▼1990年に栃木県足利市で起きた女児(当時4)誘拐殺害事件で無期懲役が確定し、再審請求中だった菅家利和さん(62)が釈放された。菅家さんと女児の着衣に付着していた体液のDNAについて、異なる最新の方法による2つの鑑定でいずれもが不一致だったとの結果が出たためである。
▼最高検及び栃木県警は謝罪したが、謝罪して済む問題ではないだろう。逮捕から17年と半年が経過しているのだ。
▼事件当時、足利では79年と84年にも同様の幼女殺害事件があり未解決だった。栃木県警の威信をかけた大捜査が行われたが手掛かりはなし。県警は、元幼稚園バス運転手の菅家さんがアダルトビデオを多数所有、「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」などの聞き込みから犯人と目星をつけ一年間尾行。幼児への声かけすら皆無だった菅家さんのゴミ箱のティッシュを無断で押収しDNA鑑定、「被害者の下着に付いていた精液とDNA型が一致」という理由で連行した。
▼「『おまえがやった』と怒鳴られたり、机をたたかれたりして、刑事たちが怖くなり、もういいやと思った」菅家さんは「自分がやりました」と「自白」してしまう。
▼一審では弁護人までもがこのDNA鑑定を絶対視。菅家さんは「罪を認めて情状酌量を勝ち取る」弁護方針に逆らえず、検察側証拠をほぼ全部認めてしまう。
▼県警は「幼女殺害事件全面解決」と打ち上げた。自白内容と現場の状況の矛盾点が多々あったにも拘わらず、マスコミもなんの検証もしなかった。
▼今回、「任意性のない自白」の信用性を問う声が上がり、取り調べの録音・録画による「可視化」が論議されているが、この冤罪事件には警察、検察、裁判官、弁護士、マスコミすべてが加担していたのである。このままでは、始まったばかりの裁判員制度で一般市民まで冤罪の片棒を担がされてしまう可能性がある。
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