあるだろうが、無責任のそしりは免れない。二世議員の脆弱さを指摘する声も多い。
▼もっとも支持率がどんなに低迷しても、任期いっぱいは辞めることはない米大統領に比べれば、退陣が簡単に出来る日本の議院内閣制は、刷新や出直しがやりやすいというメリットもある。
▼しかしここはやはり、解散し民意を問うべきだろう。だが、いま選挙をしては惨敗すると見込み、自民・公明与党はずるずると無理な政権を続けている。
▼ポスト福田の自民党総裁選には最有力の麻生太郎幹事長(67)はじめ5人も立候補した。与謝野馨経済財政担当相(70)といった重鎮や、石破茂前防衛相(51)、石原伸晃元政調会長(51)といった若手、さらに女性の小池百合子元防衛相(56)だ。なにやら賑やかな総裁選に目を奪われがちだが、あくまでも自民党関係者による選挙である。
▼与謝野氏が総裁・首相になれば、小沢・民主党との大連立も可能との噂もある。その先に待っているのは憲法改正だろう。しかし、ここはやはり人気のある麻生氏が選ばれ、麻生内閣で次の解散・総選挙に臨む可能性が高い。ちなみに麻生氏も二世議員である。
▼選挙に勝てる状況になるまではと、いつまで経っても「暫定政権」、たらい回しである。これでは有権者無視だ。憲法改正よりも先にやらなければならないことは多い。自民・公明にそれが出来なければ、さっさと政権交代すべきだろう。(武)
▼前の安倍首相に続き、福田首相も1年ほどで政権を放り投げた。国のトップである首相の立場は、確かに本人でなければ分からないプレッシャーもあるだろうが、無責任のそしりは免れない。二世議員の脆弱さを指摘する声も多い。
▼もっとも支持率がどんなに低迷しても、任期いっぱいは辞めることはない米大統領に比べれば、退陣が簡単に出来る日本の議院内閣制は、刷新や出直しがやりやすいというメリットもある。
▼しかしここはやはり、解散し民意を問うべきだろう。だが、いま選挙をしては惨敗すると見込み、自民・公明与党はずるずると無理な政権を続けている。
▼ポスト福田の自民党総裁選には最有力の麻生太郎幹事長(67)はじめ5人も立候補した。与謝野馨経済財政担当相(70)といった重鎮や、石破茂前防衛相(51)、石原伸晃元政調会長(51)といった若手、さらに女性の小池百合子元防衛相(56)だ。なにやら賑やかな総裁選に目を奪われがちだが、あくまでも自民党関係者による選挙である。
▼与謝野氏が総裁・首相になれば、小沢・民主党との大連立も可能との噂もある。その先に待っているのは憲法改正だろう。しかし、ここはやはり人気のある麻生氏が選ばれ、麻生内閣で次の解散・総選挙に臨む可能性が高い。ちなみに麻生氏も二世議員である。
▼選挙に勝てる状況になるまではと、いつまで経っても「暫定政権」、たらい回しである。これでは有権者無視だ。憲法改正よりも先にやらなければならないことは多い。自民・公明にそれが出来なければ、さっさと政権交代すべきだろう。(武)
Friday, September 05, 2008
大統領選のダイナミズム
▼コロラド州デンバーの7万5000人収容の巨大競技場は超満員となった。米史上初の黒人大統領を目指すオバマ上院議員の指名受諾演説を聞くためだ。
▼共同の記事から参加者の声を拾ってみよう。オバマ氏の指名について「生きているうちにこんなことが現実になるとは思わなかった」(六十代の黒人男性)、昔は白人の隣でハンバーガーを食べることもできなかったと言う。二十代のある白人女性は「オバマ氏は私たちの世代を政治に目覚めさせた」と語る。
▼「米国よ、我々は今よりもっと良い国のはずだ」。オバマ氏が呼び掛けるたびに、巨大なスタジアムが地響きを上げて揺れた。
▼だがオバマ氏にひところの勢いはない。オバマ氏の訴える「変革」はあいまいという声は多い。外交・安全保障問題に疎いとされ、副大統領候補に、この方面に強い民主党の重鎮バイデン上院議員(65)を選んだが、ワシントンの政治にどっぷりつかっている人物でもある。
▼一方、共和党大統領候補のマケイン氏は、ロシアのグルジア侵攻で直ちにロシアを批判するなど存在感を示した。副大統領候補には女性のペイリン・アラスカ州知事(44)を選んだ。ペイリン氏は民主党指名争いに敗れたヒラリー上院議員(60)を讃え、「彼女が破ろうとしたガラスの天井は頑丈だったが、われわれは砕くことができる」と、女性初の副大統領の意義を強調、ヒラリー支持者の取り込みを図っている。
▼もっともペイリン氏は人工妊娠中絶に反対など保守派であり、外交経験は皆無、女性だからといってヒラリー支持者を取り込めるかは未知数だ。宗教保守派に不人気のマケイン氏をカバーするために担ぎだされたと見るべきだろう。
▼それにしても1年前には想定できなかった正副大統領候補4人である。ここに感じるのは米国の民主主義のダイナミズムであり、どうやらそれは人々の控えめな思惑を超えて前進していくもののようだ。(武)
▼共同の記事から参加者の声を拾ってみよう。オバマ氏の指名について「生きているうちにこんなことが現実になるとは思わなかった」(六十代の黒人男性)、昔は白人の隣でハンバーガーを食べることもできなかったと言う。二十代のある白人女性は「オバマ氏は私たちの世代を政治に目覚めさせた」と語る。
▼「米国よ、我々は今よりもっと良い国のはずだ」。オバマ氏が呼び掛けるたびに、巨大なスタジアムが地響きを上げて揺れた。
▼だがオバマ氏にひところの勢いはない。オバマ氏の訴える「変革」はあいまいという声は多い。外交・安全保障問題に疎いとされ、副大統領候補に、この方面に強い民主党の重鎮バイデン上院議員(65)を選んだが、ワシントンの政治にどっぷりつかっている人物でもある。
▼一方、共和党大統領候補のマケイン氏は、ロシアのグルジア侵攻で直ちにロシアを批判するなど存在感を示した。副大統領候補には女性のペイリン・アラスカ州知事(44)を選んだ。ペイリン氏は民主党指名争いに敗れたヒラリー上院議員(60)を讃え、「彼女が破ろうとしたガラスの天井は頑丈だったが、われわれは砕くことができる」と、女性初の副大統領の意義を強調、ヒラリー支持者の取り込みを図っている。
▼もっともペイリン氏は人工妊娠中絶に反対など保守派であり、外交経験は皆無、女性だからといってヒラリー支持者を取り込めるかは未知数だ。宗教保守派に不人気のマケイン氏をカバーするために担ぎだされたと見るべきだろう。
▼それにしても1年前には想定できなかった正副大統領候補4人である。ここに感じるのは米国の民主主義のダイナミズムであり、どうやらそれは人々の控えめな思惑を超えて前進していくもののようだ。(武)
Thursday, August 14, 2008
米ロ新冷戦勃発
▼平和の祭典である北京オリンピック開会式直前に、グルジアの南オセチア自治州で戦争が始まった。グルジアのサーカシビリ大統領は「ロシア軍はグルジアを侵略した」と非難、米国のニュースを見ていると、いかにも大国ロシアが一方的に軍事介入したかのようである。
▼しかし、停戦合意を破り戦争を始めたのはグルジア軍である。グルジアからの分離独立を主張する親ロシアの南オセチア自治州の州都ツヒンバリ周辺をグルジア軍が攻撃したのが端緒だ。ロシアは平和維持軍が攻撃を受けたため、反撃に出たのが実際だ。
▼南オセチアは92年の国民投票で9割以上が独立を支持して以降、憲法や国会が制定され、大統領もいて事実上独立している。だがグルジアはもちろん、国際社会は認めてこなかった。南オセチアの独立を阻止したいグルジアだが、何故この時期にグルジアは進撃したのか?
▼それは今年2月のセルビアのコソボ自治州の独立宣言だろう。欧米諸国は相次いで承認した。実質的に独立していれば、独立は可能との前例が出来たのだ。
▼グルジアが焦ったのはそこだろう。皮肉なことに「国際秩序の崩壊を招く前例となる」と、コソボの独立に反対したのが南オセチアを支援するロシアである。
▼シェワルナゼ前大統領を追放したサーカシビリ大統領ら現政権は、投資家のジョージ・ソロスなど米国の後ろ盾で成立したいわば米国の「傀儡政権」。今回のグルジア軍の南オセチア進攻も米国の承認のもと行われたと思われる。
▼背後にあるのは資源や経済、地政学的な面も含めた米ロの覇権争いであり、事実上の米ロ代理戦争なのである。米大統領選も絡んでいる可能性もある。そこで、サルコジ仏大統領が事実上の仲介役としてモスクワを訪問することになったわけである。
▼だがいまさら米ロ冷戦の再来でもないだろう。この新冷戦は旧大国の起死回生を狙ったあがきに思える。(武)
▼しかし、停戦合意を破り戦争を始めたのはグルジア軍である。グルジアからの分離独立を主張する親ロシアの南オセチア自治州の州都ツヒンバリ周辺をグルジア軍が攻撃したのが端緒だ。ロシアは平和維持軍が攻撃を受けたため、反撃に出たのが実際だ。
▼南オセチアは92年の国民投票で9割以上が独立を支持して以降、憲法や国会が制定され、大統領もいて事実上独立している。だがグルジアはもちろん、国際社会は認めてこなかった。南オセチアの独立を阻止したいグルジアだが、何故この時期にグルジアは進撃したのか?
▼それは今年2月のセルビアのコソボ自治州の独立宣言だろう。欧米諸国は相次いで承認した。実質的に独立していれば、独立は可能との前例が出来たのだ。
▼グルジアが焦ったのはそこだろう。皮肉なことに「国際秩序の崩壊を招く前例となる」と、コソボの独立に反対したのが南オセチアを支援するロシアである。
▼シェワルナゼ前大統領を追放したサーカシビリ大統領ら現政権は、投資家のジョージ・ソロスなど米国の後ろ盾で成立したいわば米国の「傀儡政権」。今回のグルジア軍の南オセチア進攻も米国の承認のもと行われたと思われる。
▼背後にあるのは資源や経済、地政学的な面も含めた米ロの覇権争いであり、事実上の米ロ代理戦争なのである。米大統領選も絡んでいる可能性もある。そこで、サルコジ仏大統領が事実上の仲介役としてモスクワを訪問することになったわけである。
▼だがいまさら米ロ冷戦の再来でもないだろう。この新冷戦は旧大国の起死回生を狙ったあがきに思える。(武)
Sunday, August 03, 2008
「タクシー・ドライバー」とヘイト・クライム
▼マーティン・スコセッシ監督の「タクシー・ドライバー」という1976年公開の傑作映画がある。ベトナム戦争の帰還兵で不眠症に陥り、マンハッタンのタクシー運転手となった男(ロバート・デ・ニーロ)が主人公だ。
▼男は失恋を経て、腐敗したこの街を浄化してやると次期大統領候補射殺を目論むが失敗する。その代わりでもないが13歳の売春婦(ジュディー・フォスター)を救うべく、ヒモやチンピラ、客を多数射殺する。
▼テネシー州ノックスビルの教会で7月27日、男(58)が銃を乱射し2人が死亡する事件が起きた。警察によれば、男は散弾76発を用意、「大量殺人を目論み、自身も生きて教会を出るつもりはなかったとみられる」という。
▼事件のあった教会はプロテスタントの一派、ユニテリアン派で、人種差別撤廃、女性や同性愛者の権利向上などリベラルな活動で知られていた。警察は「職を得られないいらだちをリベラル派に向けた犯行」と指摘、「憎悪犯罪(ヘイト・クライム)」と見ている。
▼6月8日の7人が死亡した葉原通り魔事件はどうだろう。加藤智大容疑者(25)は恋人や友達が出来ず、また派遣社員としての不満を募らせていた。彼の矛先はゲーム好きの自身ともなじみのある秋葉原に集う一般市民だった。
▼タクシー・ドライバーでは主人公は支配の象徴でもある大統領候補を狙い、次に犯罪人たちを射殺した。だが、ノックスビルの教会や秋葉原で犠牲になった人たちは権力者でも犯罪者でもない。憎悪犯罪というが彼らは方法以前に標的自体が間違っている。池田小事件同様、実際には「弱いもの」を相手にしているに過ぎない。
▼犯罪人たちを射殺した映画のタクシー・ドライバーは、本人の意図とは裏腹に町の「英雄」となる。だが無差別テロに走る過激派と同じく、間違っても加藤容疑者らが英雄になることはない。
▼男は失恋を経て、腐敗したこの街を浄化してやると次期大統領候補射殺を目論むが失敗する。その代わりでもないが13歳の売春婦(ジュディー・フォスター)を救うべく、ヒモやチンピラ、客を多数射殺する。
▼テネシー州ノックスビルの教会で7月27日、男(58)が銃を乱射し2人が死亡する事件が起きた。警察によれば、男は散弾76発を用意、「大量殺人を目論み、自身も生きて教会を出るつもりはなかったとみられる」という。
▼事件のあった教会はプロテスタントの一派、ユニテリアン派で、人種差別撤廃、女性や同性愛者の権利向上などリベラルな活動で知られていた。警察は「職を得られないいらだちをリベラル派に向けた犯行」と指摘、「憎悪犯罪(ヘイト・クライム)」と見ている。
▼6月8日の7人が死亡した葉原通り魔事件はどうだろう。加藤智大容疑者(25)は恋人や友達が出来ず、また派遣社員としての不満を募らせていた。彼の矛先はゲーム好きの自身ともなじみのある秋葉原に集う一般市民だった。
▼タクシー・ドライバーでは主人公は支配の象徴でもある大統領候補を狙い、次に犯罪人たちを射殺した。だが、ノックスビルの教会や秋葉原で犠牲になった人たちは権力者でも犯罪者でもない。憎悪犯罪というが彼らは方法以前に標的自体が間違っている。池田小事件同様、実際には「弱いもの」を相手にしているに過ぎない。
▼犯罪人たちを射殺した映画のタクシー・ドライバーは、本人の意図とは裏腹に町の「英雄」となる。だが無差別テロに走る過激派と同じく、間違っても加藤容疑者らが英雄になることはない。
Friday, July 18, 2008
支持率低迷の首脳らが集まったG8
▼G8=主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が終わった。閉幕を受け実施した共同通信社の全国電話世論調査で、福田内閣の支持率は26・8%と、前回6月調査の25・0%に並ぶ横ばいとなった。サミットによる政権浮揚効果はなかった。不支持率も依然50%台と高い水準のままだ。
▼26・8%で国の代表と言えるのかという声が上がりそうだが、サミット参加国の他の首脳はどうだろうか? サミット開幕時にAFPが各国の報道機関の世論調査をもとに8カ国首脳の支持率を一覧にして報道した。これによると福田首相22%(内閣支持率、産経新聞・フジテレビ6月14〜15日)、ブッシュ米大統領が23%、ブラウン英首相が25%、ハーパー・カナダ首相32%、メルケル独首相36%、サルコジ仏大統領38%、ベルルスコーニ伊首相59%、メドベージェフ露大統領73%である。
▼福田首相が堂々の最低なのだが、ブッシュ大統領、ブラウン首相も3割に届いていない。世論調査だけでは判断は出来ないが、これで国の代表と言えるのだろうか。
▼サミットではこれといった大きな成果はなかった。最大の焦点であった2050年までに世界全体で温室効果ガスを半減させる地球温暖化対策の長期目標については、世界全体で「共有することを目指す」との表現にとどまった。京都議定書に続く新国際枠組みの交渉は前途多難だ。
▼中国やインドが加わらなければ実効性に欠けると主張してきたブッシュ大統領の意見の方が通った格好だ。その通り、すでにG8で世界的な政策を決めること自体が時代にそぐわなくなっているのだ。
▼世界の勢力地図は大きく変わった上に、たった8カ国で、しかも支持率3〜4割の首脳らが集まって何を決めるというのか。支持率低迷にあえぐ福田首相の人気取りにも使えなくなったことが、その限界を如実に物語っていると言えよう。
▼26・8%で国の代表と言えるのかという声が上がりそうだが、サミット参加国の他の首脳はどうだろうか? サミット開幕時にAFPが各国の報道機関の世論調査をもとに8カ国首脳の支持率を一覧にして報道した。これによると福田首相22%(内閣支持率、産経新聞・フジテレビ6月14〜15日)、ブッシュ米大統領が23%、ブラウン英首相が25%、ハーパー・カナダ首相32%、メルケル独首相36%、サルコジ仏大統領38%、ベルルスコーニ伊首相59%、メドベージェフ露大統領73%である。
▼福田首相が堂々の最低なのだが、ブッシュ大統領、ブラウン首相も3割に届いていない。世論調査だけでは判断は出来ないが、これで国の代表と言えるのだろうか。
▼サミットではこれといった大きな成果はなかった。最大の焦点であった2050年までに世界全体で温室効果ガスを半減させる地球温暖化対策の長期目標については、世界全体で「共有することを目指す」との表現にとどまった。京都議定書に続く新国際枠組みの交渉は前途多難だ。
▼中国やインドが加わらなければ実効性に欠けると主張してきたブッシュ大統領の意見の方が通った格好だ。その通り、すでにG8で世界的な政策を決めること自体が時代にそぐわなくなっているのだ。
▼世界の勢力地図は大きく変わった上に、たった8カ国で、しかも支持率3〜4割の首脳らが集まって何を決めるというのか。支持率低迷にあえぐ福田首相の人気取りにも使えなくなったことが、その限界を如実に物語っていると言えよう。
Monday, June 30, 2008
拉致解決より国交正常化が先?
▼日朝協議で北朝鮮が拉致被害者の再調査と、よど号ハイジャック犯の引き渡しに向けて協力すると表明、日本政府は制裁緩和を打ち出したが、この裏には大きな米朝の動きがあった。六月二十六日、北朝鮮は六カ国協議合意に基づく核計画申告書を議長国の中国に提出、ブッシュ米大統領は同日、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を議会に通告すると表明した。
▼拉致被害者家族には「裏切られた」と失望の声が広がっている。米国にテロ国家指定解除をしないよう働き掛けることを町村信孝官房長官に要請したばかりだったからだ。
▼北朝鮮に対し「拉致解決なくして国交正常化なし」(小泉元首相)で臨んできた日本だが、拉致問題は「究極的には日朝二国間問題」(米政府高官)であり、世界の関心は核問題の方である。米国がしびれを切らして動き出してしまった。
▼北朝鮮は拉致問題は終了したという立場だったが「再調査」とは何か? 拉致被害者は救出されるのか? 「我々が知らないところで侵入した日本人がいれば本人確認をした上で、罪を問わず日本に返す」とは北朝鮮が以前から言ってきたことだ。よど号犯についても、実は目新しいものではない。
▼核問題が解決したら、日本と米国は北朝鮮と国交正常化することが二〇〇五年の六カ国協議で合意されている。国交正常化を待ち望んでいる国は多い。北朝鮮のウラン、レアメタルなどを狙う米、ロシア、エネルギー資源を開発したい中国、貿易拡大で景気浮揚を狙う韓国と、日本を除く六カ国協議の各国経済界はすでに活発に動き始めている。そして、六カ国協議は「北東アジアの集団安全保障体制へと発展する」(ライス国務長官)という。
▼こうして見ると、日本だけが後手に回っている感は否めない。ここに来て拉致解決より国交正常化が先になったということか。対米従属で済んだ時代が終わる中、日本の外交の真価が問われている。
▼拉致被害者家族には「裏切られた」と失望の声が広がっている。米国にテロ国家指定解除をしないよう働き掛けることを町村信孝官房長官に要請したばかりだったからだ。
▼北朝鮮に対し「拉致解決なくして国交正常化なし」(小泉元首相)で臨んできた日本だが、拉致問題は「究極的には日朝二国間問題」(米政府高官)であり、世界の関心は核問題の方である。米国がしびれを切らして動き出してしまった。
▼北朝鮮は拉致問題は終了したという立場だったが「再調査」とは何か? 拉致被害者は救出されるのか? 「我々が知らないところで侵入した日本人がいれば本人確認をした上で、罪を問わず日本に返す」とは北朝鮮が以前から言ってきたことだ。よど号犯についても、実は目新しいものではない。
▼核問題が解決したら、日本と米国は北朝鮮と国交正常化することが二〇〇五年の六カ国協議で合意されている。国交正常化を待ち望んでいる国は多い。北朝鮮のウラン、レアメタルなどを狙う米、ロシア、エネルギー資源を開発したい中国、貿易拡大で景気浮揚を狙う韓国と、日本を除く六カ国協議の各国経済界はすでに活発に動き始めている。そして、六カ国協議は「北東アジアの集団安全保障体制へと発展する」(ライス国務長官)という。
▼こうして見ると、日本だけが後手に回っている感は否めない。ここに来て拉致解決より国交正常化が先になったということか。対米従属で済んだ時代が終わる中、日本の外交の真価が問われている。
Monday, June 16, 2008
秋葉原・通り魔事件
▼日本で米国並みの無差別大量殺人事件が起きた。8日午後0時30分過ぎ、東京・秋葉原の歩行者天国で、男が通行人をトラックではねた後、ナイフで刺す無差別殺傷事件がおき、男性6人と女性1人が死亡、10人が負傷した。
▼米国では大量無差別殺人が断続的に起きているが、日本でまたしても起きた。2001年の8人の児童が殺害された大阪教育大付属池田小事件と同じ日であったのは偶然なのか? 9日付のワシントン・ポスト紙は「現場には血だまりが残り、まるで戦場のようだ」と報じる記事を掲載した。
▼犯人は静岡県裾野市の派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)。職場での不満があったというが、殺すのは「誰でもよかった」と供述、薬物や精神疾患などはなく、計画的犯行であることが分かってきている。
▼それにしてもトラックで乗り付けたとはいえ、銃を使ったわけでもなく大人相手に何故17人もの死傷者を出したのか。駆け付けた警察官も刺されているが、警察はすぐに止められなかったのだろうか?
▼もっとも現場では、状況をのみ込めない人も多く、映画の撮影やゲームの安売りにでも客が殺到したのかと思った人も多数いたらしい。
▼犯人は警察官ともみあい、最後は拳銃をつきつけられ観念した。この間、わずか数分、東西約100メートル、南北約70メートルの中での出来事だった。
▼驚くべきは、犯行に使ったサバイバルナイフの高い殺傷力である。包丁ではこうはいかないはずだ。銃と同じように管理・規制が必要ではないか。
▼鳩山法相は「昨日も大事件があったが、人の命を奪うような人にはそれなりのものを負ってもらおう」と死刑制度の必要性を訴えたが、相次ぐ死刑執行でも殺人の抑止力にはなっていないことが、また分かっただけではないのか。
▼池田小事件事件では「早く死刑にしてくれ」と犯人の宅間守はうそぶき、望み通り早期に死刑になった。今回は世界に冠たる電気製品とアニメなど日本のポップカルチャーで知られるアキバで起きた。闇は深い。(武)
▼米国では大量無差別殺人が断続的に起きているが、日本でまたしても起きた。2001年の8人の児童が殺害された大阪教育大付属池田小事件と同じ日であったのは偶然なのか? 9日付のワシントン・ポスト紙は「現場には血だまりが残り、まるで戦場のようだ」と報じる記事を掲載した。
▼犯人は静岡県裾野市の派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)。職場での不満があったというが、殺すのは「誰でもよかった」と供述、薬物や精神疾患などはなく、計画的犯行であることが分かってきている。
▼それにしてもトラックで乗り付けたとはいえ、銃を使ったわけでもなく大人相手に何故17人もの死傷者を出したのか。駆け付けた警察官も刺されているが、警察はすぐに止められなかったのだろうか?
