▼「太った猫の銀行員を助けるために選挙を戦ったわけじゃない」。オバマ米大統領が13日放映のCBSテレビとのインタビューで怒気を含んだ声で語った。太った猫とは俗語で、金持ちを指す。
▼発言は、公的資金による救済を受けた銀行の一部が、幹部らの高額ボー ナスを復活させる動きを見せていることに対してのものだ。
▼ウォール街は株高を背景に業績が回復し、公的資金を返済が進んでいる。半国有化されていた金融大手シティグループが14日、金融危機時に注入を受けた公的資金200億ドルを返済することで米政府と合意、政府は半年から1年後をめどに保有するシティ株をすべて売却、同社は政府管理下から完全に脱する。米銀大手ウェルズ・ファーゴも同日、普通株の新規発行などを通じて資金を調達し、公的資金250億ドルを全額返済すると発表した。
▼これで米大手金融機関上位6社が公的支援から脱することが決まり、金融健全化への取り組みは大きな節目を迎えた。
▼高給復活はこうしたことを背景にしているわけだが、大統領は「米国が数十年に一度の不況を経験し、その原因をつくった人たちが1千万から2千万ドル(約8億9千万〜約17億8千万円)のボーナスを受け取るのか」「ウォール街の人々は、まだ分かっていない」と批判した。
▼さらに「一番頭にくるのは、納税者の助け(公的資金)の恩恵を受けた銀行が、議会で金融規制改革に反対して戦っていることだ」と強調した。金融業界は高い報酬でロイビスを雇い、規制改革を骨抜きにしようと躍起である。
▼米国の失業率は10%に達している。日本同様、米国の雇用の主要な担い手は中小企業である。中小への貸し出しが一向に回復しない現状に対しに、大統領は強いいらだち示した。
▼14日には、ホワイトハウスでウォール街の大手金融機関の首脳を呼び、中小企業向けの融資を拡大するよう要求した。「昨年、米銀は納税者から並々ならぬ支援を受けた。その結果、回復した彼らに、米経済を建て直すため並々ならぬ取り組みを期待している」と大統領。
▼だが、金融機関の首脳らは、貸し出しが増えない原因について、借り手の需要低迷と当局の監督強化にあると訴えた。自分たちに責任はないと言わんばかりだ。
▼納税者から助けてもらっておいて、業績回復すれば、もうその恩は忘れ、自分の懐だけを潤すのがウォール街ということか。(た)
Monday, December 21, 2009
Sunday, December 06, 2009
流行語大賞は「政権交代」よりも「事業仕分け」?
▼今年流行した言葉を決める「ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)がこのほど発表され、「政権交代」(鳩山由紀夫首相)が年間大賞に決定した。
▼まったく妥当なところだろう。ベスト10はこども店長(子役、加藤清史郎)▽新型インフルエンザ(厚生労働省医系技官、木村盛世)▽草食男子(タレントの小池徹平、コラムニストの深沢真紀)▽脱官僚(みんなの党、渡辺喜美代表)▽ファストファッション(タレント、益若つばさ)▽ぼやき(前楽天監督の野村克也)▽歴女(レキジョ)となった。(50音順、敬称略)
▼「脱官僚」など政治絡みのものが多いのが今年の特徴だろう。11月後半に行われた「事業仕分け」は急遽入った格好で、作家の藤本義一さんやタレントのやくみつるさんら5人の選考委員は国民の関心の高さを考慮したに違いない。鳩山首相も「政権交代よりも事業仕分けだね」と述べた。なお、首相が提唱する「友愛」については、(96年に)「取っているので、もう結構です」と答えている。
▼事業仕分けは、過去最高の95兆円超に膨らんだ2010年度概算要求の無駄を洗い出す延べ9日間の作業。「『無駄』の基準がよく分からない。ルールなきショー」(言論NPOの工藤泰志代表)などの声もあり、「科学技術予算を減らすのは論外」(野依良治)などノーベル賞受賞者らから強い批判を浴びたりもした。一般傍聴者は初日の11日の400人から日を追うごとに増加し、終盤は初日の4倍以上の1745人が詰めかけた。
▼共同通信の集計では「廃止」「凍結」「半減」などによる圧縮額は約7500億円。国庫返納を求めた独立行政法人の基金など約1兆400億円の「埋蔵金」発掘と合わせると約1兆8000億円を捻出できる計算になる。共同通信社が11月28、29両日に行った全国電話世論調査によると、事業仕分けについて「評価する」が77・3%だった。
▼まったく妥当なところだろう。ベスト10はこども店長(子役、加藤清史郎)▽新型インフルエンザ(厚生労働省医系技官、木村盛世)▽草食男子(タレントの小池徹平、コラムニストの深沢真紀)▽脱官僚(みんなの党、渡辺喜美代表)▽ファストファッション(タレント、益若つばさ)▽ぼやき(前楽天監督の野村克也)▽歴女(レキジョ)となった。(50音順、敬称略)
▼「脱官僚」など政治絡みのものが多いのが今年の特徴だろう。11月後半に行われた「事業仕分け」は急遽入った格好で、作家の藤本義一さんやタレントのやくみつるさんら5人の選考委員は国民の関心の高さを考慮したに違いない。鳩山首相も「政権交代よりも事業仕分けだね」と述べた。なお、首相が提唱する「友愛」については、(96年に)「取っているので、もう結構です」と答えている。
▼事業仕分けは、過去最高の95兆円超に膨らんだ2010年度概算要求の無駄を洗い出す延べ9日間の作業。「『無駄』の基準がよく分からない。ルールなきショー」(言論NPOの工藤泰志代表)などの声もあり、「科学技術予算を減らすのは論外」(野依良治)などノーベル賞受賞者らから強い批判を浴びたりもした。一般傍聴者は初日の11日の400人から日を追うごとに増加し、終盤は初日の4倍以上の1745人が詰めかけた。
▼共同通信の集計では「廃止」「凍結」「半減」などによる圧縮額は約7500億円。国庫返納を求めた独立行政法人の基金など約1兆400億円の「埋蔵金」発掘と合わせると約1兆8000億円を捻出できる計算になる。共同通信社が11月28、29両日に行った全国電話世論調査によると、事業仕分けについて「評価する」が77・3%だった。
Wednesday, November 18, 2009
オバマ大統領が初訪日
▼オバマ米大統領が初訪日した。訪日を前に、12日付英紙フィナンシャル・タイムズが、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題をめぐる米国の強圧的態度を批判した。ゲーツ米国防長官が日米合意の履行を迫った件に触れ、ブッシュ前政権が約束したミサイル防衛(MD)施設の東欧配備計画をオバマ政権が撤回した例を上げて、米国のご都合主義を批判した。他国から見れば「政権交代したからには政策見直しは当然ある」ということである。
▼13日の東京で日米首脳会談後、大統領は、閣僚級の作業グループを設け、普天間移設問題を協議していくことを表明したが、米紙ニューヨーク・タイムズは、オバマ米大統領がこの問題をめぐり「一定の譲歩を示した」と報じた。
▼オバマ大統領が14日に皇居で天皇、皇后両陛下と面会した際、深々とお辞儀したことはご愛嬌だったが、外国の要人に頭を下げるのは「米国の大統領として不適切」とFOXテレビが報じるなど、保守系を中心に批判が相次いだ。大統領が「ぺこぺこと頭を下げた」と非難したサイトもあった。
▼作業グループ設置だけで「譲歩」だの、外交儀礼で「ぺこぺこ」だのとは、なにやらこれまでの日本の米国従属ぶりを物語るようである。
▼大統領は、14日に都内で行った演説で「米国は太平洋国家。この大洋と固く結び付いている」とし、アジア諸国との関係を強化していくと宣言。日本がアジア安定の「要」で、日米の「揺るぎなき同盟」がアジア関与の基本になるとの考えを示した。
▼大統領は2日間滞在しただけでアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向かった。鳩山首相が提唱した「東アジア共同体」構想に対抗するかのように、米国はAPECに力を入れようとしている。「同盟関係」を維持しつつ、経済面では巨大なアジア市場の主導権争いが日米で始まっている。
▼13日の東京で日米首脳会談後、大統領は、閣僚級の作業グループを設け、普天間移設問題を協議していくことを表明したが、米紙ニューヨーク・タイムズは、オバマ米大統領がこの問題をめぐり「一定の譲歩を示した」と報じた。
