▼現下の金融危機について、多くの専門家が「世界大恐慌以降最大の危機」とまで語っている。ドルの一極支配体制の終焉や米政府の財政破綻まで取り沙汰されている。加えてイラク戦争の泥沼化、イラン問題、米ロの確執といった不安定要素がうごめいている。唯一の超大国の没落を指摘する声は多い。
▼米国はどうなっていくのか。これに答えたものとして、「ニューズウィーク」国際版の編集長であるファリード・ザカリア氏が”The Post-American World”(アメリカ後の世界)という本を今春出している(徳間書店より邦訳予定)。
▼同氏は、米国の没落ではなく、他の国が台頭していると認識すべきで、「アメリカ後の世界」は「かつてない平和と繁栄ムードに満ちた国際社会」になると言う。実際、80年代以降、戦争は減少し組織的暴力は50年代以降で最低レベル、世界人口の8割の国々で貧困が減少しているという。
▼にもかかわらず何故、人は現在を恐ろしい時代だと感じるのか。それは情報革命で情報量が爆発的に増大したこどが大きいと言う。中国やロシアがアメリカに敵対姿勢を取ったところで、その脅威の程度は知れている、BRICS(ブリクス=ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国は、過去の大国(米英仏独日など)に比べれば穏健であり、既存の国際秩序の中で豊かさをもとめようとしていると指摘する。イスラム原理主義も影響力を増してはおらず、冷静に対応すべきと主張する。
▼米国が影響力を行使できる範囲は狭まるが、米国の強さの源泉は移民であり、内向きになってはいけない。国際社会のプレイヤーが増えて多様化していることへの新しい国際協調の枠組みが必要で、米国が世界の先導役であり続けるなら、ルールの順守が欠かせない。そうすれば21世紀は再び「アメリカの世紀」となるというものだ。
▼世界の多極化を肯定的に捉えたものだが、イラン侵攻、米ロ冷戦など、力に頼った方法で米国の優位を保とうとする勢力もあるのではなかろうか。
Tuesday, September 30, 2008
Sunday, September 14, 2008
いつまで経っても暫定政権?
▼洞爺湖サミットに参加したブッシュ米大統領は、よもや福田首相が自分より先に辞めるとは思いもしなかっただろう。内閣改造をしておいて、いきなりの辞任である。
▼前の安倍首相に続き、福田首相も1年ほどで政権を放り投げた。国のトップである首相の立場は、確かに本人でなければ分からないプレッシャーもあるだろうが、無責任のそしりは免れない。二世議員の脆弱さを指摘する声も多い。
▼もっとも支持率がどんなに低迷しても、任期いっぱいは辞めることはない米大統領に比べれば、退陣が簡単に出来る日本の議院内閣制は、刷新や出直しがやりやすいというメリットもある。
▼しかしここはやはり、解散し民意を問うべきだろう。だが、いま選挙をしては惨敗すると見込み、自民・公明与党はずるずると無理な政権を続けている。
▼ポスト福田の自民党総裁選には最有力の麻生太郎幹事長(67)はじめ5人も立候補した。与謝野馨経済財政担当相(70)といった重鎮や、石破茂前防衛相(51)、石原伸晃元政調会長(51)といった若手、さらに女性の小池百合子元防衛相(56)だ。なにやら賑やかな総裁選に目を奪われがちだが、あくまでも自民党関係者による選挙である。
▼与謝野氏が総裁・首相になれば、小沢・民主党との大連立も可能との噂もある。その先に待っているのは憲法改正だろう。しかし、ここはやはり人気のある麻生氏が選ばれ、麻生内閣で次の解散・総選挙に臨む可能性が高い。ちなみに麻生氏も二世議員である。
▼選挙に勝てる状況になるまではと、いつまで経っても「暫定政権」、たらい回しである。これでは有権者無視だ。憲法改正よりも先にやらなければならないことは多い。自民・公明にそれが出来なければ、さっさと政権交代すべきだろう。(武)
▼前の安倍首相に続き、福田首相も1年ほどで政権を放り投げた。国のトップである首相の立場は、確かに本人でなければ分からないプレッシャーもあるだろうが、無責任のそしりは免れない。二世議員の脆弱さを指摘する声も多い。
▼もっとも支持率がどんなに低迷しても、任期いっぱいは辞めることはない米大統領に比べれば、退陣が簡単に出来る日本の議院内閣制は、刷新や出直しがやりやすいというメリットもある。
▼しかしここはやはり、解散し民意を問うべきだろう。だが、いま選挙をしては惨敗すると見込み、自民・公明与党はずるずると無理な政権を続けている。