▼もっとも現場では、状況をのみ込めない人も多く、映画の撮影やゲームの安売りにでも客が殺到したのかと思った人も多数いたらしい。
▼犯人は警察官ともみあい、最後は拳銃をつきつけられ観念した。この間、わずか数分、東西約100メートル、南北約70メートルの中での出来事だった。
▼驚くべきは、犯行に使ったサバイバルナイフの高い殺傷力である。包丁ではこうはいかないはずだ。銃と同じように管理・規制が必要ではないか。
▼鳩山法相は「昨日も大事件があったが、人の命を奪うような人にはそれなりのものを負ってもらおう」と死刑制度の必要性を訴えたが、相次ぐ死刑執行でも殺人の抑止力にはなっていないことが、また分かっただけではないのか。
▼池田小事件事件では「早く死刑にしてくれ」と犯人の宅間守はうそぶき、望み通り早期に死刑になった。今回は世界に冠たる電気製品とアニメなど日本のポップカルチャーで知られるアキバで起きた。闇は深い。(武)
Sunday, June 01, 2008
四川大地震と東京
▼5月12日に中国を襲った四川大地震。中国国務院(政府)は27日時点で、地震の死者は6万7183人、負傷者36万1822人、行方不明2万790人と発表、1976年に約24万2千人が死亡した唐山地震以来、最悪の地震となった。
▼依然、余震も続いており、地震で破損した千を超す一般ダムの決壊も懸念されている。「唐家山・土砂ダム」では全面決壊の恐れが生じた場合、下流の130万人を避難させることを地元当局が決めたという。
▼今回、中国のメディアはチベット争乱の時のような規制はなく、現地からの報道を次々に流した。中国政府の対応も早く、発生当日夜には温家宝首相が現地入りし「地震災害対策本部」を設置している。国家の威信をかけた聖火リレーも一時中止した。
▼中国政府によると、国内外からの支援金、支援物資は26日までに308億7600万元(約4600億円)相当に達したという。▼残念なことは日本の国際緊急救助隊が現地入りしたのは、地震発生から5日目だったこと。生存率が72時間を超えると極端に下がることはよく知られている。
▼人災ではないかと指摘されているのが学校である。役人へのわいろが横行し「手抜き工事」の粗末な作りの学校校舎が相次いで崩壊、ちょうど授業中だっため、多くの生徒児童の生命が奪われた。
▼核施設の被害も心配だ。中国環境保護省は、四川大地震で計50個の放射性物質に安全上の問題が生じ、35個は回収したが、まだ15個が瓦礫に埋まったままと報告した。ただ、安全な状態で放射能漏れは起きていないと強調した。
▼学校などの耐震問題や核施設の懸念は日本にとっても無関係な話ではない。東京・横浜は、ミュンヘン再保険会社(ドイツ)による災害リスク指数は710で、2位のサンフランシスコの167、3位ロスの100から見ても群を抜く世界一の危険都市なのである。
▼依然、余震も続いており、地震で破損した千を超す一般ダムの決壊も懸念されている。「唐家山・土砂ダム」では全面決壊の恐れが生じた場合、下流の130万人を避難させることを地元当局が決めたという。
▼今回、中国のメディアはチベット争乱の時のような規制はなく、現地からの報道を次々に流した。中国政府の対応も早く、発生当日夜には温家宝首相が現地入りし「地震災害対策本部」を設置している。国家の威信をかけた聖火リレーも一時中止した。
▼中国政府によると、国内外からの支援金、支援物資は26日までに308億7600万元(約4600億円)相当に達したという。▼残念なことは日本の国際緊急救助隊が現地入りしたのは、地震発生から5日目だったこと。生存率が72時間を超えると極端に下がることはよく知られている。
▼人災ではないかと指摘されているのが学校である。役人へのわいろが横行し「手抜き工事」の粗末な作りの学校校舎が相次いで崩壊、ちょうど授業中だっため、多くの生徒児童の生命が奪われた。
▼核施設の被害も心配だ。中国環境保護省は、四川大地震で計50個の放射性物質に安全上の問題が生じ、35個は回収したが、まだ15個が瓦礫に埋まったままと報告した。ただ、安全な状態で放射能漏れは起きていないと強調した。
▼学校などの耐震問題や核施設の懸念は日本にとっても無関係な話ではない。東京・横浜は、ミュンヘン再保険会社(ドイツ)による災害リスク指数は710で、2位のサンフランシスコの167、3位ロスの100から見ても群を抜く世界一の危険都市なのである。
Friday, May 16, 2008
死刑制度
▼「もし死刑にできないなら、今すぐ犯人を社会に戻してほしい。自分の手で殺します」
▼これは、山口県光市で99年、当時18歳と1か月だった元少年(27)に妻子を殺害された会社員本村洋さん(32)の言葉である。
▼本村さんは、犯罪被害者の権利実現を目指す運動を開始、死刑存置派の先頭に立った。一方で、死刑反対論者として知られる安田好弘弁護士が主任弁護士になったことから、光市母子殺人事件は死刑の是非を巡って論議を呼ぶ裁判ともなった。そして先月22日の差し戻し控訴審で、広島高裁は一審の求刑通り、元少年に死刑の判決を言い渡した。
▼死刑制度は犯罪抑止力にならなく、残虐な報復行為、国家による殺人だいう声は強く、死刑制度廃止は世界的な流れである。91カ国が完全廃止、135カ国が事実上の廃止で、過去10年間に死刑執行をした国は61カ国である。
▼06年でもっとも死刑が多かったのは中国で1010人(実際は8千人とも)、以下イラン177人、パキスタン82人と続き、米国は6位の53人、日本は4人だった。先進国・民主主義国で廃止していないのは米国(州によっては廃止)と日本くらいである。
▼米国では昨年12月にニュージャージー州が死刑を廃止し、廃止州は13州になった。昨年9月には薬物注射による死刑が憲法で禁じた残虐な刑罰に当たるかどうかの審理を連邦最高裁が開始、死刑制度のある州は執行を見合わせていた。しかしながら連邦最高裁が先月、違憲性を認めない判断を示したのを受け、ジョージア州が6日、死刑を執行した。
▼国連人権理事会で9日、対日作業部会が開かれ、最近になって死刑の執行、判決例が多くなっている日本に対し、フランス、オランダなど10カ国以上が死刑の廃止を求めた。日本では09年5月までに裁判員制度が始まる。一般市民が他者に対し死刑を下すかどうかを判断する日がすぐそこまできている。
(武)
▼これは、山口県光市で99年、当時18歳と1か月だった元少年(27)に妻子を殺害された会社員本村洋さん(32)の言葉である。
▼本村さんは、犯罪被害者の権利実現を目指す運動を開始、死刑存置派の先頭に立った。一方で、死刑反対論者として知られる安田好弘弁護士が主任弁護士になったことから、光市母子殺人事件は死刑の是非を巡って論議を呼ぶ裁判ともなった。そして先月22日の差し戻し控訴審で、広島高裁は一審の求刑通り、元少年に死刑の判決を言い渡した。
▼死刑制度は犯罪抑止力にならなく、残虐な報復行為、国家による殺人だいう声は強く、死刑制度廃止は世界的な流れである。91カ国が完全廃止、135カ国が事実上の廃止で、過去10年間に死刑執行をした国は61カ国である。
▼06年でもっとも死刑が多かったのは中国で1010人(実際は8千人とも)、以下イラン177人、パキスタン82人と続き、米国は6位の53人、日本は4人だった。先進国・民主主義国で廃止していないのは米国(州によっては廃止)と日本くらいである。
▼米国では昨年12月にニュージャージー州が死刑を廃止し、廃止州は13州になった。昨年9月には薬物注射による死刑が憲法で禁じた残虐な刑罰に当たるかどうかの審理を連邦最高裁が開始、死刑制度のある州は執行を見合わせていた。しかしながら連邦最高裁が先月、違憲性を認めない判断を示したのを受け、ジョージア州が6日、死刑を執行した。
▼国連人権理事会で9日、対日作業部会が開かれ、最近になって死刑の執行、判決例が多くなっている日本に対し、フランス、オランダなど10カ国以上が死刑の廃止を求めた。日本では09年5月までに裁判員制度が始まる。一般市民が他者に対し死刑を下すかどうかを判断する日がすぐそこまできている。
(武)
Thursday, May 01, 2008
五輪聖火リレー騒動
▼26日、長野市内を駆け抜けた北京五輪の聖火リレー。大勢の警察官に取り囲まれて走った聖火ランナーたちに笑顔はほとんどなかった。
▼沿道は全国から集まった中国人留学生らが振る中国国旗とチベットの旗でぎっしり。「中国頑張れ!」の歓声と「チベットに自由を」という叫び声が同時に飛び交った。
▼ランナーのタレント萩本欽一さんがJR長野駅前を通過した時、沿道から発煙筒のようなものが投げ込まれた。「おばあちゃんや子供とハイタッチをしようと思っていたのに、できなかった。悔しかった」と萩本さん。
▼最終ランナーを務めた北京五輪マラソン代表の野口みずき選手は「政治が絡んで残念」と述べた。長野県警はトマトを投げ付けるなどしてリレーを妨害したとして、威力業務妨害容疑などで6人を逮捕した。
▼抗議行動を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のメナール事務局長は、抗議行動を容認した日本政府の民主的な対応を称賛した。「日本人は他のどの民主主義国よりもうまくやった」。元左翼活動家のメナール氏は派手なパフォーマンスと信念の強さは誰にも負けない。
▼一方、中国国営通信の新華社も「沿道の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」と伝え、聖火リレーを評価した。中国当局がチベットに弾圧を加えたのは、昨年9月に「チベット青年会議」が「実力闘争路線」を決定したことをつかみ、一気に独立分子を叩くためだったと言われている。かつてはCIAの援助もあったダライ・ラマ14世だが、今は「高度な自治」と「非暴力」を唱えるノーベル平和賞受賞者である。
▼聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツだというのは皮肉だが、ドイツやメキシコ、ソ連など、五輪を開催した独裁国家は10年以内に崩壊し民主化している。さて、中国の共産党独裁はどうなるだろうか。(武)
▼沿道は全国から集まった中国人留学生らが振る中国国旗とチベットの旗でぎっしり。「中国頑張れ!」の歓声と「チベットに自由を」という叫び声が同時に飛び交った。
▼ランナーのタレント萩本欽一さんがJR長野駅前を通過した時、沿道から発煙筒のようなものが投げ込まれた。「おばあちゃんや子供とハイタッチをしようと思っていたのに、できなかった。悔しかった」と萩本さん。
▼最終ランナーを務めた北京五輪マラソン代表の野口みずき選手は「政治が絡んで残念」と述べた。長野県警はトマトを投げ付けるなどしてリレーを妨害したとして、威力業務妨害容疑などで6人を逮捕した。
▼抗議行動を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のメナール事務局長は、抗議行動を容認した日本政府の民主的な対応を称賛した。「日本人は他のどの民主主義国よりもうまくやった」。元左翼活動家のメナール氏は派手なパフォーマンスと信念の強さは誰にも負けない。
▼一方、中国国営通信の新華社も「沿道の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」と伝え、聖火リレーを評価した。中国当局がチベットに弾圧を加えたのは、昨年9月に「チベット青年会議」が「実力闘争路線」を決定したことをつかみ、一気に独立分子を叩くためだったと言われている。かつてはCIAの援助もあったダライ・ラマ14世だが、今は「高度な自治」と「非暴力」を唱えるノーベル平和賞受賞者である。
▼聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツだというのは皮肉だが、ドイツやメキシコ、ソ連など、五輪を開催した独裁国家は10年以内に崩壊し民主化している。さて、中国の共産党独裁はどうなるだろうか。(武)
Monday, April 21, 2008
ドキュメンタリー映画「靖国」
▼ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映が危機に陥っている。日本で活動する中国人映画監督、李纓さん(44)が、靖国神社をめぐる人々の姿を、十年をかけ撮影。釜山国際映画祭で上映されたほか、三月の香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど前評判が高かった。
▼これに対し、稲田朋美参院議員(自民)ら一部国会議員が事前試写会を要求、三月十二日に国会議員八十人が参加した試写会が開かれた。稲田議員らは「検閲」ではなく映画製作費のうち七百五十万円を文化庁が助成したことを問題にしたが、文化庁は「助成金支出は妥当」と回答した。
▼試写会を見た新右翼の鈴木邦男は「これは『愛日映画』だ」としたが、週刊新潮が「反日的」と論評すると、上映予定の映画館に対し右翼団体の街宣車による抗議活動や電話による公開中止などの圧力があったという。このため、4月公開を予定していた映画館すべてが「周辺の商業施設に迷惑をかけることになる」として上映を中止ないし延期。渡海文部科学大臣は「あってはならないこと。非常に残念」と発言。
▼表現の自由が危惧される中、大阪の「第七芸術劇場」など東京を含む北海道から沖縄まで全国二十一の映画館で、五月以降に上映されることになった。
▼これで上映かと思いきや、有村治子参院議員(自民)が事情を聴きにいったところ、中心的出演者で刀匠の刈谷直治さん夫妻が「出演シーンの削除を希望している」という。さらに靖国神社が、境内での撮影許可の手続きが守られず、事実を誤認させるような映像が含まれているとして映像の一部削除を求める通知をした。
▼李纓監督は、戦争が日本人の心に残した混乱とその背景を描こうとしたというが、まさしく靖国を巡っては日本人はひどく混乱するようだ。(武)
▼これに対し、稲田朋美参院議員(自民)ら一部国会議員が事前試写会を要求、三月十二日に国会議員八十人が参加した試写会が開かれた。稲田議員らは「検閲」ではなく映画製作費のうち七百五十万円を文化庁が助成したことを問題にしたが、文化庁は「助成金支出は妥当」と回答した。
▼試写会を見た新右翼の鈴木邦男は「これは『愛日映画』だ」としたが、週刊新潮が「反日的」と論評すると、上映予定の映画館に対し右翼団体の街宣車による抗議活動や電話による公開中止などの圧力があったという。このため、4月公開を予定していた映画館すべてが「周辺の商業施設に迷惑をかけることになる」として上映を中止ないし延期。渡海文部科学大臣は「あってはならないこと。非常に残念」と発言。
▼表現の自由が危惧される中、大阪の「第七芸術劇場」など東京を含む北海道から沖縄まで全国二十一の映画館で、五月以降に上映されることになった。
▼これで上映かと思いきや、有村治子参院議員(自民)が事情を聴きにいったところ、中心的出演者で刀匠の刈谷直治さん夫妻が「出演シーンの削除を希望している」という。さらに靖国神社が、境内での撮影許可の手続きが守られず、事実を誤認させるような映像が含まれているとして映像の一部削除を求める通知をした。
▼李纓監督は、戦争が日本人の心に残した混乱とその背景を描こうとしたというが、まさしく靖国を巡っては日本人はひどく混乱するようだ。(武)
Monday, March 31, 2008
北京五輪ボイコット
▼チベット自治区ラサの暴動は中国国営通信の新華社の報道では死者十九人としているが、インド北部ダラムサラのチベット亡命政府は二十四日、百三十人と発表した。
▼負傷者や逮捕者数でも大きな隔たりがあり、一体、どっちを信じればいいのか。第三者的なメディアの報道が望まれるが、中国当局は海外メディアを退去させ、取材を拒否している。
▼中国内ではインターネットも制限されている。ユーチューブにアップされていた警官隊が市民を追い回す映像はカットされた。一方で、中国テレビでは漢族の店を襲うチベット人の様子が映像で何度も流されたという。
▼人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」(本部ロンドン)には、何者からか二分おきに電話がかかってきた。学生組織「スチューデント・フォー・ア・フリー・チベット」(本部ニューヨーク)の幹部にも同じような電話があり、同じく中国語で罵倒してきたという。さらに電子メールでコンピューター・ウイルスも送られてきた。
▼チベット関係の団体だけでなく、現地からの報道を続けているAFPもウイルス攻撃を受けた。「一部の暴徒の仕業」と主張する中国当局だが、これをそのまま鵜飲みにする人はいないだろう。
▼虐殺の続くダルフールで中国がスーダン政府を事実上支援している問題で、北京五輪の大手スポンサーの会議が四月に行われるが、新たにチベット問題が議題にあがるという。企業イメージが損なわれるとの懸念の声も出てきている。
▼とはいえ、五輪ボイコットは世界経済の足を引っぱりかねないため大きな声とはなっていない。ボイコットしたからといって何かが解決するわけでもないだろう。しかし、フランスのサルコジ大統領は二十五日、北京五輪ボイコットについて「あらゆる選択肢が開かれている」と述べた。状況によってはフランスが開会式に参加しないこともあり得ると明らかにした。(武)
▼負傷者や逮捕者数でも大きな隔たりがあり、一体、どっちを信じればいいのか。第三者的なメディアの報道が望まれるが、中国当局は海外メディアを退去させ、取材を拒否している。
▼中国内ではインターネットも制限されている。ユーチューブにアップされていた警官隊が市民を追い回す映像はカットされた。一方で、中国テレビでは漢族の店を襲うチベット人の様子が映像で何度も流されたという。
▼人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」(本部ロンドン)には、何者からか二分おきに電話がかかってきた。学生組織「スチューデント・フォー・ア・フリー・チベット」(本部ニューヨーク)の幹部にも同じような電話があり、同じく中国語で罵倒してきたという。さらに電子メールでコンピューター・ウイルスも送られてきた。
▼チベット関係の団体だけでなく、現地からの報道を続けているAFPもウイルス攻撃を受けた。「一部の暴徒の仕業」と主張する中国当局だが、これをそのまま鵜飲みにする人はいないだろう。
▼虐殺の続くダルフールで中国がスーダン政府を事実上支援している問題で、北京五輪の大手スポンサーの会議が四月に行われるが、新たにチベット問題が議題にあがるという。企業イメージが損なわれるとの懸念の声も出てきている。
▼とはいえ、五輪ボイコットは世界経済の足を引っぱりかねないため大きな声とはなっていない。ボイコットしたからといって何かが解決するわけでもないだろう。しかし、フランスのサルコジ大統領は二十五日、北京五輪ボイコットについて「あらゆる選択肢が開かれている」と述べた。状況によってはフランスが開会式に参加しないこともあり得ると明らかにした。(武)
Thursday, February 28, 2008
27年目の「共謀罪」
▼1981年にロサンゼルスで起きた銃撃事件で、殺人容疑などで元会社社長、三浦和義容疑者(60)がサイパン島で逮捕された。
▼三浦被告は銃撃事件で日本で起訴され、1審東京地裁は氏名不詳の実行犯との共謀を認めて有罪にしたが、2審は「共犯者は全く解明されていない。三浦被告には共犯者を見つけ、謀議を完了する機会がなく、謀議の痕跡がなく、共犯者に報酬を支払った事実が全くない」として逆転無罪、最高裁で確定した。
▼米国の法律では殺人罪に時効はなく、ロサンゼルス市警は米検察当局と相談した結果、同じ事件で再び罪に問われることがない「一事不再理」には抵触しないと判断。過去に前例もあるという。
▼ロス市警は2、3年前から本格的な捜査に着手していた。きっと新しい証拠でもあるだろうと思いきや、市警は「ノーコメント」。
▼逮捕状によれば、容疑第1項は妻一美さん(当時28)殺害の実行、第2項は共謀罪で、殺害に先立つ「殴打事件」から銃撃に至る一連の殺害計画を共謀した「共謀罪」だという。
▼ロス市警は、日本の検察も三浦元社長を起訴する段階で十分な証拠があったはずだとし、日本に共謀罪がないことが無罪判決につながったとの認識を示した。
▼藤本哲也中央大法学部教授(犯罪学)によれば、カリフォルニア州法では、犯罪の謀議が行われ、さらに犯罪の実行に資する何らかの行為が伴えば、実際に犯罪が行われなくても共謀罪が成り立つ、「何らかの行為」には犯行現場の下見や凶器を渡したりすることなどが該当するという。
▼ロス市警は新しい証拠ではなく既存証拠だけで共謀罪を成立させるつもりなのか? 日本で無罪とされた三浦容疑者は米国で有罪となるのか。日本でも論議されている共謀罪について考える機会ともなりそうである。
▼三浦被告は銃撃事件で日本で起訴され、1審東京地裁は氏名不詳の実行犯との共謀を認めて有罪にしたが、2審は「共犯者は全く解明されていない。三浦被告には共犯者を見つけ、謀議を完了する機会がなく、謀議の痕跡がなく、共犯者に報酬を支払った事実が全くない」として逆転無罪、最高裁で確定した。
▼米国の法律では殺人罪に時効はなく、ロサンゼルス市警は米検察当局と相談した結果、同じ事件で再び罪に問われることがない「一事不再理」には抵触しないと判断。過去に前例もあるという。
▼ロス市警は2、3年前から本格的な捜査に着手していた。きっと新しい証拠でもあるだろうと思いきや、市警は「ノーコメント」。
▼逮捕状によれば、容疑第1項は妻一美さん(当時28)殺害の実行、第2項は共謀罪で、殺害に先立つ「殴打事件」から銃撃に至る一連の殺害計画を共謀した「共謀罪」だという。
▼ロス市警は、日本の検察も三浦元社長を起訴する段階で十分な証拠があったはずだとし、日本に共謀罪がないことが無罪判決につながったとの認識を示した。
▼藤本哲也中央大法学部教授(犯罪学)によれば、カリフォルニア州法では、犯罪の謀議が行われ、さらに犯罪の実行に資する何らかの行為が伴えば、実際に犯罪が行われなくても共謀罪が成り立つ、「何らかの行為」には犯行現場の下見や凶器を渡したりすることなどが該当するという。
▼ロス市警は新しい証拠ではなく既存証拠だけで共謀罪を成立させるつもりなのか? 日本で無罪とされた三浦容疑者は米国で有罪となるのか。日本でも論議されている共謀罪について考える機会ともなりそうである。
Wednesday, January 30, 2008
「第二のケネディ」
▼民主党大統領候補指名争いでオバマ上院議員の人気が止まらない。二十七日のサウスカロライナ州予備選挙で55%の支持で圧勝、ヒラリー上院議員とビル・クリントン前大統領夫妻の「黒人候補烙印(らくいん)」戦略は裏目に出たようだ。
▼二十八日には一九九三年にノーベル文学賞を受賞した米国の黒人女性作家、トニ・モリスンさんがオバマ上院議員への支持を表明。モリスンさんは白人のビル・クリントン前大統領を「黒人より黒人的」「米国初の黒人大統領」と評したことで知られるが、今回はオバマ氏支持に回った。
