Friday, May 16, 2008

死刑制度

▼「もし死刑にできないなら、今すぐ犯人を社会に戻してほしい。自分の手で殺します」
▼これは、山口県光市で99年、当時18歳と1か月だった元少年(27)に妻子を殺害された会社員本村洋さん(32)の言葉である。
▼本村さんは、犯罪被害者の権利実現を目指す運動を開始、死刑存置派の先頭に立った。一方で、死刑反対論者として知られる安田好弘弁護士が主任弁護士になったことから、光市母子殺人事件は死刑の是非を巡って論議を呼ぶ裁判ともなった。そして先月22日の差し戻し控訴審で、広島高裁は一審の求刑通り、元少年に死刑の判決を言い渡した。
▼死刑制度は犯罪抑止力にならなく、残虐な報復行為、国家による殺人だいう声は強く、死刑制度廃止は世界的な流れである。91カ国が完全廃止、135カ国が事実上の廃止で、過去10年間に死刑執行をした国は61カ国である。
▼06年でもっとも死刑が多かったのは中国で1010人(実際は8千人とも)、以下イラン177人、パキスタン82人と続き、米国は6位の53人、日本は4人だった。先進国・民主主義国で廃止していないのは米国(州によっては廃止)と日本くらいである。
▼米国では昨年12月にニュージャージー州が死刑を廃止し、廃止州は13州になった。昨年9月には薬物注射による死刑が憲法で禁じた残虐な刑罰に当たるかどうかの審理を連邦最高裁が開始、死刑制度のある州は執行を見合わせていた。しかしながら連邦最高裁が先月、違憲性を認めない判断を示したのを受け、ジョージア州が6日、死刑を執行した。
▼国連人権理事会で9日、対日作業部会が開かれ、最近になって死刑の執行、判決例が多くなっている日本に対し、フランス、オランダなど10カ国以上が死刑の廃止を求めた。日本では09年5月までに裁判員制度が始まる。一般市民が他者に対し死刑を下すかどうかを判断する日がすぐそこまできている。
(武)

Thursday, May 01, 2008

五輪聖火リレー騒動

▼26日、長野市内を駆け抜けた北京五輪の聖火リレー。大勢の警察官に取り囲まれて走った聖火ランナーたちに笑顔はほとんどなかった。
▼沿道は全国から集まった中国人留学生らが振る中国国旗とチベットの旗でぎっしり。「中国頑張れ!」の歓声と「チベットに自由を」という叫び声が同時に飛び交った。
▼ランナーのタレント萩本欽一さんがJR長野駅前を通過した時、沿道から発煙筒のようなものが投げ込まれた。「おばあちゃんや子供とハイタッチをしようと思っていたのに、できなかった。悔しかった」と萩本さん。
▼最終ランナーを務めた北京五輪マラソン代表の野口みずき選手は「政治が絡んで残念」と述べた。長野県警はトマトを投げ付けるなどしてリレーを妨害したとして、威力業務妨害容疑などで6人を逮捕した。
▼抗議行動を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のメナール事務局長は、抗議行動を容認した日本政府の民主的な対応を称賛した。「日本人は他のどの民主主義国よりもうまくやった」。元左翼活動家のメナール氏は派手なパフォーマンスと信念の強さは誰にも負けない。
▼一方、中国国営通信の新華社も「沿道の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」と伝え、聖火リレーを評価した。中国当局がチベットに弾圧を加えたのは、昨年9月に「チベット青年会議」が「実力闘争路線」を決定したことをつかみ、一気に独立分子を叩くためだったと言われている。かつてはCIAの援助もあったダライ・ラマ14世だが、今は「高度な自治」と「非暴力」を唱えるノーベル平和賞受賞者である。
▼聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツだというのは皮肉だが、ドイツやメキシコ、ソ連など、五輪を開催した独裁国家は10年以内に崩壊し民主化している。さて、中国の共産党独裁はどうなるだろうか。(武)

