Thursday, April 01, 2010

国を二分する国民皆保険

▼国民の保険加入を義務付けた医療保険改革法が23日に成立した。「国民の和解」を訴えて登場したオバマ大統領が、国を二分する課題に取り組んだ。米国史上初の国民皆保険である。
▼世論調査機関ギャラップとUSAトゥデーは23日、法案可決に対する世論調査の結果を発表、「評価する」が49%で、「評価しない」の40%を上回った。
▼共和党の反対は強く、採決前の17日、「(ペロシ下院議長は民主党議員全員を)酒で酔わせ、自殺攻撃をさせようとしている」と第二次大戦時の日本軍の特攻隊になぞらえたグラム上院議員が、日系のホンダ議員らから批判を浴びる一幕もあった。
▼下院民主党のホイヤー院内総務らは24日、同法に賛成した同党下院議員に対し、脅迫や中傷を受けた同党下院議員は10人以上に上ると発表した。
▼スローター議員の地元事務所にはれんがが投げ付けられ窓ガラスが破壊された。同法成立のため中絶反対議員らの取り込みに動いた黒人議員のクライバーン副院総務には、首つりの縄と「赤ちゃん殺害犯は人間の手か神の御手によって見苦しい最期を迎える」と書かれたファックスが送付された。
▼ある保守系のラジオ・パーソナリティーは「(抵抗運動に備え)体を鍛えて銃の手入れをしておけ」とまで呼び掛けた。殺害予告など深刻な内容については、連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出し、首都警察は議員に対し、自身や家族の身を守るための方法を指導しているという。
▼米国には、個人の自由を尊重し「大きな政府」に反対する伝統があり、日本や西欧のような国民皆保険制度が育たなかった。フロ リダ州など14州の司法長官は連邦政府を相手取り、同法は個人の自由と州の主権を侵害し、違憲だとして無効の訴えを連邦地裁に起こした。野党共和党内では、11月の中間選挙で多数派に返り咲き、法の撤廃を目指す声が上がっている。

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