▼モリスンさんは「あなたは他の候補にないものを示してくれている。それは年齢や経験、人種や性別とまったく関係ない独創的な構想力だ」とオバマ氏を評価、新しいアメリカを創造する人物への期待感を述べている。
▼オバマ氏から連想されるのは故ケネディ大統領であろう。故ケネディ大統領の実弟で民主党の有力者のエドワード・ケネディ上院議員はオバマ氏を支持と表明、NBCテレビは「大統領選の転換点になる可能性がある」と報じた。まさに「第二のケネディ」への期待がかかる。
▼しかし、黒人には圧倒的な支持のあるオバマ氏だが白人票の取り込みはヒラリー氏に遅れを取っている。ヒラリー氏と拮抗する中、キャスティング・ボートはヒスパニック票にあるとの指摘は多い。
▼二十二州で一斉に党員集会と予備選挙が行われる二月五日のスーパーチューズデーでは、四百四十一人と最多の代議員数を持つカリフォルニア州のヒスパニックの割合は36%、代議員数二百八十一人のニューヨーク、百八十五人のイリノイ州はともにヒスパニックが15%を占める。
▼ヒラリー、オバマ両候補の拮抗ぶりからスーパーチューズデーでも決まらないのではという分析が優勢になってきた。オバマ候補の登場で、これまでの予備選のゲーム理論が変わったようだ。(武)
▼二十八日には一九九三年にノーベル文学賞を受賞した米国の黒人女性作家、トニ・モリスンさんがオバマ上院議員への支持を表明。モリスンさんは白人のビル・クリントン前大統領を「黒人より黒人的」「米国初の黒人大統領」と評したことで知られるが、今回はオバマ氏支持に回った。
▼モリスンさんは「あなたは他の候補にないものを示してくれている。それは年齢や経験、人種や性別とまったく関係ない独創的な構想力だ」とオバマ氏を評価、新しいアメリカを創造する人物への期待感を述べている。
▼オバマ氏から連想されるのは故ケネディ大統領であろう。故ケネディ大統領の実弟で民主党の有力者のエドワード・ケネディ上院議員はオバマ氏を支持と表明、NBCテレビは「大統領選の転換点になる可能性がある」と報じた。まさに「第二のケネディ」への期待がかかる。
▼しかし、黒人には圧倒的な支持のあるオバマ氏だが白人票の取り込みはヒラリー氏に遅れを取っている。ヒラリー氏と拮抗する中、キャスティング・ボートはヒスパニック票にあるとの指摘は多い。
▼二十二州で一斉に党員集会と予備選挙が行われる二月五日のスーパーチューズデーでは、四百四十一人と最多の代議員数を持つカリフォルニア州のヒスパニックの割合は36%、代議員数二百八十一人のニューヨーク、百八十五人のイリノイ州はともにヒスパニックが15%を占める。
▼ヒラリー、オバマ両候補の拮抗ぶりからスーパーチューズデーでも決まらないのではという分析が優勢になってきた。オバマ候補の登場で、これまでの予備選のゲーム理論が変わったようだ。(武)
Tuesday, January 01, 2008
嘘をついた鼠
▼ 今年の干支(えと)は子(ね)、鼠(ねずみ)である。十二支の中で何故ねずみが最初なのか。俗説では、神さまは十二支の動物を決める時、正月に自分の所へ来た順にすることにしたという。牛は足が遅いからと早めに出発し、真っ先に門前に着いたが、牛の頭に乗っていた鼠が飛び降り、ちゃっかり一番になったという。
▼十二支で言えば最初に戻ったわけだが、折しも昨年から今年にかけて世界のリーダーが相次いで交替している。
▼昨年は5月にフランスにサルコジ氏(52)大統領が、6月に英国はブラウン首相(56)が誕生、12月にはオーストラリアでケビン・ラッド新首相が決まり、韓国では李明博(イミョンバク、66)氏が大統領に当選した。
▼ロシアでは三月に大統領選がある。三選禁止のためプーチン大統領の続投はない。日本も解散・総選挙含みの年となる。そしていよいよ十一月には米大統領選がある。こちらも三選禁止のため八年に及んだブッシュ政権も終わりを迎える。
▼なんとなく二十一世紀に入ってから、あるいは9・11同時多発テロ以降と言ってもいいが、一巡目が終わり二巡目に入った感じだ。
▼鼠が牛に乗っかってきて一番になったのは、ずる賢い話だが、まあ世渡り上手ということで大目にみよう。しかし鼠は、十二支に入れてもらおうと思った猫に、一月二日に集まることになってると嘘をついている。
▼それで今でも鼠は、十二支に入れなかった猫に追いかけ回されているという。やはり嘘はいけない。嘘をつかないことは民主主義の大原則のひとつだろう。世界の新リーダーたちも嘘をつくことなく、世界を平和と繁栄へ導いていって欲しいものだ。(武)
▼十二支で言えば最初に戻ったわけだが、折しも昨年から今年にかけて世界のリーダーが相次いで交替している。
▼昨年は5月にフランスにサルコジ氏(52)大統領が、6月に英国はブラウン首相(56)が誕生、12月にはオーストラリアでケビン・ラッド新首相が決まり、韓国では李明博(イミョンバク、66)氏が大統領に当選した。
▼ロシアでは三月に大統領選がある。三選禁止のためプーチン大統領の続投はない。日本も解散・総選挙含みの年となる。そしていよいよ十一月には米大統領選がある。こちらも三選禁止のため八年に及んだブッシュ政権も終わりを迎える。
▼なんとなく二十一世紀に入ってから、あるいは9・11同時多発テロ以降と言ってもいいが、一巡目が終わり二巡目に入った感じだ。
▼鼠が牛に乗っかってきて一番になったのは、ずる賢い話だが、まあ世渡り上手ということで大目にみよう。しかし鼠は、十二支に入れてもらおうと思った猫に、一月二日に集まることになってると嘘をついている。
▼それで今でも鼠は、十二支に入れなかった猫に追いかけ回されているという。やはり嘘はいけない。嘘をつかないことは民主主義の大原則のひとつだろう。世界の新リーダーたちも嘘をつくことなく、世界を平和と繁栄へ導いていって欲しいものだ。(武)
Monday, December 17, 2007
民主主義の証
▼来年行われる米大統領選の候補者は全国的な知名度からいって共和党はジュリアーニ元ニューヨーク市長、民主党はヒラリー・クリントン上院議員でほぼ決まりだろうと思われていたのが、どうも様子が違っている。
▼年明け早々、最初に次期大統領選の党員集会が開かれるアイオワ州の地元紙が12月2日伝えた同州の最新世論調査によれば、共和党はハッカビー前アーカンソー州知事、民主党はオバマ上院議員がそれぞれトップに立った。
▼11月28日にフロリダで行われた共和党候補による討論会では、ロムニー前マサチューセッツ州知事がジュリアーニ氏の中絶や同性愛の権利容認に加え、移民政策を攻撃。特にジュリアーニ氏が市長時代に不法移民の子供の教育を認めたことなどを非難し、「不法移民には、法律を守る市民以上の特権を与えてはならない」と訴えた。
▼ところが、これに異論を唱えたのがハッカビー前アーカンソー州知事だ。「親のしたことで子供を罰するような国」にすべきではないと言い切り、注目を浴びた。
▼アイオワ州でトップだったロムニー氏は最近の調査で牧師出身のハッカビー氏に逆転された。ロムニー氏が信仰するモルモン教を「カルト宗教の一種」と嫌うキリスト教右派の支持がハッカビー氏に流れたためとみられる。
▼泡沫候補だと思われてきたハッカビー氏が躍進してきた。オバマ氏もここまで人気が高まるとは思われていなかった。
▼ビル・クリントン元大統領も出馬当初は元アーカンソー州という小さい州の知事に過ぎず、あまり注目されなかった。米大統領選は予断を許さないが、それが民主主義の証なのかも知れない。
▼年明け早々、最初に次期大統領選の党員集会が開かれるアイオワ州の地元紙が12月2日伝えた同州の最新世論調査によれば、共和党はハッカビー前アーカンソー州知事、民主党はオバマ上院議員がそれぞれトップに立った。
▼11月28日にフロリダで行われた共和党候補による討論会では、ロムニー前マサチューセッツ州知事がジュリアーニ氏の中絶や同性愛の権利容認に加え、移民政策を攻撃。特にジュリアーニ氏が市長時代に不法移民の子供の教育を認めたことなどを非難し、「不法移民には、法律を守る市民以上の特権を与えてはならない」と訴えた。
▼ところが、これに異論を唱えたのがハッカビー前アーカンソー州知事だ。「親のしたことで子供を罰するような国」にすべきではないと言い切り、注目を浴びた。
▼アイオワ州でトップだったロムニー氏は最近の調査で牧師出身のハッカビー氏に逆転された。ロムニー氏が信仰するモルモン教を「カルト宗教の一種」と嫌うキリスト教右派の支持がハッカビー氏に流れたためとみられる。
▼泡沫候補だと思われてきたハッカビー氏が躍進してきた。オバマ氏もここまで人気が高まるとは思われていなかった。
▼ビル・クリントン元大統領も出馬当初は元アーカンソー州という小さい州の知事に過ぎず、あまり注目されなかった。米大統領選は予断を許さないが、それが民主主義の証なのかも知れない。
Saturday, December 01, 2007
パニック2008?
▼依然としてサブプライムローン問題に端を発する金融不安が続き、不況突入の懸念が消えない。米連邦準備制度理事会(FRB)は二十日、〇八年の米実質成長率は前年比1・8〜2・5%と予想、七月に発表した2・5〜2・75%との予想を大幅に下方修正した。
▼クリスマス商戦は年間消費の二割を占める。消費の行方を占うクリスマス商戦の幕開けである感謝祭翌日の通称「ブラックフライデー」は問題になることなく過ぎた。だがこれはウォルマートや大手電気店などが今年は特別にクリスマスセールを前倒し、11月初めから開始したために過ぎない。
▼なにより、当初一千億ドルと言われたサブプライムの関連損失が実は一兆ドルではないかとも囁かれているのだ。リーマン・ブラザース、シティグループ、メリルリンチなどの本決算がこれから控えている。八七年の株価暴落、ブラックマンデーの再来もないとは言い切れない。
▼利下げはもうないと言われていたが、年内にもう一段の利下げをしないと不況に突入するという声もある。だが利下げによるドルの下落は信用不安となり、中東諸国などのドルペッグの見直しにつながりかねない。基軸通貨としてのドルの地位をなくす可能性すらある。
▼米シンクタンク「トレンド・リサーチ・インスティテュート」のジェラルド・セレンテ所長は、ドルの価値は十分の1まで下がり、金相場が1オンス二千ドルにまで高騰するかもしれない」という予測までしている。
▼英オブザーバー紙のコラムリスト、ウィル・ハットン氏によれば、現下の金融危機は三十年に一度の大規模なもので、市場原理を重視する英米中心の自由主義経済の時代は終焉を迎えるだろうとのことである。(CAPITAL#48号より転載)
▼クリスマス商戦は年間消費の二割を占める。消費の行方を占うクリスマス商戦の幕開けである感謝祭翌日の通称「ブラックフライデー」は問題になることなく過ぎた。だがこれはウォルマートや大手電気店などが今年は特別にクリスマスセールを前倒し、11月初めから開始したために過ぎない。
▼なにより、当初一千億ドルと言われたサブプライムの関連損失が実は一兆ドルではないかとも囁かれているのだ。リーマン・ブラザース、シティグループ、メリルリンチなどの本決算がこれから控えている。八七年の株価暴落、ブラックマンデーの再来もないとは言い切れない。
▼利下げはもうないと言われていたが、年内にもう一段の利下げをしないと不況に突入するという声もある。だが利下げによるドルの下落は信用不安となり、中東諸国などのドルペッグの見直しにつながりかねない。基軸通貨としてのドルの地位をなくす可能性すらある。
▼米シンクタンク「トレンド・リサーチ・インスティテュート」のジェラルド・セレンテ所長は、ドルの価値は十分の1まで下がり、金相場が1オンス二千ドルにまで高騰するかもしれない」という予測までしている。
▼英オブザーバー紙のコラムリスト、ウィル・ハットン氏によれば、現下の金融危機は三十年に一度の大規模なもので、市場原理を重視する英米中心の自由主義経済の時代は終焉を迎えるだろうとのことである。(CAPITAL#48号より転載)
Thursday, November 15, 2007
偽装相次ぐ食品業界
▼日本人はいつからこんなに嘘つきになってしまったのだろう。「偽装」が止まらない。牛肉、シジミ、地鶏、タケノコ、そうめん、ファストフード、和菓子などなど。産地偽装や消費期限改ざんなど食品の不正発覚が止まるところを知らない。
▼特に赤福(三重)や船場吉兆の菓子店(福岡)などの製造日偽装や賞味期限改ざんは、伝統と信頼を誇る老舗や高級店だっただけに与えたショックは大きい。「もったいない」という話ではない。船場吉兆はもちろん、秋田の比内鶏(ひないどり)の偽装は、食文化への裏切り行為である。
▼なぜこれほどまでに偽装が立て続けに発覚しているのかといえば、それは内部告発なのだという。今年一月の不二家の期限切れ原料使用の報道後、さらに六月のミートホープ(北海道)の牛肉偽装発覚後、内部告発が急増したという。八月の石屋製菓(北海道)の「白い恋人」の賞味期限改ざんも保健所への内部告発がきっかけだ。
▼だが、赤福は昨年から内部告発があったにもかかわらず、三重県の二度の立ち入り検査でも不正を確認できなかった。老舗や大手食品会社と監督する行政側とのなれ合いを疑われても仕方ないだろう。
▼偽装は食品衛生法違反や不正競争防止法違反(虚偽表示)という立派な犯罪である。社長の逮捕や営業停止に追い込まれた会社も出ており、結局は自らの首を締めるだけだ。
▼昨年はマンション耐震強度偽装が世間を騒がせたが、今年は食品の偽装だ。日本経済の「失われた十五年」という停滞の中、リストラや格差拡大だけでなく、利益第一主義によるモラル崩壊が起きていたわけである。
▼特に赤福(三重)や船場吉兆の菓子店(福岡)などの製造日偽装や賞味期限改ざんは、伝統と信頼を誇る老舗や高級店だっただけに与えたショックは大きい。「もったいない」という話ではない。船場吉兆はもちろん、秋田の比内鶏(ひないどり)の偽装は、食文化への裏切り行為である。
▼なぜこれほどまでに偽装が立て続けに発覚しているのかといえば、それは内部告発なのだという。今年一月の不二家の期限切れ原料使用の報道後、さらに六月のミートホープ(北海道)の牛肉偽装発覚後、内部告発が急増したという。八月の石屋製菓(北海道)の「白い恋人」の賞味期限改ざんも保健所への内部告発がきっかけだ。
▼だが、赤福は昨年から内部告発があったにもかかわらず、三重県の二度の立ち入り検査でも不正を確認できなかった。老舗や大手食品会社と監督する行政側とのなれ合いを疑われても仕方ないだろう。
▼偽装は食品衛生法違反や不正競争防止法違反(虚偽表示)という立派な犯罪である。社長の逮捕や営業停止に追い込まれた会社も出ており、結局は自らの首を締めるだけだ。
▼昨年はマンション耐震強度偽装が世間を騒がせたが、今年は食品の偽装だ。日本経済の「失われた十五年」という停滞の中、リストラや格差拡大だけでなく、利益第一主義によるモラル崩壊が起きていたわけである。
Friday, November 02, 2007
拉致問題と日米関係
▼10月26日付のワシントンポスト紙は、テロ支援国指定解除を米政府が北朝鮮側に約束していたとしたら、「太平洋において最も親密な同盟国(日本)を裏切ることになる」との公電をシーファー駐日大使がブッシュ大統領に送ったと報じた。
▼第一期ブッシュ政権で朝鮮半島平和担当特使を務めたジャック・プリチャード氏は、すでに8月のニューヨークのコリア協会での講演で、今年一月の米朝ベルリン会談でテロ支援国家指定解除が秘密裏に合意されたと明かしていた。
▼2003年に米国は北朝鮮をテロ支援国家指定の理由に拉致問題を加えたが、これは当時の小泉首相とブッシュ大統領の「特別な関係」があったからという。
▼だが昨年10月の北朝鮮の核実験後、ブッシュ政権が米朝対話重視に転換。核開発放棄と引き換えの指定解除が再び米政府の切り札となった。
▼障害になってきたのが日本の拉致問題である。2月下旬にチェイニー米副大統領が来日し、安倍首相(当時)との会談で「日本人拉致問題の『解決』とは何か」と拉致問題の「定義」をただしたが、明確な回答はなく、その後も拉致問題は何の進展もなかった。
▼日本の国際政治誌「サピオ」10月10日号は、「安倍首相(当時)は9月9日、シドニーで、ブッシュ大統領から「日本の北朝鮮政策はあまりにも国際常識を欠く。いつまで拉致問題で足踏みしているのか。我が国は北との国交正常化をためらわない。それでよろしいか」と迫られた安倍首相(当時)は「(インド洋の海自による)給油支援は必ず継続する。そのかわり北朝鮮政策の転換はもう少し待ってほしいと懇願した」という。給油支援に職責を賭けると述べた理由はこれだったわけだが、いずれにせよ米国からは突っぱねられ、辞任を決意する。
▼拉致問題への毅然とした態度で登場した安倍政権は拉致問題で足下をすくわれた。福田政権は拉致問題の「進展」を探り始めた。(武)
▼第一期ブッシュ政権で朝鮮半島平和担当特使を務めたジャック・プリチャード氏は、すでに8月のニューヨークのコリア協会での講演で、今年一月の米朝ベルリン会談でテロ支援国家指定解除が秘密裏に合意されたと明かしていた。
▼2003年に米国は北朝鮮をテロ支援国家指定の理由に拉致問題を加えたが、これは当時の小泉首相とブッシュ大統領の「特別な関係」があったからという。
▼だが昨年10月の北朝鮮の核実験後、ブッシュ政権が米朝対話重視に転換。核開発放棄と引き換えの指定解除が再び米政府の切り札となった。
▼障害になってきたのが日本の拉致問題である。2月下旬にチェイニー米副大統領が来日し、安倍首相(当時)との会談で「日本人拉致問題の『解決』とは何か」と拉致問題の「定義」をただしたが、明確な回答はなく、その後も拉致問題は何の進展もなかった。
▼日本の国際政治誌「サピオ」10月10日号は、「安倍首相(当時)は9月9日、シドニーで、ブッシュ大統領から「日本の北朝鮮政策はあまりにも国際常識を欠く。いつまで拉致問題で足踏みしているのか。我が国は北との国交正常化をためらわない。それでよろしいか」と迫られた安倍首相(当時)は「(インド洋の海自による)給油支援は必ず継続する。そのかわり北朝鮮政策の転換はもう少し待ってほしいと懇願した」という。給油支援に職責を賭けると述べた理由はこれだったわけだが、いずれにせよ米国からは突っぱねられ、辞任を決意する。
▼拉致問題への毅然とした態度で登場した安倍政権は拉致問題で足下をすくわれた。福田政権は拉致問題の「進展」を探り始めた。(武)
Friday, October 19, 2007
サブプライムローンとクリスマス
▼サブプライムローンとは、住宅価格の上昇と低金利を前提に、本来なら支払っていくのが困難と思われる低所得者に夢のマイホームを持てる住宅ローンだった。
▼だが前提が崩れた。住宅市場の不振と金利上昇が重なり、返済不能が続出した。ここで終わっていればまだよかったかも知れない。
▼住宅ローン会社はリスクを分散するためローン債権を小口化して売却。このため債権を担保とした証券をはじめ各金融商品も返済不能続出とともに価格が急落。そこに世界中でお金がたぶつく中、ヘッジファンドや金融機関、年金基金などが高リスクにもかかわらず相次いで購入した。
▼三日、リード上院内総務(民主党)らは、来年にかけて約二百万世帯が返済不能・差し押さえで自宅を失う恐れがあり、「これは国家的な危機だ」と対策強化を訴えた。各金融会社もサブプライムローンの赤字、撤退やリストラなどを相次いで発表した。
▼この問題は、他の証券などと組み合わせた金融商品もあるため損失規模を確定しにくいところにある。一体どうなっているのか購入者もよく分らないのだ。そのため米景気失速ばかりか、世界同時株安、世界同時不況に突入する恐れに世界中が震撼した。
▼ところが、五日のニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は一時、前日比150・23ドル高の一万4124・54ドルに達した。これは取引時間中での過去最高値だ。サブプライムローン問題はそれほどで深刻ではないと判断されたのか。
▼確かに、同日発表された九月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると非農業部門の就業者は前月と比べ十一万人増加、雇用改善の目安十万人を四カ月ぶりに上回った。だが、雇用統計ほどおおざっぱで当てにならないとの専門家の指摘もある。
▼クリスマス商戦前に消費後退を招くわけにはいかない。そんな声すら聞こえてきそうな株価の動きが、「破綻」の先送りではないことを願うばかりである。
▼だが前提が崩れた。住宅市場の不振と金利上昇が重なり、返済不能が続出した。ここで終わっていればまだよかったかも知れない。
▼住宅ローン会社はリスクを分散するためローン債権を小口化して売却。このため債権を担保とした証券をはじめ各金融商品も返済不能続出とともに価格が急落。そこに世界中でお金がたぶつく中、ヘッジファンドや金融機関、年金基金などが高リスクにもかかわらず相次いで購入した。
▼三日、リード上院内総務(民主党)らは、来年にかけて約二百万世帯が返済不能・差し押さえで自宅を失う恐れがあり、「これは国家的な危機だ」と対策強化を訴えた。各金融会社もサブプライムローンの赤字、撤退やリストラなどを相次いで発表した。
▼この問題は、他の証券などと組み合わせた金融商品もあるため損失規模を確定しにくいところにある。一体どうなっているのか購入者もよく分らないのだ。そのため米景気失速ばかりか、世界同時株安、世界同時不況に突入する恐れに世界中が震撼した。
▼ところが、五日のニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は一時、前日比150・23ドル高の一万4124・54ドルに達した。これは取引時間中での過去最高値だ。サブプライムローン問題はそれほどで深刻ではないと判断されたのか。
▼確かに、同日発表された九月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると非農業部門の就業者は前月と比べ十一万人増加、雇用改善の目安十万人を四カ月ぶりに上回った。だが、雇用統計ほどおおざっぱで当てにならないとの専門家の指摘もある。
▼クリスマス商戦前に消費後退を招くわけにはいかない。そんな声すら聞こえてきそうな株価の動きが、「破綻」の先送りではないことを願うばかりである。
Friday, September 28, 2007
ジーナ・シックス事件
▼その高校の校庭には、白人生徒が集まることから「ホワイト・ツリー」と呼ばれる樫の木があった。白人生徒たちの休憩場所となっていた。黒人生徒は使えなかった。
▼昨年の夏、ある黒人生徒の一人がそこに座る権利を学校に求め、実際にそこに座った。すると翌日、この木に絞首刑用のロープ三本が吊るされていた。かつて米国では、黒人をリンチし木に吊るしていた。黒人差別の意味は明らかだった。
