Tuesday, August 29, 2006

テロとナショナリズム

▼山形県鶴岡市の元自民党幹事長加藤紘一衆院議員の実家と事務所が8月15日に全焼した。右翼団体の構成員が敷地内で腹部から血を流して倒れているのが見つかった。割腹自殺を図ったとみられ、病院に運ばれ、29日に放火などの疑いで逮捕した。
▼犯行が終戦記念日の8月15日で、加藤議員が小泉首相の靖国神社参拝を批判していることから犯行に及んだと見られる。だとすればテロそのものである。
▼「テロとの戦い」を掲げてきたはずの小泉首相は28日なってようやく、「暴力で言論を封じることは、決して許されることではない。厳に注意しなければならない」と述べ、自らの参拝が「ナショナリズム」をあおり立てているとの指摘については否定したが、果たしてそうか?。
▼警察庁の漆間巌長官は「加藤議員の発言から、右翼団体の反発が予想され、山形県警も当日、異常がないか連絡を取っていた」という。残念ながら未然に防ぐことは出来なかった。
▼9月に安倍氏が自民党総裁になった場合、事態はさらに悪化するかもしれないと加藤氏は言う。なぜなら小泉首相はまだ東條たちが戦犯だと認めているが、安倍氏はその考えを受け入れていないというのだ。安倍氏は祖父・岸信介元首相の考え方に強く影響されていると加藤氏は指摘する。岸氏は戦後、戦犯に指定されて拘束されたが東京裁判で訴追はされず、後に首相となった人物だ。
▼加藤氏は「非常に強い反中かつ反韓、時には反米的でもある愛国主義が日本に広がっていることが、心配だ」と懸念している。
▼日本がどうして先の愚かな戦争をしてしまったかについて、当時は戦争に突き進まなければテロられるような状況に政治家が追い込まれていた面があることを指摘する研究家もいる。どんな主義・主張を掲げようと、テロは決して許してはならない。(西)
(CAPITAL06年9月1日号より転載)

Friday, August 11, 2006

正義という名の原理主義

▼唯一の被爆国である日本が61年目の夏を迎えた。伊藤長崎市長は平和宣言で、核開発が疑われているイランや北朝鮮を名指しし「世界の核不拡散体制は崩壊の危機に直面している」と深い懸念を示した。
▼ネバダ州の核実験博物館では「原爆展」が開幕した。被爆者の声を代表した丸田和男さん(74)は、現在も約一万発の核弾頭を保有する米国に廃絶に向けた行動を求めた。聴衆の多くは平和への願いを真摯(しんし)に受け止めたが、「核廃絶は理想論」との冷めた意見もあった。
▼退役軍人のひとりは「何故あの戦争が始まったのか。日本の中国侵略など米国が核保有を迫られた状況に全く触れていない。もし日本が先に核兵器を持っていたら、もっと多くの被爆地があっただろう。彼らの核廃絶は理想論にすぎない」と批判した。
▼何故、イランや北朝鮮は核兵器を持ちたがるのか。イランも北朝鮮も「自衛のため」と言う。「恐怖の均衡」や「核抑止力」により自国が守られるとするいわゆる冷戦以来の「核信仰」だ。
▼「生存圏確保」や「自衛」はナチスドイツや軍国主義の日本でも語られていた。また、戦後の世界は核保有国が強力な影響力を持った。国連で拒否権を持つ安保理常任理事国はすべて核保有国であり「核兵器クラブ」と揶揄されたほどである。
▼戦争は古来、「戦争は他の手段をもってする政治の延長」(クラウゼビッツ)で、軍人同士が戦うものだった(カルタゴなど例外もあるが)。それが近代にはいると市民やインフラも対象とする「総力戦」に突入、無差別攻撃の最たるものとして米国は日本に原爆を落とした。
▼ベストセラー『バカの壁』などで知られる養老孟司氏は著書『まともな人』で「なぜわれわれは、戦争がやめられないのか。正義の戦争があるからであろう。さらにいうなら、正義があるからだろう」と看破している。
▼この地上から核兵器や戦争をなくすには「正義という名の原理主義」も廃棄しなくてはいけないのかも知れない。(西)
(CAPITAL06年8月15日号より転載)

