Thursday, April 13, 2006

「靖国」の政治問題化

▼民主党の新代表・小沢一郎氏が就任早々、さっそく政権奪取に向けて仕掛けた。首相の靖国神社参拝自体は賛成だが、「小泉さんのはだめだ。戦争を指導した人たちは靖国に本来祀(まつ)られるべきではない」とし、A級戦犯の分祀を「(私が)政権を取ったらすぐやる」とテレビ番組で述べたのだ。
▼これに対し小泉首相は「政府が言うべきことではない」と反論、次期、総理・総裁の声が高い安倍晋三官房長官も「政府が合祀(ごうし)取り消しを申し入れるのは憲法二〇条の信教の自由の侵害となり、政教分離の原則に反するのではないか。靖国神社が決定すべきで、政府が介入すべき事柄ではない」と、分祀論を明確に否定した。
▼首相はまた、「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよく分からない」と皮肉った。
▼首相の靖国神社参拝によって中・韓との首脳会談が中断している状況になっている。「靖国問題」は中国・韓国の外交カードとなっているとはしばしば指摘されるが、今度はこれが日本の政党間の対立軸の一つとなるのだろうか。
▼外交カードとしての靖国問題は「歴史認識」の問題であることは間違いないが、問題を複雑にしているのは、その根底に死生観、宗教観が横たわっているからだろう。その点では二大政党制下の米国の「中絶問題」や「同性愛問題」などに似たものを感じる。
▼白か黒かの単純な選択は二大政党制を押し進め、政権交代をやりやすくするだろうが、民主主義が安易な「踏み絵」にからめ取られる危険性もある。
(CAPITAL4月15日号より転載)

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