▼オバマ新大統領の就任式とパレードは大盛況だったが、就任演説にはちょっと肩すかしを食らった人も多かったようだ。「イスエ・ウィ・キャン」などはなく、これまでの熱狂をいさめるような印象を受けた人も多いだろう。
▼選挙戦における演説はアジテーションであり、政権を取った今、急速に現実主義化、保守化したという声さえ聞かれる。だが、演説を注意深く聞くと、オバマ大統領が新しい思考を持って、米国を導こうとしていることが読み取れる。
▼例えば経済政策。大統領は、ケインズ主義と新自由主義の不毛な対立を超えようとしていることが読み取れる。「政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、機能しているかどうかだ」と語り、生産性を高めない安易なケインズ主義=バラマキの財政出動を批判している。
▼一方で、「市場が正しいか悪いかは問題ではない」「富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない」とするが、「今回の金融危機は、注意深い監視がなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを気付かせた」と行き過ぎた新自由主義を牽制している。
▼さらに、新しい国家観ともいうべき、未来の社会を見通した部分がある。「私たち米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れること」の部分だ。
▼自由な社会を求めるなら、どうしても政府がすべてを解決していくことは無理になっていく。それを求めることは全体主義的、権威主義的国家となり個人の自由と多様性を奪って行くことになる。自由で豊かな社会のために、古くからあるいわゆる「スモール・デシジョン」を進め、市民自身で決定していく重要性を説いているのだ。
▼一見、地味とも思えるオバマ新大統領の演説には、古くて新しい「市民社会」へのアプローチがはっきりと述べられていた。
Saturday, January 31, 2009
Tuesday, January 13, 2009
オバマ次期大統領に降りかかる国際的な危機
▼またしても中東が火を吹いた。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザのハマスへ空爆を開始、地上軍も投入し、女性や子どもなど民間人を多く含むパレスチナ人の死者は600人を超えた。イスラエルにも死者が出ている。国連などによる停戦調停は米国の拒否により芳しくない。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
▼発端となったのはハマスとの停戦合意の期限切れで、ハマスが先にロケット弾を飛ばしたのは間違いない。しかしイスラエルが強硬策に出たのは、選挙を控えた与野党の人気取り合戦という面がある。果たして戦火は広がるのか。
▼昨年10月、パウエル元国務長官は「オバマ就任翌日の1月21日か22日に、危機が起きる。それがどんなものか、今はわからない」とテレビで唐突に述べ、同時期にはバイデン次期副大統領も「就任後半年以内に国際的な危機が発生し、オバマはジョン・ケネディのように試練に立たされる」と発言した。ケネディの試練とは1962年のキューバ危機を指す。
▼試練とは中東大戦争に繋がることなのか。ニューヨーク・タイムズは10日、イスラエルが昨年、核兵器開発阻止のためイラン空爆を計画、米国に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否したと報じた。
▼アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は6日、イスラエル、米国を批判する声明を発表。アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師も10日、声明を発表し「世界中のパレスチナ人は軍事的技量を用いて、あらゆるユダヤ人、米国人の権益を標的として(ガザを)支持せよ」と述べ、テロ活動を呼び掛けた。
▼金融危機、ビッグスリー救済、世界的不況、イラク、アフガン、米ロ新冷戦などブッシュ政権が残した負の遺産はあまりにも大きく、イラン、パレスチナ、北朝鮮問題なども未解決のままだ。困難に打ち勝ち、オバマ次期大統領が新しい時代を切り開くことを期待したい。
Tuesday, January 06, 2009
資本主義は終わるのか?
▼イランのアフマディネジャド大統領は現下の世界的金融危機を「資本主義の終わりの始まりだ」と指摘した。19世紀中頃にカール・マルクスが資本主義の崩壊を予言して以来、大きな不況が来るたびに資本主義の危機が叫ばれた。
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
▼最近では97年のアジア通貨危機である。しかし世界経済はその後、歴史上前例のない経済成長を遂げている。大恐慌以来最悪の金融危機といわれるが、諸悪の根源は今回、アメリカ型資本主義だろう。
▼アメリカ型資本主義とは新自由主義経済のことだ。1970年代頃まではほとんどの先進国が国家による富の再分配を中心とした「大きな政府」や「福祉国家」だった。だがオイルショックなどで慢性的な不況と財政赤字が拡大、特に米国では不況とインフレが同時進行し失業者が増大した。
▼そこで米国は80年代に新自由主義を採用、同時にいわば製造業を捨てて金融資本主義で国を立て直した。新自由主義の真逆ともいうべきソ連共産主義が91年に崩壊する一方で、90年代の米国は10年に渡り景気拡大が続いた。
▼バルブ崩壊以降、経済停滞に苦しみ、少子高齢化、資源もない日本は米国の要請もあり金融業の規制緩和や郵政民営化など新自由主義を本格的に取り入れ始めた。「一億総中流」「世界で唯一成功した社会主義」とまで言われた日本は一気に格差社会となった。
▼今になって市場主義や規制緩和は少し間違っていましたといわれても我々庶民はとまどうばかりだが、自国経済を守るためにと戦前のようなブロック経済に戻るわけにもいくまい。
▼戦前のブロック経済では行き詰まった国が他国へ侵略し、結局は世界大戦を招いた。グローバル資本主義を非難する前に、まずは行き過ぎた金融資本主義(=カジノ経済)の制限や自由市場のルール作りだろう。
▼今年は丑年。経済政策は大胆かつ急いだ方がいいが、庶民の方としては、あせらず堅実にやれば結果はついてくると信じたい。(武)
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