▼現在、世界中を揺るがしている豚インフルエンザ。世界保健機関(WHO)が警戒レベルを「フェーズ4」から世界的大流行(パンデミック)の一歩手前である「フェーズ5」に引き上げた。
▼歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行したペスト、19世紀から20世紀にかけ7回の大流行を起こしたコレラなどがある。1918年に発生したスペインかぜは感染者6億人、死者は4千万人を超えたといわれる。以後1957年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、77年のソ連かぜと流行してきた。
▼オバマ大統領は26日、異例とも言える「公衆衛生に関する緊急事態宣言」を全米に発令、緊急対策費として議会に15億ドルの支出を要請した。ブッシュ前政権が2005年、ハリケーン「カトリーナ」による災害への対処を誤り、国民の信頼を一気に失ったことを教訓にしているのだろう。
▼しかし、焦りは裏目に出ることもある。1976年、ニュージャージー州の陸軍基地フォート・ディクスで死亡した兵士(19歳)の検死で、豚インフルエンザの人間への感染が確認された。基地の500人以上が感染しており、事態を重く見たフォード大統領(当時)が全国的な予防接種プログラムを開始し約4千万人が受けたとされるが、副作用で30人が死亡する一方、豚インフルエンザによる死者は結局その兵士一人だけで終わった。これは次期大統領選でカーター候補に破れる一因になったと言われる。
▼29日、テキサス州で1歳11カ月の幼児が豚インフルエンザで死亡した。今回の豚インフルエンザは、より重症を引き起こす鳥インフルエンザと融合した新型とみられ、不安は募るが、ナポリターノ国土安全保障長官は「国内で年間3万5千人が季節性のインフルエンザに関連して死亡しているのも事実」と過剰反応しないよう呼び掛けている。
Thursday, April 30, 2009
Wednesday, April 15, 2009
核兵器を使った国の道義的責任
▼オバマ米大統領が5日、チェコの首都プラハで、国家の安全保障に占める核兵器の役割を減らし、「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と宣言、他の核保有国にも同調を求めた。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
▼大統領は「核兵器を使った世界で唯一の核大国」として「道義的責任がある」と言明、広島、長崎と具体的には述べなかったものの、これまでの米国からすれば画期的な演説だった。
▼日本やドイツは歓迎する意向を表明。日本にとっては、唯一の被爆国として全面的核廃絶を求める国連決議を毎年提案する一方で、米国の「核の傘」に守られるという建前と本音の矛盾が解消することになる。
▼だが核保有国の反応は鈍く、フランスは「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、内部文書によれば「米の海外でのイメージアップ戦略に過ぎない」と切り捨てている。
▼ロシアや中国は公式見解を出していないが、ロシアの軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説」で「通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」、中国共産党機関紙「人民日報」が発行する「環球時報」は「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで報じた。
▼2年前、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長が4人連名で「核兵器のない世界」の実現を呼びかけた。“冷戦の戦士たち”は冷戦末期に一度は米ソ首脳は核廃絶で一致したが保有国の反対で流れたこと、現在は保有国が増え、核拡散、テロリストに渡る可能性の高さなどから「偶発的核戦争」勃発の可能性は冷戦期以上に高いため、米国が先頭となって核をなくすべきと提言していた。
▼イランや北朝鮮の核開発問題も国際社会が一致して核廃絶に向かえば、自ずと解決へ向かうだろう。「プロパガンダ」で終わらせないで欲しいものだ。
Wednesday, April 01, 2009
「人工衛星」でも緊張する東アジア
▼自民党の菅義偉選対副委員長は28日、「米国から北朝鮮のミサイルの情報をもらっている。日米安全保障条約の信頼感の下で国民の生命と財産を守るのは当たり前だ。小沢氏でこの国を守れるのか」と語った。小沢民主党代表が在日米軍削減に言及したことについて語ったものだ。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
▼北朝鮮が通告してきた計画によれば4月4〜8日に衛星を発射するという。日本ではミサイル落下に備え政府が決定した「破壊措置命令」を受け、海上自衛隊のイージス艦3隻が28日、出港。うち2隻は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を装備。陸上でも自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を陸上自衛隊秋田(秋田市)、岩手(岩手県滝沢村)両駐屯地に配備した。
▼米国は、キーティング米太平洋軍司令官が24日、「米国土と(日韓)同盟国を守る用意がある」と改めて表明、第7艦隊のイージス艦5隻を展開している。韓国初のイージス艦「世宗(セジョン)大王」も含め、少なくとも9隻のイージス艦が日本海を中心に警戒にあたる。
▼まるで準戦時下かのような様相だが、ミサイル防衛(MD)を巡っては政府高官が23日、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と語った。
▼専守防衛を旨とする平和国家日本としては、ミサイル防衛は国民に受け入れやすいのかも知れない。だがその有効性は疑問とされている上に、膨大な予算が必要といわれる。軍需産業が恒久的に儲かり続けるとされた米戦略防衛構想(通称スターウォーズ計画)の再来と訝しがる声もある。
▼北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の日米韓首席代表が27日、ワシントンで協議し、北朝鮮が人工衛星と主張しても、ミサイルの発射だとして国連安全保障理事会決議の違反とみなすと再確認した。
▼スターウォーズ計画は冷戦終結と共に消滅した。北朝鮮問題が外交解決すればミサイル防衛計画は後退するのか、それとも在日米軍削減が日程に登るのだろうか。
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