Monday, April 21, 2008

ドキュメンタリー映画「靖国」

▼ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映が危機に陥っている。日本で活動する中国人映画監督、李纓さん(44)が、靖国神社をめぐる人々の姿を、十年をかけ撮影。釜山国際映画祭で上映されたほか、三月の香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど前評判が高かった。
▼これに対し、稲田朋美参院議員(自民)ら一部国会議員が事前試写会を要求、三月十二日に国会議員八十人が参加した試写会が開かれた。稲田議員らは「検閲」ではなく映画製作費のうち七百五十万円を文化庁が助成したことを問題にしたが、文化庁は「助成金支出は妥当」と回答した。
▼試写会を見た新右翼の鈴木邦男は「これは『愛日映画』だ」としたが、週刊新潮が「反日的」と論評すると、上映予定の映画館に対し右翼団体の街宣車による抗議活動や電話による公開中止などの圧力があったという。このため、4月公開を予定していた映画館すべてが「周辺の商業施設に迷惑をかけることになる」として上映を中止ないし延期。渡海文部科学大臣は「あってはならないこと。非常に残念」と発言。
▼表現の自由が危惧される中、大阪の「第七芸術劇場」など東京を含む北海道から沖縄まで全国二十一の映画館で、五月以降に上映されることになった。
▼これで上映かと思いきや、有村治子参院議員(自民)が事情を聴きにいったところ、中心的出演者で刀匠の刈谷直治さん夫妻が「出演シーンの削除を希望している」という。さらに靖国神社が、境内での撮影許可の手続きが守られず、事実を誤認させるような映像が含まれているとして映像の一部削除を求める通知をした。
▼李纓監督は、戦争が日本人の心に残した混乱とその背景を描こうとしたというが、まさしく靖国を巡っては日本人はひどく混乱するようだ。(武)

Monday, March 31, 2008

北京五輪ボイコット

▼チベット自治区ラサの暴動は中国国営通信の新華社の報道では死者十九人としているが、インド北部ダラムサラのチベット亡命政府は二十四日、百三十人と発表した。
▼負傷者や逮捕者数でも大きな隔たりがあり、一体、どっちを信じればいいのか。第三者的なメディアの報道が望まれるが、中国当局は海外メディアを退去させ、取材を拒否している。
▼中国内ではインターネットも制限されている。ユーチューブにアップされていた警官隊が市民を追い回す映像はカットされた。一方で、中国テレビでは漢族の店を襲うチベット人の様子が映像で何度も流されたという。
▼人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」(本部ロンドン)には、何者からか二分おきに電話がかかってきた。学生組織「スチューデント・フォー・ア・フリー・チベット」(本部ニューヨーク)の幹部にも同じような電話があり、同じく中国語で罵倒してきたという。さらに電子メールでコンピューター・ウイルスも送られてきた。
▼チベット関係の団体だけでなく、現地からの報道を続けているAFPもウイルス攻撃を受けた。「一部の暴徒の仕業」と主張する中国当局だが、これをそのまま鵜飲みにする人はいないだろう。
▼虐殺の続くダルフールで中国がスーダン政府を事実上支援している問題で、北京五輪の大手スポンサーの会議が四月に行われるが、新たにチベット問題が議題にあがるという。企業イメージが損なわれるとの懸念の声も出てきている。
▼とはいえ、五輪ボイコットは世界経済の足を引っぱりかねないため大きな声とはなっていない。ボイコットしたからといって何かが解決するわけでもないだろう。しかし、フランスのサルコジ大統領は二十五日、北京五輪ボイコットについて「あらゆる選択肢が開かれている」と述べた。状況によってはフランスが開会式に参加しないこともあり得ると明らかにした。(武)

Thursday, February 28, 2008

27年目の「共謀罪」

▼1981年にロサンゼルスで起きた銃撃事件で、殺人容疑などで元会社社長、三浦和義容疑者(60)がサイパン島で逮捕された。
▼三浦被告は銃撃事件で日本で起訴され、1審東京地裁は氏名不詳の実行犯との共謀を認めて有罪にしたが、2審は「共犯者は全く解明されていない。三浦被告には共犯者を見つけ、謀議を完了する機会がなく、謀議の痕跡がなく、共犯者に報酬を支払った事実が全くない」として逆転無罪、最高裁で確定した。
▼米国の法律では殺人罪に時効はなく、ロサンゼルス市警は米検察当局と相談した結果、同じ事件で再び罪に問われることがない「一事不再理」には抵触しないと判断。過去に前例もあるという。
▼ロス市警は2、3年前から本格的な捜査に着手していた。きっと新しい証拠でもあるだろうと思いきや、市警は「ノーコメント」。
▼逮捕状によれば、容疑第1項は妻一美さん(当時28)殺害の実行、第2項は共謀罪で、殺害に先立つ「殴打事件」から銃撃に至る一連の殺害計画を共謀した「共謀罪」だという。
▼ロス市警は、日本の検察も三浦元社長を起訴する段階で十分な証拠があったはずだとし、日本に共謀罪がないことが無罪判決につながったとの認識を示した。
▼藤本哲也中央大法学部教授(犯罪学)によれば、カリフォルニア州法では、犯罪の謀議が行われ、さらに犯罪の実行に資する何らかの行為が伴えば、実際に犯罪が行われなくても共謀罪が成り立つ、「何らかの行為」には犯行現場の下見や凶器を渡したりすることなどが該当するという。
▼ロス市警は新しい証拠ではなく既存証拠だけで共謀罪を成立させるつもりなのか? 日本で無罪とされた三浦容疑者は米国で有罪となるのか。日本でも論議されている共謀罪について考える機会ともなりそうである。

