▼平和の祭典である北京オリンピック開会式直前に、グルジアの南オセチア自治州で戦争が始まった。グルジアのサーカシビリ大統領は「ロシア軍はグルジアを侵略した」と非難、米国のニュースを見ていると、いかにも大国ロシアが一方的に軍事介入したかのようである。
▼しかし、停戦合意を破り戦争を始めたのはグルジア軍である。グルジアからの分離独立を主張する親ロシアの南オセチア自治州の州都ツヒンバリ周辺をグルジア軍が攻撃したのが端緒だ。ロシアは平和維持軍が攻撃を受けたため、反撃に出たのが実際だ。
▼南オセチアは92年の国民投票で9割以上が独立を支持して以降、憲法や国会が制定され、大統領もいて事実上独立している。だがグルジアはもちろん、国際社会は認めてこなかった。南オセチアの独立を阻止したいグルジアだが、何故この時期にグルジアは進撃したのか?
▼それは今年2月のセルビアのコソボ自治州の独立宣言だろう。欧米諸国は相次いで承認した。実質的に独立していれば、独立は可能との前例が出来たのだ。
▼グルジアが焦ったのはそこだろう。皮肉なことに「国際秩序の崩壊を招く前例となる」と、コソボの独立に反対したのが南オセチアを支援するロシアである。
▼シェワルナゼ前大統領を追放したサーカシビリ大統領ら現政権は、投資家のジョージ・ソロスなど米国の後ろ盾で成立したいわば米国の「傀儡政権」。今回のグルジア軍の南オセチア進攻も米国の承認のもと行われたと思われる。
▼背後にあるのは資源や経済、地政学的な面も含めた米ロの覇権争いであり、事実上の米ロ代理戦争なのである。米大統領選も絡んでいる可能性もある。そこで、サルコジ仏大統領が事実上の仲介役としてモスクワを訪問することになったわけである。
▼だがいまさら米ロ冷戦の再来でもないだろう。この新冷戦は旧大国の起死回生を狙ったあがきに思える。(武)
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