Thursday, September 02, 2010

小沢氏出馬 

▼民主党代表選(14日投開票)は小沢一郎前幹事長が名乗りを上げ、再選を目指す菅直人首相との一騎打ちとなった。これで1年に3人も総理が変わるようなことになっては国際社会で信頼をなくすという見方もあるが、歴史的政権交代後の混乱は想定内だろう。
▼先の参院選で敗北し、衆参ねじれの菅政権では、すぐに国会運営が行き詰まるのは目に見えていた。「豪腕」小沢氏に期待する向きは多いが、「政治と金」疑惑で検察審査会の審査待ちではだめだという「反小沢」の声も強い。
▼振り返れば「政治とカネ」というのは自民党時代より、政敵潰しなど、政策不在で政局しかない状況において使われてきた。米国の「ネガティブキャンペーン」による世論誘導とほぼ同じだ。
▼一般市民で構成される検察審査会の意義はあるだろうが、検察特捜部の1年にも及ぶしらみつぶしの捜査でも小沢氏を起訴に持ち込めなかった。この事実を重く受け止めるべきではないのか。
▼ここに来て、相変わらず「政治とカネ」で批判するのは政策不在の証拠だろう。小沢氏はあくまで「国民の生活が第一」とした昨年の民主党マニュフェスト履行にこだわっており、菅首相は財源不足で履行は無理と消費税論議をしたがっている。
▼とにもかくにも20年あまりにわたり日本の政治は小沢氏を中心に回ってきた。昨年、検察の捜査がなければ小沢政権だった日本。今度はさて、どうなるか。 (た)

Tuesday, August 03, 2010

米国をさまよう日本兵の遺品と遺骨

▼8月15日、65年目の終戦の日を迎える。大戦での日本兵の死者は200万人にのぼり、その多くは中国、東南アジア、南アジア諸島で戦死しているが、米兵が「お土産」「記念品」として持ち帰った日本兵の遺品が米国内に10万点以上あるといわれる。
▼今でも遺産を処分するステートセールやミリタリー・ショーなどで軍刀、千人針、武器類、日章旗などが売られている。ネットのオークションサイト「イーベイ」でも手帳や日記、写真など含めさまざまなものが売られている。
▼最近では、戦争に行った元米兵も高齢あるいは故人となり、日系新聞社や在米領事館などに遺族に返したいという問い合わせが時々あり、無事に戻ったことが日本の地元のニュースを飾ることも珍しくない。
▼オハイオ州トレドに住む、医師の加治安彦さんは過去30年以上にわたり、ミリタリー・ショーなどで日本兵の遺品を自費で買い集め、遺族へ返してきた。収集点数は300を超え、50点ほどが遺族のもとに帰ったという。
▼遺品は戦利品として金銭目的もあったらしいが、驚くべきは戦没者の頭蓋骨を持ち帰った人々がいることだ。最近では2003年にコロラドで、2005年にはメイン州ホールデンで見つかっている。
▼これらは「頭蓋骨トロフィー」として表面には当時の署名や書き込みがあった。メイン州のものは入手したアメリカ人が日本に帰したいとボストン総領事館にあずけている。
▼昨年にはカリフォルニア大学バークレー校の人類博物館に頭蓋骨など数点が保管されていることが分かった。海軍医が1974年に寄贈したもので、収納した箱には「サイパン」「自決を遂げた日本人」と書かれていた。
▼日米の考え方の違いもあるが、遺骨である。米国には日本兵の遺骨が人知れずさまよっているのである。

Sunday, July 18, 2010

不可解な敗北

▼参院選が終わった。昨年の政権交代から10か月あまり、与党民主党に対する国民の審判となる選挙だと思われた。
▼民主党は当選44議席と改選議席を10議席も減らした。国民新党と合わせた与党の議席は非改選を含め過半数を割り込んだ。一方自民は51議席を獲得し、13議席増やした。ただし比例と選挙区合わせた総得票数では民主が約2276万票に対し、自民は約1950万票と300万票以上の差がある。
▼もちろん民主は二人区に二人擁立など立候補者数が多いからだが、国民の多くが民主党にノーをつきつけたとまでは言えない。
▼不思議なことがある。「政治と金」と普天間基地移設問題で鳩山首相と小沢幹事長が辞任した後の参院選だったが、この二つは選挙の争点にならなかった。あれほど大騒ぎしたにも関わらず、一体どうしたのか?
▼菅首相が消費税増税に触れたことで、そうした問題は脇に追いやられた格好だ。消費税上げが焦点になるかと思われた。民主党が後退したのは、消費税増税を言い出したからだという分析も多い。みんなの党の躍進は消費税上げに反対だったことが大きいとも。だが増税を唱える自民党は議席を増やした。
▼政治と金、普天間問題の他に、「郵政改革法案」も忘れてはならない。衆議院はすでに通過し参議院審議に回っていた。
▼日本は現在、岐路に立っていると言える中、安定した強力な政権ができない状態だ。不安定な暗中模索がしばらく続くのだろうか。(CAPITAL#111,2010年7月17日号より)

Thursday, July 01, 2010

「国民の生活が第一」ではなかったのか?