Thursday, August 10, 2006

最初で最後の熱い夏

▼宮内庁長官、富田朝彦氏(故人)が書き残した昭和天皇の発言メモは大きな波紋を呼んだ。
▼88年4月28日付メモによると、昭和天皇は「私は或(あ)る時に、A級が合祀され、その上、松岡、白取までもが」「だから私(は)あれ以来参拝していない。それが私の心だ」などと語ったと記されている。明らかにA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示したものだ。
▼昭和天皇は戦後、靖国神社を8回参拝し、75年11月が最後だった。当時から昭和天皇が参拝をしなくなったのは、A級戦犯の合祀が影響しているのではないかとの指摘があったが、その指摘は正しかったことになる。
▼小泉首相は「心の問題だから。強制するものでもない。誰でも自由だ」と何の影響もないことを述べた。政府筋は「皇室は政治利用しないのが一つの見識だ」としたが、中国で反日暴動が起きれば、数千億円単位の損害が出るのではと懸念する経済界はじめ、靖国参拝批判勢力には間違いなく追い風となった。
▼一方で、自民党内にある中国、韓国が反対だから靖国参拝は止めようという「消極論」を民主党の小沢代表は一蹴、A級戦犯は戦争責任があり戦死者ではないことから、合祀(ごうし)は誤りだったとの考えだ。
▼安倍官房長官が、首相の靖国神社参拝について、「(A級戦犯は)国内法的には犯罪者でないと国会で答弁されている。講和条約を受け入れたから参拝すべきでないという論議は、全くトンチンカンだ」と述べた。
▼天皇の不快感メモが明らかにしたのは、靖国問題が、「心の問題」として封印できるものではなく、外国からの圧力の問題でもなく、まず、国内における「歴史認識」の問題としてあることだ。
▼国立追悼施設推進派だった福田元官房長官は総裁選レースから降りたが、日本遺族会会長である自民党の古賀誠元幹事長靖国神社にA級戦犯の自発的な分祀(ぶんし)を促す決意を改めて表明した。
▼首相が8月15日に靖国に参拝したとしても、A級戦犯が合祀された中での、最初で最後の終戦記念日首相参拝となりそうである。
(CAPITAL8月15日号<第16号>より転載)

Wednesday, July 12, 2006

ミサイル・ビジネス

▼北朝鮮が5日、ミサイル6発を日本海に発射した。うちひとつは長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の可能性が高い。
▼日本では経済制裁を強めるべきだ」とした人が80・7%に達するなど(共同通信社の電話世論調査)、北朝鮮の脅威が大々的にクローズアップされる。
▼北朝鮮の目的はミサイル発射で米国を二国間協議に引きずりだすことと、ミサイルビジネスの推進だと思われる。イランのミサイル関係者も北朝鮮入りしていたという。しかしテポドン2号の「実演販売」はあえなく失敗したようだ。
▼米国は、アラスカ州などに配備してある地上発射型迎撃ミサイルを「試験稼働状態」から「実戦稼働状態」へ切り替えていたらしい。だが、ブッシュ大統領は、ミサイル防衛システムで「迎撃できるチャンスはそれなりにあった」と述べているが、テポドン2号は展開していたイージス艦のレーダーにも映らなかったらしい。
▼こんなお粗末な結果であるに関わらず、日本ではミサイル防衛網(MD)が必要との声が高まり、額賀防衛庁長官は、憲法の範囲内で可能な敵基地攻撃の装備を検討すべきだとの考えまで表明した。
▼米国議会も共和党を中心に対北朝鮮圧力を強化する構えで、下院軍事委員会のハンター委員長(共和党)は、年間約百億ドル規模を予算計上し、ミサイル防衛の構築をより強力に推進する考えも示した。
▼ところが国際社会は、北朝鮮非難の声はあるもののトーンは低い。北朝鮮と関係の深い中国、ロシアのみならず、韓国政府も日米などが国連安全保障理事会に提出した制裁決議案について「ミサイル計画を食い止める効果があるのか」と疑問を呈した。
▼日本政府は「平壌宣言」に違反しているという判断だが、北朝鮮の今回のミサイル実験は国際法を犯したわけではない。お粗末なミサイルに大騒ぎしているのは日本とミサイル防衛網関係者のようだ。
▼ブッシュ米大統領は「米国には差し迫った脅威ではない」と判断、「現時点の戦略は中国が北朝鮮に対し六カ国協議に戻るよう説得することだ」としている。ミサイルより核問題の方が重大という考えだ。
▼イラクでの大量破壊兵器の間違いに懲りて、こんなミサイルでは脅威を煽ることはできないと判断したのだろうか、それとも現在のミサイル迎撃技術が使い物にならないことが分かったからなのだろうか。無謀なイラク侵攻を決断した人物とは思えない賢明さである。
(CAPITAL7月15日号(第15号)より)