▼校長は木を切り倒し、犯人の白人生徒三人に退学勧告したが、教育委員会がこれを差し止め、三日間の停学処分に変更。これに黒人生徒らは憤慨、乱闘や放火まで発生し、昨年十二月四日、乱闘の被害者となった黒人をからかった白人生徒に黒人生徒六人が暴力をふるい、逮捕された。
▼「私がペンを一走りさせればお前ら(黒人)の人生なぞ消し去ることが出来る」と豪語したことのあるJ・リード・ウォルターズ検事は、未成年の高校生を第二級殺人未遂罪で訴追、テニスシューズを「致死性のある武器」とまで主張した。
▼審理が進むにつれ「人種差別による不正裁判だ」と検察当局を非難する声がわき起こり、全米へと広がった。公正な裁判を求める著名運動では三十八万人が集り、全米有色人地位向上協会(NAACP)は六人の裁判費用捻出のための基金を設立、歌手のデビッド・ボウイが一万ドル寄付した。
▼そしてある審理の日、人口三千人の町は、それをはるかにこえる数万人のデモ隊で埋め尽くされた。ラッパーのモス・デフやUGKのバン・Bの姿もあったという。学校は休校、商店街も店を閉めた。しかしこの日の審理で、事件当時十六歳であるにも関わらず九カ月以上拘留されたままのマイケル・ベルの保釈は認められなかった。
▼これがルイジアナ州の小さな町、ジーナで去る九月二十日に起きたことである。この事件は通称「ジーナ・6(シックス)」と呼ばれ、今後も予断を許さない。
▼昨年の夏、ある黒人生徒の一人がそこに座る権利を学校に求め、実際にそこに座った。すると翌日、この木に絞首刑用のロープ三本が吊るされていた。かつて米国では、黒人をリンチし木に吊るしていた。黒人差別の意味は明らかだった。
▼校長は木を切り倒し、犯人の白人生徒三人に退学勧告したが、教育委員会がこれを差し止め、三日間の停学処分に変更。これに黒人生徒らは憤慨、乱闘や放火まで発生し、昨年十二月四日、乱闘の被害者となった黒人をからかった白人生徒に黒人生徒六人が暴力をふるい、逮捕された。
▼「私がペンを一走りさせればお前ら(黒人)の人生なぞ消し去ることが出来る」と豪語したことのあるJ・リード・ウォルターズ検事は、未成年の高校生を第二級殺人未遂罪で訴追、テニスシューズを「致死性のある武器」とまで主張した。
▼審理が進むにつれ「人種差別による不正裁判だ」と検察当局を非難する声がわき起こり、全米へと広がった。公正な裁判を求める著名運動では三十八万人が集り、全米有色人地位向上協会(NAACP)は六人の裁判費用捻出のための基金を設立、歌手のデビッド・ボウイが一万ドル寄付した。
▼そしてある審理の日、人口三千人の町は、それをはるかにこえる数万人のデモ隊で埋め尽くされた。ラッパーのモス・デフやUGKのバン・Bの姿もあったという。学校は休校、商店街も店を閉めた。しかしこの日の審理で、事件当時十六歳であるにも関わらず九カ月以上拘留されたままのマイケル・ベルの保釈は認められなかった。
▼これがルイジアナ州の小さな町、ジーナで去る九月二十日に起きたことである。この事件は通称「ジーナ・6(シックス)」と呼ばれ、今後も予断を許さない。
Sunday, September 16, 2007
日本の二大政党制が始まった
▼ついに安倍首相が辞意を表明した。改造内閣スタート直後の首相の辞意表明に日本全国に激震が走った。海外メディアもいち早く速報した。
▼就任以来、「政治とカネ」を巡るスキャンダルや失言で閣僚の辞任が相次ぎ、年金問題もあって7月の参院選では与野党が逆転する歴史的敗北。内閣改造を行ったが、またすぐに閣僚が辞任した。普通ならとっくに辞めているところだが安倍首相はなかなか辞めようとしなかった。今回、辞意に至ったのは、どうやら十一月で切れるテロ対策特別措置法延長問題のようである。
▼首相はテロ特措法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動を継続できなければ退陣する決意を示していた。一方、民主党の小沢代表は八月、シーファー駐日米大使に対し「直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない。活動には参加できない」と延長反対の考えを明確に示していた。
▼北朝鮮から、六カ国協議はどうせ米国の言うがままなのだから日本は出る必要はないと言われたことは記憶に新しい。米国はその北朝鮮の核問題で拉致問題を曖昧にしたまま北への「譲歩」を続けている。下院では「従軍慰安婦決議」が成立した。日本人の中には小沢代表の毅然とした発言に溜飲を下げた人もいたかも知れないが、小沢氏は別に「反米」を掲げたわけではなく、民主党の「国連中心主義」の原則を述べたに過ぎない。
▼あれほどの支持率低下でも辞めなかったのが、テロ特措法を巡り野党と対立したからといって辞めるとは、「責任放棄」(古賀誠・自民党元幹事長)と言われても仕方ない。これまでの「対米従属」ばかりが日本の外交ではなくなってきているのだ。
▼与党・自民党が圧倒的に強かった時代は終わった。日本で二大政党制が始まったことに、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた安倍首相自身がついていけなかったようだ。
▼就任以来、「政治とカネ」を巡るスキャンダルや失言で閣僚の辞任が相次ぎ、年金問題もあって7月の参院選では与野党が逆転する歴史的敗北。内閣改造を行ったが、またすぐに閣僚が辞任した。普通ならとっくに辞めているところだが安倍首相はなかなか辞めようとしなかった。今回、辞意に至ったのは、どうやら十一月で切れるテロ対策特別措置法延長問題のようである。
▼首相はテロ特措法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動を継続できなければ退陣する決意を示していた。一方、民主党の小沢代表は八月、シーファー駐日米大使に対し「直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない。活動には参加できない」と延長反対の考えを明確に示していた。
▼北朝鮮から、六カ国協議はどうせ米国の言うがままなのだから日本は出る必要はないと言われたことは記憶に新しい。米国はその北朝鮮の核問題で拉致問題を曖昧にしたまま北への「譲歩」を続けている。下院では「従軍慰安婦決議」が成立した。日本人の中には小沢代表の毅然とした発言に溜飲を下げた人もいたかも知れないが、小沢氏は別に「反米」を掲げたわけではなく、民主党の「国連中心主義」の原則を述べたに過ぎない。
▼あれほどの支持率低下でも辞めなかったのが、テロ特措法を巡り野党と対立したからといって辞めるとは、「責任放棄」(古賀誠・自民党元幹事長)と言われても仕方ない。これまでの「対米従属」ばかりが日本の外交ではなくなってきているのだ。
▼与党・自民党が圧倒的に強かった時代は終わった。日本で二大政党制が始まったことに、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた安倍首相自身がついていけなかったようだ。
Thursday, August 30, 2007
歴史の教訓
▼—ある晴れた朝、何千人もの米国人が奇襲で殺され、世界規模の戦争へと駆り立てられた。我々を攻撃したその敵は自由を軽蔑し、米国や西側諸国が自分たちを蔑んでいると信じ、我々への怒りを心に抱き、自爆攻撃に走った——
▼誰しもがアルカイダと9・11テロのことだと思うだろう。しかしこれは1940年代の軍国日本と真珠湾攻撃のことだという。22日、カンザスシティーで開かれた在郷軍人会年次総会でのブッシュ大統領の演説の冒頭だ。
▼「狂信的な神道」の存在などから「日本に民主主義は本質的に相容れないと言う者もいた」とまで語った。大統領は大正デモクラシーのことを勉強していないようだ。
▼そして、「しかし今日、日本は世界でも偉大な自由社会の一つとなった」と述べ、「我々は中東でも同じことができる」と結んだ。要は、戦前の日本をアルカイダと同じようなものと見なし、日本を打ち負かしてよりよい国にしたように、米軍は勝利するまでイラクからは撤退すべきではないという結論である。
▼朝鮮戦争やベトナム戦争の意義にも言及。「ベトナムからの米国の撤退によって、何百万人もの無実の市民が苦しみ—」と語った。退役軍人の前とはいえ、ソ連もナチスも大日本帝国も、ベトナムもアルカイダも、また無差別テロも民間施設を避けた奇襲も、神道もイスラム教もほとんど一緒くただった。
▼さすがにベトナムは、外務省報道官が翌日「(戦争は)民衆にとって正義の戦いだった」と述べ不快感を表明した。日本は、米下院の「従軍慰安婦」決議に反対しワシントンポスト紙に意見広告まで出した人たちも含めほとんど反応がなかった。
▼歴史から教訓を学ぶことは大切だが、歴史を歪曲化の上に単純化して、賢明な判断が出来るとはとても思えない。
(CAPITAL#42より転載)
▼誰しもがアルカイダと9・11テロのことだと思うだろう。しかしこれは1940年代の軍国日本と真珠湾攻撃のことだという。22日、カンザスシティーで開かれた在郷軍人会年次総会でのブッシュ大統領の演説の冒頭だ。
▼「狂信的な神道」の存在などから「日本に民主主義は本質的に相容れないと言う者もいた」とまで語った。大統領は大正デモクラシーのことを勉強していないようだ。
▼そして、「しかし今日、日本は世界でも偉大な自由社会の一つとなった」と述べ、「我々は中東でも同じことができる」と結んだ。要は、戦前の日本をアルカイダと同じようなものと見なし、日本を打ち負かしてよりよい国にしたように、米軍は勝利するまでイラクからは撤退すべきではないという結論である。
▼朝鮮戦争やベトナム戦争の意義にも言及。「ベトナムからの米国の撤退によって、何百万人もの無実の市民が苦しみ—」と語った。退役軍人の前とはいえ、ソ連もナチスも大日本帝国も、ベトナムもアルカイダも、また無差別テロも民間施設を避けた奇襲も、神道もイスラム教もほとんど一緒くただった。
▼さすがにベトナムは、外務省報道官が翌日「(戦争は)民衆にとって正義の戦いだった」と述べ不快感を表明した。日本は、米下院の「従軍慰安婦」決議に反対しワシントンポスト紙に意見広告まで出した人たちも含めほとんど反応がなかった。
▼歴史から教訓を学ぶことは大切だが、歴史を歪曲化の上に単純化して、賢明な判断が出来るとはとても思えない。
(CAPITAL#42より転載)
Sunday, August 12, 2007
参院選と靖国参拝
▼昨年の八月十五日は小泉首相(当時)が靖国神社を参拝し、大騒ぎとなったが、今年は安倍首相を筆頭に十六人の閣僚全員が見送るらしい。
▼一九五〇年代半ば以降、終戦記念日に閣僚が大量参拝するようになったが、一人も参拝しないというのは初めてではないかとみられる。
▼塩崎恭久官房長官は「私の信条でいつも決めていること」、伊吹文明文部科学相は「宗務行政の所管大臣として、公平を期すため」、溝手顕正防災担当相は「行ったことがない」。麻生太郎外相、高市早苗沖縄北方担当相、柳沢伯夫厚生労働相らは外遊など公務で参拝できないとした。菅義偉総務相、長勢甚遠法相、高市氏らは既に参拝済みだからという。
▼そんな中、山本有二金融担当相は「公的立場の参拝は歴史的経緯からアジアの政治的安定を害する」とはっきりと指摘、公明党の冬柴鉄三国土交通相は「宗旨が違うから」としつつ、「信教の自由だが、枢要な地位にある人には隣人の気持ちを配慮する気持ちは必要」と述べている。
▼下院で「慰安婦決議」が可決したばかりのワシントンを訪れた小池百合子防衛相も参拝しない意向を表明。中国、韓国との関係改善ばかりでなく米国の顔色も伺ったのか。
▼参院選での自民敗北の原因として「年金問題」や閣僚の失言・不祥事がよく挙げられるが、「憲法改正」や「戦後レジュームからの脱却」を旗印にした安倍政権に国民は「ノー」と応えた、少なくとも憲法改正などは安倍政権下ではやって欲しくないと答えたのが今回の参院選ではないだろうか。
▼安倍首相は祖父・岸信介を尊敬しているといわれるが、岸信介とは、戦前は満州に進出し対米開戦に同意、戦後は日米安保を強行採決した「昭和の妖怪」であることを国民の多くが思い出したのか。参院選の結果は靖国や慰安婦問題とも関係があったのかも知れない。(武)
(追記:高市氏だけは8月15日、靖国参拝した)
▼一九五〇年代半ば以降、終戦記念日に閣僚が大量参拝するようになったが、一人も参拝しないというのは初めてではないかとみられる。
▼塩崎恭久官房長官は「私の信条でいつも決めていること」、伊吹文明文部科学相は「宗務行政の所管大臣として、公平を期すため」、溝手顕正防災担当相は「行ったことがない」。麻生太郎外相、高市早苗沖縄北方担当相、柳沢伯夫厚生労働相らは外遊など公務で参拝できないとした。菅義偉総務相、長勢甚遠法相、高市氏らは既に参拝済みだからという。
▼そんな中、山本有二金融担当相は「公的立場の参拝は歴史的経緯からアジアの政治的安定を害する」とはっきりと指摘、公明党の冬柴鉄三国土交通相は「宗旨が違うから」としつつ、「信教の自由だが、枢要な地位にある人には隣人の気持ちを配慮する気持ちは必要」と述べている。
▼下院で「慰安婦決議」が可決したばかりのワシントンを訪れた小池百合子防衛相も参拝しない意向を表明。中国、韓国との関係改善ばかりでなく米国の顔色も伺ったのか。
▼参院選での自民敗北の原因として「年金問題」や閣僚の失言・不祥事がよく挙げられるが、「憲法改正」や「戦後レジュームからの脱却」を旗印にした安倍政権に国民は「ノー」と応えた、少なくとも憲法改正などは安倍政権下ではやって欲しくないと答えたのが今回の参院選ではないだろうか。
▼安倍首相は祖父・岸信介を尊敬しているといわれるが、岸信介とは、戦前は満州に進出し対米開戦に同意、戦後は日米安保を強行採決した「昭和の妖怪」であることを国民の多くが思い出したのか。参院選の結果は靖国や慰安婦問題とも関係があったのかも知れない。(武)
(追記:高市氏だけは8月15日、靖国参拝した)
Saturday, July 28, 2007
ウォールストリートジャーナルの買収劇
▼メディア大手ダウ・ジョーンズ(DJ)は16日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)をルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションに総額約50億ドルで売却することで暫定合意した。百年以上DJを支配してきたのオーナー、バンクロフト一族は売却を了承するかどうか近く最終決断を下す。
▼一族三十数人のうち高齢のメンバーを中心に身売りへの反対意見が強いという。マードック氏は編集活動への介入で知られ、買収後にDJの報道姿勢が実際に中立を保てるかどうか疑問に思われているからだ。
▼オーストラリア生まれのマードック氏率いるニューズ社は、FOXテレビ、映画会社20世紀フォックス、英紙タイムズなどを傘下に収める巨大メディアグループ。愛国的なイラク戦争報道など「右寄り」で知られ、大統領選に出馬するヒラリー・クリントン上院議員ら民主党候補はFOXの討論会には出ない。
▼ニューヨーク・タイムズは「バンクロフト家にはWSJを発行し続ける道を模索して欲しい。それが無理であればWSJを保護してくれるような安全な買い手を見つけて欲しい」と指摘し、ニューズ社にだけは売却しないよう求めた。
▼マードック氏がWSJに目をつけたのは、ほとんどの新聞のネット版が過去の記事などを除き基本的に無料の中で、WSJは年間99ドルの利用料を徴収、それでも約80万人が契約しているからと言われる。また、DJの経済金融サービスを活用することで経済報道を強化、10月にはDJとWSJが持つコンテンツをフルに活用した経済専門のテレビ局が開局する。
▼インターネットの普及で、新聞の発行部数減少に歯止めがかからない。DJはメディア業界の競争激化によりこのまま単独での生き残りが難しいと判断したようである。
▼ネットの普及と新聞の低調から始まったメディア再編は大手による寡占へと加速しているが、経済面での「偏向報道」めいたことが起こらないことを祈るばかりである。(武)
▼一族三十数人のうち高齢のメンバーを中心に身売りへの反対意見が強いという。マードック氏は編集活動への介入で知られ、買収後にDJの報道姿勢が実際に中立を保てるかどうか疑問に思われているからだ。
▼オーストラリア生まれのマードック氏率いるニューズ社は、FOXテレビ、映画会社20世紀フォックス、英紙タイムズなどを傘下に収める巨大メディアグループ。愛国的なイラク戦争報道など「右寄り」で知られ、大統領選に出馬するヒラリー・クリントン上院議員ら民主党候補はFOXの討論会には出ない。
▼ニューヨーク・タイムズは「バンクロフト家にはWSJを発行し続ける道を模索して欲しい。それが無理であればWSJを保護してくれるような安全な買い手を見つけて欲しい」と指摘し、ニューズ社にだけは売却しないよう求めた。
▼マードック氏がWSJに目をつけたのは、ほとんどの新聞のネット版が過去の記事などを除き基本的に無料の中で、WSJは年間99ドルの利用料を徴収、それでも約80万人が契約しているからと言われる。また、DJの経済金融サービスを活用することで経済報道を強化、10月にはDJとWSJが持つコンテンツをフルに活用した経済専門のテレビ局が開局する。
▼インターネットの普及で、新聞の発行部数減少に歯止めがかからない。DJはメディア業界の競争激化によりこのまま単独での生き残りが難しいと判断したようである。
▼ネットの普及と新聞の低調から始まったメディア再編は大手による寡占へと加速しているが、経済面での「偏向報道」めいたことが起こらないことを祈るばかりである。(武)
Thursday, July 12, 2007
バイオエタノールと貧困
▼日本でもバイオエタノールを混ぜたガソリンの発売が始まった。バイオエタノールは、車の燃料としてすでに普及が始まっている米国やブラジル始め、欧州諸国、アジアでは中国、インドが推進している。
▼バイオエタノールはトウモロコシや大麦、サトウキビなどの植物から生産されため、石油と違い枯渇することのない半永久的なエネルギーと言われる。また、燃焼の際に二酸化炭素が放出されるのは石油と同じだが、植物が成長する際に光合成で大気中の二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の総量は循環して変化しないことから、地球温暖化の防止対策となるエネルギーとされている。
▼だがこれは食物の需給バランスを大きく変えてしまう問題がある。トウモロコシの値段はこの一年で倍になった。またトウモロコシはソフトドリンクの甘味料の原料やシリアルだけでなく、飼料として畜産や養鶏にも使われている。すると牛・豚・鶏肉、ハム、卵などは言うに及ばず、チーズ、牛乳、アイスクリームといった乳製品がその影響を受ける。日本でもハムやソーセージ、マヨネーズなどの値上げが始まっている。
▼メキシコでは昨年、主食のトウモロコシの値上げに抗議して全土でデモが起きた。DCの環境シンクタンク「アースポリシー研究所」のレスター・ブラウン所長は「八億人の自動車所有者と最も貧しい二十億人が、穀物を巡り争う事態になっている」と警告を発する。
▼深刻なのは、世界で最も貧しい人々が住んでいるアフリカのサハラ以南の国々だ。ここに住む2億人の大半は、収入の半分以上を食費に費やしており、穀物価格が上昇すれば、直ちに生きるか死ぬかの問題になる。現在でも、世界では八億五千四百万人が慢性的な飢餓状態にあり、毎日二万四千人が死んでいる。
▼キューバのカストロ国家評議会議長は、食糧を燃料に転化することで「資本主義は南の貧しい人たちの大量の安楽死を企てている」と批判したが、あながち的外れではない。
▼バイオエタノールはトウモロコシや大麦、サトウキビなどの植物から生産されため、石油と違い枯渇することのない半永久的なエネルギーと言われる。また、燃焼の際に二酸化炭素が放出されるのは石油と同じだが、植物が成長する際に光合成で大気中の二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の総量は循環して変化しないことから、地球温暖化の防止対策となるエネルギーとされている。
▼だがこれは食物の需給バランスを大きく変えてしまう問題がある。トウモロコシの値段はこの一年で倍になった。またトウモロコシはソフトドリンクの甘味料の原料やシリアルだけでなく、飼料として畜産や養鶏にも使われている。すると牛・豚・鶏肉、ハム、卵などは言うに及ばず、チーズ、牛乳、アイスクリームといった乳製品がその影響を受ける。日本でもハムやソーセージ、マヨネーズなどの値上げが始まっている。
▼メキシコでは昨年、主食のトウモロコシの値上げに抗議して全土でデモが起きた。DCの環境シンクタンク「アースポリシー研究所」のレスター・ブラウン所長は「八億人の自動車所有者と最も貧しい二十億人が、穀物を巡り争う事態になっている」と警告を発する。
▼深刻なのは、世界で最も貧しい人々が住んでいるアフリカのサハラ以南の国々だ。ここに住む2億人の大半は、収入の半分以上を食費に費やしており、穀物価格が上昇すれば、直ちに生きるか死ぬかの問題になる。現在でも、世界では八億五千四百万人が慢性的な飢餓状態にあり、毎日二万四千人が死んでいる。
▼キューバのカストロ国家評議会議長は、食糧を燃料に転化することで「資本主義は南の貧しい人たちの大量の安楽死を企てている」と批判したが、あながち的外れではない。
Friday, June 29, 2007
朝鮮半島の南北統一と投機筋
▼米国はマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮の資金送金問題を、米連邦準備銀行を経由させる超法規的措置で決着、ヒル国務次官補が北朝鮮を訪問した。
▼これに対しワシントン・ポスト紙は24日、ヒル国務次官補の訪朝について「米国は次々と北朝鮮に譲歩している」と批判した。北朝鮮が核放棄に向けた具体的な措置はまだ何も取っていないだから無理もない。
▼だが国際原子力機関(IAEA)実務代表団は平壌入り、寧辺の核施設稼働停止など2月の合意に基づく「初期段階措置」と次の段階の核施設「無能力化」に向け、北朝鮮との協議が始まった。
▼米国にとって北朝鮮の核やミサイルはそれほどの脅威ではない。しかし、核ミサイルがイランに流れるとなると話は別だ。イスラエルは本当に危なくなる。いわゆる「レッドライン」であるが、逆にそれさえ守られれば譲歩もする。
▼今回の6カ国協議が再開されるとすぐ、国際金融市場で北朝鮮の不良債権約4千億ウォン(約500億円)の取引が頻繁化、最近では米国や日本の投資家が買っているという。この債券は北朝鮮の債務不履行となった負債の一部を97年にBNPパリバ証券が証券に転換したものでスイス・フランやドイツ・マルク建て。額面1ドル当たり10セント未満の捨値だったのが20セント近くまで上昇しているという。
▼満期は2010年。南北統一がなされれば、韓国政府が肩代わりし額面払いをする可能性があり、ぼろ儲けになる。これに似た例として、過去にはベトナム債券の例があり、次にはキューバが控えていると言われる。