▼明日の日本を占う第22回参院選が始まった。7月11日の投開票まで熱い戦いが繰り広げられる。
▼論戦テーマに消費税率引き上げ問題が浮上している。増税は有権者から常に不評なので、選挙前は避けられることが多かったが、菅首相は、財政破綻回避のため消費税率引き上げが必要とし、セットであるかのように法人税減税に言及した。
▼G8やG20を前に、日本の財政赤字を諸外国から問われた場合に備えたにせよ、民主党は昨年の衆院選で、任期中の4年間は消費税は上げない、まずその前に政府支出の無駄の削減に取り組むとしていたのではないか。
▼政府に無駄が多いのは共通点だが、ギリシャの財政危機を日本に当てはめるのはおかしい。大まかにに言えば、日本は国と地方自治体を合わせ約950兆円の借金を抱えているが、この借金は90%以上が赤字国債で賄われており、3大メガバンクなど日本の銀行が半ば自動的に購入している。つまり総額1450兆円ともいわれる国民自身の預金で支えている。国の金融資産は505兆円あり、計算すると対外純債権367兆円の世界最大の債権国である。国民一人当たりの負債は20万円ほどだ。
▼日本は国際競争力の低下した輸出関連の大企業を優遇、法人税減税や輸出戻し税で助けてきた。消費税が始まって22年間。消費税税収は累計224兆円の一方、同時期の法人3税による税収は208兆円も下がっている。
▼日本の会社のほとんどは中小零細、自営業である。民主党の子供手当や農家個別所得補償、高速道路無料化などは、単なるバラマキではなく、税金使途の効率化と所得再分配の改善でもあったはずだ。
▼日本は国民総生産(GDP)500兆円に占める輸出割合は15%ほどで、企業の設備投資と政府支出が25%、残り60%が個人消費だ。消費者が1割財布の紐を締めただけで消費税どころか、GDPの6%が消える計算になる。
▼増税で財政赤字を解決した国はひとつもない。GNPの2倍となった財政赤字を放っておいていいわけではないが、明日にでも破綻するわけではない。政府支出の無駄をなくしつつ、成長戦略を実現していくことが先決だろう。 (CAPITAL#110より転載)

Monday, June 14, 2010

「反小沢左翼政権」か「選挙管理内閣」か

▼まさに絵に描いたような民主党のV字回復である。共同通信が菅内閣発足を受け8日〜9日にかけて実施した全国緊急電話世論調査で、内閣支持率は61・5%に上った。鳩山政権末期の5月末調査の19・1%から一気に回復し、昨年9月の鳩山政権発足時の70%超に迫った。12〜13両日実施の全国電話世論調査(第1回トレンド調査)でも菅内閣の支持率は64・8%に上り、郵政改革法案の扱いをめぐり国民新党代表の亀井静香前金融・郵政改革担当相が辞任した影響は見られなかった。
▼まるで誰かがシナリオを書いたかのような展開である。普天間基地問題と「政治と金」で追い込まれた鳩山首相と小沢幹事長の満を期してのダブル辞任だったとしか言いようがない。自民党は低迷のまま、新党もかすんでしまった感がある。
▼菅内閣は、普天間基地の辺野古移転推進派とされる岡田外相、前原国土交通相、北沢防衛相など鳩山内閣から半分以上の11人が留任。 「反小沢クーデター」という声もあるほど、党の人事含め、いわゆる「反小沢派」が占めた。特徴としては、菅首相を筆頭に、政治家や官僚などの家系ではない普通のサラリーマン家庭出身者が多いことがあげられる。
▼自民党の安倍、麻生両元首相からは「左翼政権」と批判されている。確かに菅首相は市民運動出身だし、仙谷官房長官が元東大全共闘だったことなどは有名だが、世代的なものであって現実に今、何をやるかだろう。
▼では「反小沢左翼政権」のその中身は何なのだろう? まさか「クリーン」だけではあるまい。財政再建と景気刺激を両立させようのは分かるが、郵政改革法案の先送り、子ども手当の満額断念、消費税増税の動きなど、辺野古移転推進を加えて、なにやら自民党に回帰したようなところがある。
▼菅内閣は参院選のための単なる選挙管理内閣(田中真紀子議員)という見方もある。いずれにせよ9月の民主党の代表選が終わるまでは安定政権にはならないようだ。(た)