Monday, June 12, 2006

アブク銭集団と格差社会

▼村上ファンドの村上世彰前代表逮捕は日本では号外も出るニュースとなった。「出る杭は打たれる」「天罰が下る」といった言葉がインターネットやスポーツ紙などを賑わした。ホリエモン逮捕に続く「アブク銭集団」退治に庶民は溜飲を下げたというところか。
▼村上ファンドの敵対的投資スタイルは、米国では既に「過去のもの」で、企業と協力しながらリストラなどによって企業価値を高める「友好型」が主流だ。また半ば公然の日本と違い「インサイダー取引」には厳しく、あのマーサ・スチュワートすら堀に入ったくらいだ。
▼そんな米国だが、9日付のニューヨーク・タイムズは村上逮捕に意外な反応を見せた。「日本はいまだに古い統制組織として振る舞い、(村上容疑者という)起業家を威嚇することで、社会で波風を立てる人間を罰している」と批判的な見方を示したのだ。
▼景気低迷期にはもてはやされた村上ファンドだったが、日本の景気回復に伴い、伝統的な日本経済界が自信を取り戻すと、一斉に背を向けたというわけだ。
▼インサイダー取引での摘発は日本では珍しい。村上逮捕に踏み切ったのは、検察と全面対決しようとする堀江貴文被告を追い込むだめだというのは間違いないだろう。
▼東京地検は世相を見て動いているとよく指摘されるが、今回そのメッセージは「格差社会などとぼやいてないで地道に働け」ということなのだろうか。
▼実は伝統的な日本経済界こそが、景気低迷期に「格差社会」を作ってしまったのである。村上や堀江はむしろ、それらに一石を投じた面があることを指摘しておきたい。
(CAPITAL6月15日号より転載)

Monday, May 29, 2006

「社会ネットワーク分析」と共謀罪

▼五月十一日付の米紙USAトゥデーは、9・11テロ後、NSAが通信会社に一般市民の通話記録提示を迫り、数十億件の記録を集めていたと報道。ほかの主要メディアも一斉にこの問題を伝えた。
▼ブッシュ大統領は「われわれの情報活動はアルカイダとその関連組織を標的にしている。一般の米国民のプライバシーは極めて厳しく保護されている」と理解を求めたが、対象となったのが数千万人では言い訳にしか聞こえない。
▼確かにこれは内容そのものを盗聴していたわけではない。誰と誰がつながっていて、誰が中心人物かの「目に見えない」市民のネットワークをデータベース化するのが目的だった思われる。いわゆる「社会ネットワーク分析」である。
▼背景にあるのは9・11テロ事件である。ネットワークのコンサルタントであるバルディス・クレブス氏が、一見単なるメンバーのひとりに過ぎないように見えるモハメド・アッタが、「ネットワーク分析」によって、実は主犯であるということが分かるとしたのだ。
▼科学的であるかどうかは論議されるところだが、これがコンスピラシー(Conspiracy=陰謀)とつながったらどうなるだろう。
▼コンスピラシーとは、実行に移されるのを待たずして犯罪となり得ることである。たとえばカリフォルニア州におけるコンスピラシーとは、最低二人の人間が犯罪の実行を合意し、最低ひとりがその犯罪を実行するために何らかの行為をすれば全員を処罰出来る。多くの国で、殺人の陰謀などは明白に犯罪と規定している。
▼現在、日本で論議されているの「共謀罪」はあくまで「組織的な犯罪の共謀罪」なのだが、あらゆる社会ネットワークが組織的とみなされないとも限らない。
▼「社会ネットワーク分析」が犯罪捜査に使われ、共謀罪とセットになったら、誰もが犯罪者になりうる可能性があると言えないだろうか? 飲み友だちの中で、二人以上で犯罪めいた話をしただけで、皆が巻き添えを食う可能性もあるのだ。
▼「プライバシー」がいかに大切か、改めて考えたい。
(CAPITAL6月1日号より転載)