▼オバマ大統領が14日に皇居で天皇、皇后両陛下と面会した際、深々とお辞儀したことはご愛嬌だったが、外国の要人に頭を下げるのは「米国の大統領として不適切」とFOXテレビが報じるなど、保守系を中心に批判が相次いだ。大統領が「ぺこぺこと頭を下げた」と非難したサイトもあった。
▼作業グループ設置だけで「譲歩」だの、外交儀礼で「ぺこぺこ」だのとは、なにやらこれまでの日本の米国従属ぶりを物語るようである。
▼大統領は、14日に都内で行った演説で「米国は太平洋国家。この大洋と固く結び付いている」とし、アジア諸国との関係を強化していくと宣言。日本がアジア安定の「要」で、日米の「揺るぎなき同盟」がアジア関与の基本になるとの考えを示した。
▼大統領は2日間滞在しただけでアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向かった。鳩山首相が提唱した「東アジア共同体」構想に対抗するかのように、米国はAPECに力を入れようとしている。「同盟関係」を維持しつつ、経済面では巨大なアジア市場の主導権争いが日米で始まっている。
Sunday, November 08, 2009
普天間基地問題は先送り
▼沖縄県宜野湾市の中心にある在日米海兵隊普天間基地は2800mの滑走路を持ち市面積の25%を占める。攻撃ヘリなど100機以上が配備され、離着陸訓練により騒音被害で学校の授業中断は日常茶飯事である。かねてより県は返還を強く求めて来た。
▼沖縄は面積で日本の0・6%だが、在日米軍基地の75%が集中。うち75%が海兵隊の基地で、師団規模での駐留は米本国以外では日本のみである。
▼1995年、海兵隊の兵士3名が12歳の女子小学生を拉致、集団レイプする事件が起き、県民の怒りが爆発。日米で在沖縄米軍を全面的に見直すことになり96年、代替施設を条件に普天間基地の全面返還が決まった。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部が移設先とされたが、名護市の住民投票で反対が過半数を占めるなど反対運動が続いている。当地はジュゴンの北限生息地で環境破壊との声がある。
▼県外、国外移設の方針を主張してきた民主党が政権を取ったため、ゲーツ米国防長官が10月に来日し「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」「グアム移転なしに、沖縄で兵員の縮小と土地の返還もない」とあくまで日米合意の履行を要求。その後、岡田外相は米軍嘉手納基地との統合案を出したが、米国防総省のモレル報道官は「日本の防衛に必要なもの(軍事力)を提供できない」として実現可能性を重ねて否定。空軍戦闘機による騒音被害に苦しむ周辺自治体は「いかなる条件でも断固反対」(宮城篤実嘉手納町長)との姿勢だ。
▼10月31日と11月1日に沖縄県民を対象に行われた毎日新聞と琉球新報による世論調査では反対が67%、賛成20%で、鳩山首相は「県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきだ」が70%を占めた。
▼仲井沖縄県知事は「政府方針の早急な提示」を要求。だが、鳩山首相は2日、この問題について「(12日の)オバマ米大統領の来日までに決めなければならないとは思っていない」と述べ、先送りした。(た)
▼沖縄は面積で日本の0・6%だが、在日米軍基地の75%が集中。うち75%が海兵隊の基地で、師団規模での駐留は米本国以外では日本のみである。
▼1995年、海兵隊の兵士3名が12歳の女子小学生を拉致、集団レイプする事件が起き、県民の怒りが爆発。日米で在沖縄米軍を全面的に見直すことになり96年、代替施設を条件に普天間基地の全面返還が決まった。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部が移設先とされたが、名護市の住民投票で反対が過半数を占めるなど反対運動が続いている。当地はジュゴンの北限生息地で環境破壊との声がある。
▼県外、国外移設の方針を主張してきた民主党が政権を取ったため、ゲーツ米国防長官が10月に来日し「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」「グアム移転なしに、沖縄で兵員の縮小と土地の返還もない」とあくまで日米合意の履行を要求。その後、岡田外相は米軍嘉手納基地との統合案を出したが、米国防総省のモレル報道官は「日本の防衛に必要なもの(軍事力)を提供できない」として実現可能性を重ねて否定。空軍戦闘機による騒音被害に苦しむ周辺自治体は「いかなる条件でも断固反対」(宮城篤実嘉手納町長)との姿勢だ。
▼10月31日と11月1日に沖縄県民を対象に行われた毎日新聞と琉球新報による世論調査では反対が67%、賛成20%で、鳩山首相は「県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきだ」が70%を占めた。
▼仲井沖縄県知事は「政府方針の早急な提示」を要求。だが、鳩山首相は2日、この問題について「(12日の)オバマ米大統領の来日までに決めなければならないとは思っていない」と述べ、先送りした。(た)
Thursday, October 15, 2009
広島・長崎五輪とオバマ大統領のノーベル平和賞
▼2016年の五輪は南米初となるリオデジャネイロに決まり東京は落選してしまった。再挑戦が不確かな中、秋葉広島市長と田上長崎市長は11日、広島市役所で記者会見し、2020年夏季五輪について被爆した両市による共同開催を柱に招致する意向を正式に表明した。
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)
Thursday, October 01, 2009
鳩山首相が鮮烈国連デビュー
▼鮮烈国連デビューと言っていいだろう。鳩山首相が国連気候変動首脳会合で22日、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減すると表明、途上国への資金や省エネ技術の積極的供与を明示した「鳩山イニシアチブ」も提唱した。
▼数値に関しては実現をいぶかる向きもあるが、鳩山首相は戦後初の「理系」出身の首相である。「(日本)国民、企業の能力の高さを信頼している。産業革命以来続いた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることこそが、次の世代に対する責務だ」と訴えた。
▼たどたどしさはあるものの明瞭な発音の英語で演説する鳩山首相に、日本が初めて世界をリードする姿を感じた人も多いのではないだろうか。
▼ロシアはじめEUや途上国などの各国首脳から高い評価を受けたにも関わらず、米国の大手メディアがあまり大きく取り上げなかったところに、温暖化問題への取り組みにおいてリーダーとなれない米国の微妙な立場を表しているようだ。
▼24日には国連安全保障理事会が、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択した。
▼「核兵器のない世界」は日本が一貫して主張してきたことである。鳩山首相は「広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んで欲しい」と世界の指導者に呼び掛けた。北朝鮮の核問題に直面しながらも、唯一の被爆国として核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし非核三原則の堅持を表明した。
▼世界はオバマ米大統領が掲げた理想の実現へ向け踏み出した。今こそ日本は米国と共に、率先して「核兵器のない世界」実現に向け積極的に取り組む時だ。
▼すべての分野でリードする必要はない。日本が温暖化や核廃絶などでリードすることが「国際貢献」となる。(た)
▼数値に関しては実現をいぶかる向きもあるが、鳩山首相は戦後初の「理系」出身の首相である。「(日本)国民、企業の能力の高さを信頼している。産業革命以来続いた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることこそが、次の世代に対する責務だ」と訴えた。