▼投資会社ゴールドマンサックスは2005年の段階で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続く経済発展地域として11の国(Next11)を挙げているが、その一つに、北でも南でもなく朝鮮(Korea)とある。気の早い投機筋では南北統一は織り込み済みなのだ。
▼これに対しワシントン・ポスト紙は24日、ヒル国務次官補の訪朝について「米国は次々と北朝鮮に譲歩している」と批判した。北朝鮮が核放棄に向けた具体的な措置はまだ何も取っていないだから無理もない。
▼だが国際原子力機関(IAEA)実務代表団は平壌入り、寧辺の核施設稼働停止など2月の合意に基づく「初期段階措置」と次の段階の核施設「無能力化」に向け、北朝鮮との協議が始まった。
▼米国にとって北朝鮮の核やミサイルはそれほどの脅威ではない。しかし、核ミサイルがイランに流れるとなると話は別だ。イスラエルは本当に危なくなる。いわゆる「レッドライン」であるが、逆にそれさえ守られれば譲歩もする。
▼今回の6カ国協議が再開されるとすぐ、国際金融市場で北朝鮮の不良債権約4千億ウォン(約500億円)の取引が頻繁化、最近では米国や日本の投資家が買っているという。この債券は北朝鮮の債務不履行となった負債の一部を97年にBNPパリバ証券が証券に転換したものでスイス・フランやドイツ・マルク建て。額面1ドル当たり10セント未満の捨値だったのが20セント近くまで上昇しているという。
▼満期は2010年。南北統一がなされれば、韓国政府が肩代わりし額面払いをする可能性があり、ぼろ儲けになる。これに似た例として、過去にはベトナム債券の例があり、次にはキューバが控えていると言われる。
▼投資会社ゴールドマンサックスは2005年の段階で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続く経済発展地域として11の国(Next11)を挙げているが、その一つに、北でも南でもなく朝鮮(Korea)とある。気の早い投機筋では南北統一は織り込み済みなのだ。
Wednesday, June 13, 2007
ミサイル防衛(MD)と米露冷戦
▼冷戦は終わっていなかったのだろうか。ブッシュ米大統領が欧州七カ国歴訪を終えた。欧州にミサイル防衛(MD)を広める旅だったと言ってよいが、危うくロシアと衝突しそうになった。
▼米国は、チェコとポーランドに配備するMDについて「対ロシアではなく、対北朝鮮・イランだ」と再三にわたり主張してきた。だが、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は4日、「イランのミサイルは欧州に届かない。今年一番のジョークだ」と皮肉った。北朝鮮のミサイルが欧州に届くのを信じる者も皆無だ。
▼ブッシュ米大統領は7日、ドイツでプーチン露大統領と会談。プーチン大統領は、レーダー施設建設予定地をチェコから旧ソ連・中央アジアのアゼルバイジャンに変更、代替施設とすることを提案した。
▼なるほどアゼルバイジャンはイランのすぐ北だ。イランのミサイルが対象であれば、こんなに適切な場所もないだろう。これを拒否すれば、ミサイル防衛は対北朝鮮・イランという主張が嘘だということになってしまう。ブッシュ大統領は仕方なく評価し、両首脳は協議継続で合意した。
▼ロシアは、エリツィン大統領時代に米国の言う事を聞いたばかりに悲惨な経済状態となったことを忘れてはいない。石油会社を国有化し、資源大国として復活しつつある。これに対し米国は影で封じ込め政策を画策してきたとされる。03年のグルジアでバラ革命、04年のウクライナ・オレンジ革命、05年キルギス・チューリップ革命。これら旧ソ連諸国での動きは米国の後ろ盾があったと目されている。
▼欧州のミサイル防衛(MD)計画が対ロシア戦略であることは明白だろう。ブッシュ米大統領は5日、チェコのプラハで演説し、ロシア(中国もだが)との間に「大きな不一致」があるとの見解を表明し、ロシアは「国民主権を約束した改革が脱線している」と明言した。新たな米露冷戦が始まっている。
▼米国は、チェコとポーランドに配備するMDについて「対ロシアではなく、対北朝鮮・イランだ」と再三にわたり主張してきた。だが、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は4日、「イランのミサイルは欧州に届かない。今年一番のジョークだ」と皮肉った。北朝鮮のミサイルが欧州に届くのを信じる者も皆無だ。
▼ブッシュ米大統領は7日、ドイツでプーチン露大統領と会談。プーチン大統領は、レーダー施設建設予定地をチェコから旧ソ連・中央アジアのアゼルバイジャンに変更、代替施設とすることを提案した。
▼なるほどアゼルバイジャンはイランのすぐ北だ。イランのミサイルが対象であれば、こんなに適切な場所もないだろう。これを拒否すれば、ミサイル防衛は対北朝鮮・イランという主張が嘘だということになってしまう。ブッシュ大統領は仕方なく評価し、両首脳は協議継続で合意した。
▼ロシアは、エリツィン大統領時代に米国の言う事を聞いたばかりに悲惨な経済状態となったことを忘れてはいない。石油会社を国有化し、資源大国として復活しつつある。これに対し米国は影で封じ込め政策を画策してきたとされる。03年のグルジアでバラ革命、04年のウクライナ・オレンジ革命、05年キルギス・チューリップ革命。これら旧ソ連諸国での動きは米国の後ろ盾があったと目されている。
▼欧州のミサイル防衛(MD)計画が対ロシア戦略であることは明白だろう。ブッシュ米大統領は5日、チェコのプラハで演説し、ロシア(中国もだが)との間に「大きな不一致」があるとの見解を表明し、ロシアは「国民主権を約束した改革が脱線している」と明言した。新たな米露冷戦が始まっている。
Wednesday, May 23, 2007
ブッシュ政権最後の花
▼ニューズウィーク誌(電子版)の最新世論調査結果によると、ブッシュ大統領の支持率は28%で同誌の調査で過去最低を記録した。これは1979年にテヘランの米大使館人質事件が起きたときのカーター大統領(当時)の支持率と同じだという。
▼ブッシュ大統領は今月頭にイラク駐留米軍の撤退を来年3月末までに完了させるという民主党主導の戦費支出法案に対し拒否権を行使した。イラク政策での拒否権行使は初めてで、9・11テロ以降、一丸となってアフガン、イラク戦争と邁進してきた米国の強硬な外交政策は終わりの兆しを見せている。
▼イラク開戦については、米中央情報局(CIA)のテネット元長官は先頃発売されたの自著「嵐の真ん中で」の中で、当初よりフセイン政権とアルカイダの関係は見つからなく、大量破壊兵器の確証もなかったことを暴露。もともとチェイニー副大統領が、9・11テロの発生前の2001年1月の政権発足時からイラク攻撃を計画していたことも明らかにした。
▼9日にはイラク開戦に踏み切った「盟友」ブレア英首相が退陣表明。開戦時から大統領を支持した主要国のリーダーのうち残っているのはオーストラリアのハワード首相だけとなり、イラク復興の「有志連合」の結束も弱まりつつある。
▼だが、一方で核開発阻止を理由としたイランへの空爆も計画が進んでいるされる。21世紀の世界にあって、戦争という方法はゲリラやテロの横行を見れば分かる通り、それで決着するとは言えなくなってきているにも関わらず、力への過信は根強い。
▼すでにレームダック(死に体)状態のブッシュ政権だが、中国の胡錦濤国家主席がブッシュ大統領を来年の北京五輪開会式に招待、首脳会談の可能性も検討しているという。平和の祭典五輪での米中首脳会談で、ブッシュ政権の最後の花が咲くだろうか。
▼ブッシュ大統領は今月頭にイラク駐留米軍の撤退を来年3月末までに完了させるという民主党主導の戦費支出法案に対し拒否権を行使した。イラク政策での拒否権行使は初めてで、9・11テロ以降、一丸となってアフガン、イラク戦争と邁進してきた米国の強硬な外交政策は終わりの兆しを見せている。
▼イラク開戦については、米中央情報局(CIA)のテネット元長官は先頃発売されたの自著「嵐の真ん中で」の中で、当初よりフセイン政権とアルカイダの関係は見つからなく、大量破壊兵器の確証もなかったことを暴露。もともとチェイニー副大統領が、9・11テロの発生前の2001年1月の政権発足時からイラク攻撃を計画していたことも明らかにした。
▼9日にはイラク開戦に踏み切った「盟友」ブレア英首相が退陣表明。開戦時から大統領を支持した主要国のリーダーのうち残っているのはオーストラリアのハワード首相だけとなり、イラク復興の「有志連合」の結束も弱まりつつある。
▼だが、一方で核開発阻止を理由としたイランへの空爆も計画が進んでいるされる。21世紀の世界にあって、戦争という方法はゲリラやテロの横行を見れば分かる通り、それで決着するとは言えなくなってきているにも関わらず、力への過信は根強い。
▼すでにレームダック(死に体)状態のブッシュ政権だが、中国の胡錦濤国家主席がブッシュ大統領を来年の北京五輪開会式に招待、首脳会談の可能性も検討しているという。平和の祭典五輪での米中首脳会談で、ブッシュ政権の最後の花が咲くだろうか。
Sunday, May 13, 2007
銃規制と米国社会
▼バージニア工科大学で犯人も含め33人死亡という銃撃による惨劇が起きた。一人の若者によって数時間で行われたため大事件となったが、米国は毎日平均33人が銃で死んでいる国である。日本の銃による年間死亡総数平均39人に比較すると驚くべき数字である。
▼そして今回も米国では銃規制の声は小さい。「他の学生も銃を持っていれば32人も殺される前に犯人を射殺できた」(FOXニュース)という声があったくらいだ。米国の異常性を物語る。
▼銃規制が進まないことが議論されると、決まって武器所有の権利を定めている米憲法修正第二条と、全米ライフル協会(NRA)の存在があげられるが、もともと米国人の多くが武器がないと安心して住めないと脅えている現状があるのだという。すでに銃が広く行き渡っているためだ。
▼2億丁の銃が出回り、毎年1万人以上が銃で殺され、自殺や事故を含めれば3万人以上が亡くなる米国。交通事故で年間4万人が亡くなるが、車をなくせという声がないのと同じく、ここまで浸透してしまった銃の規制は不可能なのか。
▼だが、米国では科学的検証と世論の高まりによって、30年前だったら考えられなかったような禁煙条例が全米に広がった例もある。喫煙と銃は個人の権利と死因という点で共通するものがある。
▼来年の大統領選に向け、民主党の候補を目指すヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員のいずれも銃規制に積極的。共和党の候補でもジュリアーニ前ニューヨーク市長も一定の規制は必要との認識だ。銃規制は、これに反対だったブッシュ政権が終われば、銃規制に肯定的な民主党が上下院とも多数派でもあることから、大きく前進する可能性がある。
▼世界を見渡せば年間の死者が3万9千人に達するブラジルなど米国以上に銃による死者を出している国もある。人口比率ではベネズエラがもっとも高い(中東などの紛争地域を除く)。
▼銃規制をすればそれで済む問題ではないのも事実だ。カナダと米国の銃の普及率は同程度だが、カナダの銃による死者は10分の1以下という。
▼組織と個人ではあるが、ある種の「逆恨み」によって「アメリカ人」を大量に殺害した9・11テロをどこか想起してしまったのは私だけだろうか。銃の規制と共に、米国社会の病理を見つめ、これを改善していく方法も求められている。
▼そして今回も米国では銃規制の声は小さい。「他の学生も銃を持っていれば32人も殺される前に犯人を射殺できた」(FOXニュース)という声があったくらいだ。米国の異常性を物語る。
▼銃規制が進まないことが議論されると、決まって武器所有の権利を定めている米憲法修正第二条と、全米ライフル協会(NRA)の存在があげられるが、もともと米国人の多くが武器がないと安心して住めないと脅えている現状があるのだという。すでに銃が広く行き渡っているためだ。
▼2億丁の銃が出回り、毎年1万人以上が銃で殺され、自殺や事故を含めれば3万人以上が亡くなる米国。交通事故で年間4万人が亡くなるが、車をなくせという声がないのと同じく、ここまで浸透してしまった銃の規制は不可能なのか。
▼だが、米国では科学的検証と世論の高まりによって、30年前だったら考えられなかったような禁煙条例が全米に広がった例もある。喫煙と銃は個人の権利と死因という点で共通するものがある。
▼来年の大統領選に向け、民主党の候補を目指すヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員のいずれも銃規制に積極的。共和党の候補でもジュリアーニ前ニューヨーク市長も一定の規制は必要との認識だ。銃規制は、これに反対だったブッシュ政権が終われば、銃規制に肯定的な民主党が上下院とも多数派でもあることから、大きく前進する可能性がある。
▼世界を見渡せば年間の死者が3万9千人に達するブラジルなど米国以上に銃による死者を出している国もある。人口比率ではベネズエラがもっとも高い(中東などの紛争地域を除く)。
▼銃規制をすればそれで済む問題ではないのも事実だ。カナダと米国の銃の普及率は同程度だが、カナダの銃による死者は10分の1以下という。
▼組織と個人ではあるが、ある種の「逆恨み」によって「アメリカ人」を大量に殺害した9・11テロをどこか想起してしまったのは私だけだろうか。銃の規制と共に、米国社会の病理を見つめ、これを改善していく方法も求められている。
Saturday, April 14, 2007
靖国神社A級戦犯合祀に国が関与か
▼東東条英機元首相らA級戦犯の靖国神社合祀は国際問題にまでなっているが、日本政府はこれまで「承知していない」との立場を取ってきた。
▼ところが、当時の厚生省が1958年頃から神社と協議を重ね、戦犯合祀を積極的に働き掛けていたことが、このほど国立国会図書館が公表した「新編 靖国神社問題資料集」で判明した。
▼資料によると、58年に厚生省は神社とA級を含めた戦犯合祀について議論。66年にはA級戦犯合祀のため名簿(祭神名票)を神社に送付、69年には神社側とA級戦犯について「合祀可」との見解を確認した。
▼安倍首相は「問題ない。合祀を行ったのは神社だ。(旧厚生省は)情報を求められ(資料を)提出したということではないか」と述べ、憲法の政教分離原則に抵触しないとの判断を示した。
▼だが、今回の内部資料は、国と靖国神社が一体となり、戦犯合祀に取り組んできたことを示している。国側が秘密裏に進めるよう積極的に働き掛けた様子すらかいま見える。
▼さぞや韓国や中国の反発は大きいかと思われたが、韓国の宋旻淳(ソンミンスン)外交通商相は麻生外相との会談の中で、「根本的解決にしっかり対応してほしい」とし、無宗教の国立追悼施設建設や分祀に対する期待感を表明するに留まった。訪日間際の中国の温家宝首相は「(日本の首相による靖国神社参拝は)中国人民の感情を著しく傷つけた。二度とないよう希望する」とけん制するに留めた。中韓とも小泉政権時代に冷えきった日本との関係改善を優先させたい意向がうかがえる。
▼だが、取り巻く状況が変われば新たな火種として火を吹く可能性がある。しかも今回の資料は70年以降については明らかにされていない(A級戦犯合祀は1978年)。海外からの批判があるからではなく、まずは憲法の政教分離原則に抵触しないのか、また当時の厚生省の引揚援護局にいた旧軍人グループの動きも含め、全容解明を日本政府は進めるべきではないのか。
▼ところが、当時の厚生省が1958年頃から神社と協議を重ね、戦犯合祀を積極的に働き掛けていたことが、このほど国立国会図書館が公表した「新編 靖国神社問題資料集」で判明した。
▼資料によると、58年に厚生省は神社とA級を含めた戦犯合祀について議論。66年にはA級戦犯合祀のため名簿(祭神名票)を神社に送付、69年には神社側とA級戦犯について「合祀可」との見解を確認した。
▼安倍首相は「問題ない。合祀を行ったのは神社だ。(旧厚生省は)情報を求められ(資料を)提出したということではないか」と述べ、憲法の政教分離原則に抵触しないとの判断を示した。
▼だが、今回の内部資料は、国と靖国神社が一体となり、戦犯合祀に取り組んできたことを示している。国側が秘密裏に進めるよう積極的に働き掛けた様子すらかいま見える。
▼さぞや韓国や中国の反発は大きいかと思われたが、韓国の宋旻淳(ソンミンスン)外交通商相は麻生外相との会談の中で、「根本的解決にしっかり対応してほしい」とし、無宗教の国立追悼施設建設や分祀に対する期待感を表明するに留まった。訪日間際の中国の温家宝首相は「(日本の首相による靖国神社参拝は)中国人民の感情を著しく傷つけた。二度とないよう希望する」とけん制するに留めた。中韓とも小泉政権時代に冷えきった日本との関係改善を優先させたい意向がうかがえる。
▼だが、取り巻く状況が変われば新たな火種として火を吹く可能性がある。しかも今回の資料は70年以降については明らかにされていない(A級戦犯合祀は1978年)。海外からの批判があるからではなく、まずは憲法の政教分離原則に抵触しないのか、また当時の厚生省の引揚援護局にいた旧軍人グループの動きも含め、全容解明を日本政府は進めるべきではないのか。
Wednesday, March 28, 2007
利用された「愛国法」
▼下院司法小委員会は、民主党に近いとみられる米連邦地検検事正8人の解任を司法省に指示したと思われるローブ大統領次席補佐官らの議会宣誓証言を求めて召喚状を出すことを決めた。民主党はローブ氏らの追及に一歩も引かない構えだ。
▼ブッシュ大統領は昨年10月、民主党メンバーによる選挙違反疑惑の捜査に真剣に取り組んでいない地検検事正がいるとの共和党上院議員らの指摘を司法長官に伝達、2カ月後に7人の検事正が解任された(もう一人はそれ以前に解任)。
▼大統領は検事正を含む広範な「政治的任命権」があるとし、政権の承認の下、8人を解任したゴンザレス司法長官の決定は適切だったと強調。当初はブッシュ政権のマイヤース法律顧問が、93人全員の交代を司法省に提案していたことも分かった。
▼米国では司法長官が日本でいう法相と検事総長を兼ねているため、政権と一体ではないかと思われがちだがそうではない。連邦検事の任命には議会の承認で、政権とは一定の独立が保たれているのだ。
▼ところが、9・11のテロ後に制定された「愛国法」で、連邦検事が欠けた場合、大統領が暫定検事を任命できるが、すぐに議会承認がなされない場合、任命した大統領の任期一杯(本来は120日以内)暫定検事が職務を全うできるようになった。
▼一方、CIA工作員名漏えい事件で、チェイニー副大統領の元首席補佐官、ルイス・リビー被告を偽証罪などに問い、有罪の評決を勝ち取ったフィッツジェラルド特別検察官について、司法省が「際だって優秀ではない」と低評価し、政権に「忠誠を示す検事正」と「異を唱える検事正」の間に位置付けていたことが判明した。同氏と同ランクだった二人は後に解任された。
▼CIA工作員名漏えい事件では、ローブ大統領次席補佐官まで追及の手が及びそうであった。解任問題は、愛国法のため後退した民主システムを使っての、フィッツジェラルド氏のような辣腕検事正排除の「陰謀」ではないかと見られている。
▼ブッシュ大統領は昨年10月、民主党メンバーによる選挙違反疑惑の捜査に真剣に取り組んでいない地検検事正がいるとの共和党上院議員らの指摘を司法長官に伝達、2カ月後に7人の検事正が解任された(もう一人はそれ以前に解任)。
▼大統領は検事正を含む広範な「政治的任命権」があるとし、政権の承認の下、8人を解任したゴンザレス司法長官の決定は適切だったと強調。当初はブッシュ政権のマイヤース法律顧問が、93人全員の交代を司法省に提案していたことも分かった。
▼米国では司法長官が日本でいう法相と検事総長を兼ねているため、政権と一体ではないかと思われがちだがそうではない。連邦検事の任命には議会の承認で、政権とは一定の独立が保たれているのだ。
▼ところが、9・11のテロ後に制定された「愛国法」で、連邦検事が欠けた場合、大統領が暫定検事を任命できるが、すぐに議会承認がなされない場合、任命した大統領の任期一杯(本来は120日以内)暫定検事が職務を全うできるようになった。
▼一方、CIA工作員名漏えい事件で、チェイニー副大統領の元首席補佐官、ルイス・リビー被告を偽証罪などに問い、有罪の評決を勝ち取ったフィッツジェラルド特別検察官について、司法省が「際だって優秀ではない」と低評価し、政権に「忠誠を示す検事正」と「異を唱える検事正」の間に位置付けていたことが判明した。同氏と同ランクだった二人は後に解任された。
▼CIA工作員名漏えい事件では、ローブ大統領次席補佐官まで追及の手が及びそうであった。解任問題は、愛国法のため後退した民主システムを使っての、フィッツジェラルド氏のような辣腕検事正排除の「陰謀」ではないかと見られている。
Tuesday, March 13, 2007
言い逃れか、恥の上塗りか
▼旧日本軍の従軍慰安婦問題で日本政府に謝罪などを求める米下院の対日決議案の共同提案者が、当初の6人から42人に増えた(12日時点)。リベラル派が多数だが、ダンカン・ハンター前軍事委員長(共和党)や決議案に反対していた親日派のローラバッカー下院議員(共和党)のような保守派も賛成に回っている。
▼日系のホンダ議員(民主党)らが提出した決議案は、当時の日本政府が関与し、「軍の強制売春」があったとして「残酷さと規模において前例がない」と非難。過去に四回提出され、昨年初めて下院外交委員会で可決されたが、日本政府の協力なロビイスト活動もあり、廃案となった。
▼今年は元慰安婦3人による公聴会も開かれ、韓国人元慰安婦の金君子さん(81)は「多い日には40人に強姦(ごうかん)され」、妊娠し中絶を強いられたと証言した。今回の決議案は「人権」と「女性の権利」に力点が置かれ、女性のペロシ下院議長(民主党)が理解を示していることから、本会議で可決される公算が大きい。
▼安倍首相は「決議があったからと言って、我々が謝罪することはない」と断言。従軍慰安婦に対する「おわびと反省の気持ち」を表明した93年の河野官房長官談話を「基本的に継承する」と言いつつ、「決議案は客観的事実に基づいておらず、日本政府のこれまでの対応を踏まえていない」と指摘、政府、自民党で再調査する考えを表明した。
▼これに米国メディアは猛反発。ニューヨークタイムズ紙は「連続的レイプで売春ではなかった」と書き、ロサンゼルスタイムズ紙は天皇による謝罪を提案する社説まで掲載した。
▼首相は11日のNHKの番組で「慰安婦の心の傷は大変な傷。心からおわびしている」と発言したが、ホンダ議員は、歓迎するが公式の謝罪には至っていないと一蹴。首相の主張は、軍が人さらいのように連行する「狭義の強制はなかった」のようだが、経過を見るに「言い逃れ」と思われても仕方ない。間違っても「恥の上塗り」は避けて欲しいものだ。(CAPITAL 07年3月15日号より転載)
