▼イラクのサダム・フセイン元大統領への死刑判決が下され、旧政権中枢を占めていたイスラム教スンニ派によるシーア派へのテロ激化が懸念されていたが、現実のものとなった。バグダッドで23日に起きたシーア派へのテロは犠牲者200人以上を出した。
▼NBCテレビは27日、イラクの現状を「内戦」と表現すると発表。ワシントンポスト紙によると、イラク戦争は同日で3年8カ月と8日となり、太平洋戦争の米軍参戦期間を上回った。米兵の死者は2800人を超えている。
▼中間選挙敗北でイラク政策の転換を迫られたブッシュ大統領は、イラク情勢打開に向けヨルダンやイラクを訪問。チェイニー副大統領もスンニ派大国であるサウジアラビアを訪れた。
▼ヨルダンやイラクのシーア派民兵組織は武器や訓練などでイランの支援を受けているとされる一方、スンニ派武装勢力はシリア経由でイラク入りしている可能性が高い。そんな中、シリアは80年代初頭に断絶したイラクと国交回復した。
▼ベーカー元国務長官ら超党派でつくる「イラク研究グループ」はイラク政策に関する提言作成をめぐり国連のアナン事務総長に協議を申し入れた。米国はこれまでシリアやイランを非難していたが、同グループは、イラクの安定のためにはシリアやイランの協力が必要との考えだとされる。
▼イラク戦争を主導し、大きな発言力を誇ったネオコン(新保守主義)の代表格、リチャード・パール氏は、イラクの泥沼化を招いたのはネオコンではなく「長期化する占領」を続けるブッシュ政権中枢だと反論したが、責任のなすり合いにしか聞こえない。すでに退場を余儀なくされた形だ。
▼ネオコンにとってイラク侵攻は彼らの言う「中東民主化」の第一歩に過ぎなかったはずが一歩目から躓いた。イラク問題を巡り、米国は核問題などで敵対するイランやシリアとの協調へと、大きな転換を迫られている。(CAPITAL2006年12月1日号より転載)
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