▼今年は豚年、などというと驚かれると思うが、中国も朝鮮もベトナムも十二支の最後十二番目の動物は猪ではなく豚である。
▼中国語では「猪」とは「豚」のことである。ご存じの通り、「西遊記」の猪八戒はブタだ。中国語ではイノシシを「野猪」である。
▼どうも、十二支が大陸から伝わった時、日本にはイノシシの家畜である豚がまだ存在していなかったらしい。それで猪がイノシシになったようだ。
▼イノシシの語源は「猪(い)の獣(しし)」から。現在でも干支のイノシシを「亥(い)」と言うが、この「い」は古くは「ヰ(ゐ)」で、鳴き声を表した擬声語で「ウィ」と発音していた。つまり、ウィと鳴く獣が猪だ。
▼英語ではWild boarで、Wild pigとも。直訳で野ブタだ。ユーラシア大陸を中心に世界中至る所に分布し、米国にも多少生息する。アニメ「ライオン・キング」のブンバはイボイノシシ。日本にいるのは日本にはニホンイノシシとリュウキュウイノシシ。
▼猪の肉は「牡丹肉」とも言われる。白い脂肪に縁どられた赤い肉を切り分けて皿に盛った状態が牡丹の花のように見えるからだ。獣の肉食がタブーとされた時代も「山鯨(やまくじら)」と称して例外的に食べていた。
▼「薬喰い」の別名もある通り、滋養強壮、万病を防ぐと言われ、そこから無病息災の象徴となった。今では郷土料理として兵庫県の丹波地方や神奈川県の丹沢地方にでも行かなければなかなか食べる機会がない。
▼猪がらみの熟語といえば「猪突猛進」。周囲の人のことや状況を考えずに、一つのことに向かって猛烈な勢いで突き進むこと。必ずしもいい意味であるとは限らないが、猪は「勇気と冒険」を表す動物でもあり、こっちを取りたいところ。(CAPITAL2007年1月1日号より転載)
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