Wednesday, January 30, 2008

「第二のケネディ」

▼民主党大統領候補指名争いでオバマ上院議員の人気が止まらない。二十七日のサウスカロライナ州予備選挙で55%の支持で圧勝、ヒラリー上院議員とビル・クリントン前大統領夫妻の「黒人候補烙印(らくいん)」戦略は裏目に出たようだ。
▼二十八日には一九九三年にノーベル文学賞を受賞した米国の黒人女性作家、トニ・モリスンさんがオバマ上院議員への支持を表明。モリスンさんは白人のビル・クリントン前大統領を「黒人より黒人的」「米国初の黒人大統領」と評したことで知られるが、今回はオバマ氏支持に回った。
▼モリスンさんは「あなたは他の候補にないものを示してくれている。それは年齢や経験、人種や性別とまったく関係ない独創的な構想力だ」とオバマ氏を評価、新しいアメリカを創造する人物への期待感を述べている。
▼オバマ氏から連想されるのは故ケネディ大統領であろう。故ケネディ大統領の実弟で民主党の有力者のエドワード・ケネディ上院議員はオバマ氏を支持と表明、NBCテレビは「大統領選の転換点になる可能性がある」と報じた。まさに「第二のケネディ」への期待がかかる。
▼しかし、黒人には圧倒的な支持のあるオバマ氏だが白人票の取り込みはヒラリー氏に遅れを取っている。ヒラリー氏と拮抗する中、キャスティング・ボートはヒスパニック票にあるとの指摘は多い。
▼二十二州で一斉に党員集会と予備選挙が行われる二月五日のスーパーチューズデーでは、四百四十一人と最多の代議員数を持つカリフォルニア州のヒスパニックの割合は36%、代議員数二百八十一人のニューヨーク、百八十五人のイリノイ州はともにヒスパニックが15%を占める。
▼ヒラリー、オバマ両候補の拮抗ぶりからスーパーチューズデーでも決まらないのではという分析が優勢になってきた。オバマ候補の登場で、これまでの予備選のゲーム理論が変わったようだ。(武)

Tuesday, January 01, 2008

嘘をついた鼠

▼ 今年の干支(えと)は子(ね)、鼠(ねずみ)である。十二支の中で何故ねずみが最初なのか。俗説では、神さまは十二支の動物を決める時、正月に自分の所へ来た順にすることにしたという。牛は足が遅いからと早めに出発し、真っ先に門前に着いたが、牛の頭に乗っていた鼠が飛び降り、ちゃっかり一番になったという。
▼十二支で言えば最初に戻ったわけだが、折しも昨年から今年にかけて世界のリーダーが相次いで交替している。
▼昨年は5月にフランスにサルコジ氏(52)大統領が、6月に英国はブラウン首相(56)が誕生、12月にはオーストラリアでケビン・ラッド新首相が決まり、韓国では李明博(イミョンバク、66)氏が大統領に当選した。
▼ロシアでは三月に大統領選がある。三選禁止のためプーチン大統領の続投はない。日本も解散・総選挙含みの年となる。そしていよいよ十一月には米大統領選がある。こちらも三選禁止のため八年に及んだブッシュ政権も終わりを迎える。
▼なんとなく二十一世紀に入ってから、あるいは9・11同時多発テロ以降と言ってもいいが、一巡目が終わり二巡目に入った感じだ。
▼鼠が牛に乗っかってきて一番になったのは、ずる賢い話だが、まあ世渡り上手ということで大目にみよう。しかし鼠は、十二支に入れてもらおうと思った猫に、一月二日に集まることになってると嘘をついている。
▼それで今でも鼠は、十二支に入れなかった猫に追いかけ回されているという。やはり嘘はいけない。嘘をつかないことは民主主義の大原則のひとつだろう。世界の新リーダーたちも嘘をつくことなく、世界を平和と繁栄へ導いていって欲しいものだ。(武)

Monday, December 17, 2007

民主主義の証

▼来年行われる米大統領選の候補者は全国的な知名度からいって共和党はジュリアーニ元ニューヨーク市長、民主党はヒラリー・クリントン上院議員でほぼ決まりだろうと思われていたのが、どうも様子が違っている。
▼年明け早々、最初に次期大統領選の党員集会が開かれるアイオワ州の地元紙が12月2日伝えた同州の最新世論調査によれば、共和党はハッカビー前アーカンソー州知事、民主党はオバマ上院議員がそれぞれトップに立った。
▼11月28日にフロリダで行われた共和党候補による討論会では、ロムニー前マサチューセッツ州知事がジュリアーニ氏の中絶や同性愛の権利容認に加え、移民政策を攻撃。特にジュリアーニ氏が市長時代に不法移民の子供の教育を認めたことなどを非難し、「不法移民には、法律を守る市民以上の特権を与えてはならない」と訴えた。
▼ところが、これに異論を唱えたのがハッカビー前アーカンソー州知事だ。「親のしたことで子供を罰するような国」にすべきではないと言い切り、注目を浴びた。
▼アイオワ州でトップだったロムニー氏は最近の調査で牧師出身のハッカビー氏に逆転された。ロムニー氏が信仰するモルモン教を「カルト宗教の一種」と嫌うキリスト教右派の支持がハッカビー氏に流れたためとみられる。
▼泡沫候補だと思われてきたハッカビー氏が躍進してきた。オバマ氏もここまで人気が高まるとは思われていなかった。
▼ビル・クリントン元大統領も出馬当初は元アーカンソー州という小さい州の知事に過ぎず、あまり注目されなかった。米大統領選は予断を許さないが、それが民主主義の証なのかも知れない。

Saturday, December 01, 2007

パニック2008?

