▼2016年の五輪は南米初となるリオデジャネイロに決まり東京は落選してしまった。再挑戦が不確かな中、秋葉広島市長と田上長崎市長は11日、広島市役所で記者会見し、2020年夏季五輪について被爆した両市による共同開催を柱に招致する意向を正式に表明した。
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)
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