▼ポスト福田の自民党総裁選には最有力の麻生太郎幹事長(67)はじめ5人も立候補した。与謝野馨経済財政担当相(70)といった重鎮や、石破茂前防衛相(51)、石原伸晃元政調会長(51)といった若手、さらに女性の小池百合子元防衛相(56)だ。なにやら賑やかな総裁選に目を奪われがちだが、あくまでも自民党関係者による選挙である。
▼与謝野氏が総裁・首相になれば、小沢・民主党との大連立も可能との噂もある。その先に待っているのは憲法改正だろう。しかし、ここはやはり人気のある麻生氏が選ばれ、麻生内閣で次の解散・総選挙に臨む可能性が高い。ちなみに麻生氏も二世議員である。
▼選挙に勝てる状況になるまではと、いつまで経っても「暫定政権」、たらい回しである。これでは有権者無視だ。憲法改正よりも先にやらなければならないことは多い。自民・公明にそれが出来なければ、さっさと政権交代すべきだろう。(武)
Friday, September 05, 2008
大統領選のダイナミズム
▼コロラド州デンバーの7万5000人収容の巨大競技場は超満員となった。米史上初の黒人大統領を目指すオバマ上院議員の指名受諾演説を聞くためだ。
▼共同の記事から参加者の声を拾ってみよう。オバマ氏の指名について「生きているうちにこんなことが現実になるとは思わなかった」(六十代の黒人男性)、昔は白人の隣でハンバーガーを食べることもできなかったと言う。二十代のある白人女性は「オバマ氏は私たちの世代を政治に目覚めさせた」と語る。
▼「米国よ、我々は今よりもっと良い国のはずだ」。オバマ氏が呼び掛けるたびに、巨大なスタジアムが地響きを上げて揺れた。
▼だがオバマ氏にひところの勢いはない。オバマ氏の訴える「変革」はあいまいという声は多い。外交・安全保障問題に疎いとされ、副大統領候補に、この方面に強い民主党の重鎮バイデン上院議員(65)を選んだが、ワシントンの政治にどっぷりつかっている人物でもある。
▼一方、共和党大統領候補のマケイン氏は、ロシアのグルジア侵攻で直ちにロシアを批判するなど存在感を示した。副大統領候補には女性のペイリン・アラスカ州知事(44)を選んだ。ペイリン氏は民主党指名争いに敗れたヒラリー上院議員(60)を讃え、「彼女が破ろうとしたガラスの天井は頑丈だったが、われわれは砕くことができる」と、女性初の副大統領の意義を強調、ヒラリー支持者の取り込みを図っている。
▼もっともペイリン氏は人工妊娠中絶に反対など保守派であり、外交経験は皆無、女性だからといってヒラリー支持者を取り込めるかは未知数だ。宗教保守派に不人気のマケイン氏をカバーするために担ぎだされたと見るべきだろう。
▼それにしても1年前には想定できなかった正副大統領候補4人である。ここに感じるのは米国の民主主義のダイナミズムであり、どうやらそれは人々の控えめな思惑を超えて前進していくもののようだ。(武)
▼共同の記事から参加者の声を拾ってみよう。オバマ氏の指名について「生きているうちにこんなことが現実になるとは思わなかった」(六十代の黒人男性)、昔は白人の隣でハンバーガーを食べることもできなかったと言う。二十代のある白人女性は「オバマ氏は私たちの世代を政治に目覚めさせた」と語る。
▼「米国よ、我々は今よりもっと良い国のはずだ」。オバマ氏が呼び掛けるたびに、巨大なスタジアムが地響きを上げて揺れた。
▼だがオバマ氏にひところの勢いはない。オバマ氏の訴える「変革」はあいまいという声は多い。外交・安全保障問題に疎いとされ、副大統領候補に、この方面に強い民主党の重鎮バイデン上院議員(65)を選んだが、ワシントンの政治にどっぷりつかっている人物でもある。
▼一方、共和党大統領候補のマケイン氏は、ロシアのグルジア侵攻で直ちにロシアを批判するなど存在感を示した。副大統領候補には女性のペイリン・アラスカ州知事(44)を選んだ。ペイリン氏は民主党指名争いに敗れたヒラリー上院議員(60)を讃え、「彼女が破ろうとしたガラスの天井は頑丈だったが、われわれは砕くことができる」と、女性初の副大統領の意義を強調、ヒラリー支持者の取り込みを図っている。
▼もっともペイリン氏は人工妊娠中絶に反対など保守派であり、外交経験は皆無、女性だからといってヒラリー支持者を取り込めるかは未知数だ。宗教保守派に不人気のマケイン氏をカバーするために担ぎだされたと見るべきだろう。
▼それにしても1年前には想定できなかった正副大統領候補4人である。ここに感じるのは米国の民主主義のダイナミズムであり、どうやらそれは人々の控えめな思惑を超えて前進していくもののようだ。(武)
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