▼依然としてサブプライムローン問題に端を発する金融不安が続き、不況突入の懸念が消えない。米連邦準備制度理事会(FRB)は二十日、〇八年の米実質成長率は前年比1・8〜2・5%と予想、七月に発表した2・5〜2・75%との予想を大幅に下方修正した。
▼クリスマス商戦は年間消費の二割を占める。消費の行方を占うクリスマス商戦の幕開けである感謝祭翌日の通称「ブラックフライデー」は問題になることなく過ぎた。だがこれはウォルマートや大手電気店などが今年は特別にクリスマスセールを前倒し、11月初めから開始したために過ぎない。
▼なにより、当初一千億ドルと言われたサブプライムの関連損失が実は一兆ドルではないかとも囁かれているのだ。リーマン・ブラザース、シティグループ、メリルリンチなどの本決算がこれから控えている。八七年の株価暴落、ブラックマンデーの再来もないとは言い切れない。
▼利下げはもうないと言われていたが、年内にもう一段の利下げをしないと不況に突入するという声もある。だが利下げによるドルの下落は信用不安となり、中東諸国などのドルペッグの見直しにつながりかねない。基軸通貨としてのドルの地位をなくす可能性すらある。
▼米シンクタンク「トレンド・リサーチ・インスティテュート」のジェラルド・セレンテ所長は、ドルの価値は十分の1まで下がり、金相場が1オンス二千ドルにまで高騰するかもしれない」という予測までしている。
▼英オブザーバー紙のコラムリスト、ウィル・ハットン氏によれば、現下の金融危機は三十年に一度の大規模なもので、市場原理を重視する英米中心の自由主義経済の時代は終焉を迎えるだろうとのことである。(CAPITAL#48号より転載)

Thursday, November 15, 2007

偽装相次ぐ食品業界

▼日本人はいつからこんなに嘘つきになってしまったのだろう。「偽装」が止まらない。牛肉、シジミ、地鶏、タケノコ、そうめん、ファストフード、和菓子などなど。産地偽装や消費期限改ざんなど食品の不正発覚が止まるところを知らない。
▼特に赤福(三重)や船場吉兆の菓子店(福岡)などの製造日偽装や賞味期限改ざんは、伝統と信頼を誇る老舗や高級店だっただけに与えたショックは大きい。「もったいない」という話ではない。船場吉兆はもちろん、秋田の比内鶏(ひないどり)の偽装は、食文化への裏切り行為である。
▼なぜこれほどまでに偽装が立て続けに発覚しているのかといえば、それは内部告発なのだという。今年一月の不二家の期限切れ原料使用の報道後、さらに六月のミートホープ(北海道)の牛肉偽装発覚後、内部告発が急増したという。八月の石屋製菓(北海道)の「白い恋人」の賞味期限改ざんも保健所への内部告発がきっかけだ。

▼だが、赤福は昨年から内部告発があったにもかかわらず、三重県の二度の立ち入り検査でも不正を確認できなかった。老舗や大手食品会社と監督する行政側とのなれ合いを疑われても仕方ないだろう。
▼偽装は食品衛生法違反や不正競争防止法違反(虚偽表示)という立派な犯罪である。社長の逮捕や営業停止に追い込まれた会社も出ており、結局は自らの首を締めるだけだ。
▼昨年はマンション耐震強度偽装が世間を騒がせたが、今年は食品の偽装だ。日本経済の「失われた十五年」という停滞の中、リストラや格差拡大だけでなく、利益第一主義によるモラル崩壊が起きていたわけである。