Friday, May 12, 2006

第三次世界大戦か第二の冷戦か

▼映画も公開中だが、9・11テロの時、乗っ取られたユナイテッド航空93便の機内で乗客がテロ犯と格闘したのをブッシュ大統領は「第三次世界大戦での最初の反撃だった」と語った。
▼テロとの戦いは「第三次世界大戦」というわけだが、本当にアルカイダ相手に世界大戦と言えるようなことなのだろうか?
▼冷戦はとうの昔に終わったはずだが、チェイニー副大統領がロシアのプーチン政権下の民主化後退を批判、ロシアのメディアは「第二の冷戦の始まり」と報じた。
▼副大統領は「反ロシア」の急先鋒(せんぽう)であるグルジアのサーカシビリ、ウクライナのユーシェンコ両大統領を「現代の英雄」と称賛。ロシアは民主的改革路線に戻るか、欧米の「敵」になるか「岐路に立っている」と警告したのだ。タカ派の副大統領から見れば、もうアルカイダでは役不足らしい。
▼お膝下の中南米では、キューバのカストロ国家評議会議長とベネズエラのチャベス、ボリビアのモラレス両大統領が、ベネズエラによる石油支援を柱に、左派政権の三国が広範な分野で相互協力を強化する協定を締結した。南米は資源ナショナリズムを通じ、反米の社会主義が進行しているといえる。
▼そして中国は依然として共産党独裁の社会主義国である。将来GNPで米国を抜けば、世界最大の国家は社会主義国となる。資本主義は社会主義に勝利したのではなかったのか。
▼米国は冷戦に勝利したというが、実際はソ連が勝手に自滅したという方が的を得ている。いずれにせよ、社会主義はそう簡単にはなくならないようだ。
(CAPITAL5月15日号より転載)

Friday, April 28, 2006

辞任という責任の取り方

▼日本では、不祥事があったりすると何かにつけ責任者が辞任する。辞任すれば済むのかというくらい簡単に辞任することが多い。辞任しないとでも言おうものなら、権力にしがみつく醜悪な姿と映るのが常だ。
▼ところがこちらでは、強い辞任要求が出ても辞任しないくていいらしい。言うまでもなく、ラムズフェルド米国防長官のことである。
▼テレビに出演し口火を切ったのはジニ元中央軍司令官。米統合参謀本部の作戦部長を務めニューボールド元海兵隊中将はイラク戦争は「不必要だった」と断言し、イラク戦争はアルカイダから目をそらす結果を招いたと指摘して国防長官らの交代を要求するなど、少なくとも6人の退役将軍が明確に長官の辞任を求めた。
▼しかしラムズフェルド長官は「私は大統領のために仕事をしている」と述べ、辞任する考えがないことを表明。ブッシュ大統領は「私が決定者だ。何がベストかといえばラムズフェルド氏が長官にとどまることだ」とあらためて支持を確認した。
▼ブッシュ大統領は十一月の中間選挙を前にホワイトハウスのスタッフ刷新を断行したものの、二十四日発表のCNNの世論調査結果によると大統領の支持率は前月より4ポイント低い32%で過去最低を更新(不支持率は60%)、歴代大統領の最低水準である20%台が目前に迫る危機的状況となった。
▼戦争など国民の目を外に向けることによって国内の不人気を払拭する手法は、政治の常套手段である。強硬派のラムズフェルド長官を残し、中間選挙に勝つために対イラン戦争を断行といったことにならないように願いたいものだ。
(CAPITAL5月1日号より転載)

Thursday, April 13, 2006

「靖国」の政治問題化

▼民主党の新代表・小沢一郎氏が就任早々、さっそく政権奪取に向けて仕掛けた。首相の靖国神社参拝自体は賛成だが、「小泉さんのはだめだ。戦争を指導した人たちは靖国に本来祀(まつ)られるべきではない」とし、A級戦犯の分祀を「(私が)政権を取ったらすぐやる」とテレビ番組で述べたのだ。
▼これに対し小泉首相は「政府が言うべきことではない」と反論、次期、総理・総裁の声が高い安倍晋三官房長官も「政府が合祀(ごうし)取り消しを申し入れるのは憲法二〇条の信教の自由の侵害となり、政教分離の原則に反するのではないか。靖国神社が決定すべきで、政府が介入すべき事柄ではない」と、分祀論を明確に否定した。
▼首相はまた、「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよく分からない」と皮肉った。
▼首相の靖国神社参拝によって中・韓との首脳会談が中断している状況になっている。「靖国問題」は中国・韓国の外交カードとなっているとはしばしば指摘されるが、今度はこれが日本の政党間の対立軸の一つとなるのだろうか。
▼外交カードとしての靖国問題は「歴史認識」の問題であることは間違いないが、問題を複雑にしているのは、その根底に死生観、宗教観が横たわっているからだろう。その点では二大政党制下の米国の「中絶問題」や「同性愛問題」などに似たものを感じる。
▼白か黒かの単純な選択は二大政党制を押し進め、政権交代をやりやすくするだろうが、民主主義が安易な「踏み絵」にからめ取られる危険性もある。
(CAPITAL4月15日号より転載)