▼日系のホンダ議員(民主党)らが提出した決議案は、当時の日本政府が関与し、「軍の強制売春」があったとして「残酷さと規模において前例がない」と非難。過去に四回提出され、昨年初めて下院外交委員会で可決されたが、日本政府の協力なロビイスト活動もあり、廃案となった。
▼今年は元慰安婦3人による公聴会も開かれ、韓国人元慰安婦の金君子さん(81)は「多い日には40人に強姦(ごうかん)され」、妊娠し中絶を強いられたと証言した。今回の決議案は「人権」と「女性の権利」に力点が置かれ、女性のペロシ下院議長(民主党)が理解を示していることから、本会議で可決される公算が大きい。
▼安倍首相は「決議があったからと言って、我々が謝罪することはない」と断言。従軍慰安婦に対する「おわびと反省の気持ち」を表明した93年の河野官房長官談話を「基本的に継承する」と言いつつ、「決議案は客観的事実に基づいておらず、日本政府のこれまでの対応を踏まえていない」と指摘、政府、自民党で再調査する考えを表明した。
▼これに米国メディアは猛反発。ニューヨークタイムズ紙は「連続的レイプで売春ではなかった」と書き、ロサンゼルスタイムズ紙は天皇による謝罪を提案する社説まで掲載した。
▼首相は11日のNHKの番組で「慰安婦の心の傷は大変な傷。心からおわびしている」と発言したが、ホンダ議員は、歓迎するが公式の謝罪には至っていないと一蹴。首相の主張は、軍が人さらいのように連行する「狭義の強制はなかった」のようだが、経過を見るに「言い逃れ」と思われても仕方ない。間違っても「恥の上塗り」は避けて欲しいものだ。(CAPITAL 07年3月15日号より転載)
Monday, February 19, 2007
核兵器のない世界
▼年頭の1月4日、ウォールストリートジャーナル紙にニクソン、フォード両政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長の4人の連名による「核兵器のない世界」と題する論文が掲載された。
▼論文は、北朝鮮とイランの核開発はもとより、テロリストに核兵器渡る危険がある現在、冷戦時代の戦略となっていた核抑止力に依存することは、「ますます危険で、ますます有効でなくなっている」と警告、核兵器廃絶のために「核保有国の指導者が努力を強め、核兵器のない世界という目標を共同の事業とすること」を提言している。
▼核の恐怖の均衡下にあった冷戦時代に世界戦略を立案、推進してきたキッシンジャー及びシュルツ元国務長官らがこうした見解を述べた意義は大きい。
▼ペリー元国防長官はクリントン政権では核開発阻止のためには空爆も辞さないと主張してきた強硬派でもあった。このままでは2010年までに核戦争が起きると数年前より警告してきた。
▼論文では「核兵器のない世界というビジョンと、その実現に向けた現実的措置を改めて主張することは、米国の倫理的な伝統とも両立する」とし、米国が世界をリードして核兵器廃絶に向けた行動を取るよう進言している。
▼北朝鮮との六カ国協議は前進したが、イランはウラン濃縮を止めないと改めて宣言した。先制核使用も辞さず、小型核開発に熱心なブッシュ政権はこの進言をどう受けとめたか。
▼日本では昨年「核武装論議」が起きたが、唯一の被爆国である日本が核武装したら核不拡散条約(NPT)体制が完全に崩壊することが分かっての核論議だったのだろうか? 核武装をしたがっている国は、一説では実に30か国ほどにのぼっているということを忘れてはならない。(CAPITAL07年2月15日号より)
▼論文は、北朝鮮とイランの核開発はもとより、テロリストに核兵器渡る危険がある現在、冷戦時代の戦略となっていた核抑止力に依存することは、「ますます危険で、ますます有効でなくなっている」と警告、核兵器廃絶のために「核保有国の指導者が努力を強め、核兵器のない世界という目標を共同の事業とすること」を提言している。
▼核の恐怖の均衡下にあった冷戦時代に世界戦略を立案、推進してきたキッシンジャー及びシュルツ元国務長官らがこうした見解を述べた意義は大きい。
▼ペリー元国防長官はクリントン政権では核開発阻止のためには空爆も辞さないと主張してきた強硬派でもあった。このままでは2010年までに核戦争が起きると数年前より警告してきた。
▼論文では「核兵器のない世界というビジョンと、その実現に向けた現実的措置を改めて主張することは、米国の倫理的な伝統とも両立する」とし、米国が世界をリードして核兵器廃絶に向けた行動を取るよう進言している。
▼北朝鮮との六カ国協議は前進したが、イランはウラン濃縮を止めないと改めて宣言した。先制核使用も辞さず、小型核開発に熱心なブッシュ政権はこの進言をどう受けとめたか。
▼日本では昨年「核武装論議」が起きたが、唯一の被爆国である日本が核武装したら核不拡散条約(NPT)体制が完全に崩壊することが分かっての核論議だったのだろうか? 核武装をしたがっている国は、一説では実に30か国ほどにのぼっているということを忘れてはならない。(CAPITAL07年2月15日号より)
Tuesday, January 30, 2007
中東大戦争の予兆
▼ブッシュ大統領は1月10日、イラク派兵を約2万人増やすと同時に、「イランとシリアは、イラクの反米ゲリラへの資金提供や武器供給、ゲリラの軍事訓練をしておりイラク再建を邪魔している。妨害工作を潰すため、戦線を拡大する」という驚くべき演説を行った。
▼ブッシュ政権はこれまで「イランが核兵器を開発している」と主張してきたが、CIAが昨年11月に改めて「イランが核兵器を開発していると考えられる証拠は何もない」とする報告書を発表したため、新たな「口実」を考えたかのようだ。
▼ゲーツ国防長官は「この地域で別の紛争を起こそうとは誰も思っていない」と対イラン武力行使を否定するが、イラク北部のイラン関係施設を米軍が家宅捜索しイラン人を拘束、ペルシャ湾には二隻目の空母派遣、イラン大手国営銀行への金融制裁など次々に圧力をかけ、まるでイランを挑発しているかのようだ。
▼中東のドミノ的民主化を主張していたネオコンが政権から去り、ベーカー元米国務長官らが昨年末、イラク情勢打開のためにイランとの対話を求める報告書を提出したが、政権はこれをまったく無視している。
▼イラクにイスラム教シーア派主導の政権が誕生したことで、シーア派の大国イランが中東全域への影響力を拡大しつつあるとの危機感があるとされるが、真相は石油そのものの資源争奪戦にだけあるのではない。
▼イラク侵攻の裏にあったのは、石油のドル建て決済をイラク・フセイン政権がやめようとしたからである。ここ数年、イランをはじめ世界中のかなりの国がドル建て決済からユーロなどにシフトし始めている。
▼そうなれば、どんなに貿易赤字、財政赤字、対外債務国だろうがドルを刷ってさえいればよかった米国の基軸通貨ドル体制は崩れ、米国は貿易赤字超大国になり国家破産すら考えられる。
▼大統領は23日の一般教書演説でもイラク増派への理解を求めたが、米国がイランと戦争したがっている理由は核問題ではなく、石油でもなく通貨問題なのである。
(CAPITAL07年2月1日号より)
▼ブッシュ政権はこれまで「イランが核兵器を開発している」と主張してきたが、CIAが昨年11月に改めて「イランが核兵器を開発していると考えられる証拠は何もない」とする報告書を発表したため、新たな「口実」を考えたかのようだ。
▼ゲーツ国防長官は「この地域で別の紛争を起こそうとは誰も思っていない」と対イラン武力行使を否定するが、イラク北部のイラン関係施設を米軍が家宅捜索しイラン人を拘束、ペルシャ湾には二隻目の空母派遣、イラン大手国営銀行への金融制裁など次々に圧力をかけ、まるでイランを挑発しているかのようだ。
▼中東のドミノ的民主化を主張していたネオコンが政権から去り、ベーカー元米国務長官らが昨年末、イラク情勢打開のためにイランとの対話を求める報告書を提出したが、政権はこれをまったく無視している。
▼イラクにイスラム教シーア派主導の政権が誕生したことで、シーア派の大国イランが中東全域への影響力を拡大しつつあるとの危機感があるとされるが、真相は石油そのものの資源争奪戦にだけあるのではない。
▼イラク侵攻の裏にあったのは、石油のドル建て決済をイラク・フセイン政権がやめようとしたからである。ここ数年、イランをはじめ世界中のかなりの国がドル建て決済からユーロなどにシフトし始めている。
▼そうなれば、どんなに貿易赤字、財政赤字、対外債務国だろうがドルを刷ってさえいればよかった米国の基軸通貨ドル体制は崩れ、米国は貿易赤字超大国になり国家破産すら考えられる。
▼大統領は23日の一般教書演説でもイラク増派への理解を求めたが、米国がイランと戦争したがっている理由は核問題ではなく、石油でもなく通貨問題なのである。
(CAPITAL07年2月1日号より)
Wednesday, January 10, 2007
500年後のフセイン元大統領
▼7日付ニューヨーク・タイムズが、昨年12月30日に行われたイラクのフセイン元大統領の死刑執行を巡り、イラク政府と米国の間で駆け引きがあったことを伝えた。
▼米国は、イスラム教で最も重要な犠牲祭を控えていたことなどを踏まえ、ハリルザド駐イラク米大使らが処刑を急がないよう重ねて説得。しかし、マリキ政権の「早く身柄を渡せ」との強硬な姿勢に最終的に説得をあきらめ、ライス国務長官に連絡を取って了承されたという。
▼死刑は元大統領暗殺未遂事件が起きた中部ドジャイルで、シーア派住民148人を虐殺した罪に対して行われたもので、裁判の公正さを疑問視し、死刑に反対していた欧州諸国や国際人権団体からは批判が噴出した。
▼処刑の模様はニュースでも放映されたが、執行に立ち会った者が携帯電話で撮影した生々しい処刑現場がインターネットで世界中に流れた。撮影者は逮捕されたが、元大統領が弾圧したシーア派やクルド人が中枢を占めるマリキ政権による「報復的処置」との見方を裏付けるようなものだった。
▼処刑により、公判中だった80年代のクルド人弾圧や、88年の北東部ハラブジャでの化学兵器による住民虐殺、90年のクウェート侵攻などの捜査は打ち切られた。欧米のメディアは歴史の証言者としてフセイン元大統領へのインタビューを切望していたが、米国との蜜月時代もあったフセイン政権の真相は闇に葬られたと言えるだろう。
▼明治天皇を尊敬していたというフセイン元大統領は、「現在どのように評価されようとまったく気にしない。500年後に崇拝されているかどうかだ」とある伝記作家に伝えたという。このようなことを言わせないためにも、死刑は行うべきではなかった。
(Capital07年1月15日号より)
▼米国は、イスラム教で最も重要な犠牲祭を控えていたことなどを踏まえ、ハリルザド駐イラク米大使らが処刑を急がないよう重ねて説得。しかし、マリキ政権の「早く身柄を渡せ」との強硬な姿勢に最終的に説得をあきらめ、ライス国務長官に連絡を取って了承されたという。
▼死刑は元大統領暗殺未遂事件が起きた中部ドジャイルで、シーア派住民148人を虐殺した罪に対して行われたもので、裁判の公正さを疑問視し、死刑に反対していた欧州諸国や国際人権団体からは批判が噴出した。
▼処刑の模様はニュースでも放映されたが、執行に立ち会った者が携帯電話で撮影した生々しい処刑現場がインターネットで世界中に流れた。撮影者は逮捕されたが、元大統領が弾圧したシーア派やクルド人が中枢を占めるマリキ政権による「報復的処置」との見方を裏付けるようなものだった。
▼処刑により、公判中だった80年代のクルド人弾圧や、88年の北東部ハラブジャでの化学兵器による住民虐殺、90年のクウェート侵攻などの捜査は打ち切られた。欧米のメディアは歴史の証言者としてフセイン元大統領へのインタビューを切望していたが、米国との蜜月時代もあったフセイン政権の真相は闇に葬られたと言えるだろう。
▼明治天皇を尊敬していたというフセイン元大統領は、「現在どのように評価されようとまったく気にしない。500年後に崇拝されているかどうかだ」とある伝記作家に伝えたという。このようなことを言わせないためにも、死刑は行うべきではなかった。
(Capital07年1月15日号より)
Thursday, January 04, 2007
豚と猪
▼今年は豚年、などというと驚かれると思うが、中国も朝鮮もベトナムも十二支の最後十二番目の動物は猪ではなく豚である。
▼中国語では「猪」とは「豚」のことである。ご存じの通り、「西遊記」の猪八戒はブタだ。中国語ではイノシシを「野猪」である。
▼どうも、十二支が大陸から伝わった時、日本にはイノシシの家畜である豚がまだ存在していなかったらしい。それで猪がイノシシになったようだ。
▼イノシシの語源は「猪(い)の獣(しし)」から。現在でも干支のイノシシを「亥(い)」と言うが、この「い」は古くは「ヰ(ゐ)」で、鳴き声を表した擬声語で「ウィ」と発音していた。つまり、ウィと鳴く獣が猪だ。
▼英語ではWild boarで、Wild pigとも。直訳で野ブタだ。ユーラシア大陸を中心に世界中至る所に分布し、米国にも多少生息する。アニメ「ライオン・キング」のブンバはイボイノシシ。日本にいるのは日本にはニホンイノシシとリュウキュウイノシシ。
▼猪の肉は「牡丹肉」とも言われる。白い脂肪に縁どられた赤い肉を切り分けて皿に盛った状態が牡丹の花のように見えるからだ。獣の肉食がタブーとされた時代も「山鯨(やまくじら)」と称して例外的に食べていた。
▼「薬喰い」の別名もある通り、滋養強壮、万病を防ぐと言われ、そこから無病息災の象徴となった。今では郷土料理として兵庫県の丹波地方や神奈川県の丹沢地方にでも行かなければなかなか食べる機会がない。
▼猪がらみの熟語といえば「猪突猛進」。周囲の人のことや状況を考えずに、一つのことに向かって猛烈な勢いで突き進むこと。必ずしもいい意味であるとは限らないが、猪は「勇気と冒険」を表す動物でもあり、こっちを取りたいところ。(CAPITAL2007年1月1日号より転載)
▼中国語では「猪」とは「豚」のことである。ご存じの通り、「西遊記」の猪八戒はブタだ。中国語ではイノシシを「野猪」である。
▼どうも、十二支が大陸から伝わった時、日本にはイノシシの家畜である豚がまだ存在していなかったらしい。それで猪がイノシシになったようだ。
▼イノシシの語源は「猪(い)の獣(しし)」から。現在でも干支のイノシシを「亥(い)」と言うが、この「い」は古くは「ヰ(ゐ)」で、鳴き声を表した擬声語で「ウィ」と発音していた。つまり、ウィと鳴く獣が猪だ。
▼英語ではWild boarで、Wild pigとも。直訳で野ブタだ。ユーラシア大陸を中心に世界中至る所に分布し、米国にも多少生息する。アニメ「ライオン・キング」のブンバはイボイノシシ。日本にいるのは日本にはニホンイノシシとリュウキュウイノシシ。
▼猪の肉は「牡丹肉」とも言われる。白い脂肪に縁どられた赤い肉を切り分けて皿に盛った状態が牡丹の花のように見えるからだ。獣の肉食がタブーとされた時代も「山鯨(やまくじら)」と称して例外的に食べていた。
▼「薬喰い」の別名もある通り、滋養強壮、万病を防ぐと言われ、そこから無病息災の象徴となった。今では郷土料理として兵庫県の丹波地方や神奈川県の丹沢地方にでも行かなければなかなか食べる機会がない。
▼猪がらみの熟語といえば「猪突猛進」。周囲の人のことや状況を考えずに、一つのことに向かって猛烈な勢いで突き進むこと。必ずしもいい意味であるとは限らないが、猪は「勇気と冒険」を表す動物でもあり、こっちを取りたいところ。(CAPITAL2007年1月1日号より転載)
Thursday, December 14, 2006
命(いのち)の尊さ
▼今年ももうすぐ終わる。日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」に「命」が決まり、京都の清水寺で発表があった。全国から約9万2500通の応募があり「命」が約9%の約8360通で一位だったという。
▼今年は、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さま誕生で「生まれた命」に注目が集まる一方、いじめ自殺や子供虐待、飲酒運転事故などの痛ましい事件が相次いだ。「一つしかない命の重み、大切さを痛感した」のが選考理由と同協会。
▼命の尊さはいつも声高に叫ばれてきた。だが、病気や事故はまだしも、世界では人為的な紛争で毎日、人が死んでいる。たとえば、イラク駐留米軍が8日、イラク聖戦アルカイダ組織の掃討作戦を行ったが、警察によると死亡した17人のうち5人は子供で6人は女性という。
▼米ジョンズホプキンズ大などの推計によれば、イラク戦争開戦後から今年6月までのイラク人の死者数が約65万5千人に上る。米政府は「信頼性がない」と反論したが、シャンマリ・イラク保健相は先月、死亡したイラク人は少なくとも推計15万人に上ると表明した。一方で米軍の死者は12月初旬に死者2900人を突破、9・11テロ犠牲者の数をイラクだけで上回りそうな勢いである。
▼命をどれだけ大切にしているかは、文明の到達度を示すと言ってよいだろう。それ故に自爆テロの愚かさ、悲しさは痛感の極みである。パレスチナで先月、孫をイスラエル軍に殺された64歳の女性が自爆攻撃を行い死亡した。パレスチナ人では過去最高齢とみられる。
▼命の尊さは、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さまだろうがイラクの名もない子供だろうが同じだろう。命の尊さを噛みしめながら、今年も年が明けていく。(Capital2006年12月15日号より転載)
▼今年は、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さま誕生で「生まれた命」に注目が集まる一方、いじめ自殺や子供虐待、飲酒運転事故などの痛ましい事件が相次いだ。「一つしかない命の重み、大切さを痛感した」のが選考理由と同協会。
▼命の尊さはいつも声高に叫ばれてきた。だが、病気や事故はまだしも、世界では人為的な紛争で毎日、人が死んでいる。たとえば、イラク駐留米軍が8日、イラク聖戦アルカイダ組織の掃討作戦を行ったが、警察によると死亡した17人のうち5人は子供で6人は女性という。
▼米ジョンズホプキンズ大などの推計によれば、イラク戦争開戦後から今年6月までのイラク人の死者数が約65万5千人に上る。米政府は「信頼性がない」と反論したが、シャンマリ・イラク保健相は先月、死亡したイラク人は少なくとも推計15万人に上ると表明した。一方で米軍の死者は12月初旬に死者2900人を突破、9・11テロ犠牲者の数をイラクだけで上回りそうな勢いである。
▼命をどれだけ大切にしているかは、文明の到達度を示すと言ってよいだろう。それ故に自爆テロの愚かさ、悲しさは痛感の極みである。パレスチナで先月、孫をイスラエル軍に殺された64歳の女性が自爆攻撃を行い死亡した。パレスチナ人では過去最高齢とみられる。
▼命の尊さは、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さまだろうがイラクの名もない子供だろうが同じだろう。命の尊さを噛みしめながら、今年も年が明けていく。(Capital2006年12月15日号より転載)
Wednesday, November 29, 2006
ネオコンの退場と中東政策の転換
▼イラクのサダム・フセイン元大統領への死刑判決が下され、旧政権中枢を占めていたイスラム教スンニ派によるシーア派へのテロ激化が懸念されていたが、現実のものとなった。バグダッドで23日に起きたシーア派へのテロは犠牲者200人以上を出した。
▼NBCテレビは27日、イラクの現状を「内戦」と表現すると発表。ワシントンポスト紙によると、イラク戦争は同日で3年8カ月と8日となり、太平洋戦争の米軍参戦期間を上回った。米兵の死者は2800人を超えている。
▼中間選挙敗北でイラク政策の転換を迫られたブッシュ大統領は、イラク情勢打開に向けヨルダンやイラクを訪問。チェイニー副大統領もスンニ派大国であるサウジアラビアを訪れた。
▼ヨルダンやイラクのシーア派民兵組織は武器や訓練などでイランの支援を受けているとされる一方、スンニ派武装勢力はシリア経由でイラク入りしている可能性が高い。そんな中、シリアは80年代初頭に断絶したイラクと国交回復した。
▼ベーカー元国務長官ら超党派でつくる「イラク研究グループ」はイラク政策に関する提言作成をめぐり国連のアナン事務総長に協議を申し入れた。米国はこれまでシリアやイランを非難していたが、同グループは、イラクの安定のためにはシリアやイランの協力が必要との考えだとされる。
▼イラク戦争を主導し、大きな発言力を誇ったネオコン(新保守主義)の代表格、リチャード・パール氏は、イラクの泥沼化を招いたのはネオコンではなく「長期化する占領」を続けるブッシュ政権中枢だと反論したが、責任のなすり合いにしか聞こえない。すでに退場を余儀なくされた形だ。
▼ネオコンにとってイラク侵攻は彼らの言う「中東民主化」の第一歩に過ぎなかったはずが一歩目から躓いた。イラク問題を巡り、米国は核問題などで敵対するイランやシリアとの協調へと、大きな転換を迫られている。(CAPITAL2006年12月1日号より転載)
▼NBCテレビは27日、イラクの現状を「内戦」と表現すると発表。ワシントンポスト紙によると、イラク戦争は同日で3年8カ月と8日となり、太平洋戦争の米軍参戦期間を上回った。米兵の死者は2800人を超えている。
▼中間選挙敗北でイラク政策の転換を迫られたブッシュ大統領は、イラク情勢打開に向けヨルダンやイラクを訪問。チェイニー副大統領もスンニ派大国であるサウジアラビアを訪れた。
▼ヨルダンやイラクのシーア派民兵組織は武器や訓練などでイランの支援を受けているとされる一方、スンニ派武装勢力はシリア経由でイラク入りしている可能性が高い。そんな中、シリアは80年代初頭に断絶したイラクと国交回復した。
▼ベーカー元国務長官ら超党派でつくる「イラク研究グループ」はイラク政策に関する提言作成をめぐり国連のアナン事務総長に協議を申し入れた。米国はこれまでシリアやイランを非難していたが、同グループは、イラクの安定のためにはシリアやイランの協力が必要との考えだとされる。
▼イラク戦争を主導し、大きな発言力を誇ったネオコン(新保守主義)の代表格、リチャード・パール氏は、イラクの泥沼化を招いたのはネオコンではなく「長期化する占領」を続けるブッシュ政権中枢だと反論したが、責任のなすり合いにしか聞こえない。すでに退場を余儀なくされた形だ。
▼ネオコンにとってイラク侵攻は彼らの言う「中東民主化」の第一歩に過ぎなかったはずが一歩目から躓いた。イラク問題を巡り、米国は核問題などで敵対するイランやシリアとの協調へと、大きな転換を迫られている。(CAPITAL2006年12月1日号より転載)
Monday, November 13, 2006
リベラルと保守