Saturday, June 05, 2010

鳩山首相が辞任

▼鳩山首相が辞任した。政権交代を成し遂げた後の初の歴史的内閣だったが、細川政権とほぼ8か月しかもたなかった。鳩山首相は「身を引くことが国益につながると判断」したという。
▼首相は米軍普天間基地移設問題で「最低でも県外」と事実上の首相公約を反古にした。これにより社民党が連立離脱、3党連立政権は崩れた。「社民党を連立政権離脱に追い込んだ責任を取らないといけない」(首相)のは当然だ。
▼もちろん首相はこの普天間問題を辞任理由としているが、やや奇異に映るのはもうひとつの辞任理由の「政治とカネ」である。小沢幹事長にも辞めてもらう「手柄話」のようになっているが、自身の母親からの巨額資金提供の問題は一応の決着がついており、小沢幹事長は検察がおよそ1年にわたり調べ上げた上で不起訴としている。
▼首相が辞任するなら幹事長はもちろん執行部解散は当然だろう。内閣は総辞職するのである。選挙を前に、国民の間にくすぶる「政治とカネ」問題の幕引きを図ったということだろうか。
▼やり残したこととして、日ロ関係の進展をあげたが、これは普天間問題で米国との距離を取ろうとしたからであり、続投しても北方領土問題が前進したか疑問である。
▼一方で「国が上で、地域が下にあるなんて社会はおかしい」と訴え、「中央集権の世の中」の変えることに「少なくとも風穴が開いた」と、政権の意義も述べている。しかし政治は結果責任、あの不人気では、議員内閣制のもと辞任は当然の成り行きである。市場は好感し株価は上がった。政権交代第二幕が上がる。

Thursday, May 13, 2010

官房機密費とジャーナリズムの死

▼小渕内閣で官房長官を務めた自民党の野中広務元幹事長(84)が、長官在任中(98年7月から翌年10月)に内閣官房機密費を「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と講演会やインタビューで発言した。首相に1千万円、国会で野党工作などに当たる 自民党国対委員長や参院幹事長に各500万円程度のほか、政治評論家や野党議員らにも配っていたという。
▼野党対策をはじめ、外遊する議員への餞別代、飲み食い、女性問題の後始末に使われたなど、昔から噂はあった。注目すべきは政治評論家である。「(政治)評論をしておられる方々に盆暮れにお届け」と 明かしたことだ。これも過去、週刊誌などで取り上げられたことがあるが元官房長官から明言されたのは初めてだ。
▼「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と 言って受け取られる」「持っていって返し てきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と述べている。
▼官房機密費は「国の事業を円滑に遂行するために状況 に応じて機動的に使う経費」として、毎年約14億円が予算計上され、内閣情報調査室に使う2億円ほどを差し引いた残りの12億円余りを官房長官の裁量で使ってきた。使途は公表されず、領収書もない。
▼野中氏は「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」と述べている。お金をもらうことが何を意味するかは自明だ。有権者は歪んだ言論を受け取ってしまう。これはジャーナリズムの死を意味し、民主主義を毀損するものだ。貰った評論家は即刻名乗り出て返金し、言論活動停止、筆を折るべきだろう。

