▼3月11日に東日本大震災が発生すると不思議なことに円高になった。「保険会社が保険金支払いのために一時的に円高に」との報道が多かった。確かに復興のためにはお金が必要で、海外に売っていた円を買い戻す必要があるが、これを先読みし円を売って差益を得ようとした投機筋が出てきたのは間違いない。円高は必ずしもだめではないが、輸出関連企業の多い日本には迷惑な話である。
▼米投資情報週刊誌「バロンズ」は3月20日付で「日本は買い」と題する記事を掲載した。「大震災以前でも割安だった日本の株はさらに安くなっており、絶好の投資機会」と書いた。
▼日本の復興を期待してのありがたい話ではない。大震災後、日本は株価暴落で株式市場だけで50兆円が消えた。売りを浴びせた外国人投資家たちがいたことは間違いない。それで「いま日本は買い」というわけなのだ。
▼日本銀行は東日本大震災後の3月14日から7営業日連続で大規模な資金供給を続け、総額は100兆6千億円に達した。震災による経済の先行き不安で銀行が手元資金を抱え込む傾向が出ていると分析しており、 潤沢に供給することで金融面の不安解消を目指したわけだ。
▼ではこのお金、日本の復興に役立っているのか? 日銀が資金供給した金融機関は三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大メガバンクと野村、大和の2大証券会社だが、回収リスクがあったりリターンが低い案件には融資も投資もしない。
▼大部分がゴールドマン・サックス、シティグループ、メリル・リンチなど外資系に「円のキャリートレード」として低金利で貸し出されていると思われる。外資系企業は新興国に投資や先進国の株、債権に投資する。日本には回らず原油、食料などのコモディティの買占めに走り、価格をつり上げている可能性すらあるのだ。
▼投資の世界は冷徹といえばそれまでだが、こうしたマネーゲームの中で、金融は翻弄される現実がある。復興は市場には任せられない、国の強力な政策が不可欠だ。
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