▼五月十一日付の米紙USAトゥデーは、9・11テロ後、NSAが通信会社に一般市民の通話記録提示を迫り、数十億件の記録を集めていたと報道。ほかの主要メディアも一斉にこの問題を伝えた。
▼ブッシュ大統領は「われわれの情報活動はアルカイダとその関連組織を標的にしている。一般の米国民のプライバシーは極めて厳しく保護されている」と理解を求めたが、対象となったのが数千万人では言い訳にしか聞こえない。
▼確かにこれは内容そのものを盗聴していたわけではない。誰と誰がつながっていて、誰が中心人物かの「目に見えない」市民のネットワークをデータベース化するのが目的だった思われる。いわゆる「社会ネットワーク分析」である。
▼背景にあるのは9・11テロ事件である。ネットワークのコンサルタントであるバルディス・クレブス氏が、一見単なるメンバーのひとりに過ぎないように見えるモハメド・アッタが、「ネットワーク分析」によって、実は主犯であるということが分かるとしたのだ。
▼科学的であるかどうかは論議されるところだが、これがコンスピラシー(Conspiracy=陰謀)とつながったらどうなるだろう。
▼コンスピラシーとは、実行に移されるのを待たずして犯罪となり得ることである。たとえばカリフォルニア州におけるコンスピラシーとは、最低二人の人間が犯罪の実行を合意し、最低ひとりがその犯罪を実行するために何らかの行為をすれば全員を処罰出来る。多くの国で、殺人の陰謀などは明白に犯罪と規定している。
▼現在、日本で論議されているの「共謀罪」はあくまで「組織的な犯罪の共謀罪」なのだが、あらゆる社会ネットワークが組織的とみなされないとも限らない。
▼「社会ネットワーク分析」が犯罪捜査に使われ、共謀罪とセットになったら、誰もが犯罪者になりうる可能性があると言えないだろうか? 飲み友だちの中で、二人以上で犯罪めいた話をしただけで、皆が巻き添えを食う可能性もあるのだ。
▼「プライバシー」がいかに大切か、改めて考えたい。
(CAPITAL6月1日号より転載)
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