Friday, October 13, 2006

危険な国

▼危険な国としてブッシュ大統領に「悪の枢軸」とまで言われた北朝鮮が、核実験に成功したと発表した。日米を敵視する核兵器保有国がすぐ日本の西に出現した。東アジアの核保有国はロシアと中国のみで、日本と韓国が米国の「核の傘」に入ることで戦略バランスが保たれてきたが、この均衡が崩れる可能性が出てきた。
▼これは米政権の対北朝鮮政策の失敗を意味するのか? 中間選挙を前に、民主党はブッシュ共和党政権のこれまでの対応の甘さを攻撃しているが、これで中ソが重い腰を上げ、北朝鮮に対する本格的経済制裁が実施できるという見方もある。
▼そもそも核実験は成功したのか疑問が残る。茶番劇の可能性も捨てきれない。いずれにせよミサイルへの搭載となるとまだ数年はかかると見られる。まだそれほどの脅威はないと見る向きが多く、株価の動きも小さかった。
▼今回、米メディアや専門家の論調で目立ったのは、これを機に日本が核武装を始めるのではということだ。アジア諸国も日本の出方を注視している。
▼「日本は技術力があれば数カ月で核兵器を保有できる」(クリスチャン・サイエンス・モニター紙)などと米メディアが相次ぎ報道、ワシントン・ポスト紙は「米当局の主な懸念は、日本のこれからの反応だ」とし、北朝鮮の核実験は「日本が数十年続けてきた非核の公約を破る」ことにつながりかねないと予測した。
▼韓国、台湾が核兵器開発に乗り出す「ドミノ化」も指摘される。台湾が核武装に踏み切れば、中国が一層の軍拡に走るのは必至で、台湾海峡の緊張も高まることになる。さらに、自国開発は無理でも、核移転によりベトナム、ミヤンマーなどが核兵器保有国を目指す可能性も指摘されている。
▼ライス長官は「日本の核武装による地域の核バランスの変化が安全保障状況の改善につながるとは、誰も考えていない。我々は日本を信用している」と語り、ブッシュ大統領は「弾道ミサイル防衛(BMD)」の推進を強調した。
▼拉致問題で北朝鮮非難を強める国民と、改憲を目指す安倍政権という現在の日本は、思いの外「危険な国」と思われているのかも知れない。
(CAPITAL#22 2006年10月15日号より)

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