▼中間選挙は民主党の大勝利となった。全議席改選の下院(定数435)で民主党が最終的に過半数を上回り、231議席前後を獲得する見通しだ。
▼上院でも民主党は同党系無所属二人を含めて51議席を獲得、下院に続き上院でも多数派を奪回。上下両院の多数派が逆転するのは12年ぶりだ。知事選でも、改選前の共和党28州に対し民主党が22州が、28対22となり逆転した。
▼次期米大統領選出馬が取りざたされるヒラリー・クリントン民主党上院議員はニューヨーク州上院選で圧勝。大統領候補としてはリベラル過ぎるとの懸念は消えたかのようだ。
▼下院では米国史上初の女性議長に、リベラルで知られるナンシー・ペロシ院内総務が就任する見通しとなった。大統領、副大統領に次ぐナンバー3の要職だ。
▼これらを新しい潮流を見る向きは多い。米国は保守からリベラルへ軸を移すのだろうか? しかしヒラリー氏は中道路線になったに過ぎない。テネシー州上院選では黒人下院議員の民主党ハロルド・フォード氏は共和党候補に敗れている。また大統領選への出馬を示唆した民主党の若手黒人政治家、オバマ上院議員の人気が高いのは宗教保守派にも支持者がいることからと言われる。
▼中間選挙と同時に実施された全米各州の住民投票を見ると、少なくとも7つの州で同性婚を禁止する州憲法改正が可決されるなど、民主党が躍進した議会選挙とは裏腹に、保守化の潮流が浮き彫りとなった。アリゾナ州では、英語を公用語とし、非英語圏からの移民に対する英語以外の語学教育を制限する事実上の反移民法案を承認した。
▼今回、共和党はキリスト教保守派の取り込みに失敗したとされている。米国民は泥沼化したイラク戦争にノーを突きつけたのであってリベラルに大きく軸足が動いたと見るのは時期尚早のようだ。(CAPITAL2006年11月15日号より転載)
▼上院でも民主党は同党系無所属二人を含めて51議席を獲得、下院に続き上院でも多数派を奪回。上下両院の多数派が逆転するのは12年ぶりだ。知事選でも、改選前の共和党28州に対し民主党が22州が、28対22となり逆転した。
▼次期米大統領選出馬が取りざたされるヒラリー・クリントン民主党上院議員はニューヨーク州上院選で圧勝。大統領候補としてはリベラル過ぎるとの懸念は消えたかのようだ。
▼下院では米国史上初の女性議長に、リベラルで知られるナンシー・ペロシ院内総務が就任する見通しとなった。大統領、副大統領に次ぐナンバー3の要職だ。
▼これらを新しい潮流を見る向きは多い。米国は保守からリベラルへ軸を移すのだろうか? しかしヒラリー氏は中道路線になったに過ぎない。テネシー州上院選では黒人下院議員の民主党ハロルド・フォード氏は共和党候補に敗れている。また大統領選への出馬を示唆した民主党の若手黒人政治家、オバマ上院議員の人気が高いのは宗教保守派にも支持者がいることからと言われる。
▼中間選挙と同時に実施された全米各州の住民投票を見ると、少なくとも7つの州で同性婚を禁止する州憲法改正が可決されるなど、民主党が躍進した議会選挙とは裏腹に、保守化の潮流が浮き彫りとなった。アリゾナ州では、英語を公用語とし、非英語圏からの移民に対する英語以外の語学教育を制限する事実上の反移民法案を承認した。
▼今回、共和党はキリスト教保守派の取り込みに失敗したとされている。米国民は泥沼化したイラク戦争にノーを突きつけたのであってリベラルに大きく軸足が動いたと見るのは時期尚早のようだ。(CAPITAL2006年11月15日号より転載)
Friday, October 27, 2006
黒人大統領と女性大統領
▼中間選挙キャンペーンは民主党優位のうちに進んでいるが、民主党の応援演説で各陣営から引っ張りだこなのが黒人政治家、バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出)(45)だ。
▼ハーバード大ロースクール出身の人権派弁護士で、〇四年の初当選以来、「将来の大統領候補」と目されてきたが、本人は今年初めに大統領選出馬を全面否定していた。しかし二十二日、〇八年の大統領選への出馬の可能性を検討すると表明したのだ。
▼男女平等を標榜し、黒人差別問題にも積極的に取り組んできた米国だが、いまだかつて女性と黒人は大統領になったことがない。
▼過去に黒人大統領誕生の動きがなかったわけではない。コリン・パウエル氏である。黒人初の統合参謀本部議長として第一次湾岸戦争の英雄となったパウエル氏は96年、共和党からの大統領出馬が取り沙汰され、立候補すれば当選は確実と言われた。
▼だが、「黒人が大統領になったら暗殺される」とする妻(白人)の反対のため出馬せず。第一期ブッシュ政権で初の黒人国務長官になった。今では、米国大統領が誰だろうとアルカイダなどの暗殺の対象である。
▼次回大統領選をめぐっては、ヒラリー・クリントン上院議員の出馬が有力で、圧倒的な資金力と知名度から民主党の指名獲得の可能性が高いとされている。ヒラリーが大統領になれば、初の女性大統領誕生だ。
▼一方、共和党には国民的人気の高い現国務長官のライス氏がいる。彼女が大統領になれば黒人でかつ女性という画期的な大統領が誕生する。
▼初の女性大統領や黒人大統領はいつ誕生するのだろう。そろそろ新しいページが開かれてもいいのではないか。(CAPITAL第22号より転載)
▼ハーバード大ロースクール出身の人権派弁護士で、〇四年の初当選以来、「将来の大統領候補」と目されてきたが、本人は今年初めに大統領選出馬を全面否定していた。しかし二十二日、〇八年の大統領選への出馬の可能性を検討すると表明したのだ。
▼男女平等を標榜し、黒人差別問題にも積極的に取り組んできた米国だが、いまだかつて女性と黒人は大統領になったことがない。
▼過去に黒人大統領誕生の動きがなかったわけではない。コリン・パウエル氏である。黒人初の統合参謀本部議長として第一次湾岸戦争の英雄となったパウエル氏は96年、共和党からの大統領出馬が取り沙汰され、立候補すれば当選は確実と言われた。
▼だが、「黒人が大統領になったら暗殺される」とする妻(白人)の反対のため出馬せず。第一期ブッシュ政権で初の黒人国務長官になった。今では、米国大統領が誰だろうとアルカイダなどの暗殺の対象である。
▼次回大統領選をめぐっては、ヒラリー・クリントン上院議員の出馬が有力で、圧倒的な資金力と知名度から民主党の指名獲得の可能性が高いとされている。ヒラリーが大統領になれば、初の女性大統領誕生だ。
▼一方、共和党には国民的人気の高い現国務長官のライス氏がいる。彼女が大統領になれば黒人でかつ女性という画期的な大統領が誕生する。
▼初の女性大統領や黒人大統領はいつ誕生するのだろう。そろそろ新しいページが開かれてもいいのではないか。(CAPITAL第22号より転載)
Friday, October 13, 2006
危険な国
▼危険な国としてブッシュ大統領に「悪の枢軸」とまで言われた北朝鮮が、核実験に成功したと発表した。日米を敵視する核兵器保有国がすぐ日本の西に出現した。東アジアの核保有国はロシアと中国のみで、日本と韓国が米国の「核の傘」に入ることで戦略バランスが保たれてきたが、この均衡が崩れる可能性が出てきた。
▼これは米政権の対北朝鮮政策の失敗を意味するのか? 中間選挙を前に、民主党はブッシュ共和党政権のこれまでの対応の甘さを攻撃しているが、これで中ソが重い腰を上げ、北朝鮮に対する本格的経済制裁が実施できるという見方もある。
▼そもそも核実験は成功したのか疑問が残る。茶番劇の可能性も捨てきれない。いずれにせよミサイルへの搭載となるとまだ数年はかかると見られる。まだそれほどの脅威はないと見る向きが多く、株価の動きも小さかった。
▼今回、米メディアや専門家の論調で目立ったのは、これを機に日本が核武装を始めるのではということだ。アジア諸国も日本の出方を注視している。
▼「日本は技術力があれば数カ月で核兵器を保有できる」(クリスチャン・サイエンス・モニター紙)などと米メディアが相次ぎ報道、ワシントン・ポスト紙は「米当局の主な懸念は、日本のこれからの反応だ」とし、北朝鮮の核実験は「日本が数十年続けてきた非核の公約を破る」ことにつながりかねないと予測した。
▼韓国、台湾が核兵器開発に乗り出す「ドミノ化」も指摘される。台湾が核武装に踏み切れば、中国が一層の軍拡に走るのは必至で、台湾海峡の緊張も高まることになる。さらに、自国開発は無理でも、核移転によりベトナム、ミヤンマーなどが核兵器保有国を目指す可能性も指摘されている。
▼ライス長官は「日本の核武装による地域の核バランスの変化が安全保障状況の改善につながるとは、誰も考えていない。我々は日本を信用している」と語り、ブッシュ大統領は「弾道ミサイル防衛(BMD)」の推進を強調した。
▼拉致問題で北朝鮮非難を強める国民と、改憲を目指す安倍政権という現在の日本は、思いの外「危険な国」と思われているのかも知れない。
(CAPITAL#22 2006年10月15日号より)
▼これは米政権の対北朝鮮政策の失敗を意味するのか? 中間選挙を前に、民主党はブッシュ共和党政権のこれまでの対応の甘さを攻撃しているが、これで中ソが重い腰を上げ、北朝鮮に対する本格的経済制裁が実施できるという見方もある。
▼そもそも核実験は成功したのか疑問が残る。茶番劇の可能性も捨てきれない。いずれにせよミサイルへの搭載となるとまだ数年はかかると見られる。まだそれほどの脅威はないと見る向きが多く、株価の動きも小さかった。
▼今回、米メディアや専門家の論調で目立ったのは、これを機に日本が核武装を始めるのではということだ。アジア諸国も日本の出方を注視している。
▼「日本は技術力があれば数カ月で核兵器を保有できる」(クリスチャン・サイエンス・モニター紙)などと米メディアが相次ぎ報道、ワシントン・ポスト紙は「米当局の主な懸念は、日本のこれからの反応だ」とし、北朝鮮の核実験は「日本が数十年続けてきた非核の公約を破る」ことにつながりかねないと予測した。
▼韓国、台湾が核兵器開発に乗り出す「ドミノ化」も指摘される。台湾が核武装に踏み切れば、中国が一層の軍拡に走るのは必至で、台湾海峡の緊張も高まることになる。さらに、自国開発は無理でも、核移転によりベトナム、ミヤンマーなどが核兵器保有国を目指す可能性も指摘されている。
▼ライス長官は「日本の核武装による地域の核バランスの変化が安全保障状況の改善につながるとは、誰も考えていない。我々は日本を信用している」と語り、ブッシュ大統領は「弾道ミサイル防衛(BMD)」の推進を強調した。
▼拉致問題で北朝鮮非難を強める国民と、改憲を目指す安倍政権という現在の日本は、思いの外「危険な国」と思われているのかも知れない。
(CAPITAL#22 2006年10月15日号より)
Tuesday, October 10, 2006
二つのキリスト教右派
先日、「ジーザスキャンプ」というすごい映画を見た。5歳〜12歳までを対象のキリスト教を教える福音派のサマーキャンプのドキュメンタリーなのだが、キャンプディレクターのベッキー・フィッシャー牧師は、イスラム教徒の自爆テロを暗に引き合いにして、キリスト教徒にも神のために命を捧げられるような「神の国の戦士」を育成したいようなことを言う人。いきなりハリー・ポッターは魔法使いの悪魔だから殺さなくてはならないと子供たちを動揺させ、政府は悪とGOVERMENTとマジックで書いたコーヒーマグをトンカチで割らせたりする一方、中絶反対のブッシュ大統領の等身大写真を拝ませる。さらに神の戦士の格好のつもりか、迷彩ペイントを顔に塗り、棒を剣にみたてて踊らせる。福音を大声で読ませて神に救済を求めると、子供たちの中には興奮して涙を流したり痙攣したりと、オウム真理教も顔負けのキャンプだ。
ちょっと極端な例かも知れないが福音派(原理主義者)は全米で3千万とも5千万人ともいわれ、今のブッシュ政権を支えている。同じ保守的なキリスト教徒でも、学校襲撃で5人の児童が殺害されたアーミッシュの村では、犠牲者の遺族らが事件後、犯人の家族を許すと伝え食べ物を与えたという。アーミッシュの許しの文化は生存者の癒やしにつながり、復讐より許す方がはるかに大切であることを教えてくれた。
ちょっと極端な例かも知れないが福音派(原理主義者)は全米で3千万とも5千万人ともいわれ、今のブッシュ政権を支えている。同じ保守的なキリスト教徒でも、学校襲撃で5人の児童が殺害されたアーミッシュの村では、犠牲者の遺族らが事件後、犯人の家族を許すと伝え食べ物を与えたという。アーミッシュの許しの文化は生存者の癒やしにつながり、復讐より許す方がはるかに大切であることを教えてくれた。
Tuesday, October 03, 2006
機密報告書のスクープ
▼ニューヨーク・タイムズは24日、イラク戦争がイスラム過激派の活動を活発化させ、テロのネットワークを拡大させる結果となったと、米政府の機密報告書「国家情報評価(NIE)」が結論付けていることをスクープした(電子版は23日)。
▼「国際テロの傾向」と題されたこの報告書は、中央情報局(CIA)など16の米情報機関の統一見解を盛り込んだもの。米国やイスラエルなどへの「ジハード(聖戦)」の思想は、イラク戦争によって世界に広がったと指摘、イスラム過激思想は衰退しているというより、地球規模で転移、拡大したと結論付けている。
▼テロとの戦いにより「世界はより安全になった」と主張しているブッシュ政権は慌てふためき、「(報道はテロの全体像を)歪曲している」(ネグロポンテ国家情報長官)などと反論、ブッシュ大統領は「報道でイラク戦争開戦は誤りだったと結論付ける人も出てくる。それには我慢ならない。自分自身で結論を出してほしい」とした。
▼だがこれで収まるわけがなく、上院情報特別委員会のロックフェラー副委員長(民主党)は長官に書簡を送り、上院議員にも公開されない機密扱いのNIEの公開を要求、国家情報長官局は26日、機密解除してその一部を公表した。
▼報告書は、「イラクでの『聖戦』は新世代のテロ指導者や活動家を作り上げている」「反米を掲げる新たな過激派が出現する可能性が高まっている」と指摘、イラクでの紛争が「米国に対する深い憎悪を生み、世界規模の聖戦の動きを支援する勢力を助長させている」と明確に分析している。
▼イラク戦争に反対していた人たちから見れば、なにをいまさらという感じだが、これが世の中の流れというものだろう。中間選挙を前に野党民主党は勢いづく。
▼それにしても、報告書は政府機関内での激論を経てまとめられたものなのだというのに、何故それがブッシュ大統領の言うことと違っていたのか。
▼日本では安倍新内閣が発足した。いろいろ考えはあるだろうが、まずは誠実で、腹蔵のない政治運営を願いたい。
▼「国際テロの傾向」と題されたこの報告書は、中央情報局(CIA)など16の米情報機関の統一見解を盛り込んだもの。米国やイスラエルなどへの「ジハード(聖戦)」の思想は、イラク戦争によって世界に広がったと指摘、イスラム過激思想は衰退しているというより、地球規模で転移、拡大したと結論付けている。
▼テロとの戦いにより「世界はより安全になった」と主張しているブッシュ政権は慌てふためき、「(報道はテロの全体像を)歪曲している」(ネグロポンテ国家情報長官)などと反論、ブッシュ大統領は「報道でイラク戦争開戦は誤りだったと結論付ける人も出てくる。それには我慢ならない。自分自身で結論を出してほしい」とした。
▼だがこれで収まるわけがなく、上院情報特別委員会のロックフェラー副委員長(民主党)は長官に書簡を送り、上院議員にも公開されない機密扱いのNIEの公開を要求、国家情報長官局は26日、機密解除してその一部を公表した。
▼報告書は、「イラクでの『聖戦』は新世代のテロ指導者や活動家を作り上げている」「反米を掲げる新たな過激派が出現する可能性が高まっている」と指摘、イラクでの紛争が「米国に対する深い憎悪を生み、世界規模の聖戦の動きを支援する勢力を助長させている」と明確に分析している。
▼イラク戦争に反対していた人たちから見れば、なにをいまさらという感じだが、これが世の中の流れというものだろう。中間選挙を前に野党民主党は勢いづく。
▼それにしても、報告書は政府機関内での激論を経てまとめられたものなのだというのに、何故それがブッシュ大統領の言うことと違っていたのか。
▼日本では安倍新内閣が発足した。いろいろ考えはあるだろうが、まずは誠実で、腹蔵のない政治運営を願いたい。
Tuesday, September 12, 2006
イラク戦争が焦点の中間選挙
▼11月7日の投開票日の中間選挙まで2カ月を切った。上院(定数100)で改選を迎える33州と、全議席改選の下院(定数435)の各選挙区では相次いで予備選が行われ、終盤戦へ向けて選挙活動を本格化させている。
▼共和、民主両党の候補者を決める予備選挙で明らかになったのはイラク政策に対する態度が投票を大きく左右しているといことだ。これは共和、民主党を問わない。
▼去る8月8日に行われたコネティカット州民主党予備選では、イラク戦争を支持した大物ジョゼフ・リーバーマン上院議員(64)が、反戦派の新人で実業家のネッド・ラモント氏(52)に敗れ、大きな衝撃が走った。
▼この結果を受け、同州の共和党ベテラン、シェイズ下院議員は最近、明確に米軍撤退期限設定の必要性を主張。大統領に反旗を翻す戦術で生き残りをかけている。
▼12日のロードアイランド州共和党予備選ではチェイフィー上院議員が、イラク戦争に反対したため保守派の反発招き再選が危ぶまれたが、保守派の新人候補を辛勝とはいえ退けた。
▼13日のバージニア州の民主党予備選では、レーガン政権時代の海軍長官で、イラク戦争批判の急先鋒として共和党から民主党にくら替えして出馬したジム・ウェッブ氏が選出された。
▼12日のニューヨーク州の民主党予備選では、イラク戦争反対の運動家として知られるジョナサン・タシニ氏にヒラリー・クリントン上院議員が圧勝したが、圧倒的な知名度と資金力に加え、自身も「戦争を始める前に国連の支持こそ必要だと主張し国際社会の協調を優先させていた(NYタイムズ紙)」わけである。
▼イラク政策が最大の争点となる中、リード上院院内総務に「この5年間で米国はより安全でなくなった」まで言われた共和党・ブッシュ政権。民主党は下院で15議席を上積みすれば、上院では六議席を上積みすれば多数派となる。「反現職」「反与党」を追い風に12年ぶりに奪回するか注目される。
▼共和、民主両党の候補者を決める予備選挙で明らかになったのはイラク政策に対する態度が投票を大きく左右しているといことだ。これは共和、民主党を問わない。
▼去る8月8日に行われたコネティカット州民主党予備選では、イラク戦争を支持した大物ジョゼフ・リーバーマン上院議員(64)が、反戦派の新人で実業家のネッド・ラモント氏(52)に敗れ、大きな衝撃が走った。
▼この結果を受け、同州の共和党ベテラン、シェイズ下院議員は最近、明確に米軍撤退期限設定の必要性を主張。大統領に反旗を翻す戦術で生き残りをかけている。
▼12日のロードアイランド州共和党予備選ではチェイフィー上院議員が、イラク戦争に反対したため保守派の反発招き再選が危ぶまれたが、保守派の新人候補を辛勝とはいえ退けた。
▼13日のバージニア州の民主党予備選では、レーガン政権時代の海軍長官で、イラク戦争批判の急先鋒として共和党から民主党にくら替えして出馬したジム・ウェッブ氏が選出された。
▼12日のニューヨーク州の民主党予備選では、イラク戦争反対の運動家として知られるジョナサン・タシニ氏にヒラリー・クリントン上院議員が圧勝したが、圧倒的な知名度と資金力に加え、自身も「戦争を始める前に国連の支持こそ必要だと主張し国際社会の協調を優先させていた(NYタイムズ紙)」わけである。
▼イラク政策が最大の争点となる中、リード上院院内総務に「この5年間で米国はより安全でなくなった」まで言われた共和党・ブッシュ政権。民主党は下院で15議席を上積みすれば、上院では六議席を上積みすれば多数派となる。「反現職」「反与党」を追い風に12年ぶりに奪回するか注目される。
Tuesday, August 29, 2006
テロとナショナリズム
▼山形県鶴岡市の元自民党幹事長加藤紘一衆院議員の実家と事務所が8月15日に全焼した。右翼団体の構成員が敷地内で腹部から血を流して倒れているのが見つかった。割腹自殺を図ったとみられ、病院に運ばれ、29日に放火などの疑いで逮捕した。
▼犯行が終戦記念日の8月15日で、加藤議員が小泉首相の靖国神社参拝を批判していることから犯行に及んだと見られる。だとすればテロそのものである。
▼「テロとの戦い」を掲げてきたはずの小泉首相は28日なってようやく、「暴力で言論を封じることは、決して許されることではない。厳に注意しなければならない」と述べ、自らの参拝が「ナショナリズム」をあおり立てているとの指摘については否定したが、果たしてそうか?。
▼警察庁の漆間巌長官は「加藤議員の発言から、右翼団体の反発が予想され、山形県警も当日、異常がないか連絡を取っていた」という。残念ながら未然に防ぐことは出来なかった。
▼9月に安倍氏が自民党総裁になった場合、事態はさらに悪化するかもしれないと加藤氏は言う。なぜなら小泉首相はまだ東條たちが戦犯だと認めているが、安倍氏はその考えを受け入れていないというのだ。安倍氏は祖父・岸信介元首相の考え方に強く影響されていると加藤氏は指摘する。岸氏は戦後、戦犯に指定されて拘束されたが東京裁判で訴追はされず、後に首相となった人物だ。
▼加藤氏は「非常に強い反中かつ反韓、時には反米的でもある愛国主義が日本に広がっていることが、心配だ」と懸念している。
▼日本がどうして先の愚かな戦争をしてしまったかについて、当時は戦争に突き進まなければテロられるような状況に政治家が追い込まれていた面があることを指摘する研究家もいる。どんな主義・主張を掲げようと、テロは決して許してはならない。(西)
(CAPITAL06年9月1日号より転載)
▼犯行が終戦記念日の8月15日で、加藤議員が小泉首相の靖国神社参拝を批判していることから犯行に及んだと見られる。だとすればテロそのものである。
▼「テロとの戦い」を掲げてきたはずの小泉首相は28日なってようやく、「暴力で言論を封じることは、決して許されることではない。厳に注意しなければならない」と述べ、自らの参拝が「ナショナリズム」をあおり立てているとの指摘については否定したが、果たしてそうか?。
▼警察庁の漆間巌長官は「加藤議員の発言から、右翼団体の反発が予想され、山形県警も当日、異常がないか連絡を取っていた」という。残念ながら未然に防ぐことは出来なかった。
▼9月に安倍氏が自民党総裁になった場合、事態はさらに悪化するかもしれないと加藤氏は言う。なぜなら小泉首相はまだ東條たちが戦犯だと認めているが、安倍氏はその考えを受け入れていないというのだ。安倍氏は祖父・岸信介元首相の考え方に強く影響されていると加藤氏は指摘する。岸氏は戦後、戦犯に指定されて拘束されたが東京裁判で訴追はされず、後に首相となった人物だ。
▼加藤氏は「非常に強い反中かつ反韓、時には反米的でもある愛国主義が日本に広がっていることが、心配だ」と懸念している。
