▼日朝協議で北朝鮮が拉致被害者の再調査と、よど号ハイジャック犯の引き渡しに向けて協力すると表明、日本政府は制裁緩和を打ち出したが、この裏には大きな米朝の動きがあった。六月二十六日、北朝鮮は六カ国協議合意に基づく核計画申告書を議長国の中国に提出、ブッシュ米大統領は同日、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を議会に通告すると表明した。
▼拉致被害者家族には「裏切られた」と失望の声が広がっている。米国にテロ国家指定解除をしないよう働き掛けることを町村信孝官房長官に要請したばかりだったからだ。
▼北朝鮮に対し「拉致解決なくして国交正常化なし」(小泉元首相)で臨んできた日本だが、拉致問題は「究極的には日朝二国間問題」(米政府高官)であり、世界の関心は核問題の方である。米国がしびれを切らして動き出してしまった。
▼北朝鮮は拉致問題は終了したという立場だったが「再調査」とは何か? 拉致被害者は救出されるのか? 「我々が知らないところで侵入した日本人がいれば本人確認をした上で、罪を問わず日本に返す」とは北朝鮮が以前から言ってきたことだ。よど号犯についても、実は目新しいものではない。
▼核問題が解決したら、日本と米国は北朝鮮と国交正常化することが二〇〇五年の六カ国協議で合意されている。国交正常化を待ち望んでいる国は多い。北朝鮮のウラン、レアメタルなどを狙う米、ロシア、エネルギー資源を開発したい中国、貿易拡大で景気浮揚を狙う韓国と、日本を除く六カ国協議の各国経済界はすでに活発に動き始めている。そして、六カ国協議は「北東アジアの集団安全保障体制へと発展する」(ライス国務長官)という。
▼こうして見ると、日本だけが後手に回っている感は否めない。ここに来て拉致解決より国交正常化が先になったということか。対米従属で済んだ時代が終わる中、日本の外交の真価が問われている。
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