Friday, November 02, 2007

拉致問題と日米関係

▼10月26日付のワシントンポスト紙は、テロ支援国指定解除を米政府が北朝鮮側に約束していたとしたら、「太平洋において最も親密な同盟国(日本)を裏切ることになる」との公電をシーファー駐日大使がブッシュ大統領に送ったと報じた。
▼第一期ブッシュ政権で朝鮮半島平和担当特使を務めたジャック・プリチャード氏は、すでに8月のニューヨークのコリア協会での講演で、今年一月の米朝ベルリン会談でテロ支援国家指定解除が秘密裏に合意されたと明かしていた。
▼2003年に米国は北朝鮮をテロ支援国家指定の理由に拉致問題を加えたが、これは当時の小泉首相とブッシュ大統領の「特別な関係」があったからという。
▼だが昨年10月の北朝鮮の核実験後、ブッシュ政権が米朝対話重視に転換。核開発放棄と引き換えの指定解除が再び米政府の切り札となった。
▼障害になってきたのが日本の拉致問題である。2月下旬にチェイニー米副大統領が来日し、安倍首相(当時)との会談で「日本人拉致問題の『解決』とは何か」と拉致問題の「定義」をただしたが、明確な回答はなく、その後も拉致問題は何の進展もなかった。
▼日本の国際政治誌「サピオ」10月10日号は、「安倍首相(当時)は9月9日、シドニーで、ブッシュ大統領から「日本の北朝鮮政策はあまりにも国際常識を欠く。いつまで拉致問題で足踏みしているのか。我が国は北との国交正常化をためらわない。それでよろしいか」と迫られた安倍首相(当時)は「(インド洋の海自による)給油支援は必ず継続する。そのかわり北朝鮮政策の転換はもう少し待ってほしいと懇願した」という。給油支援に職責を賭けると述べた理由はこれだったわけだが、いずれにせよ米国からは突っぱねられ、辞任を決意する。
▼拉致問題への毅然とした態度で登場した安倍政権は拉致問題で足下をすくわれた。福田政権は拉致問題の「進展」を探り始めた。(武)

Friday, October 19, 2007

サブプライムローンとクリスマス

▼サブプライムローンとは、住宅価格の上昇と低金利を前提に、本来なら支払っていくのが困難と思われる低所得者に夢のマイホームを持てる住宅ローンだった。
▼だが前提が崩れた。住宅市場の不振と金利上昇が重なり、返済不能が続出した。ここで終わっていればまだよかったかも知れない。
▼住宅ローン会社はリスクを分散するためローン債権を小口化して売却。このため債権を担保とした証券をはじめ各金融商品も返済不能続出とともに価格が急落。そこに世界中でお金がたぶつく中、ヘッジファンドや金融機関、年金基金などが高リスクにもかかわらず相次いで購入した。
▼三日、リード上院内総務(民主党)らは、来年にかけて約二百万世帯が返済不能・差し押さえで自宅を失う恐れがあり、「これは国家的な危機だ」と対策強化を訴えた。各金融会社もサブプライムローンの赤字、撤退やリストラなどを相次いで発表した。
▼この問題は、他の証券などと組み合わせた金融商品もあるため損失規模を確定しにくいところにある。一体どうなっているのか購入者もよく分らないのだ。そのため米景気失速ばかりか、世界同時株安、世界同時不況に突入する恐れに世界中が震撼した。
▼ところが、五日のニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は一時、前日比150・23ドル高の一万4124・54ドルに達した。これは取引時間中での過去最高値だ。サブプライムローン問題はそれほどで深刻ではないと判断されたのか。
▼確かに、同日発表された九月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると非農業部門の就業者は前月と比べ十一万人増加、雇用改善の目安十万人を四カ月ぶりに上回った。だが、雇用統計ほどおおざっぱで当てにならないとの専門家の指摘もある。
▼クリスマス商戦前に消費後退を招くわけにはいかない。そんな声すら聞こえてきそうな株価の動きが、「破綻」の先送りではないことを願うばかりである。

Friday, September 28, 2007

ジーナ・シックス事件

▼その高校の校庭には、白人生徒が集まることから「ホワイト・ツリー」と呼ばれる樫の木があった。白人生徒たちの休憩場所となっていた。黒人生徒は使えなかった。
▼昨年の夏、ある黒人生徒の一人がそこに座る権利を学校に求め、実際にそこに座った。すると翌日、この木に絞首刑用のロープ三本が吊るされていた。かつて米国では、黒人をリンチし木に吊るしていた。黒人差別の意味は明らかだった。
▼校長は木を切り倒し、犯人の白人生徒三人に退学勧告したが、教育委員会がこれを差し止め、三日間の停学処分に変更。これに黒人生徒らは憤慨、乱闘や放火まで発生し、昨年十二月四日、乱闘の被害者となった黒人をからかった白人生徒に黒人生徒六人が暴力をふるい、逮捕された。
▼「私がペンを一走りさせればお前ら(黒人)の人生なぞ消し去ることが出来る」と豪語したことのあるJ・リード・ウォルターズ検事は、未成年の高校生を第二級殺人未遂罪で訴追、テニスシューズを「致死性のある武器」とまで主張した。
▼審理が進むにつれ「人種差別による不正裁判だ」と検察当局を非難する声がわき起こり、全米へと広がった。公正な裁判を求める著名運動では三十八万人が集り、全米有色人地位向上協会(NAACP)は六人の裁判費用捻出のための基金を設立、歌手のデビッド・ボウイが一万ドル寄付した。
▼そしてある審理の日、人口三千人の町は、それをはるかにこえる数万人のデモ隊で埋め尽くされた。ラッパーのモス・デフやUGKのバン・Bの姿もあったという。学校は休校、商店街も店を閉めた。しかしこの日の審理で、事件当時十六歳であるにも関わらず九カ月以上拘留されたままのマイケル・ベルの保釈は認められなかった。
▼これがルイジアナ州の小さな町、ジーナで去る九月二十日に起きたことである。この事件は通称「ジーナ・6(シックス)」と呼ばれ、今後も予断を許さない。