Sunday, May 02, 2010

「核密約」と普天間基地移転問題

▼ライシャワー元駐日米大使(在任1961?66年)の特別補佐官だったジョージ・パッカード氏とパッカード氏と話す機会があった。日本でいわゆる「核密約」が問題となっているが、氏は外交専門誌フォーリン・アフェアーズ3・4月号で、米軍が返還前の沖縄にあった核兵器を1966年、移動させ岩国基地沿岸で少なくとも3カ月間核兵器を保管していたと述べている。
▼氏は、これ以外の保管の事実は知らないとしつつ、核兵器を積んだ船が日本に寄港していたのは疑いようがないと示唆。その上で、「日本に核は必要だったと思う」と語った。当時冷戦はきわめて危険なものであり、ソ連や中国の脅威から日本を守る必要があった。「核密約は強く望まれたものではなかったが、当時の東アジアに必要だが日本が反核である中で、ベストの解決法であった」との認識を示した。
▼では普天間基地問題についてはどうか。ゲーツ国防長官が発足したばかりの鳩山政権に約束履行を迫ったのは「ばかげている」と一蹴。しかしそれにびっくりした鳩山首相がオバマ大統領に「トラスト・ミー」「5月までになんとかする」などと「言わなくてもいいことを言って、日米の信頼関係を損なった」と批判。冷戦の時代から大きく東アジアは変化しており、「開かれた場であらゆる可能性と選択肢を検討すべき」と語った。
▼サイパン島など14の島からなる北マリアナ連邦の上院議会(9議員)が16日、国防総省と日本国政府に対し、米軍普天間飛行場の移設先の最適地として北マリアナを検討するよう求める誘致決議を全会一致で可 決した。米軍の準機関紙である「スター・アンド・ストライプス紙」は21日付で、これに好意的な内容の記事を掲載している。こういった選択肢をほとんどの日本のメディアが取り上げないのは何故だろうか。

Thursday, April 01, 2010

国を二分する国民皆保険

▼国民の保険加入を義務付けた医療保険改革法が23日に成立した。「国民の和解」を訴えて登場したオバマ大統領が、国を二分する課題に取り組んだ。米国史上初の国民皆保険である。
▼世論調査機関ギャラップとUSAトゥデーは23日、法案可決に対する世論調査の結果を発表、「評価する」が49%で、「評価しない」の40%を上回った。
▼共和党の反対は強く、採決前の17日、「(ペロシ下院議長は民主党議員全員を)酒で酔わせ、自殺攻撃をさせようとしている」と第二次大戦時の日本軍の特攻隊になぞらえたグラム上院議員が、日系のホンダ議員らから批判を浴びる一幕もあった。
▼下院民主党のホイヤー院内総務らは24日、同法に賛成した同党下院議員に対し、脅迫や中傷を受けた同党下院議員は10人以上に上ると発表した。
▼スローター議員の地元事務所にはれんがが投げ付けられ窓ガラスが破壊された。同法成立のため中絶反対議員らの取り込みに動いた黒人議員のクライバーン副院総務には、首つりの縄と「赤ちゃん殺害犯は人間の手か神の御手によって見苦しい最期を迎える」と書かれたファックスが送付された。
▼ある保守系のラジオ・パーソナリティーは「(抵抗運動に備え)体を鍛えて銃の手入れをしておけ」とまで呼び掛けた。殺害予告など深刻な内容については、連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出し、首都警察は議員に対し、自身や家族の身を守るための方法を指導しているという。
▼米国には、個人の自由を尊重し「大きな政府」に反対する伝統があり、日本や西欧のような国民皆保険制度が育たなかった。フロ リダ州など14州の司法長官は連邦政府を相手取り、同法は個人の自由と州の主権を侵害し、違憲だとして無効の訴えを連邦地裁に起こした。野党共和党内では、11月の中間選挙で多数派に返り咲き、法の撤廃を目指す声が上がっている。

Sunday, March 14, 2010

日本人は野蛮?

▼「『日本人は野蛮』というメッセージになっており、残念」。クロマグロが規制対象として上がったドーハでのワシントン条約締約国会議開催を前に、赤松広隆農相の言葉だ。
▼日本の調査捕鯨船団の監視船に侵入した反捕鯨団体「シー・シェパード」のメンバー (44)を艦船侵入容疑で逮捕の事態が発生、 和歌山県太地町のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞などを一連の出来事として捉え、発言したものだ。
▼オーストラリアはじめ捕鯨反対国は多いが、アラスカなどの北方先住民による捕鯨は「原住民生存捕鯨」として国際捕鯨委員会(IWC)でも認められている。イルカは鯨類に分類されるが、IWCの管轄外。「ザ・コーヴ」でイルカ漁を隠し撮りされた太地町は古式捕鯨発祥の地で、「ジャパニーズ・マフィア」とまで言われた町民からは「(受賞に)怒りを覚える」といった反発の声が上がった。
▼確かに入り江が血に染まるシーンはショッキングだ。デンマークのあるクジラ漁師は「分業が進み、牛や豚の処理現場を一般に見ることはないが、漁はそうでもないから不利」と言う。
▼「イルカやクジラは知能が高い」ことを反対理由のひとつにあげる声がある。では知能の低い人間は殺してもいいのか。障害者抹殺を図ったナチスの「優生思想」を彷彿とさせる。
▼大西洋・地中海のクロマグロはピークの年間30万トンから8万トン弱まで激減しており、乱獲が原因であることに議論の余地はない。また、イルカ(クジラ)やマグロに高濃度の水銀があれば問題だ。
▼とはいえ、大企業による畜産業の恐るべき実態を描いた「フード・インク」はアカデミー賞を逃した。反捕鯨には自然保護団体だけでなく、漁業とは無関係の企業もスポンサーについている。自然保護や文化問題はあるにせよ、漁民には国以外頼るものがない。

