Tuesday, December 02, 2008

元厚生次官宅襲撃事件と裁判員制度

▼「おれがクビになったのは社会が悪いからだ。この国を動かしているのは官僚だ。官僚を何とかしてやろうと、職を失ったころ思った」
▼元厚生次官宅襲撃事件(4面に関連記事)で出頭した小泉毅容疑者(46)の弁である。34年前の「保健所に殺された犬の仇討ち」と主張するなど不可解な部分はいまだ多いが、不遇をかこった自分の社会に対する恨みからであることは間違いないだろう。
▼元厚生次官の次は文部次官が狙われるとインターネットで噂が広がった。29日、ブログに「文部科学省の局長らを一週間以内に順次、自宅で刺殺する」などと書き込んだとして、東京都に住む無職前田記宏容疑者(25)が脅迫容疑で逮捕された。
▼前田容疑者は東大卒業後、職がなく「理想を持って勉強してきたが、教科書の内容と違う現実があるのを知り文科省に詐欺をされたと感じた」などと供述しているという。
▼6月に秋葉原で起きた無差別殺傷事件(7人死亡、10人負傷)の加藤智大容疑者(25)は「勤務先のリストラ計画や処遇に不満があった。世の中が嫌になった。誰でもよかった」と供述した。
▼これらに共通するのは、社会や体制(官僚)に対する社会的脱落者の恨みだ。社会はこれにどう向き合えばいいのか。
▼そんな折、日本で来年5月より裁判員制度が始まる。最高裁は28日、各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を全国の約29万5千人に発送した。
▼有権者から無作為に選ばれた原則6人がプロの裁判官3人と審理するが、対象は殺人、強盗致傷など最高刑が死刑、無期懲役などの重大事件だけである。
▼今の日本の市民社会を否定する「テロ」を、これからは一般市民が裁くことになる。

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