Sunday, September 16, 2007

日本の二大政党制が始まった

▼ついに安倍首相が辞意を表明した。改造内閣スタート直後の首相の辞意表明に日本全国に激震が走った。海外メディアもいち早く速報した。
▼就任以来、「政治とカネ」を巡るスキャンダルや失言で閣僚の辞任が相次ぎ、年金問題もあって7月の参院選では与野党が逆転する歴史的敗北。内閣改造を行ったが、またすぐに閣僚が辞任した。普通ならとっくに辞めているところだが安倍首相はなかなか辞めようとしなかった。今回、辞意に至ったのは、どうやら十一月で切れるテロ対策特別措置法延長問題のようである。
▼首相はテロ特措法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動を継続できなければ退陣する決意を示していた。一方、民主党の小沢代表は八月、シーファー駐日米大使に対し「直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない。活動には参加できない」と延長反対の考えを明確に示していた。
▼北朝鮮から、六カ国協議はどうせ米国の言うがままなのだから日本は出る必要はないと言われたことは記憶に新しい。米国はその北朝鮮の核問題で拉致問題を曖昧にしたまま北への「譲歩」を続けている。下院では「従軍慰安婦決議」が成立した。日本人の中には小沢代表の毅然とした発言に溜飲を下げた人もいたかも知れないが、小沢氏は別に「反米」を掲げたわけではなく、民主党の「国連中心主義」の原則を述べたに過ぎない。
▼あれほどの支持率低下でも辞めなかったのが、テロ特措法を巡り野党と対立したからといって辞めるとは、「責任放棄」(古賀誠・自民党元幹事長)と言われても仕方ない。これまでの「対米従属」ばかりが日本の外交ではなくなってきているのだ。
▼与党・自民党が圧倒的に強かった時代は終わった。日本で二大政党制が始まったことに、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた安倍首相自身がついていけなかったようだ。

Thursday, August 30, 2007

歴史の教訓

▼—ある晴れた朝、何千人もの米国人が奇襲で殺され、世界規模の戦争へと駆り立てられた。我々を攻撃したその敵は自由を軽蔑し、米国や西側諸国が自分たちを蔑んでいると信じ、我々への怒りを心に抱き、自爆攻撃に走った——
▼誰しもがアルカイダと9・11テロのことだと思うだろう。しかしこれは1940年代の軍国日本と真珠湾攻撃のことだという。22日、カンザスシティーで開かれた在郷軍人会年次総会でのブッシュ大統領の演説の冒頭だ。
▼「狂信的な神道」の存在などから「日本に民主主義は本質的に相容れないと言う者もいた」とまで語った。大統領は大正デモクラシーのことを勉強していないようだ。
▼そして、「しかし今日、日本は世界でも偉大な自由社会の一つとなった」と述べ、「我々は中東でも同じことができる」と結んだ。要は、戦前の日本をアルカイダと同じようなものと見なし、日本を打ち負かしてよりよい国にしたように、米軍は勝利するまでイラクからは撤退すべきではないという結論である。
▼朝鮮戦争やベトナム戦争の意義にも言及。「ベトナムからの米国の撤退によって、何百万人もの無実の市民が苦しみ—」と語った。退役軍人の前とはいえ、ソ連もナチスも大日本帝国も、ベトナムもアルカイダも、また無差別テロも民間施設を避けた奇襲も、神道もイスラム教もほとんど一緒くただった。
▼さすがにベトナムは、外務省報道官が翌日「(戦争は)民衆にとって正義の戦いだった」と述べ不快感を表明した。日本は、米下院の「従軍慰安婦」決議に反対しワシントンポスト紙に意見広告まで出した人たちも含めほとんど反応がなかった。
▼歴史から教訓を学ぶことは大切だが、歴史を歪曲化の上に単純化して、賢明な判断が出来るとはとても思えない。
(CAPITAL#42より転載)