▼たどたどしさはあるものの明瞭な発音の英語で演説する鳩山首相に、日本が初めて世界をリードする姿を感じた人も多いのではないだろうか。
▼ロシアはじめEUや途上国などの各国首脳から高い評価を受けたにも関わらず、米国の大手メディアがあまり大きく取り上げなかったところに、温暖化問題への取り組みにおいてリーダーとなれない米国の微妙な立場を表しているようだ。
▼24日には国連安全保障理事会が、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択した。
▼「核兵器のない世界」は日本が一貫して主張してきたことである。鳩山首相は「広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んで欲しい」と世界の指導者に呼び掛けた。北朝鮮の核問題に直面しながらも、唯一の被爆国として核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし非核三原則の堅持を表明した。
▼世界はオバマ米大統領が掲げた理想の実現へ向け踏み出した。今こそ日本は米国と共に、率先して「核兵器のない世界」実現に向け積極的に取り組む時だ。
▼すべての分野でリードする必要はない。日本が温暖化や核廃絶などでリードすることが「国際貢献」となる。(た)
Sunday, September 20, 2009
国民皆保険は社会主義か
▼オバマ大統領の医療保険改革が正念場を迎えている。米国にとり医療保険改革は「トルーマン大統領以来、歴代大統領が口にしながら実現できなかった」(オバマ大統領)悲願のテーマだ。
▼首都ワシントンで12日に行われた反オバマ集会には10万人(議会警察及び消防当局調べ)が集まったという。そのプラカードには「オバマニズムはコミュニズム」「社会主義はいらない」などと書かれていた。ほとんどが白人でいわゆる「大きな政府」に反対する人たちである。
▼オバマ政権の目玉である医療保険改革はいうまでもなく、全国民の15・4%に当たる4630万人が無保険(08年)という他の先進国では見られない状態を変えることにある。さらに、財務省の推計によれば向こう10年間で65歳未満の米国民のおよそ半分が無保険を経験することになるという。
▼ほとんどの先進国は公的医療保険制度を導入しているが、米国は高齢者対象のメディケア以外は自由診療である。このため、保険業界の寡占構造もあり負担医療額が高く、民間保険会社加入者ですら医療費が払えず破産する人が多い。低所得者向けにはメディケイドがあるが、これは財政赤字を膨らませる要因になっている。
▼公的医療保険制度を導入すると、役人が個人に対しどういう治療を受けさせるか決めることになるという批判があるが、現状こそ、民間保険会社が保険でカバーするしないをコントロールしているため、受けたい治療を断念することが多いのだ。
▼医療保険改革に伴う「増税反対」の声も根強いが、改革のために今後10年間で必要な約9千億ドルは、「イラクとアフガニスタンの戦費より少額」(オバマ大統領)なのである。
▼無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だとオバマ大統領は強調、公的保険導入など政府の関与度については柔軟な姿勢を示し始め「社会主義色」を消そうとしている。
▼首都ワシントンで12日に行われた反オバマ集会には10万人(議会警察及び消防当局調べ)が集まったという。そのプラカードには「オバマニズムはコミュニズム」「社会主義はいらない」などと書かれていた。ほとんどが白人でいわゆる「大きな政府」に反対する人たちである。
▼オバマ政権の目玉である医療保険改革はいうまでもなく、全国民の15・4%に当たる4630万人が無保険(08年)という他の先進国では見られない状態を変えることにある。さらに、財務省の推計によれば向こう10年間で65歳未満の米国民のおよそ半分が無保険を経験することになるという。
▼ほとんどの先進国は公的医療保険制度を導入しているが、米国は高齢者対象のメディケア以外は自由診療である。このため、保険業界の寡占構造もあり負担医療額が高く、民間保険会社加入者ですら医療費が払えず破産する人が多い。低所得者向けにはメディケイドがあるが、これは財政赤字を膨らませる要因になっている。
▼公的医療保険制度を導入すると、役人が個人に対しどういう治療を受けさせるか決めることになるという批判があるが、現状こそ、民間保険会社が保険でカバーするしないをコントロールしているため、受けたい治療を断念することが多いのだ。
▼医療保険改革に伴う「増税反対」の声も根強いが、改革のために今後10年間で必要な約9千億ドルは、「イラクとアフガニスタンの戦費より少額」(オバマ大統領)なのである。
▼無保険状態の国民に保険を提供し医療費も抑制することが「究極の目標」だとオバマ大統領は強調、公的保険導入など政府の関与度については柔軟な姿勢を示し始め「社会主義色」を消そうとしている。
Wednesday, September 02, 2009
ついに日本も新しいページがめくられた
▼ワシントン・ポスト紙は「政治的競争のない民主主義はない」と書いた。言うまでもなく今回の日本の総選挙についてだ。そうした意味で民主党の勝利を好意的に受け止めている。
▼日本は1955年から、細川内閣の263日間を除き、一貫して自民党政権だった。民主主義国家としては世界でも珍しい「一党独裁国」だったわけがついに崩れた。共同通信社が行った全国緊急電話世論調査で、新首相となる民主党の鳩山由紀夫代表に「期待する」と答えた人は71・1%だった。
▼それにしても、予想されていたとはいえ民主党が308議席を獲得するとは。自民党は選挙前の300議席から119議席に落ち込む歴史的惨敗であり、「二大政党制」は日本に根付かないのではとさえ思わせる結果だ。
▼日本国民は「弱体化した経済と高齢化社会」への対処を民主党に委ねたと解説したのはウォールストリート・ジャーナル。自民党長期政権による政・官・財の癒着は社会の活力を失わせるという弊害を生むようになった。選挙結果はそれへの国民の回答だ。
▼民主党は単独過半数を獲得したが、国民新党、社民党との3党連立は崩さず、9月16日に鳩山内閣が成立する。数にものを言わせた民主党の独走はひとまずなさそうだ。
▼焦っているのは米国だろう。民主党は日米地位協定の見直しや海上自衛隊によるインド洋での給油活動の停止を訴えており、鳩山代表が自公政権の対米姿勢を「従属的」と批判し、「対等な日米関係」を主張していることの意味を図りかねている。米国はゲーツ国防長官と次期防衛相との会談を10月中旬に東京で開く方向で調整を始めた。
▼なにせ始めての政権運営である。多少ぎくしゃくもするだろうが、新生日本の誕生としてまずはじっくりと見守りたい。
▼日本は1955年から、細川内閣の263日間を除き、一貫して自民党政権だった。民主主義国家としては世界でも珍しい「一党独裁国」だったわけがついに崩れた。共同通信社が行った全国緊急電話世論調査で、新首相となる民主党の鳩山由紀夫代表に「期待する」と答えた人は71・1%だった。
▼それにしても、予想されていたとはいえ民主党が308議席を獲得するとは。自民党は選挙前の300議席から119議席に落ち込む歴史的惨敗であり、「二大政党制」は日本に根付かないのではとさえ思わせる結果だ。
▼日本国民は「弱体化した経済と高齢化社会」への対処を民主党に委ねたと解説したのはウォールストリート・ジャーナル。自民党長期政権による政・官・財の癒着は社会の活力を失わせるという弊害を生むようになった。選挙結果はそれへの国民の回答だ。
▼民主党は単独過半数を獲得したが、国民新党、社民党との3党連立は崩さず、9月16日に鳩山内閣が成立する。数にものを言わせた民主党の独走はひとまずなさそうだ。
▼焦っているのは米国だろう。民主党は日米地位協定の見直しや海上自衛隊によるインド洋での給油活動の停止を訴えており、鳩山代表が自公政権の対米姿勢を「従属的」と批判し、「対等な日米関係」を主張していることの意味を図りかねている。米国はゲーツ国防長官と次期防衛相との会談を10月中旬に東京で開く方向で調整を始めた。
▼なにせ始めての政権運営である。多少ぎくしゃくもするだろうが、新生日本の誕生としてまずはじっくりと見守りたい。
Saturday, August 15, 2009
政権交代で日米同盟も変わる?