▼日本がどうして先の愚かな戦争をしてしまったかについて、当時は戦争に突き進まなければテロられるような状況に政治家が追い込まれていた面があることを指摘する研究家もいる。どんな主義・主張を掲げようと、テロは決して許してはならない。(西)
(CAPITAL06年9月1日号より転載)
Friday, August 11, 2006
正義という名の原理主義
▼唯一の被爆国である日本が61年目の夏を迎えた。伊藤長崎市長は平和宣言で、核開発が疑われているイランや北朝鮮を名指しし「世界の核不拡散体制は崩壊の危機に直面している」と深い懸念を示した。
▼ネバダ州の核実験博物館では「原爆展」が開幕した。被爆者の声を代表した丸田和男さん(74)は、現在も約一万発の核弾頭を保有する米国に廃絶に向けた行動を求めた。聴衆の多くは平和への願いを真摯(しんし)に受け止めたが、「核廃絶は理想論」との冷めた意見もあった。
▼退役軍人のひとりは「何故あの戦争が始まったのか。日本の中国侵略など米国が核保有を迫られた状況に全く触れていない。もし日本が先に核兵器を持っていたら、もっと多くの被爆地があっただろう。彼らの核廃絶は理想論にすぎない」と批判した。
▼何故、イランや北朝鮮は核兵器を持ちたがるのか。イランも北朝鮮も「自衛のため」と言う。「恐怖の均衡」や「核抑止力」により自国が守られるとするいわゆる冷戦以来の「核信仰」だ。
▼「生存圏確保」や「自衛」はナチスドイツや軍国主義の日本でも語られていた。また、戦後の世界は核保有国が強力な影響力を持った。国連で拒否権を持つ安保理常任理事国はすべて核保有国であり「核兵器クラブ」と揶揄されたほどである。
▼戦争は古来、「戦争は他の手段をもってする政治の延長」(クラウゼビッツ)で、軍人同士が戦うものだった(カルタゴなど例外もあるが)。それが近代にはいると市民やインフラも対象とする「総力戦」に突入、無差別攻撃の最たるものとして米国は日本に原爆を落とした。
▼ベストセラー『バカの壁』などで知られる養老孟司氏は著書『まともな人』で「なぜわれわれは、戦争がやめられないのか。正義の戦争があるからであろう。さらにいうなら、正義があるからだろう」と看破している。
▼この地上から核兵器や戦争をなくすには「正義という名の原理主義」も廃棄しなくてはいけないのかも知れない。(西)
(CAPITAL06年8月15日号より転載)
▼ネバダ州の核実験博物館では「原爆展」が開幕した。被爆者の声を代表した丸田和男さん(74)は、現在も約一万発の核弾頭を保有する米国に廃絶に向けた行動を求めた。聴衆の多くは平和への願いを真摯(しんし)に受け止めたが、「核廃絶は理想論」との冷めた意見もあった。
▼退役軍人のひとりは「何故あの戦争が始まったのか。日本の中国侵略など米国が核保有を迫られた状況に全く触れていない。もし日本が先に核兵器を持っていたら、もっと多くの被爆地があっただろう。彼らの核廃絶は理想論にすぎない」と批判した。
▼何故、イランや北朝鮮は核兵器を持ちたがるのか。イランも北朝鮮も「自衛のため」と言う。「恐怖の均衡」や「核抑止力」により自国が守られるとするいわゆる冷戦以来の「核信仰」だ。
▼「生存圏確保」や「自衛」はナチスドイツや軍国主義の日本でも語られていた。また、戦後の世界は核保有国が強力な影響力を持った。国連で拒否権を持つ安保理常任理事国はすべて核保有国であり「核兵器クラブ」と揶揄されたほどである。
▼戦争は古来、「戦争は他の手段をもってする政治の延長」(クラウゼビッツ)で、軍人同士が戦うものだった(カルタゴなど例外もあるが)。それが近代にはいると市民やインフラも対象とする「総力戦」に突入、無差別攻撃の最たるものとして米国は日本に原爆を落とした。
▼ベストセラー『バカの壁』などで知られる養老孟司氏は著書『まともな人』で「なぜわれわれは、戦争がやめられないのか。正義の戦争があるからであろう。さらにいうなら、正義があるからだろう」と看破している。
▼この地上から核兵器や戦争をなくすには「正義という名の原理主義」も廃棄しなくてはいけないのかも知れない。(西)
(CAPITAL06年8月15日号より転載)
Thursday, August 10, 2006
最初で最後の熱い夏
▼宮内庁長官、富田朝彦氏(故人)が書き残した昭和天皇の発言メモは大きな波紋を呼んだ。
▼88年4月28日付メモによると、昭和天皇は「私は或(あ)る時に、A級が合祀され、その上、松岡、白取までもが」「だから私(は)あれ以来参拝していない。それが私の心だ」などと語ったと記されている。明らかにA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示したものだ。
▼昭和天皇は戦後、靖国神社を8回参拝し、75年11月が最後だった。当時から昭和天皇が参拝をしなくなったのは、A級戦犯の合祀が影響しているのではないかとの指摘があったが、その指摘は正しかったことになる。
▼小泉首相は「心の問題だから。強制するものでもない。誰でも自由だ」と何の影響もないことを述べた。政府筋は「皇室は政治利用しないのが一つの見識だ」としたが、中国で反日暴動が起きれば、数千億円単位の損害が出るのではと懸念する経済界はじめ、靖国参拝批判勢力には間違いなく追い風となった。
▼一方で、自民党内にある中国、韓国が反対だから靖国参拝は止めようという「消極論」を民主党の小沢代表は一蹴、A級戦犯は戦争責任があり戦死者ではないことから、合祀(ごうし)は誤りだったとの考えだ。
▼安倍官房長官が、首相の靖国神社参拝について、「(A級戦犯は)国内法的には犯罪者でないと国会で答弁されている。講和条約を受け入れたから参拝すべきでないという論議は、全くトンチンカンだ」と述べた。
▼天皇の不快感メモが明らかにしたのは、靖国問題が、「心の問題」として封印できるものではなく、外国からの圧力の問題でもなく、まず、国内における「歴史認識」の問題としてあることだ。
▼国立追悼施設推進派だった福田元官房長官は総裁選レースから降りたが、日本遺族会会長である自民党の古賀誠元幹事長靖国神社にA級戦犯の自発的な分祀(ぶんし)を促す決意を改めて表明した。
▼首相が8月15日に靖国に参拝したとしても、A級戦犯が合祀された中での、最初で最後の終戦記念日首相参拝となりそうである。
(CAPITAL8月15日号<第16号>より転載)
▼88年4月28日付メモによると、昭和天皇は「私は或(あ)る時に、A級が合祀され、その上、松岡、白取までもが」「だから私(は)あれ以来参拝していない。それが私の心だ」などと語ったと記されている。明らかにA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示したものだ。
▼昭和天皇は戦後、靖国神社を8回参拝し、75年11月が最後だった。当時から昭和天皇が参拝をしなくなったのは、A級戦犯の合祀が影響しているのではないかとの指摘があったが、その指摘は正しかったことになる。
▼小泉首相は「心の問題だから。強制するものでもない。誰でも自由だ」と何の影響もないことを述べた。政府筋は「皇室は政治利用しないのが一つの見識だ」としたが、中国で反日暴動が起きれば、数千億円単位の損害が出るのではと懸念する経済界はじめ、靖国参拝批判勢力には間違いなく追い風となった。
▼一方で、自民党内にある中国、韓国が反対だから靖国参拝は止めようという「消極論」を民主党の小沢代表は一蹴、A級戦犯は戦争責任があり戦死者ではないことから、合祀(ごうし)は誤りだったとの考えだ。
▼安倍官房長官が、首相の靖国神社参拝について、「(A級戦犯は)国内法的には犯罪者でないと国会で答弁されている。講和条約を受け入れたから参拝すべきでないという論議は、全くトンチンカンだ」と述べた。
▼天皇の不快感メモが明らかにしたのは、靖国問題が、「心の問題」として封印できるものではなく、外国からの圧力の問題でもなく、まず、国内における「歴史認識」の問題としてあることだ。
▼国立追悼施設推進派だった福田元官房長官は総裁選レースから降りたが、日本遺族会会長である自民党の古賀誠元幹事長靖国神社にA級戦犯の自発的な分祀(ぶんし)を促す決意を改めて表明した。
▼首相が8月15日に靖国に参拝したとしても、A級戦犯が合祀された中での、最初で最後の終戦記念日首相参拝となりそうである。
(CAPITAL8月15日号<第16号>より転載)
Wednesday, July 12, 2006
ミサイル・ビジネス
▼北朝鮮が5日、ミサイル6発を日本海に発射した。うちひとつは長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の可能性が高い。
▼日本では経済制裁を強めるべきだ」とした人が80・7%に達するなど(共同通信社の電話世論調査)、北朝鮮の脅威が大々的にクローズアップされる。
▼北朝鮮の目的はミサイル発射で米国を二国間協議に引きずりだすことと、ミサイルビジネスの推進だと思われる。イランのミサイル関係者も北朝鮮入りしていたという。しかしテポドン2号の「実演販売」はあえなく失敗したようだ。
▼米国は、アラスカ州などに配備してある地上発射型迎撃ミサイルを「試験稼働状態」から「実戦稼働状態」へ切り替えていたらしい。だが、ブッシュ大統領は、ミサイル防衛システムで「迎撃できるチャンスはそれなりにあった」と述べているが、テポドン2号は展開していたイージス艦のレーダーにも映らなかったらしい。
▼こんなお粗末な結果であるに関わらず、日本ではミサイル防衛網(MD)が必要との声が高まり、額賀防衛庁長官は、憲法の範囲内で可能な敵基地攻撃の装備を検討すべきだとの考えまで表明した。
▼米国議会も共和党を中心に対北朝鮮圧力を強化する構えで、下院軍事委員会のハンター委員長(共和党)は、年間約百億ドル規模を予算計上し、ミサイル防衛の構築をより強力に推進する考えも示した。
▼ところが国際社会は、北朝鮮非難の声はあるもののトーンは低い。北朝鮮と関係の深い中国、ロシアのみならず、韓国政府も日米などが国連安全保障理事会に提出した制裁決議案について「ミサイル計画を食い止める効果があるのか」と疑問を呈した。
▼日本政府は「平壌宣言」に違反しているという判断だが、北朝鮮の今回のミサイル実験は国際法を犯したわけではない。お粗末なミサイルに大騒ぎしているのは日本とミサイル防衛網関係者のようだ。
▼ブッシュ米大統領は「米国には差し迫った脅威ではない」と判断、「現時点の戦略は中国が北朝鮮に対し六カ国協議に戻るよう説得することだ」としている。ミサイルより核問題の方が重大という考えだ。
▼イラクでの大量破壊兵器の間違いに懲りて、こんなミサイルでは脅威を煽ることはできないと判断したのだろうか、それとも現在のミサイル迎撃技術が使い物にならないことが分かったからなのだろうか。無謀なイラク侵攻を決断した人物とは思えない賢明さである。
(CAPITAL7月15日号(第15号)より)
▼日本では経済制裁を強めるべきだ」とした人が80・7%に達するなど(共同通信社の電話世論調査)、北朝鮮の脅威が大々的にクローズアップされる。
▼北朝鮮の目的はミサイル発射で米国を二国間協議に引きずりだすことと、ミサイルビジネスの推進だと思われる。イランのミサイル関係者も北朝鮮入りしていたという。しかしテポドン2号の「実演販売」はあえなく失敗したようだ。
▼米国は、アラスカ州などに配備してある地上発射型迎撃ミサイルを「試験稼働状態」から「実戦稼働状態」へ切り替えていたらしい。だが、ブッシュ大統領は、ミサイル防衛システムで「迎撃できるチャンスはそれなりにあった」と述べているが、テポドン2号は展開していたイージス艦のレーダーにも映らなかったらしい。
▼こんなお粗末な結果であるに関わらず、日本ではミサイル防衛網(MD)が必要との声が高まり、額賀防衛庁長官は、憲法の範囲内で可能な敵基地攻撃の装備を検討すべきだとの考えまで表明した。
▼米国議会も共和党を中心に対北朝鮮圧力を強化する構えで、下院軍事委員会のハンター委員長(共和党)は、年間約百億ドル規模を予算計上し、ミサイル防衛の構築をより強力に推進する考えも示した。
▼ところが国際社会は、北朝鮮非難の声はあるもののトーンは低い。北朝鮮と関係の深い中国、ロシアのみならず、韓国政府も日米などが国連安全保障理事会に提出した制裁決議案について「ミサイル計画を食い止める効果があるのか」と疑問を呈した。
▼日本政府は「平壌宣言」に違反しているという判断だが、北朝鮮の今回のミサイル実験は国際法を犯したわけではない。お粗末なミサイルに大騒ぎしているのは日本とミサイル防衛網関係者のようだ。
▼ブッシュ米大統領は「米国には差し迫った脅威ではない」と判断、「現時点の戦略は中国が北朝鮮に対し六カ国協議に戻るよう説得することだ」としている。ミサイルより核問題の方が重大という考えだ。
▼イラクでの大量破壊兵器の間違いに懲りて、こんなミサイルでは脅威を煽ることはできないと判断したのだろうか、それとも現在のミサイル迎撃技術が使い物にならないことが分かったからなのだろうか。無謀なイラク侵攻を決断した人物とは思えない賢明さである。
(CAPITAL7月15日号(第15号)より)
Monday, June 12, 2006
アブク銭集団と格差社会
▼村上ファンドの村上世彰前代表逮捕は日本では号外も出るニュースとなった。「出る杭は打たれる」「天罰が下る」といった言葉がインターネットやスポーツ紙などを賑わした。ホリエモン逮捕に続く「アブク銭集団」退治に庶民は溜飲を下げたというところか。
▼村上ファンドの敵対的投資スタイルは、米国では既に「過去のもの」で、企業と協力しながらリストラなどによって企業価値を高める「友好型」が主流だ。また半ば公然の日本と違い「インサイダー取引」には厳しく、あのマーサ・スチュワートすら堀に入ったくらいだ。
▼そんな米国だが、9日付のニューヨーク・タイムズは村上逮捕に意外な反応を見せた。「日本はいまだに古い統制組織として振る舞い、(村上容疑者という)起業家を威嚇することで、社会で波風を立てる人間を罰している」と批判的な見方を示したのだ。
▼景気低迷期にはもてはやされた村上ファンドだったが、日本の景気回復に伴い、伝統的な日本経済界が自信を取り戻すと、一斉に背を向けたというわけだ。
▼インサイダー取引での摘発は日本では珍しい。村上逮捕に踏み切ったのは、検察と全面対決しようとする堀江貴文被告を追い込むだめだというのは間違いないだろう。
▼東京地検は世相を見て動いているとよく指摘されるが、今回そのメッセージは「格差社会などとぼやいてないで地道に働け」ということなのだろうか。
▼実は伝統的な日本経済界こそが、景気低迷期に「格差社会」を作ってしまったのである。村上や堀江はむしろ、それらに一石を投じた面があることを指摘しておきたい。
(CAPITAL6月15日号より転載)
▼村上ファンドの敵対的投資スタイルは、米国では既に「過去のもの」で、企業と協力しながらリストラなどによって企業価値を高める「友好型」が主流だ。また半ば公然の日本と違い「インサイダー取引」には厳しく、あのマーサ・スチュワートすら堀に入ったくらいだ。
▼そんな米国だが、9日付のニューヨーク・タイムズは村上逮捕に意外な反応を見せた。「日本はいまだに古い統制組織として振る舞い、(村上容疑者という)起業家を威嚇することで、社会で波風を立てる人間を罰している」と批判的な見方を示したのだ。
▼景気低迷期にはもてはやされた村上ファンドだったが、日本の景気回復に伴い、伝統的な日本経済界が自信を取り戻すと、一斉に背を向けたというわけだ。
▼インサイダー取引での摘発は日本では珍しい。村上逮捕に踏み切ったのは、検察と全面対決しようとする堀江貴文被告を追い込むだめだというのは間違いないだろう。
▼東京地検は世相を見て動いているとよく指摘されるが、今回そのメッセージは「格差社会などとぼやいてないで地道に働け」ということなのだろうか。
▼実は伝統的な日本経済界こそが、景気低迷期に「格差社会」を作ってしまったのである。村上や堀江はむしろ、それらに一石を投じた面があることを指摘しておきたい。
(CAPITAL6月15日号より転載)
Monday, May 29, 2006
「社会ネットワーク分析」と共謀罪
▼五月十一日付の米紙USAトゥデーは、9・11テロ後、NSAが通信会社に一般市民の通話記録提示を迫り、数十億件の記録を集めていたと報道。ほかの主要メディアも一斉にこの問題を伝えた。
▼ブッシュ大統領は「われわれの情報活動はアルカイダとその関連組織を標的にしている。一般の米国民のプライバシーは極めて厳しく保護されている」と理解を求めたが、対象となったのが数千万人では言い訳にしか聞こえない。
▼確かにこれは内容そのものを盗聴していたわけではない。誰と誰がつながっていて、誰が中心人物かの「目に見えない」市民のネットワークをデータベース化するのが目的だった思われる。いわゆる「社会ネットワーク分析」である。
▼背景にあるのは9・11テロ事件である。ネットワークのコンサルタントであるバルディス・クレブス氏が、一見単なるメンバーのひとりに過ぎないように見えるモハメド・アッタが、「ネットワーク分析」によって、実は主犯であるということが分かるとしたのだ。
▼科学的であるかどうかは論議されるところだが、これがコンスピラシー(Conspiracy=陰謀)とつながったらどうなるだろう。
▼コンスピラシーとは、実行に移されるのを待たずして犯罪となり得ることである。たとえばカリフォルニア州におけるコンスピラシーとは、最低二人の人間が犯罪の実行を合意し、最低ひとりがその犯罪を実行するために何らかの行為をすれば全員を処罰出来る。多くの国で、殺人の陰謀などは明白に犯罪と規定している。
▼現在、日本で論議されているの「共謀罪」はあくまで「組織的な犯罪の共謀罪」なのだが、あらゆる社会ネットワークが組織的とみなされないとも限らない。
▼「社会ネットワーク分析」が犯罪捜査に使われ、共謀罪とセットになったら、誰もが犯罪者になりうる可能性があると言えないだろうか? 飲み友だちの中で、二人以上で犯罪めいた話をしただけで、皆が巻き添えを食う可能性もあるのだ。
▼「プライバシー」がいかに大切か、改めて考えたい。
(CAPITAL6月1日号より転載)
▼ブッシュ大統領は「われわれの情報活動はアルカイダとその関連組織を標的にしている。一般の米国民のプライバシーは極めて厳しく保護されている」と理解を求めたが、対象となったのが数千万人では言い訳にしか聞こえない。
▼確かにこれは内容そのものを盗聴していたわけではない。誰と誰がつながっていて、誰が中心人物かの「目に見えない」市民のネットワークをデータベース化するのが目的だった思われる。いわゆる「社会ネットワーク分析」である。
▼背景にあるのは9・11テロ事件である。ネットワークのコンサルタントであるバルディス・クレブス氏が、一見単なるメンバーのひとりに過ぎないように見えるモハメド・アッタが、「ネットワーク分析」によって、実は主犯であるということが分かるとしたのだ。
▼科学的であるかどうかは論議されるところだが、これがコンスピラシー(Conspiracy=陰謀)とつながったらどうなるだろう。
▼コンスピラシーとは、実行に移されるのを待たずして犯罪となり得ることである。たとえばカリフォルニア州におけるコンスピラシーとは、最低二人の人間が犯罪の実行を合意し、最低ひとりがその犯罪を実行するために何らかの行為をすれば全員を処罰出来る。多くの国で、殺人の陰謀などは明白に犯罪と規定している。
▼現在、日本で論議されているの「共謀罪」はあくまで「組織的な犯罪の共謀罪」なのだが、あらゆる社会ネットワークが組織的とみなされないとも限らない。
▼「社会ネットワーク分析」が犯罪捜査に使われ、共謀罪とセットになったら、誰もが犯罪者になりうる可能性があると言えないだろうか? 飲み友だちの中で、二人以上で犯罪めいた話をしただけで、皆が巻き添えを食う可能性もあるのだ。
▼「プライバシー」がいかに大切か、改めて考えたい。
(CAPITAL6月1日号より転載)
Friday, May 12, 2006
第三次世界大戦か第二の冷戦か
▼映画も公開中だが、9・11テロの時、乗っ取られたユナイテッド航空93便の機内で乗客がテロ犯と格闘したのをブッシュ大統領は「第三次世界大戦での最初の反撃だった」と語った。
▼テロとの戦いは「第三次世界大戦」というわけだが、本当にアルカイダ相手に世界大戦と言えるようなことなのだろうか?
▼冷戦はとうの昔に終わったはずだが、チェイニー副大統領がロシアのプーチン政権下の民主化後退を批判、ロシアのメディアは「第二の冷戦の始まり」と報じた。
▼副大統領は「反ロシア」の急先鋒(せんぽう)であるグルジアのサーカシビリ、ウクライナのユーシェンコ両大統領を「現代の英雄」と称賛。ロシアは民主的改革路線に戻るか、欧米の「敵」になるか「岐路に立っている」と警告したのだ。タカ派の副大統領から見れば、もうアルカイダでは役不足らしい。
▼お膝下の中南米では、キューバのカストロ国家評議会議長とベネズエラのチャベス、ボリビアのモラレス両大統領が、ベネズエラによる石油支援を柱に、左派政権の三国が広範な分野で相互協力を強化する協定を締結した。南米は資源ナショナリズムを通じ、反米の社会主義が進行しているといえる。
▼そして中国は依然として共産党独裁の社会主義国である。将来GNPで米国を抜けば、世界最大の国家は社会主義国となる。資本主義は社会主義に勝利したのではなかったのか。
▼米国は冷戦に勝利したというが、実際はソ連が勝手に自滅したという方が的を得ている。いずれにせよ、社会主義はそう簡単にはなくならないようだ。
(CAPITAL5月15日号より転載)
▼テロとの戦いは「第三次世界大戦」というわけだが、本当にアルカイダ相手に世界大戦と言えるようなことなのだろうか?
▼冷戦はとうの昔に終わったはずだが、チェイニー副大統領がロシアのプーチン政権下の民主化後退を批判、ロシアのメディアは「第二の冷戦の始まり」と報じた。
▼副大統領は「反ロシア」の急先鋒(せんぽう)であるグルジアのサーカシビリ、ウクライナのユーシェンコ両大統領を「現代の英雄」と称賛。ロシアは民主的改革路線に戻るか、欧米の「敵」になるか「岐路に立っている」と警告したのだ。タカ派の副大統領から見れば、もうアルカイダでは役不足らしい。
▼お膝下の中南米では、キューバのカストロ国家評議会議長とベネズエラのチャベス、ボリビアのモラレス両大統領が、ベネズエラによる石油支援を柱に、左派政権の三国が広範な分野で相互協力を強化する協定を締結した。南米は資源ナショナリズムを通じ、反米の社会主義が進行しているといえる。
▼そして中国は依然として共産党独裁の社会主義国である。将来GNPで米国を抜けば、世界最大の国家は社会主義国となる。資本主義は社会主義に勝利したのではなかったのか。
▼米国は冷戦に勝利したというが、実際はソ連が勝手に自滅したという方が的を得ている。いずれにせよ、社会主義はそう簡単にはなくならないようだ。
(CAPITAL5月15日号より転載)
Subscribe to:
Posts (Atom)