Sunday, August 12, 2007

参院選と靖国参拝

▼昨年の八月十五日は小泉首相(当時)が靖国神社を参拝し、大騒ぎとなったが、今年は安倍首相を筆頭に十六人の閣僚全員が見送るらしい。
▼一九五〇年代半ば以降、終戦記念日に閣僚が大量参拝するようになったが、一人も参拝しないというのは初めてではないかとみられる。
▼塩崎恭久官房長官は「私の信条でいつも決めていること」、伊吹文明文部科学相は「宗務行政の所管大臣として、公平を期すため」、溝手顕正防災担当相は「行ったことがない」。麻生太郎外相、高市早苗沖縄北方担当相、柳沢伯夫厚生労働相らは外遊など公務で参拝できないとした。菅義偉総務相、長勢甚遠法相、高市氏らは既に参拝済みだからという。
▼そんな中、山本有二金融担当相は「公的立場の参拝は歴史的経緯からアジアの政治的安定を害する」とはっきりと指摘、公明党の冬柴鉄三国土交通相は「宗旨が違うから」としつつ、「信教の自由だが、枢要な地位にある人には隣人の気持ちを配慮する気持ちは必要」と述べている。 
▼下院で「慰安婦決議」が可決したばかりのワシントンを訪れた小池百合子防衛相も参拝しない意向を表明。中国、韓国との関係改善ばかりでなく米国の顔色も伺ったのか。
▼参院選での自民敗北の原因として「年金問題」や閣僚の失言・不祥事がよく挙げられるが、「憲法改正」や「戦後レジュームからの脱却」を旗印にした安倍政権に国民は「ノー」と応えた、少なくとも憲法改正などは安倍政権下ではやって欲しくないと答えたのが今回の参院選ではないだろうか。
▼安倍首相は祖父・岸信介を尊敬しているといわれるが、岸信介とは、戦前は満州に進出し対米開戦に同意、戦後は日米安保を強行採決した「昭和の妖怪」であることを国民の多くが思い出したのか。参院選の結果は靖国や慰安婦問題とも関係があったのかも知れない。(武)
(追記:高市氏だけは8月15日、靖国参拝した)

Saturday, July 28, 2007

ウォールストリートジャーナルの買収劇

▼メディア大手ダウ・ジョーンズ(DJ)は16日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)をルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションに総額約50億ドルで売却することで暫定合意した。百年以上DJを支配してきたのオーナー、バンクロフト一族は売却を了承するかどうか近く最終決断を下す。
▼一族三十数人のうち高齢のメンバーを中心に身売りへの反対意見が強いという。マードック氏は編集活動への介入で知られ、買収後にDJの報道姿勢が実際に中立を保てるかどうか疑問に思われているからだ。
▼オーストラリア生まれのマードック氏率いるニューズ社は、FOXテレビ、映画会社20世紀フォックス、英紙タイムズなどを傘下に収める巨大メディアグループ。愛国的なイラク戦争報道など「右寄り」で知られ、大統領選に出馬するヒラリー・クリントン上院議員ら民主党候補はFOXの討論会には出ない。
▼ニューヨーク・タイムズは「バンクロフト家にはWSJを発行し続ける道を模索して欲しい。それが無理であればWSJを保護してくれるような安全な買い手を見つけて欲しい」と指摘し、ニューズ社にだけは売却しないよう求めた。
▼マードック氏がWSJに目をつけたのは、ほとんどの新聞のネット版が過去の記事などを除き基本的に無料の中で、WSJは年間99ドルの利用料を徴収、それでも約80万人が契約しているからと言われる。また、DJの経済金融サービスを活用することで経済報道を強化、10月にはDJとWSJが持つコンテンツをフルに活用した経済専門のテレビ局が開局する。
▼インターネットの普及で、新聞の発行部数減少に歯止めがかからない。DJはメディア業界の競争激化によりこのまま単独での生き残りが難しいと判断したようである。
▼ネットの普及と新聞の低調から始まったメディア再編は大手による寡占へと加速しているが、経済面での「偏向報道」めいたことが起こらないことを祈るばかりである。(武)

Thursday, July 12, 2007

バイオエタノールと貧困

▼日本でもバイオエタノールを混ぜたガソリンの発売が始まった。バイオエタノールは、車の燃料としてすでに普及が始まっている米国やブラジル始め、欧州諸国、アジアでは中国、インドが推進している。