Saturday, February 20, 2010

オリンピックと国籍変更

▼バンクーバー冬季オリンピックの真っ最中である。主な競技が毎年世界選手権を行うようになっても、4年の一度のオリンピックは特別である。やはり国単位で競い合うから盛り上がる。
▼好きな選手は国を問わないとしても、米国在住でも日本人ならたいていの人が日本選手を、次に米国選手応援しているだろう。その次はカナダ、いやアジア諸国だろうか。ショートトラックのアポロ・オーノのように日系人(父親が日本人)だと親近感も増す。両親が日本人でカリフォルニア育ちの長洲未来は「米国を代表できて誇りに思う。日本勢との対戦も楽しみ」と頼もしい。
▼最近は国籍を変えて五輪出場する選手が増えた。男子モーグルは、アレクサンドル・ビロドーが開催国カナダに大会初の金メダルもたらし会場は大いに沸いたが、2位になったデイル・ベッグスミスが優勝していたらどうだっただろう。彼はオーストラリア代表だが、実は地元バンクーバー出身で税金問題などを理由に国籍変更した選手だ。
▼フィギュア・ペアの川口悠子は五輪で表彰台に立ちたい一心でアレクサンドル・スミルノフと組んでロシア代表として出場した。昨年2月にロシア国籍を取得している。結果は4位でロシア勢連覇を12で止めてしまったが、熱意は認めるべきだろう。
▼米国生まれでも日本代表として出ているのが、アイスダンスのキャシー・リード(22)とクリス・リード(20)の姉弟ペアだ。2人は日本人の母とアメリカ人の父の間にミシガンで生まれた日米二重国籍者だが、キャシーは21歳の時点で日本国籍を選んだ。
▼練習の拠点が本国でない選手は多いし、コーチも外国人というのは珍しくない。グローバル化が進むスポーツ界だが、自国の選手を応援することは今後も変わらないだろう。

Thursday, February 04, 2010

小沢対検察の落としどころ?

▼政治上の危機分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」(本部・ニューヨーク)が、最も影響力を持つ世界の指導者10人を発表、1位は中国の温家宝首相、2位はオバマ米大統領で、民主党の小沢幹事長が3位に入った。
▼日本の首相は小沢氏のはずだった。昨年、小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(48)が政治資金規正法違反で逮捕されていなければ、である。
▼1月13日、大久保秘書の第二回公判が開かれ、西松建設の元幹部が検察の主張を否定する証言を連発、収賄どころか大久保秘書は無罪の可能性が高いという。微罪、いや「冤罪」もどきで日本の政治が翻弄されたということなのか?
▼ところが2日後の15日、検察は元秘書石川知裕衆議院議員を政治資金規正法の虚偽記載容疑で逮捕する。 これまで「虚偽記載」は修正で許されてきたのに、なぜ現職国会議員逮捕までしたのか明確な説明はない。
▼検察対小沢の権力闘争と見る向きは多い。小沢周辺は「検事総長を国会同意人事にする」「民主主義的な統制下に置く」と主張、また取り調べの可視化も検討されている。昨年末、特捜部検事を含む法務官僚が集まった宴会では、「小沢許さん」の大合唱だったという。
▼公務員の守秘義務違法(国家公務員法第100条)の疑いのある「検察リーク」を連日マスコミは垂れ流し、負のイメージで小沢幹事長が追いつめられるという構図になった。18日前後の大手新聞社の世論調査はどれも、小沢氏は幹事長を辞任すべきだが7割を占めた。
▼小沢氏失脚か特捜部廃止かのような全面対決の様相を示し、法相ないし首相による指揮権発動も取り沙汰される中、さすがに検察のあまりに恣意的な行き過ぎた捜査に疑問視する声が多くなってきた。例えば、御厨貴・東大教授は「いまの小沢一郎という人物を追いつめることで、検察はこの国をどうしようとしているのか」と疑問を呈した。
▼2月4日、検察は小沢幹事長について「有罪判決を得る証拠がなかった」不起訴処分とすると発表した。捜査云々ではなく、事実上政治問題化している以上、その「落としどころ」ではないのか? 検察の仕事とは何なのだろうか。

