Wednesday, June 13, 2007

ミサイル防衛(MD)と米露冷戦

▼冷戦は終わっていなかったのだろうか。ブッシュ米大統領が欧州七カ国歴訪を終えた。欧州にミサイル防衛(MD)を広める旅だったと言ってよいが、危うくロシアと衝突しそうになった。
▼米国は、チェコとポーランドに配備するMDについて「対ロシアではなく、対北朝鮮・イランだ」と再三にわたり主張してきた。だが、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は4日、「イランのミサイルは欧州に届かない。今年一番のジョークだ」と皮肉った。北朝鮮のミサイルが欧州に届くのを信じる者も皆無だ。
▼ブッシュ米大統領は7日、ドイツでプーチン露大統領と会談。プーチン大統領は、レーダー施設建設予定地をチェコから旧ソ連・中央アジアのアゼルバイジャンに変更、代替施設とすることを提案した。
▼なるほどアゼルバイジャンはイランのすぐ北だ。イランのミサイルが対象であれば、こんなに適切な場所もないだろう。これを拒否すれば、ミサイル防衛は対北朝鮮・イランという主張が嘘だということになってしまう。ブッシュ大統領は仕方なく評価し、両首脳は協議継続で合意した。
▼ロシアは、エリツィン大統領時代に米国の言う事を聞いたばかりに悲惨な経済状態となったことを忘れてはいない。石油会社を国有化し、資源大国として復活しつつある。これに対し米国は影で封じ込め政策を画策してきたとされる。03年のグルジアでバラ革命、04年のウクライナ・オレンジ革命、05年キルギス・チューリップ革命。これら旧ソ連諸国での動きは米国の後ろ盾があったと目されている。
▼欧州のミサイル防衛(MD)計画が対ロシア戦略であることは明白だろう。ブッシュ米大統領は5日、チェコのプラハで演説し、ロシア(中国もだが)との間に「大きな不一致」があるとの見解を表明し、ロシアは「国民主権を約束した改革が脱線している」と明言した。新たな米露冷戦が始まっている。

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