▼バイオエタノールはトウモロコシや大麦、サトウキビなどの植物から生産されため、石油と違い枯渇することのない半永久的なエネルギーと言われる。また、燃焼の際に二酸化炭素が放出されるのは石油と同じだが、植物が成長する際に光合成で大気中の二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の総量は循環して変化しないことから、地球温暖化の防止対策となるエネルギーとされている。
▼だがこれは食物の需給バランスを大きく変えてしまう問題がある。トウモロコシの値段はこの一年で倍になった。またトウモロコシはソフトドリンクの甘味料の原料やシリアルだけでなく、飼料として畜産や養鶏にも使われている。すると牛・豚・鶏肉、ハム、卵などは言うに及ばず、チーズ、牛乳、アイスクリームといった乳製品がその影響を受ける。日本でもハムやソーセージ、マヨネーズなどの値上げが始まっている。
▼メキシコでは昨年、主食のトウモロコシの値上げに抗議して全土でデモが起きた。DCの環境シンクタンク「アースポリシー研究所」のレスター・ブラウン所長は「八億人の自動車所有者と最も貧しい二十億人が、穀物を巡り争う事態になっている」と警告を発する。
▼深刻なのは、世界で最も貧しい人々が住んでいるアフリカのサハラ以南の国々だ。ここに住む2億人の大半は、収入の半分以上を食費に費やしており、穀物価格が上昇すれば、直ちに生きるか死ぬかの問題になる。現在でも、世界では八億五千四百万人が慢性的な飢餓状態にあり、毎日二万四千人が死んでいる。
▼キューバのカストロ国家評議会議長は、食糧を燃料に転化することで「資本主義は南の貧しい人たちの大量の安楽死を企てている」と批判したが、あながち的外れではない。

Friday, June 29, 2007

朝鮮半島の南北統一と投機筋

▼米国はマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮の資金送金問題を、米連邦準備銀行を経由させる超法規的措置で決着、ヒル国務次官補が北朝鮮を訪問した。
▼これに対しワシントン・ポスト紙は24日、ヒル国務次官補の訪朝について「米国は次々と北朝鮮に譲歩している」と批判した。北朝鮮が核放棄に向けた具体的な措置はまだ何も取っていないだから無理もない。
▼だが国際原子力機関(IAEA)実務代表団は平壌入り、寧辺の核施設稼働停止など2月の合意に基づく「初期段階措置」と次の段階の核施設「無能力化」に向け、北朝鮮との協議が始まった。
▼米国にとって北朝鮮の核やミサイルはそれほどの脅威ではない。しかし、核ミサイルがイランに流れるとなると話は別だ。イスラエルは本当に危なくなる。いわゆる「レッドライン」であるが、逆にそれさえ守られれば譲歩もする。
▼今回の6カ国協議が再開されるとすぐ、国際金融市場で北朝鮮の不良債権約4千億ウォン(約500億円)の取引が頻繁化、最近では米国や日本の投資家が買っているという。この債券は北朝鮮の債務不履行となった負債の一部を97年にBNPパリバ証券が証券に転換したものでスイス・フランやドイツ・マルク建て。額面1ドル当たり10セント未満の捨値だったのが20セント近くまで上昇しているという。
▼満期は2010年。南北統一がなされれば、韓国政府が肩代わりし額面払いをする可能性があり、ぼろ儲けになる。これに似た例として、過去にはベトナム債券の例があり、次にはキューバが控えていると言われる。
▼投資会社ゴールドマンサックスは2005年の段階で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続く経済発展地域として11の国(Next11)を挙げているが、その一つに、北でも南でもなく朝鮮(Korea)とある。気の早い投機筋では南北統一は織り込み済みなのだ。

Wednesday, June 13, 2007

ミサイル防衛(MD)と米露冷戦

▼冷戦は終わっていなかったのだろうか。ブッシュ米大統領が欧州七カ国歴訪を終えた。欧州にミサイル防衛(MD)を広める旅だったと言ってよいが、危うくロシアと衝突しそうになった。
▼米国は、チェコとポーランドに配備するMDについて「対ロシアではなく、対北朝鮮・イランだ」と再三にわたり主張してきた。だが、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は4日、「イランのミサイルは欧州に届かない。今年一番のジョークだ」と皮肉った。北朝鮮のミサイルが欧州に届くのを信じる者も皆無だ。
▼ブッシュ米大統領は7日、ドイツでプーチン露大統領と会談。プーチン大統領は、レーダー施設建設予定地をチェコから旧ソ連・中央アジアのアゼルバイジャンに変更、代替施設とすることを提案した。
▼なるほどアゼルバイジャンはイランのすぐ北だ。イランのミサイルが対象であれば、こんなに適切な場所もないだろう。これを拒否すれば、ミサイル防衛は対北朝鮮・イランという主張が嘘だということになってしまう。ブッシュ大統領は仕方なく評価し、両首脳は協議継続で合意した。
▼ロシアは、エリツィン大統領時代に米国の言う事を聞いたばかりに悲惨な経済状態となったことを忘れてはいない。石油会社を国有化し、資源大国として復活しつつある。これに対し米国は影で封じ込め政策を画策してきたとされる。03年のグルジアでバラ革命、04年のウクライナ・オレンジ革命、05年キルギス・チューリップ革命。これら旧ソ連諸国での動きは米国の後ろ盾があったと目されている。
▼欧州のミサイル防衛(MD)計画が対ロシア戦略であることは明白だろう。ブッシュ米大統領は5日、チェコのプラハで演説し、ロシア(中国もだが)との間に「大きな不一致」があるとの見解を表明し、ロシアは「国民主権を約束した改革が脱線している」と明言した。新たな米露冷戦が始まっている。