Wednesday, March 08, 2006

自動車王国の終焉

▼自動車といえば米国を支えてきた基幹産業である。自動車を誰が発明したかは論議のあるところだが、自動車を一般庶民のものにし、ライフスタイルを大きく変えたいわゆるモータリーゼーションの波を起こしてきたのは米国である。
▼米国は鉄道すらも駆逐する勢いで車社会を作り上げてきた。1万以上のパーツからなる自動車は関連分野が鉄鋼から石油業界まで及び、20世紀の経済発展は自動車なしには語れない。
▼その自動車の世界最大の会社ゼネラル・モーターズ(GM)が経営不振で喘いでいる。GMは北米での販売不振などから業績低迷が長期化、大規模な工場閉鎖や人員削減による再建策を打ち出しているが、来年には販売台数でトヨタに抜かれるのは確実という。世界最大級の大企業の行く末を危ぶむ声は日増しに高まっている。
▼GMは利益率の低いからと小型車開発を怠ってきたとよく指摘される。目先の利益を優先させ、大型のSUVや高級車ばかりに力を入れてきた。小型車戦略はスズキとの提携でという方針だったが、ここにきてスズキ株も売却する。
▼もうひとつの米大手自動車会社、フォード・モーターも経営が低迷している。原因はGMとほぼ同じと言われるが、両社が苦しんでいることに医療保険や年金負担があげられる。
▼ブッシュ大統領は「(従業員や退職者との)約束を守るかどうかは企業次第だ」と述べ、政府による救済に否定的な認識を示した。ほとんどの国では医療や年金は国の事業である。
▼また「私は自由貿易主義者だ」とした上で「市場開放がこの国にとって非常に重要」と重ねて指摘し、日本車の輸入規制などを事実上否定した。
▼クリントン政権と比べずいぶん冷たい対応であるが、主張に一貫性はある。GMやフォードに日産を再生させたカルロス・ゴーンのような人物が現れるだろうか。(西)
(CAPITAL第7号より)

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