▼オバマ氏が勝利した米大統領選についてニューヨーク・タイムズの有名コラムニスト、トマス・フリードマンは「1863年にペンシルベニア州ゲティズバーグの戦いで大体のケリのついた南北戦争は145年後に同じ州の投票箱で完全に終了した」と書いた。
▼ブルーステート(民主党)とレッドステート(共和党)など、米国はまだ南北戦争の続きをやっているかのような対立の様相を示していたが、「国民融和」を掲げるオバマ氏の勝利で決着がついたというわけだ。
▼だが、8年にわたるブッシュ政権の負の遺産ともいうべきイラク戦争、金融危機、世界同時不況など難題が山積みである。
▼オバマ氏は選挙期間中から「民主党や無党派層、共和党を含む組閣人事を行うつもり」と言明していた。3日、商務長官にニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事を指名。これで、副大統領となるバイデン、国務長官に指名したヒラリー・クリントン上院議員と合わせ指名争いのライバルだった3人を政権に引き入れた。
▼オバマ氏はリンカーン第16代大統領を大変尊敬しており、愛読書のひとつに歴史学者ドリス・グッドウィンによるリンカーンの評伝『政敵が集まった政権(Team of Rivals)』がある。
▼大統領となったリンカーンは、予備選のライバルだった4人をそっくり主要閣僚(国務、財務、司法、陸軍長官)に起用する奇手を用いて、南北戦争という未曾有の国難を切り抜けたのである。
▼オバマ氏はこの「チーム・オブ・ライバルズ」に倣ったようだ。またゲーツ国防長官を留任させるなどオールスター布陣に閣内対立の懸念もあるが、「今は、世界で指導的立場にある米国にとり、21世紀の諸課題に立ち向かうための新たな夜明けの時期にある」と意に介さない。
▼ともすればイエスマンで固めたがる政権や組織は一度参考にするといいかも知れない。(武)
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