▼コロラド州デンバーの7万5000人収容の巨大競技場は超満員となった。米史上初の黒人大統領を目指すオバマ上院議員の指名受諾演説を聞くためだ。
▼共同の記事から参加者の声を拾ってみよう。オバマ氏の指名について「生きているうちにこんなことが現実になるとは思わなかった」(六十代の黒人男性)、昔は白人の隣でハンバーガーを食べることもできなかったと言う。二十代のある白人女性は「オバマ氏は私たちの世代を政治に目覚めさせた」と語る。
▼「米国よ、我々は今よりもっと良い国のはずだ」。オバマ氏が呼び掛けるたびに、巨大なスタジアムが地響きを上げて揺れた。
▼だがオバマ氏にひところの勢いはない。オバマ氏の訴える「変革」はあいまいという声は多い。外交・安全保障問題に疎いとされ、副大統領候補に、この方面に強い民主党の重鎮バイデン上院議員(65)を選んだが、ワシントンの政治にどっぷりつかっている人物でもある。
▼一方、共和党大統領候補のマケイン氏は、ロシアのグルジア侵攻で直ちにロシアを批判するなど存在感を示した。副大統領候補には女性のペイリン・アラスカ州知事(44)を選んだ。ペイリン氏は民主党指名争いに敗れたヒラリー上院議員(60)を讃え、「彼女が破ろうとしたガラスの天井は頑丈だったが、われわれは砕くことができる」と、女性初の副大統領の意義を強調、ヒラリー支持者の取り込みを図っている。
▼もっともペイリン氏は人工妊娠中絶に反対など保守派であり、外交経験は皆無、女性だからといってヒラリー支持者を取り込めるかは未知数だ。宗教保守派に不人気のマケイン氏をカバーするために担ぎだされたと見るべきだろう。
▼それにしても1年前には想定できなかった正副大統領候補4人である。ここに感じるのは米国の民主主義のダイナミズムであり、どうやらそれは人々の控えめな思惑を超えて前進していくもののようだ。(武)
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