Wednesday, March 29, 2006

破産法という名のセーフティーネット

▼破産関連の調査会社ランドクイスト・コンサルティングによると、米国の昨年1年間の自己破産の申請件数は204万3535件。前の年より31%増、49万568件も増えた。実に53世帯に1世帯の割合で米家計が破産申請した計算になるという。
▼破産申請が急激に増えた大きな原因のひとつは、昨年10月の破産法改正を前に駆け込み申請が急増したためとされるが、日本の感覚からするとやはり驚く。
▼米国は昨年、個人貯蓄率がマイナス0・5%となった。1933年の大恐慌以来、72年ぶりのマイナスだ。なるほど米国人はクレジットカードを使い過ぎて破産する人が多いのだろうか?
▼1983年から89年の間の南カリフォルニアで申請された自己破産について調べたジョージ・コーセン弁護士によれば、自己破産の大きな原因は医療費と離婚だった。クレジットカード破産は破産者全体のわずか1%以下。「あれは本当に神話なのです」とコーセン弁護士。
▼また、ハーバード医科大学のデビッド・ヒメルスタイン医師らが行った最近の調査でも、米国内で破産した人のおよそ半数が医療費の高騰が原因で破産していたことが分かった。
▼米国の破産法は弱者救済のセーフティネットという側面が大変強いのである。しかし、27年ぶりの破産法改正で、たとえば申請後5年間で6000ドルを返す能力のある者は債務免除を申し立てる破産法第7条の申請が出来なくなった。
▼強力なロビイング活動を展開し、改正法案を押し進めたのはもちろんカード会社である。手厚い社会保障がない分、個人破産や倒産しても何度でもやり直すことの出来た米国も変わりつつあるのだろうか。
(CAPITAL4月1日号より転載)

Wednesday, March 08, 2006

自動車王国の終焉

▼自動車といえば米国を支えてきた基幹産業である。自動車を誰が発明したかは論議のあるところだが、自動車を一般庶民のものにし、ライフスタイルを大きく変えたいわゆるモータリーゼーションの波を起こしてきたのは米国である。
▼米国は鉄道すらも駆逐する勢いで車社会を作り上げてきた。1万以上のパーツからなる自動車は関連分野が鉄鋼から石油業界まで及び、20世紀の経済発展は自動車なしには語れない。
▼その自動車の世界最大の会社ゼネラル・モーターズ(GM)が経営不振で喘いでいる。GMは北米での販売不振などから業績低迷が長期化、大規模な工場閉鎖や人員削減による再建策を打ち出しているが、来年には販売台数でトヨタに抜かれるのは確実という。世界最大級の大企業の行く末を危ぶむ声は日増しに高まっている。
▼GMは利益率の低いからと小型車開発を怠ってきたとよく指摘される。目先の利益を優先させ、大型のSUVや高級車ばかりに力を入れてきた。小型車戦略はスズキとの提携でという方針だったが、ここにきてスズキ株も売却する。
▼もうひとつの米大手自動車会社、フォード・モーターも経営が低迷している。原因はGMとほぼ同じと言われるが、両社が苦しんでいることに医療保険や年金負担があげられる。
▼ブッシュ大統領は「(従業員や退職者との)約束を守るかどうかは企業次第だ」と述べ、政府による救済に否定的な認識を示した。ほとんどの国では医療や年金は国の事業である。
▼また「私は自由貿易主義者だ」とした上で「市場開放がこの国にとって非常に重要」と重ねて指摘し、日本車の輸入規制などを事実上否定した。
▼クリントン政権と比べずいぶん冷たい対応であるが、主張に一貫性はある。GMやフォードに日産を再生させたカルロス・ゴーンのような人物が現れるだろうか。(西)
(CAPITAL第7号より)