▼クリントン元大統領の電撃訪朝による米国人女性記者2人釈放は、「北朝鮮がプロパガンダで勝利」(ジョン・ボルトン元国連大使)、「北朝鮮が国際社会に受け入れられたと発信できるようになる」(キッシンジャー元国務長官)などの批判はあるものの、米国民の多くはおおむね納得しているようだ。
▼米政府としては、あくまで私人での行動と区別を強調しつつ、裏では細かい指示をしており、金正日総書記の健康状態や後継者問題などの情報を得たようだ。建前より実を取ったということか。
▼こうした柔軟なアプローチも駆使する米国に対し、日本はどうか。「北朝鮮ペースになる」という批判もあるが、拉致被害者の家族たちからは「私人でもいいから北朝鮮と交渉してほしい」(横田滋さん)、「うらやましい」(市川健一さん)といった声があがった。
▼今月30日に行われる総選挙で与党になるのはほぼ確実の民主党は、外交において現実路線を取り始めている。これまでの主張通りインド洋で給油活動に当たる海上自衛隊を来年1月で撤退させるが、代わりにアフガニスタン本土での民生、復興支援を強化。また、①在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)削減②日米地位協定改定③米軍普天間飛行場の県外移転の3つの方針ついても、直ちに交渉入りは求めないことに決めた。
▼米国との「信頼関係の構築を優先」(鳩山氏)し、さらに「現実路線」へ踏み出したわけだ。では現実路線とは一体何か。それは自民党が作って来た対米従属という日米同盟のことではないのか。
▼今年も8月15日の終戦記念日を迎えた。日米が戦争を終えて64年目となる。世界は変わった。米国も変わろうとしている中、日米同盟の中身も変わるべき時が来ているのではないだろうか。
▼米政府としては、あくまで私人での行動と区別を強調しつつ、裏では細かい指示をしており、金正日総書記の健康状態や後継者問題などの情報を得たようだ。建前より実を取ったということか。
▼こうした柔軟なアプローチも駆使する米国に対し、日本はどうか。「北朝鮮ペースになる」という批判もあるが、拉致被害者の家族たちからは「私人でもいいから北朝鮮と交渉してほしい」(横田滋さん)、「うらやましい」(市川健一さん)といった声があがった。
▼今月30日に行われる総選挙で与党になるのはほぼ確実の民主党は、外交において現実路線を取り始めている。これまでの主張通りインド洋で給油活動に当たる海上自衛隊を来年1月で撤退させるが、代わりにアフガニスタン本土での民生、復興支援を強化。また、①在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)削減②日米地位協定改定③米軍普天間飛行場の県外移転の3つの方針ついても、直ちに交渉入りは求めないことに決めた。
▼米国との「信頼関係の構築を優先」(鳩山氏)し、さらに「現実路線」へ踏み出したわけだ。では現実路線とは一体何か。それは自民党が作って来た対米従属という日米同盟のことではないのか。
▼今年も8月15日の終戦記念日を迎えた。日米が戦争を終えて64年目となる。世界は変わった。米国も変わろうとしている中、日米同盟の中身も変わるべき時が来ているのではないだろうか。
Monday, August 03, 2009
米大統領が広島を訪れる日
▼世界的に活躍するデザイナーの三宅一生さん(71)が、7月14日付けのニューヨーク・タイムズ紙に、オバマ米大統領に広島を訪れるよう呼びかけた。三宅さんは7歳の時、広島で被爆した。黒い雲が上がり人々が逃げまどう光景が今も目に浮かぶ、と自らの被爆体験を綴っている。放射能を浴びた母親は3年後に亡くなったという。
▼オバマ大統領の「核兵器のない世界」を訴えた4月のプラハでの演説以来、核兵器廃絶に向けた動きが活発化している。オバマ大統領は7月6日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で、戦略核弾頭の上限を現状の2500前後から1500〜1675へ、核弾頭の運搬手段を現状の1600から500〜1100へ削減する事を合意した。戦略核の上限数は過去最低水準となる。
▼主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)では7月8日、米国とロシアによる戦略核弾頭の削減合意を歓迎しオバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」に向けた状況をつくることを約束。北朝鮮の再核実験やミサイル発射を「最も強い表現で非難」した。
▼少数ながら日本には、北朝鮮の核兵器などに対抗するために日本核武装を主張する人たちがいるが、偶発的核戦争の危険を高めるだけで、現在の世界の流れからはかけ離れた論議である。米ソ冷戦は過去の話となったが、北朝鮮の核、イランの核開発疑惑、テロリストへの核兵器流出の懸念など、依然として核は人類を脅かしている。
▼折しも「核の番人」ともいわれる国際原子力機関(IAEA)の事務局長に天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選、12月から就任する。日本の発言力がIAEAを舞台に強まることが期待される。
▼今年もまた広島(8月6日)、長崎(8月9日)の原爆の日が来る。戦争による唯一の被爆国である日本が、米国と共に「核兵器のない世界」への取り組みをリードしていくことを望みたい。
▼オバマ大統領の「核兵器のない世界」を訴えた4月のプラハでの演説以来、核兵器廃絶に向けた動きが活発化している。オバマ大統領は7月6日、メドベージェフ・ロシア大統領との間で、戦略核弾頭の上限を現状の2500前後から1500〜1675へ、核弾頭の運搬手段を現状の1600から500〜1100へ削減する事を合意した。戦略核の上限数は過去最低水準となる。
▼主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)では7月8日、米国とロシアによる戦略核弾頭の削減合意を歓迎しオバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」に向けた状況をつくることを約束。北朝鮮の再核実験やミサイル発射を「最も強い表現で非難」した。
▼少数ながら日本には、北朝鮮の核兵器などに対抗するために日本核武装を主張する人たちがいるが、偶発的核戦争の危険を高めるだけで、現在の世界の流れからはかけ離れた論議である。米ソ冷戦は過去の話となったが、北朝鮮の核、イランの核開発疑惑、テロリストへの核兵器流出の懸念など、依然として核は人類を脅かしている。
▼折しも「核の番人」ともいわれる国際原子力機関(IAEA)の事務局長に天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)が当選、12月から就任する。日本の発言力がIAEAを舞台に強まることが期待される。
▼今年もまた広島(8月6日)、長崎(8月9日)の原爆の日が来る。戦争による唯一の被爆国である日本が、米国と共に「核兵器のない世界」への取り組みをリードしていくことを望みたい。
Wednesday, July 15, 2009
政権交代のカウントダウンが始まった
