Saturday, January 31, 2009

オバマ就任演説は肩すかしか?

▼オバマ新大統領の就任式とパレードは大盛況だったが、就任演説にはちょっと肩すかしを食らった人も多かったようだ。「イスエ・ウィ・キャン」などはなく、これまでの熱狂をいさめるような印象を受けた人も多いだろう。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。

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