Thursday, January 14, 2010

沖縄利権と海兵隊普天間基地移設問題

▼米海兵隊は相手国を襲うための部隊であり、日本を防衛している軍隊ではない。にらみを効かしているといっても、実際、戦争になれば空爆から始まるのはイラクなどをみれば分かる通りだ。北朝鮮の暴発の可能性はあるが、それなら海兵隊は北海道や日本海側に置くべきだろう。訓練も北朝鮮の気候に近いところでやった方がいいに決まっている。では何故、沖縄の普天間に駐留しているのか。端的に言えば、日本がお金(おもいやり予算)を出してくれているからだ。
▼これを後押ししているのがいわゆる「沖縄利権」だ。もともと辺野古へのキャンプ・シュワプ沖の埋め立て計画は米国が希望したものではなく日本側が進めたものだ。96年に橋本政権で日米特別委員会(SACO)で辺野古移転が決まり、基地建設費とは別に10年で1千億円の公共事業が決まる。この配分権は自民党経世会(旧橋本派)が握ったといわれる。
▼しかし地元の反対などで計画は進まなかった。米国は沖縄の海兵隊をヘリ部隊も含め一体としてグアムに移転する計画を模索し始める(06年5月「再編実施のための日米ロードマップ」)。再び辺野古移転を進めていた小泉政権は、米国の長さ45メートルのヘリパッドの要求を、なんと総工費5千億円ともいわれる2本のV字巨大滑走路に拡張する。
▼鳩山首相や小沢幹事長が県外移設にこだわったのは社民党のためというより、この自民党の沖縄利権を白紙に戻したかったからだ。当然、自民党、防衛省(旧防衛庁)、軍需専門商社、建設会社など旧利権派はそろって民主党を攻撃。これには小泉政権に食い込んだ米国の企業、ロビイスト、ネオコンらが含まれており、いたずらな「日米同盟のきしみ」の発信源になっている。
▼基本はやはり民意である。そもそも普天間基地返還が日米で決まったのは、12歳の少女が海兵隊員にレイプされたことに沖縄住民が怒りの声を上げたことからだった。これは民主主義の問題である。利権絡みや怪しげな安全保障論に惑わされていない本当の民意に鳩山首相は耳を傾けることができるだろうか。

Saturday, January 02, 2010

2010年、軌道修正し、建て直しのとき

▼AP通信による2009年の10大ニュースの1位に不況から抜け出せない米経済が選ばれた。2位にオバマ大統領就任、3位が医療保険改革、4位に経営破綻などが続いた米自動車産業と続いた。
▼5位は新型(豚)インフルエンザ、6位はオバマ大統領が3万人の増派を発表したアフガニスタン問題、7位に歌手のマイケル・ジャクソンさん急死、8位に13人が殺害されたテキサス州陸軍基地の銃乱射事件が、9位にエドワード・ケネディ上院議員の死去が入った。傾く超大国とそれを軌道修正し建て直ししようとする姿が浮かんでくる。
▼10位には明るいニュースが入った。旅客機が川に不時着し、155人全員が無事救出された「ハドソン川の奇跡」だ。イラク問題は16位で、10年以来、初めてトップ10圏外になった。なお昨年の1位はオバマ大統領誕生だった。
▼一方、日本はどうだろう。共同通信による国内トップ10は①衆院選で民主党圧勝。政権交代で鳩山政権誕生②裁判員裁判がスタート③新型インフルエンザが大流行、死者も増加④円高。デフレ宣言。日航の経営危機など企業業績悪化⑤事業仕分け、八ツ場ダム中止など新政権の政策続々と⑥年越し派遣村に多くの人。失業率最悪レベルで雇用不安⑦足利事件でDNA不一致の菅家さん釈放、再審開始⑧WBCで日本が連覇。イチロー、松井秀もメジャーで活躍⑨核持ち込みなどの外交密約で元次官らの証言、相次ぐ⑩地方の高速道路が土日祝日、千円で乗り放題〈次点〉のりピーら芸能人らの薬物、大麻事件相次ぐ。
▼日本も経済問題の深刻さを感じさせるが、政権交代や裁判員裁判開始、密約暴露など、新しい取り組みが並んだ。明るいニュースは国際的に通用した日本人の野球だった。
▼2010年も日米共、国の建て直しが続くようだ。中国などの台頭はめざましいが、この二国の底力に期待したい。