Thursday, December 14, 2006

命(いのち)の尊さ

▼今年ももうすぐ終わる。日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」に「命」が決まり、京都の清水寺で発表があった。全国から約9万2500通の応募があり「命」が約9%の約8360通で一位だったという。
▼今年は、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さま誕生で「生まれた命」に注目が集まる一方、いじめ自殺や子供虐待、飲酒運転事故などの痛ましい事件が相次いだ。「一つしかない命の重み、大切さを痛感した」のが選考理由と同協会。
▼命の尊さはいつも声高に叫ばれてきた。だが、病気や事故はまだしも、世界では人為的な紛争で毎日、人が死んでいる。たとえば、イラク駐留米軍が8日、イラク聖戦アルカイダ組織の掃討作戦を行ったが、警察によると死亡した17人のうち5人は子供で6人は女性という。
▼米ジョンズホプキンズ大などの推計によれば、イラク戦争開戦後から今年6月までのイラク人の死者数が約65万5千人に上る。米政府は「信頼性がない」と反論したが、シャンマリ・イラク保健相は先月、死亡したイラク人は少なくとも推計15万人に上ると表明した。一方で米軍の死者は12月初旬に死者2900人を突破、9・11テロ犠牲者の数をイラクだけで上回りそうな勢いである。
▼命をどれだけ大切にしているかは、文明の到達度を示すと言ってよいだろう。それ故に自爆テロの愚かさ、悲しさは痛感の極みである。パレスチナで先月、孫をイスラエル軍に殺された64歳の女性が自爆攻撃を行い死亡した。パレスチナ人では過去最高齢とみられる。
▼命の尊さは、秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さまだろうがイラクの名もない子供だろうが同じだろう。命の尊さを噛みしめながら、今年も年が明けていく。(Capital2006年12月15日号より転載)

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