▼世界的に活躍するデザイナーの三宅一生さん(71)が、7月14日付けのニューヨーク・タイムズ紙に、オバマ米大統領に広島を訪れるよう呼びかけた。三宅さんは7歳の時、広島で被爆した。黒い雲が上がり人々が逃げまどう光景が今も目に浮かぶ、と自らの被爆体験を綴っている。放射能を浴びた母親は3年後に亡くなったという。
▼オバマ大統領の「核兵器のない世界」を訴えた4月のプラハでの演説以来、核兵器廃絶に向けた動きが活発化している。オバマ大統領は7月6日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で、戦略核弾頭の上限を現状の2500前後から1500〜1675へ、核弾頭の運搬手段を現状の1600から500〜1100へ削減する事を合意した。戦略核の上限数は過去最低水準となる。
▼主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)では7月8日、米国とロシアによる戦略核弾頭の削減合意を歓迎しオバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」に向けた状況をつくることを約束。北朝鮮の再核実験やミサイル発射を「最も強い表現で非難」した。
▼少数ながら日本には、北朝鮮の核兵器などに対抗するために日本核武装を主張する人たちがいるが、偶発的核戦争の危険を高めるだけで、現在の世界の流れからはかけ離れた論議である。米ソ冷戦は過去の話となったが、北朝鮮の核、イランの核開発疑惑、テロリストへの核兵器流出の懸念など、依然として核は人類を脅かしている。
▼折しも「核の番人」ともいわれる国際原子力機関(IAEA)の事務局長に天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選、12月から就任する。日本の発言力がIAEAを舞台に強まることが期待される。
▼今年もまた広島(8月6日)、長崎(8月9日)の原爆の日が来る。戦争による唯一の被爆国である日本が、米国と共に「核兵器のない世界」への取り組みをリードしていくことを望みたい。
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