▼12日投開票された東京都議選で、民主党が20増の54議席を獲得し第1党に躍進、自民党は過去最低に並ぶ10減の38議席と激減、23議席を維持した公明党と合わせても61議席と過半数を割り込んだ。
▼投票率は前回の43・99%から54・49%とアップした。民主党は名古屋、さいたま、千葉の各市長選、静岡県知事選の地方選4連勝に続き、首都決戦で勝利した。
▼国民の多数が政権交代を望んでいることは明らかだろう。「蟹工船」ブームで党員も増えたという共産党が13議席から8議席に後退したことからも逆に窺える。民主党の小沢元代表や鳩山代表の政治資金問題をつつくより、国民が求めているのは政権交代による現実的な変革だ。
▼衆院選出馬要請をした東国原宮崎県知事に「次期総裁候補として衆院選を戦う」と言われ、自民党もそこまで落ちたかと失笑を買った古賀自民党選対委員長は一連の敗北の責任を取って辞任を表明した。
▼ワシントン・ポスト紙は、麻生首相が「奇跡でも起こさない限り日本の選挙民は自民党を下野させる」と書いた。ニューヨーク・タイムズ紙は、自民党は「時代の変化に適応できなくなっている」と書いた。
▼民主、共産、社民、国民新、新党日本の野党5党が提出した麻生首相に対する問責決議が14日の参院本会議で賛成多数で可決され、野党は衆参両院で全面的な審議拒否に入り、解散を待たずに国会は閉会状態となった。公明党の意向を受けた麻生首相は21日の週に衆院を解散、衆院選を8月18日公示、30日投開票とする日程を表明した。
▼「日本は戦後最大の政変に向かっている」と報じたのは英タイムズ紙。与野党は事実上の選挙戦に突入、歴史的政権交代のカウントダウンが始まった。
▼投票率は前回の43・99%から54・49%とアップした。民主党は名古屋、さいたま、千葉の各市長選、静岡県知事選の地方選4連勝に続き、首都決戦で勝利した。
▼国民の多数が政権交代を望んでいることは明らかだろう。「蟹工船」ブームで党員も増えたという共産党が13議席から8議席に後退したことからも逆に窺える。民主党の小沢元代表や鳩山代表の政治資金問題をつつくより、国民が求めているのは政権交代による現実的な変革だ。
▼衆院選出馬要請をした東国原宮崎県知事に「次期総裁候補として衆院選を戦う」と言われ、自民党もそこまで落ちたかと失笑を買った古賀自民党選対委員長は一連の敗北の責任を取って辞任を表明した。
▼ワシントン・ポスト紙は、麻生首相が「奇跡でも起こさない限り日本の選挙民は自民党を下野させる」と書いた。ニューヨーク・タイムズ紙は、自民党は「時代の変化に適応できなくなっている」と書いた。
▼民主、共産、社民、国民新、新党日本の野党5党が提出した麻生首相に対する問責決議が14日の参院本会議で賛成多数で可決され、野党は衆参両院で全面的な審議拒否に入り、解散を待たずに国会は閉会状態となった。公明党の意向を受けた麻生首相は21日の週に衆院を解散、衆院選を8月18日公示、30日投開票とする日程を表明した。
▼「日本は戦後最大の政変に向かっている」と報じたのは英タイムズ紙。与野党は事実上の選挙戦に突入、歴史的政権交代のカウントダウンが始まった。
Wednesday, July 01, 2009
世紀のスーパースターの死
▼マイケル・ジャクソンが急死した。享年50歳。ジャクソン・ファイブのボーカルとして11歳でデビューし、全世界で7億5千万枚のレコード・CDを売った稀代の歌手である。マドンナやエリザベス・テイラーら歌手、俳優だけでなくサルコジ仏大統領や金大中元韓国大統領まで、世界中が彼の死を惜しんだ。
▼米下院本会議では黒人議員団が呼び掛け、黙とうが捧げられた。だが同じ黒人でもあるにも拘わらずオバマ大統領の反応は鈍かった。大統領は遺族に哀悼の手紙を送ったが、ホワイトハウスは大統領名での追悼声明も出さなかった。
▼ギブズ米大統領報道官によれば、大統領が「すばらしい歌手だった」と讃える一方、スキャンダルに見舞われるなど「哀れで悲劇的な側面も」あったと評していたという。少年への性的虐待疑惑や奇行で知られたマイケルから距離を取ったと見られる。
▼クレーン作業員だった父ジョセフ・ジャクソンが貧困から抜け出すために子どもたちを音楽をやらせ成功させた。一方で、子どもへの虐待もあったとされる。マイケルは11歳での成功後、声変わりとやたら伸びた身長、ひどいニキビで可愛くなくなったことでひどく悩んだ時期があるという。しかしその後、ソングライティングと人間離れしたダンスをものにし、空前の世界的大成功を収め、克服したかに見えた。
▼だが、自身に対する醜悪恐怖に悩み、鼻のケガをきっかけに整形を続け、皮膚の病気のためとされているが肌を白くした。あり余る名声と富の一方で、数々の醜聞、膨大な借金、千件を超える訴訟を起こされた。最後は拒食症だったという報道もある。
▼彼ほどユニバーサルな人間はいないだろう。黒人なのか白人なのか、男女の区別すら超えた印象のマイケルは国、人種問わず世界中の老若男女に愛されたが、自分を愛することは出来なかったのだろうか。7月の復帰を目前にして心と体に傷を負ったまま世紀のスータースターが逝った。
▼米下院本会議では黒人議員団が呼び掛け、黙とうが捧げられた。だが同じ黒人でもあるにも拘わらずオバマ大統領の反応は鈍かった。大統領は遺族に哀悼の手紙を送ったが、ホワイトハウスは大統領名での追悼声明も出さなかった。
▼ギブズ米大統領報道官によれば、大統領が「すばらしい歌手だった」と讃える一方、スキャンダルに見舞われるなど「哀れで悲劇的な側面も」あったと評していたという。少年への性的虐待疑惑や奇行で知られたマイケルから距離を取ったと見られる。
▼クレーン作業員だった父ジョセフ・ジャクソンが貧困から抜け出すために子どもたちを音楽をやらせ成功させた。一方で、子どもへの虐待もあったとされる。マイケルは11歳での成功後、声変わりとやたら伸びた身長、ひどいニキビで可愛くなくなったことでひどく悩んだ時期があるという。しかしその後、ソングライティングと人間離れしたダンスをものにし、空前の世界的大成功を収め、克服したかに見えた。
▼だが、自身に対する醜悪恐怖に悩み、鼻のケガをきっかけに整形を続け、皮膚の病気のためとされているが肌を白くした。あり余る名声と富の一方で、数々の醜聞、膨大な借金、千件を超える訴訟を起こされた。最後は拒食症だったという報道もある。
▼彼ほどユニバーサルな人間はいないだろう。黒人なのか白人なのか、男女の区別すら超えた印象のマイケルは国、人種問わず世界中の老若男女に愛されたが、自分を愛することは出来なかったのだろうか。7月の復帰を目前にして心と体に傷を負ったまま世紀のスータースターが逝った。
Saturday, June 20, 2009
足利事件ー嘘の自白とDNA鑑定
▼1990年に栃木県足利市で起きた女児(当時4)誘拐殺害事件で無期懲役が確定し、再審請求中だった菅家利和さん(62)が釈放された。菅家さんと女児の着衣に付着していた体液のDNAについて、異なる最新の方法による2つの鑑定でいずれもが不一致だったとの結果が出たためである。
▼最高検及び栃木県警は謝罪したが、謝罪して済む問題ではないだろう。逮捕から17年と半年が経過しているのだ。