Saturday, February 25, 2006

検索サイトあってのインターネット

▼インターネットは、ポルノなどかなり規制されているというが、それでも表現の自由を体現したようなメディアである。
▼デンマークの新聞が掲載した預言者ムハンマドの風刺漫画問題は他国へも飛び火して、掲載した新聞が出るとすぐさまイスラム教徒らの抗議行動が起きているが、この風刺漫画もインターネットで世界中でいつでも見ることができる。
▼だがインターネットでの情報発信は、それが検索サイトで誰にでもすぐに見つけられるようでなければマスメディアとは呼べないかも知れない。
▼グーグルなど米国大手検索会社が、中国のインターネット情報規制に協力していると米議員らの怒りを買っている。
▼例えば「天安門広場」で画像検索すると、グーグル米国版は人民解放軍による民主化運動弾圧の映像が表示されるが、中国版では記念撮影する観光客などしか示されない。グーグルは、中国当局が検閲対象にする情報を中国語検索サービスでは表示していないのだ。ヤフーにいたっては、中国当局に提供した利用者情報が基で反体制派らが投獄されたことが明らかになった。
▼米国のネット企業が中国の言論弾圧に加担しているというわけだが、中国側は、規制対象はテロやポルノなど「ごくわずか」だと譲らない。また、中国はネット利用者が米国に次ぐ世界2位で今後も急増が見込まれ、米検索大手各社は批判を浴びようが中国市場からの撤退はないと言われている。
▼テレビ・新聞などのいわゆる既存マスメディアは行政・司法・立法に次ぐ第四権力と言われるが、インターネットが第五権力とすればその軸となるのは検索サイトなのだろうか。まだまだインターネットは黎明期のようである。(西)
(CAPITAL06年2月27日号<第6号>より)

Wednesday, February 08, 2006

ジニ係数と階級社会

▼所得格差の程度を示す指標にジニ係数というものがある。税や社会保障を通じた再分配後に全員の所得が同額になる状態を0、分配されず1人が全所得を独占している状態を1とし、所得分配の不平等さから貧富の差の大きさを示すものとされる。
▼経済協力開発機構(OECD、加盟30カ国)が04年発表した加盟国のジニ係数では、日本は0.314で、平均の0.309を上回った。日本はジニ係数が上昇傾向にあることがはっきりしている。OECDの中で日本より不平等な国は数カ国しかない。
▼その数カ国に米国が入っている。米国は中国とほぼ同じなのである。中国は開放経済で急成長する臨海都市部と内陸の農村部の貧富の差が激しい。米国は移民を多く受け入れ続ける多民族国家であり、高い能力を発揮する人には高い報酬を支払い、それを軸に全体として高い経済成長を続ける形態を取っていると言える。
▼小泉政権の「改革路線」は弱肉強食の格差社会を拡大させているという批判がある。一方で、持続ある成長のためには競争が必要で、競争のためにはある程度の格差がある方が好ましいと考える日本人が増えているとも言われている。
▼安倍官房長官は「勝ち組、負け組を決して固定化させてはならないし、階級社会をつくっていくことになってもいけない。谷底に落ちるようなことのないセーフティーネットをちゃんと作っていく。みんなが助け合っていくというのが日本の伝統だ。これはしっかり守っていく」と語っている。
▼確かに日本は米国とは違う国。その国に合った、よりよい国作りを願いたい。(西)
(CAPITAL06年2月10日号<第5号>より)

Friday, January 27, 2006

ホリエモンと「光クラブ事件」

▼ホリエモンこと堀江貴文ライブドア社長が逮捕された。容疑は証券取引法違反などだが、「ライブドア」ショックは海外市場にまで及び、逮捕は海外メディアも取り上げた。
▼昨年のニッポン放送株買収劇では、「人の心は金で買える」などと言い放つ堀江氏をどう見るかで、新しい日本人か古い日本人かが分かるとまで言われた。賛否両論のホリエモン。小泉首相すら見境もなく改革のシンボルとして衆院選出馬を促した。ホリエモンというキャラクター自体、高株価を狙った計算づくの演出だったのか。
▼堀江氏は日本のビル・ゲーツという声があった。超一流大学を中退し会社を起こし、他社に嫌われながらも、あらゆる手を使い短期間に巨大企業にしていったところは確かに似ている。
▼しかし、一方で「光クラブ事件」の山崎晃嗣を連想させるという声もあった。まだ戦後の混乱が続く昭和二十三年、山崎は東大在学中に高利貸しの闇金融「光クラブ」を設立する。既成の価値観にとらわれない徹底した合理主義者の山崎は短期間で大成功を収めるが、物価統制法と銀行法違反の疑いで逮捕される。堀江氏も同様の道を辿っている。
▼「光クラブ事件」は債務返済に行き詰まった山崎が青酸カリ自殺をして終わる。まさか堀江氏はそんなことにはならないとは思うが、ライブドア関係者が一人、すでに自殺した。
▼これは日本版エンロン事件である。ルールなき市場経済は社会自体を壊していく。ルールの隙をついたつもりで会社を急成長させてきた堀江氏だが、今度は市場のルールに裁かれる。  (西)
(CAPITAL06年2月1日号より)

