Thursday, July 01, 2010

「国民の生活が第一」ではなかったのか?

▼明日の日本を占う第22回参院選が始まった。7月11日の投開票まで熱い戦いが繰り広げられる。
▼論戦テーマに消費税率引き上げ問題が浮上している。増税は有権者から常に不評なので、選挙前は避けられることが多かったが、菅首相は、財政破綻回避のため消費税率引き上げが必要とし、セットであるかのように法人税減税に言及した。
▼G8やG20を前に、日本の財政赤字を諸外国から問われた場合に備えたにせよ、民主党は昨年の衆院選で、任期中の4年間は消費税は上げない、まずその前に政府支出の無駄の削減に取り組むとしていたのではないか。
▼政府に無駄が多いのは共通点だが、ギリシャの財政危機を日本に当てはめるのはおかしい。大まかにに言えば、日本は国と地方自治体を合わせ約950兆円の借金を抱えているが、この借金は90%以上が赤字国債で賄われており、3大メガバンクなど日本の銀行が半ば自動的に購入している。つまり総額1450兆円ともいわれる国民自身の預金で支えている。国の金融資産は505兆円あり、計算すると対外純債権367兆円の世界最大の債権国である。国民一人当たりの負債は20万円ほどだ。
▼日本は国際競争力の低下した輸出関連の大企業を優遇、法人税減税や輸出戻し税で助けてきた。消費税が始まって22年間。消費税税収は累計224兆円の一方、同時期の法人3税による税収は208兆円も下がっている。
▼日本の会社のほとんどは中小零細、自営業である。民主党の子供手当や農家個別所得補償、高速道路無料化などは、単なるバラマキではなく、税金使途の効率化と所得再分配の改善でもあったはずだ。
▼日本は国民総生産(GDP)500兆円に占める輸出割合は15%ほどで、企業の設備投資と政府支出が25%、残り60%が個人消費だ。消費者が1割財布の紐を締めただけで消費税どころか、GDPの6%が消える計算になる。
▼増税で財政赤字を解決した国はひとつもない。GNPの2倍となった財政赤字を放っておいていいわけではないが、明日にでも破綻するわけではない。政府支出の無駄をなくしつつ、成長戦略を実現していくことが先決だろう。 (CAPITAL#110より転載)

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