▼事件当時、足利では79年と84年にも同様の幼女殺害事件があり未解決だった。栃木県警の威信をかけた大捜査が行われたが手掛かりはなし。県警は、元幼稚園バス運転手の菅家さんがアダルトビデオを多数所有、「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」などの聞き込みから犯人と目星をつけ一年間尾行。幼児への声かけすら皆無だった菅家さんのゴミ箱のティッシュを無断で押収しDNA鑑定、「被害者の下着に付いていた精液とDNA型が一致」という理由で連行した。
▼「『おまえがやった』と怒鳴られたり、机をたたかれたりして、刑事たちが怖くなり、もういいやと思った」菅家さんは「自分がやりました」と「自白」してしまう。
▼一審では弁護人までもがこのDNA鑑定を絶対視。菅家さんは「罪を認めて情状酌量を勝ち取る」弁護方針に逆らえず、検察側証拠をほぼ全部認めてしまう。
▼県警は「幼女殺害事件全面解決」と打ち上げた。自白内容と現場の状況の矛盾点が多々あったにも拘わらず、マスコミもなんの検証もしなかった。
▼今回、「任意性のない自白」の信用性を問う声が上がり、取り調べの録音・録画による「可視化」が論議されているが、この冤罪事件には警察、検察、裁判官、弁護士、マスコミすべてが加担していたのである。このままでは、始まったばかりの裁判員制度で一般市民まで冤罪の片棒を担がされてしまう可能性がある。
▼最高検及び栃木県警は謝罪したが、謝罪して済む問題ではないだろう。逮捕から17年と半年が経過しているのだ。
▼事件当時、足利では79年と84年にも同様の幼女殺害事件があり未解決だった。栃木県警の威信をかけた大捜査が行われたが手掛かりはなし。県警は、元幼稚園バス運転手の菅家さんがアダルトビデオを多数所有、「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」などの聞き込みから犯人と目星をつけ一年間尾行。幼児への声かけすら皆無だった菅家さんのゴミ箱のティッシュを無断で押収しDNA鑑定、「被害者の下着に付いていた精液とDNA型が一致」という理由で連行した。
▼「『おまえがやった』と怒鳴られたり、机をたたかれたりして、刑事たちが怖くなり、もういいやと思った」菅家さんは「自分がやりました」と「自白」してしまう。
▼一審では弁護人までもがこのDNA鑑定を絶対視。菅家さんは「罪を認めて情状酌量を勝ち取る」弁護方針に逆らえず、検察側証拠をほぼ全部認めてしまう。
▼県警は「幼女殺害事件全面解決」と打ち上げた。自白内容と現場の状況の矛盾点が多々あったにも拘わらず、マスコミもなんの検証もしなかった。
▼今回、「任意性のない自白」の信用性を問う声が上がり、取り調べの録音・録画による「可視化」が論議されているが、この冤罪事件には警察、検察、裁判官、弁護士、マスコミすべてが加担していたのである。このままでは、始まったばかりの裁判員制度で一般市民まで冤罪の片棒を担がされてしまう可能性がある。
Friday, June 05, 2009
GMというアメリカン・ドリームの終わり
▼「華氏911」などのドキュメンタリーで知られるマイケル・ムーア監督のデビュー作品は「ロジャー&ミー」(89年制作)である。GM(ゼネラルモーターズ)の工場が閉鎖され、生まれ故郷ミシガン州フリントが崩壊の危機にあることを描いている。
▼非情な合理化を行うGMを徹底的に批判しているが、20年後にそのGMが倒産しようとは、当時のムーア監督も思わなかったに違いない。6月1日、GMは連邦倒産法第11章適用を申請、負債額1728億ドル(約17兆4千億円)を抱え経営破綻した。この額は製造業としては世界最大だ。
▼自動車産業は戦後米国の経済繁栄の象徴的存在だった。GMは米自動車ビッグスリーの中でも最大で、50年代には年10億ドル以上を稼ぐ米国最大の企業となった。だがその後は日本車などに押され長期没落傾向になる。
▼GM倒産の原因のひとつとして労務コストの高さが挙げられている。勤続30年余りとはいえ高卒でも年収10万ドルを超える従業員は珍しくない。手厚い福利厚生でも知られ、過去の従業員の退職年金や医療費負担が財務を圧迫した。
▼GMはブルーカラーにとって「アメリカンドリーム」だった。高卒でもコツコツ働けば車も家も持てる。「GMにとってよいことは米国にとって良いこと」(黄金時代の有名な文句)だった。
▼もちろん労務コストで倒産したわけではない。最大の理由は利益率の高いSUVなど大型車中心の販売戦略の失敗だ。またメーカーなのに財務畑出身者ばかりがトップに就き、現場を軽視。現場は日本車に比べ品質の劣るものを作るようになった。メーカーなのに「もの作り」を軽視した。
▼手厚い福利厚生など社会主義国ソ連に対抗しうる米国資本主義企業だったGMが、国と労働組合に所有され、再出発することになったのは歴史の皮肉である。最盛期の1986年に63万人以上いた米国内の人員は10分の1になる。
▼非情な合理化を行うGMを徹底的に批判しているが、20年後にそのGMが倒産しようとは、当時のムーア監督も思わなかったに違いない。6月1日、GMは連邦倒産法第11章適用を申請、負債額1728億ドル(約17兆4千億円)を抱え経営破綻した。この額は製造業としては世界最大だ。
▼自動車産業は戦後米国の経済繁栄の象徴的存在だった。GMは米自動車ビッグスリーの中でも最大で、50年代には年10億ドル以上を稼ぐ米国最大の企業となった。だがその後は日本車などに押され長期没落傾向になる。
▼GM倒産の原因のひとつとして労務コストの高さが挙げられている。勤続30年余りとはいえ高卒でも年収10万ドルを超える従業員は珍しくない。手厚い福利厚生でも知られ、過去の従業員の退職年金や医療費負担が財務を圧迫した。
▼GMはブルーカラーにとって「アメリカンドリーム」だった。高卒でもコツコツ働けば車も家も持てる。「GMにとってよいことは米国にとって良いこと」(黄金時代の有名な文句)だった。
▼もちろん労務コストで倒産したわけではない。最大の理由は利益率の高いSUVなど大型車中心の販売戦略の失敗だ。またメーカーなのに財務畑出身者ばかりがトップに就き、現場を軽視。現場は日本車に比べ品質の劣るものを作るようになった。メーカーなのに「もの作り」を軽視した。
▼手厚い福利厚生など社会主義国ソ連に対抗しうる米国資本主義企業だったGMが、国と労働組合に所有され、再出発することになったのは歴史の皮肉である。最盛期の1986年に63万人以上いた米国内の人員は10分の1になる。
Thursday, May 14, 2009
小沢代表辞任とネガティブキャンペーン
▼小沢一郎氏が、民主党代表を辞任した。小沢代表が公設秘書の起訴後も続投していることに「納得できない」人が71%に達した(読売新聞社の世論調査)というのでは致し方ないのだろう。しかし数字の信憑性はともかく、逮捕理由の「政治資金報告書の虚偽記載」がどうゆうものか、また「推定無罪」の段階であることを、その71%の人たちはどの程度分かっているだろうか。
▼ここにあるのは、“なにやらお上に起訴されたんだから、きっと悪い事をしているに違いない”という「大衆感覚」だろう。大手メディアですら“自民党以来の金権体質までは変えられず、最後に足をすくわれた”といった論調なのだから無理もない。
▼感じるのは陰謀説や「国策捜査」よりも米国の大統領選などでよく使われるネガティブキャンペーンとの類似だ。対立候補を叩くためあらゆるスキャンダルを探し出し、場合によってはありもしないことで誹謗・中傷する運動だ。
