Tuesday, May 03, 2011

ビンラディン死亡で何が変わったのか

▼「我々は彼を仕留めた(We got him)」。ホワイトハウス作戦司令室で約40分間の作戦を生中継ビデオで見ていたオバマ大統領が、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者(54)の殺害を確認後、口にした言葉である。
▼しかし、大統領が1日夜に行った演説は「正義が行われた」と成果を強調したものの、抑制の効いたもので、「憎悪の連鎖」を避けるためか、喜びを表すようなそぶりは一切なかった。
▼ホワイトハウス前では夜中だというのに数千人が詰めかけ、星条旗を振り「USA」を連呼、「宿敵」ビンラディンの死を祝う人々で溢れた。ニューヨークのタイムズスクエアも戦勝パレードのようなお祭り騒ぎとなった。
▼だが、翌日のグランドゼロ前はメディアの数ばかりが目に付き、お祭り気分はなかった。遺族にとってビンラディンの死は9・11テロの真相解明がいっそう遠のいたことでもある。
▼作戦は練りに練られてたものだ。隠れ家を発見したのは昨年8月で、確証を得たため今年3月に軍事作戦の検討を開始。ミサイルで木っ端みじんにする案も検討されたが、遺体識別が困難なほどになると新たな「伝説」を作ってしまうと退けられた。遺体は「水葬」にして「聖地」を作れないようにすることなどもすべて事前に計画された。
▼オバマ大統領は、大統領の出生地問題という不毛なスキャンダルにうんざりするなかの29日、急襲作戦を決断した。
▼殺害後、国務省は海外渡航中の米国人にアルカイダによる「報復テロ」の危険性があると注意を呼びかけているが、米国内に関しては、ナポリターノ国土安全保障長官は先月末導入したばかりの「全米テロ勧告システム(NTAS)」を発する予定はないと発表した。
▼大統領は2日の米兵の名誉勲章授与式のスピーチで「ビンラディンの死によって、世界はより安全になった」と述べたが、「勝利」を全面に出すことはなかった。今年7月にアフガンからの駐留軍の撤退を開始し、イラクでも年内に撤退を完了させるのが大統領の次の目標だ。(CAPITAL#130より転載)

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