Friday, January 13, 2006

キムチと鳥インフルエンザ

▼年明け早々、トルコでも2人が鳥インフルエンザ死亡した。七月にロシアで開かれる主要国(G8)首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)で、鳥インフルエンザ拡大防止を主要議題として取り上げることが決まった。
▼アジアで猛威をふるう高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)はロシアや欧州にも拡大しつつある。米国も例外ではない。国を超えた協力策、新ワクチン開発、途上国へのワクチン供給などが論議される見込みだ。
▼12月31日付ワシントンポスト紙が、最近米国でキムチの売り上げが急増していると報道した。本紙も置いているバージニア州フェアファックス市のロッテ・プラザ・インターナショナル・マーケットでは、16オンスのビン詰めキムチが急に売れるようになった。常連の韓国人客は大きいガロン詰めを買うのが普通だ。スーパーHマートでは1袋7.99ドルのキムチの販売量が前年比55%も増えた。米国東部地域にキムチを卸しているニューヨークのキム・チー・プライド社は前年に比べ20%の販売増となったという。どうも一般の米国人が買い求めるようになったらしい。
▼同紙によると、米国でキムチ販売量が増加したのは、ソウル大カン・サウック教授チームが昨年初め、鳥インフルエンザに感染したニワトリ13羽にキムチ抽出液を注射したところ11羽が回復したという研究成果を発表、これがインターネットを通じ米国に広まったためという。
▼その韓国では、ソウル大・黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚性幹細胞(ES細胞)の研究結果がすべて捏造だったことが発覚した。国民のヒーローだった科学者が一転して、処分が検討され、教授を全面的にバックアップしてきた韓国政府も面目丸潰れである。
▼インターネットの普及とグローバル社会の到来で、病気や不確かな情報もあっという間に広がる。少し前の薬害エイズや牛海綿状脳症(BSE)などでもそうだが、専門家しか分からないことが多すぎる現代にあって、科学者は決してどこぞの利害で働いてはならない。病気は恐いが、不確かな情報に振りまわされないようにしたいものだ。個人的にはキムチは好きだが。(西)
(CAPITAL06年1月15日号より)

Sunday, January 01, 2006

犬と人間

▼今年は戌年。戌(犬)と人間とは3万年来のつき合いがあるといわれ、野生のオオカミが家畜化されたのだという。オオカミの持つ外敵に対する警戒心、獲物を捜す能力などから、人間が狩猟生活をしていた時代から番犬、猟犬として重宝されてきたらしい。
▼日本では縄文時代、犬が人間と同じように埋葬されている。縄文人は犬をとても大事にしたらしい。それが変わるのは弥生時代。日本では犬を食べた時代もあった。
▼現在は犬の特性を生かし、警察犬や盲導犬、介助犬や災害救助犬など各方面で大活躍している。一般家庭では主にペットとして飼われ大変な人気だ。高齢者や心を閉ざす人にセラピードッグも注目されている。
▼犬はたいへん人間になつくが、実はこれはオオカミだった時の群れの本能に基づくもので、人間に服従し、慕うようになるのは人間を群れのリーダーとして認めるからだという。
▼付き合い方を間違えると犬は自分をリーダーと、人間を群れの一員とみなし、立場が逆転してしまう。いわゆる権勢症候群(アルファシンドローム)だ。
▼服従心を忘れた犬はやがて飼い主への愛情もなくす。犬には誠意をもってしつけ、愛情を注ぐことが共生する幸せになるようだ。    (に)
(CAPITAL06年1月1日号<第2号>より)