▼2000年の米大統領共和党候補予備選では、「マケインは黒人女性との間に婚外子を設けた(実際はバングララディッシュから養子)」などのデマが流された。清廉潔白な人柄で知られるマケイン候補は、あまりの卑劣なやり方に戦意消失、ブッシュ候補に敗北した。04年の大統領選挙でも、ベトナム軍歴をめぐるネガティブキャンペーンでケリー候補は支持率を落とした。
▼あまりの汚さに前回の大統領選では減ったが、選挙が人気取りであり投票である以上、こうしたことはついて回る。政権交代を目指すというが、本当に政権を取るつもりなら日本の民主党もこうしたことを学ぶ必要があるだろう。
▼それにしてもである。米国のネガティブキャンペーンでも検察特捜部といった国家権力が使われることはない。マスメディアは、何故この時期に秘書を逮捕・起訴したのかという検察への追及を怠った。国民はこのことにもっと疑問を持つべきだ。フェア(公平)でなければ民主主義ではない。
▼ここにあるのは、“なにやらお上に起訴されたんだから、きっと悪い事をしているに違いない”という「大衆感覚」だろう。大手メディアですら“自民党以来の金権体質までは変えられず、最後に足をすくわれた”といった論調なのだから無理もない。
▼感じるのは陰謀説や「国策捜査」よりも米国の大統領選などでよく使われるネガティブキャンペーンとの類似だ。対立候補を叩くためあらゆるスキャンダルを探し出し、場合によってはありもしないことで誹謗・中傷する運動だ。
▼2000年の米大統領共和党候補予備選では、「マケインは黒人女性との間に婚外子を設けた(実際はバングララディッシュから養子)」などのデマが流された。清廉潔白な人柄で知られるマケイン候補は、あまりの卑劣なやり方に戦意消失、ブッシュ候補に敗北した。04年の大統領選挙でも、ベトナム軍歴をめぐるネガティブキャンペーンでケリー候補は支持率を落とした。
▼あまりの汚さに前回の大統領選では減ったが、選挙が人気取りであり投票である以上、こうしたことはついて回る。政権交代を目指すというが、本当に政権を取るつもりなら日本の民主党もこうしたことを学ぶ必要があるだろう。
▼それにしてもである。米国のネガティブキャンペーンでも検察特捜部といった国家権力が使われることはない。マスメディアは、何故この時期に秘書を逮捕・起訴したのかという検察への追及を怠った。国民はこのことにもっと疑問を持つべきだ。フェア(公平)でなければ民主主義ではない。
Thursday, April 30, 2009
パンデミックと過剰反応
▼現在、世界中を揺るがしている豚インフルエンザ。世界保健機関(WHO)が警戒レベルを「フェーズ4」から世界的大流行(パンデミック)の一歩手前である「フェーズ5」に引き上げた。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。
Wednesday, April 15, 2009
核兵器を使った国の道義的責任
▼オバマ米大統領が5日、チェコの首都プラハで、国家の安全保障に占める核兵器の役割を減らし、「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と宣言、他の核保有国にも同調を求めた。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
Wednesday, April 01, 2009
「人工衛星」でも緊張する東アジア
▼自民党の菅義偉選対副委員長は28日、「米国から北朝鮮のミサイルの情報をもらっている。日米安全保障条約の信頼感の下で国民の生命と財産を守るのは当たり前だ。小沢氏でこの国を守れるのか」と語った。小沢民主党代表が在日米軍削減に言及したことについて語ったものだ。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
Saturday, March 14, 2009
「国策捜査」か「検察ファッショ」か
▼西松建設の違法献金問題で、民主党の小沢代表の事務所が東京地検特捜部に家宅捜査され、公設第1秘書の大久保隆規が逮捕された。政治資金規正法の厳格化を進め、自ら透明化してきた小沢代表だっただけに、皮肉である。共同通信社が7、8両日に実施した全国電話世論調査で、「小沢氏は代表を辞めた方がよい」との回答が61・1%と続投支持の28・9%を上回った。
▼だが、小沢代表が言う通り、この種の捜査では今まで強制捜査や逮捕が行なわれたことは一度もない。献金者の違法・脱法行為があった場合、献金を返し報告書の記載を修正すれば済んでいた。小沢は議員辞職しろとの声が自民党から出ないのは、そんなことになれば大半の自民党員が辞めなくてはならなくなるからだ。
▼西松の偽装献金と見られる4億8千万円のうち小沢氏へは2億円とされるが、残りの2億8万円は森喜朗、二階俊博、尾身幸次、藤井孝男らほとんどが自民党の議員への献金だ。検察は「時効が近かった」「額が大きかった」というが、それで納得する人はいまい。半年以内には総理大臣になるのはほぼ確実だった小沢代表に対し何故この時期か。「国策捜査」(民主党幹部)、「検察ファッショ」(亀井静香国民新党代表)という声が聞かれたのは無理もない。
▼漆間巌官房副長官(元警察庁長官)が「事件が自民党議員に波及しない」と述べたことが火に油を注いだ。自民と検察が結託した小沢潰しという疑惑だ。検察は世論の動きに反応してか、二階経済産業相ら自民党議員にも捜査を進め始めた。
▼小沢代表自らも語っているが、企業献金だという認識があったなら合法的に受け取れる政党支部を使えばいい話である。そもそも贈収賄を成立させるような権限が小沢氏とはいえ野党の政治家にあるのか。政治資金規正法違反しか問えないのであれば「検察の敗北」と批判にさらされるのは検察は分かっているはずだ。やはり誰かが検察をそそのかしたのだろうか。
▼だが、小沢代表が言う通り、この種の捜査では今まで強制捜査や逮捕が行なわれたことは一度もない。献金者の違法・脱法行為があった場合、献金を返し報告書の記載を修正すれば済んでいた。小沢は議員辞職しろとの声が自民党から出ないのは、そんなことになれば大半の自民党員が辞めなくてはならなくなるからだ。
▼西松の偽装献金と見られる4億8千万円のうち小沢氏へは2億円とされるが、残りの2億8万円は森喜朗、二階俊博、尾身幸次、藤井孝男らほとんどが自民党の議員への献金だ。検察は「時効が近かった」「額が大きかった」というが、それで納得する人はいまい。半年以内には総理大臣になるのはほぼ確実だった小沢代表に対し何故この時期か。「国策捜査」(民主党幹部)、「検察ファッショ」(亀井静香国民新党代表)という声が聞かれたのは無理もない。
▼漆間巌官房副長官(元警察庁長官)が「事件が自民党議員に波及しない」と述べたことが火に油を注いだ。自民と検察が結託した小沢潰しという疑惑だ。検察は世論の動きに反応してか、二階経済産業相ら自民党議員にも捜査を進め始めた。
▼小沢代表自らも語っているが、企業献金だという認識があったなら合法的に受け取れる政党支部を使えばいい話である。そもそも贈収賄を成立させるような権限が小沢氏とはいえ野党の政治家にあるのか。政治資金規正法違反しか問えないのであれば「検察の敗北」と批判にさらされるのは検察は分かっているはずだ。やはり誰かが検察をそそのかしたのだろうか。
Sunday, March 01, 2009
米国は日本の政権交代を織り込み済み?
