Monday, June 30, 2008

拉致解決より国交正常化が先?

▼日朝協議で北朝鮮が拉致被害者の再調査と、よど号ハイジャック犯の引き渡しに向けて協力すると表明、日本政府は制裁緩和を打ち出したが、この裏には大きな米朝の動きがあった。六月二十六日、北朝鮮は六カ国協議合意に基づく核計画申告書を議長国の中国に提出、ブッシュ米大統領は同日、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を議会に通告すると表明した。
▼拉致被害者家族には「裏切られた」と失望の声が広がっている。米国にテロ国家指定解除をしないよう働き掛けることを町村信孝官房長官に要請したばかりだったからだ。
▼北朝鮮に対し「拉致解決なくして国交正常化なし」(小泉元首相)で臨んできた日本だが、拉致問題は「究極的には日朝二国間問題」(米政府高官)であり、世界の関心は核問題の方である。米国がしびれを切らして動き出してしまった。
▼北朝鮮は拉致問題は終了したという立場だったが「再調査」とは何か? 拉致被害者は救出されるのか? 「我々が知らないところで侵入した日本人がいれば本人確認をした上で、罪を問わず日本に返す」とは北朝鮮が以前から言ってきたことだ。よど号犯についても、実は目新しいものではない。
▼核問題が解決したら、日本と米国は北朝鮮と国交正常化することが二〇〇五年の六カ国協議で合意されている。国交正常化を待ち望んでいる国は多い。北朝鮮のウラン、レアメタルなどを狙う米、ロシア、エネルギー資源を開発したい中国、貿易拡大で景気浮揚を狙う韓国と、日本を除く六カ国協議の各国経済界はすでに活発に動き始めている。そして、六カ国協議は「北東アジアの集団安全保障体制へと発展する」(ライス国務長官)という。
▼こうして見ると、日本だけが後手に回っている感は否めない。ここに来て拉致解決より国交正常化が先になったということか。対米従属で済んだ時代が終わる中、日本の外交の真価が問われている。

Monday, June 16, 2008

秋葉原・通り魔事件

▼日本で米国並みの無差別大量殺人事件が起きた。8日午後0時30分過ぎ、東京・秋葉原の歩行者天国で、男が通行人をトラックではねた後、ナイフで刺す無差別殺傷事件がおき、男性6人と女性1人が死亡、10人が負傷した。
▼米国では大量無差別殺人が断続的に起きているが、日本でまたしても起きた。2001年の8人の児童が殺害された大阪教育大付属池田小事件と同じ日であったのは偶然なのか? 9日付のワシントン・ポスト紙は「現場には血だまりが残り、まるで戦場のようだ」と報じる記事を掲載した。
▼犯人は静岡県裾野市の派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)。職場での不満があったというが、殺すのは「誰でもよかった」と供述、薬物や精神疾患などはなく、計画的犯行であることが分かってきている。
▼それにしてもトラックで乗り付けたとはいえ、銃を使ったわけでもなく大人相手に何故17人もの死傷者を出したのか。駆け付けた警察官も刺されているが、警察はすぐに止められなかったのだろうか?
▼もっとも現場では、状況をのみ込めない人も多く、映画の撮影やゲームの安売りにでも客が殺到したのかと思った人も多数いたらしい。
▼犯人は警察官ともみあい、最後は拳銃をつきつけられ観念した。この間、わずか数分、東西約100メートル、南北約70メートルの中での出来事だった。
▼驚くべきは、犯行に使ったサバイバルナイフの高い殺傷力である。包丁ではこうはいかないはずだ。銃と同じように管理・規制が必要ではないか。
▼鳩山法相は「昨日も大事件があったが、人の命を奪うような人にはそれなりのものを負ってもらおう」と死刑制度の必要性を訴えたが、相次ぐ死刑執行でも殺人の抑止力にはなっていないことが、また分かっただけではないのか。
▼池田小事件事件では「早く死刑にしてくれ」と犯人の宅間守はうそぶき、望み通り早期に死刑になった。今回は世界に冠たる電気製品とアニメなど日本のポップカルチャーで知られるアキバで起きた。闇は深い。(武)

Sunday, June 01, 2008

四川大地震と東京

▼5月12日に中国を襲った四川大地震。中国国務院(政府)は27日時点で、地震の死者は6万7183人、負傷者36万1822人、行方不明2万790人と発表、1976年に約24万2千人が死亡した唐山地震以来、最悪の地震となった。
▼依然、余震も続いており、地震で破損した千を超す一般ダムの決壊も懸念されている。「唐家山・土砂ダム」では全面決壊の恐れが生じた場合、下流の130万人を避難させることを地元当局が決めたという。
▼今回、中国のメディアはチベット争乱の時のような規制はなく、現地からの報道を次々に流した。中国政府の対応も早く、発生当日夜には温家宝首相が現地入りし「地震災害対策本部」を設置している。国家の威信をかけた聖火リレーも一時中止した。
▼中国政府によると、国内外からの支援金、支援物資は26日までに308億7600万元(約4600億円)相当に達したという。▼残念なことは日本の国際緊急救助隊が現地入りしたのは、地震発生から5日目だったこと。生存率が72時間を超えると極端に下がることはよく知られている。
▼人災ではないかと指摘されているのが学校である。役人へのわいろが横行し「手抜き工事」の粗末な作りの学校校舎が相次いで崩壊、ちょうど授業中だっため、多くの生徒児童の生命が奪われた。
▼核施設の被害も心配だ。中国環境保護省は、四川大地震で計50個の放射性物質に安全上の問題が生じ、35個は回収したが、まだ15個が瓦礫に埋まったままと報告した。ただ、安全な状態で放射能漏れは起きていないと強調した。
▼学校などの耐震問題や核施設の懸念は日本にとっても無関係な話ではない。東京・横浜は、ミュンヘン再保険会社(ドイツ)による災害リスク指数は710で、2位のサンフランシスコの167、3位ロスの100から見ても群を抜く世界一の危険都市なのである。