Tuesday, September 30, 2008

アメリカ後の世界

▼現下の金融危機について、多くの専門家が「世界大恐慌以降最大の危機」とまで語っている。ドルの一極支配体制の終焉や米政府の財政破綻まで取り沙汰されている。加えてイラク戦争の泥沼化、イラン問題、米ロの確執といった不安定要素がうごめいている。唯一の超大国の没落を指摘する声は多い。
▼米国はどうなっていくのか。これに答えたものとして、「ニューズウィーク」国際版の編集長であるファリード・ザカリア氏が”The Post-American World”(アメリカ後の世界)という本を今春出している(徳間書店より邦訳予定)。
▼同氏は、米国の没落ではなく、他の国が台頭していると認識すべきで、「アメリカ後の世界」は「かつてない平和と繁栄ムードに満ちた国際社会」になると言う。実際、80年代以降、戦争は減少し組織的暴力は50年代以降で最低レベル、世界人口の8割の国々で貧困が減少しているという。
▼にもかかわらず何故、人は現在を恐ろしい時代だと感じるのか。それは情報革命で情報量が爆発的に増大したこどが大きいと言う。中国やロシアがアメリカに敵対姿勢を取ったところで、その脅威の程度は知れている、BRICS(ブリクス=ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国は、過去の大国(米英仏独日など)に比べれば穏健であり、既存の国際秩序の中で豊かさをもとめようとしていると指摘する。イスラム原理主義も影響力を増してはおらず、冷静に対応すべきと主張する。
▼米国が影響力を行使できる範囲は狭まるが、米国の強さの源泉は移民であり、内向きになってはいけない。国際社会のプレイヤーが増えて多様化していることへの新しい国際協調の枠組みが必要で、米国が世界の先導役であり続けるなら、ルールの順守が欠かせない。そうすれば21世紀は再び「アメリカの世紀」となるというものだ。
▼世界の多極化を肯定的に捉えたものだが、イラン侵攻、米ロ冷戦など、力に頼った方法で米国の優位を保とうとする勢力もあるのではなかろうか。

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