Sunday, September 20, 2009

国民皆保険は社会主義か

▼オバマ大統領の医療保険改革が正念場を迎えている。米国にとり医療保険改革は「トルーマン大統領以来、歴代大統領が口にしながら実現できなかった」(オバマ大統領)悲願のテーマだ。
▼首都ワシントンで12日に行われた反オバマ集会には10万人(議会警察及び消防当局調べ)が集まったという。そのプラカードには「オバマニズムはコミュニズム」「社会主義はいらない」などと書かれていた。ほとんどが白人でいわゆる「大きな政府」に反対する人たちである。
▼オバマ政権の目玉である医療保険改革はいうまでもなく、全国民の15・4%に当たる4630万人が無保険(08年)という他の先進国では見られない状態を変えることにある。さらに、財務省の推計によれば向こう10年間で65歳未満の米国民のおよそ半分が無保険を経験することになるという。
▼ほとんどの先進国は公的医療保険制度を導入しているが、米国は高齢者対象のメディケア以外は自由診療である。このため、保険業界の寡占構造もあり負担医療額が高く、民間保険会社加入者ですら医療費が払えず破産する人が多い。低所得者向けにはメディケイドがあるが、これは財政赤字を膨らませる要因になっている。
▼公的医療保険制度を導入すると、役人が個人に対しどういう治療を受けさせるか決めることになるという批判があるが、現状こそ、民間保険会社が保険でカバーするしないをコントロールしているため、受けたい治療を断念することが多いのだ。
▼医療保険改革に伴う「増税反対」の声も根強いが、改革のために今後10年間で必要な約9千億ドルは、「イラクとアフガニスタンの戦費より少額」(オバマ大統領)なのである。
▼無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だとオバマ大統領は強調、公的保険導入など政府の関与度については柔軟な姿勢を示し始め「社会主義色」を消そうとしている。

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