Thursday, April 30, 2009

パンデミックと過剰反応

▼現在、世界中を揺るがしている豚インフルエンザ。世界保健機関(WHO)が警戒レベルを「フェーズ4」から世界的大流行(パンデミック)の一歩手前である「フェーズ5」に引き上げた。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。

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