▼26日、長野市内を駆け抜けた北京五輪の聖火リレー。大勢の警察官に取り囲まれて走った聖火ランナーたちに笑顔はほとんどなかった。
▼沿道は全国から集まった中国人留学生らが振る中国国旗とチベットの旗でぎっしり。「中国頑張れ!」の歓声と「チベットに自由を」という叫び声が同時に飛び交った。
▼ランナーのタレント萩本欽一さんがJR長野駅前を通過した時、沿道から発煙筒のようなものが投げ込まれた。「おばあちゃんや子供とハイタッチをしようと思っていたのに、できなかった。悔しかった」と萩本さん。
▼最終ランナーを務めた北京五輪マラソン代表の野口みずき選手は「政治が絡んで残念」と述べた。長野県警はトマトを投げ付けるなどしてリレーを妨害したとして、威力業務妨害容疑などで6人を逮捕した。
▼抗議行動を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のメナール事務局長は、抗議行動を容認した日本政府の民主的な対応を称賛した。「日本人は他のどの民主主義国よりもうまくやった」。元左翼活動家のメナール氏は派手なパフォーマンスと信念の強さは誰にも負けない。
▼一方、中国国営通信の新華社も「沿道の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」と伝え、聖火リレーを評価した。中国当局がチベットに弾圧を加えたのは、昨年9月に「チベット青年会議」が「実力闘争路線」を決定したことをつかみ、一気に独立分子を叩くためだったと言われている。かつてはCIAの援助もあったダライ・ラマ14世だが、今は「高度な自治」と「非暴力」を唱えるノーベル平和賞受賞者である。
▼聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツだというのは皮肉だが、ドイツやメキシコ、ソ連など、五輪を開催した独裁国家は10年以内に崩壊し民主化している。さて、中国の共産党独裁はどうなるだろうか。(武)
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