▼クリントン国務長官は就任後初の訪問国に日本を選び、訪日した。このことを日本政府・外務省は「オバマ政権の日米同盟重視の姿勢が明らかになった」とした。また、オバマ政権は発足後初の外国要人として麻生首相をホワイトハウスに招いた。これも日米同盟重視の姿勢ということになるのだろう。
▼しかし、23日夜にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した首相を出迎えたのはボルーダ国務省儀典長代行だった。24日は大統領の議会演説とも重なったこともあるだろうが、両首脳による会談後の共同記者会見なども見送られ、大統領主催の会食もなかった。
▼クリントン長官は訪日中、小沢民主党代表に会ったが、これは長官が希望していたと言われている。国務長官が野党党首と会談するのは極めて珍しいことだ。
▼日米首脳会談について与党は、世界的経済危機への対応で合意したことなどを歓迎した。細田幹事長は「大変意義があった」と評価、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の包括的解決に関し「大統領も十分な認識を持っている」と強調した。
▼だが、民主党の小沢代表は「国民の信頼を失っている首相に、有効な外交交渉ができるわけがない」と断言。鳩山幹事長は「外国の首相として最も早く招かれたことに喜びすぎると、米国追随外交が始まる」と述べた。
▼経済危機を乗り切るために米国は大量の国債を発行せざるを得ず、それを引き受けてくれるのは日本と中国しかない。これに限らず日本との協力体制は不可欠には違いないが、麻生政権を支えているというイメージを避けているのは明白だ。日本の政権交代を織り込んで対応していると見て間違いない。
▼石破農水相すら「早く民意を問うべきだ」と述べている。支持率9・7%(日本テレビ調査)まで記録した麻生政権はいつまで続くのか。
▼しかし、23日夜にワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した首相を出迎えたのはボルーダ国務省儀典長代行だった。24日は大統領の議会演説とも重なったこともあるだろうが、両首脳による会談後の共同記者会見なども見送られ、大統領主催の会食もなかった。
▼クリントン長官は訪日中、小沢民主党代表に会ったが、これは長官が希望していたと言われている。国務長官が野党党首と会談するのは極めて珍しいことだ。
▼日米首脳会談について与党は、世界的経済危機への対応で合意したことなどを歓迎した。細田幹事長は「大変意義があった」と評価、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の包括的解決に関し「大統領も十分な認識を持っている」と強調した。
▼だが、民主党の小沢代表は「国民の信頼を失っている首相に、有効な外交交渉ができるわけがない」と断言。鳩山幹事長は「外国の首相として最も早く招かれたことに喜びすぎると、米国追随外交が始まる」と述べた。
▼経済危機を乗り切るために米国は大量の国債を発行せざるを得ず、それを引き受けてくれるのは日本と中国しかない。これに限らず日本との協力体制は不可欠には違いないが、麻生政権を支えているというイメージを避けているのは明白だ。日本の政権交代を織り込んで対応していると見て間違いない。
▼石破農水相すら「早く民意を問うべきだ」と述べている。支持率9・7%(日本テレビ調査)まで記録した麻生政権はいつまで続くのか。
Thursday, February 26, 2009
政府紙幣という「打ち出の小槌」
▼オーストラリアで昨年末にスロットマシンに記録的な金額がつぎ込まれたことがこのほど判明した。同国政府は景気刺激策としてクリスマス前に年金受給者や低所得家庭など一時給付金を配ったが、カジノを潤しただけという批判が巻き起こった。
▼支給したのは1人当たり1000〜1400豪ドル(約6万〜8万3千円)。日本では一人1万2千円の定額給付金が決まったものの、どの程度経済効果があるのか疑問視されている。
▼もっと大規模にお金をばらまかねば景気浮揚策にはならないという声は強い。だが、財源はどうするのか。これ以上赤字国債を増やすわけにはいかない。
▼そこで注目を浴びているのが「政府紙幣」だ。硬貨は政府が発行しているが高額紙幣は日銀が発行している。これを政府が日銀とは別に景気対策の財源としての政府紙幣を発行しようというわけだ。
▼日銀の通貨供給では、例えば国債を購入する代金として日銀券を発行すると購入した国債の金利は、経費差し引いて最終的に政府に納付金として納められる。これが通貨発行益だ。しかし政府紙幣の場合は、発行額を政府の負債とする必要がないから、発行経費を差し引いた全額が政府の発行益となる。それを景気対策に活用しようというわけだ。
▼国債を発行せずに財政を賄えて資金供給量を増やせるというまさに「打ち出の小槌」。発行しすぎればハイパーインフレを起こす可能性があるが、デフレスパイラルに陥っている今の日本に心配は無用、むしろ需給ギャップを埋めることが求められていると、提唱者の一人、元財務官僚の高橋洋一東洋大教授(財政学)はその額、25兆円発行を提言している。
▼10年以上前から経済学者の丹羽春喜氏が提言し、ノーベル賞受賞の米経済学者スティグリッツ・コロンビア大教授も勧めているいる政府紙幣発行だが、政府は「取るに足らない話だ」(与謝野馨経済財政担当相)と応じる気配はない。
▼支給したのは1人当たり1000〜1400豪ドル(約6万〜8万3千円)。日本では一人1万2千円の定額給付金が決まったものの、どの程度経済効果があるのか疑問視されている。
▼もっと大規模にお金をばらまかねば景気浮揚策にはならないという声は強い。だが、財源はどうするのか。これ以上赤字国債を増やすわけにはいかない。
▼そこで注目を浴びているのが「政府紙幣」だ。硬貨は政府が発行しているが高額紙幣は日銀が発行している。これを政府が日銀とは別に景気対策の財源としての政府紙幣を発行しようというわけだ。
▼日銀の通貨供給では、例えば国債を購入する代金として日銀券を発行すると購入した国債の金利は、経費差し引いて最終的に政府に納付金として納められる。これが通貨発行益だ。しかし政府紙幣の場合は、発行額を政府の負債とする必要がないから、発行経費を差し引いた全額が政府の発行益となる。それを景気対策に活用しようというわけだ。
▼国債を発行せずに財政を賄えて資金供給量を増やせるというまさに「打ち出の小槌」。発行しすぎればハイパーインフレを起こす可能性があるが、デフレスパイラルに陥っている今の日本に心配は無用、むしろ需給ギャップを埋めることが求められていると、提唱者の一人、元財務官僚の高橋洋一東洋大教授(財政学)はその額、25兆円発行を提言している。
▼10年以上前から経済学者の丹羽春喜氏が提言し、ノーベル賞受賞の米経済学者スティグリッツ・コロンビア大教授も勧めているいる政府紙幣発行だが、政府は「取るに足らない話だ」(与謝野馨経済財政担当相)と応じる気配はない。
Saturday, January 31, 2009
オバマ就任演説は肩すかしか?
▼オバマ新大統領の就任式とパレードは大盛況だったが、就任演説にはちょっと肩すかしを食らった人も多かったようだ。「イスエ・ウィ・キャン」などはなく、これまでの熱狂をいさめるような印象を受けた人も多いだろう。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。
Tuesday, January 13, 2009
オバマ次期大統領に降りかかる国際的な危機
▼またしても中東が火を吹いた。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザのハマスへ空爆を開始、地上軍も投入し、女性や子どもなど民間人を多く含むパレスチナ人の死者は600人を超えた。イスラエルにも死者が出ている。国連などによる停戦調停は米国の拒否により芳しくない。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
Tuesday, January 06, 2009
資本主義は終わるのか?
▼イランのアフマディネジャド大統領は現下の世界的金融危機を「資本主義の終わりの始まりだ」と指摘した。19世紀中頃にカール・マルクスが資本主義の崩壊を予言して以来、大きな不況が来るたびに資本主義の危機が叫ばれた。
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
Subscribe to:
Posts (Atom)