Sunday, July 18, 2010

不可解な敗北

▼参院選が終わった。昨年の政権交代から10か月あまり、与党民主党に対する国民の審判となる選挙だと思われた。
▼民主党は当選44議席と改選議席を10議席も減らした。国民新党と合わせた与党の議席は非改選を含め過半数を割り込んだ。一方自民は51議席を獲得し、13議席増やした。ただし比例と選挙区合わせた総得票数では民主が約2276万票に対し、自民は約1950万票と300万票以上の差がある。
▼もちろん民主は二人区に二人擁立など立候補者数が多いからだが、国民の多くが民主党にノーをつきつけたとまでは言えない。
▼不思議なことがある。「政治と金」と普天間基地移設問題で鳩山首相と小沢幹事長が辞任した後の参院選だったが、この二つは選挙の争点にならなかった。あれほど大騒ぎしたにも関わらず、一体どうしたのか?
▼菅首相が消費税増税に触れたことで、そうした問題は脇に追いやられた格好だ。消費税上げが焦点になるかと思われた。民主党が後退したのは、消費税増税を言い出したからだという分析も多い。みんなの党の躍進は消費税上げに反対だったことが大きいとも。だが増税を唱える自民党は議席を増やした。
▼政治と金、普天間問題の他に、「郵政改革法案」も忘れてはならない。衆議院はすでに通過し参議院審議に回っていた。
▼日本は現在、岐路に立っていると言える中、安定した強力な政権ができない状態だ。不安定な暗中模索がしばらく続くのだろうか。(CAPITAL#111,2010年7月17日号より)

Thursday, July 01, 2010

「国民の生活が第一」ではなかったのか?

▼明日の日本を占う第22回参院選が始まった。7月11日の投開票まで熱い戦いが繰り広げられる。
▼論戦テーマに消費税率引き上げ問題が浮上している。増税は有権者から常に不評なので、選挙前は避けられることが多かったが、菅首相は、財政破綻回避のため消費税率引き上げが必要とし、セットであるかのように法人税減税に言及した。
▼G8やG20を前に、日本の財政赤字を諸外国から問われた場合に備えたにせよ、民主党は昨年の衆院選で、任期中の4年間は消費税は上げない、まずその前に政府支出の無駄の削減に取り組むとしていたのではないか。
▼政府に無駄が多いのは共通点だが、ギリシャの財政危機を日本に当てはめるのはおかしい。大まかにに言えば、日本は国と地方自治体を合わせ約950兆円の借金を抱えているが、この借金は90%以上が赤字国債で賄われており、3大メガバンクなど日本の銀行が半ば自動的に購入している。つまり総額1450兆円ともいわれる国民自身の預金で支えている。国の金融資産は505兆円あり、計算すると対外純債権367兆円の世界最大の債権国である。国民一人当たりの負債は20万円ほどだ。
▼日本は国際競争力の低下した輸出関連の大企業を優遇、法人税減税や輸出戻し税で助けてきた。消費税が始まって22年間。消費税税収は累計224兆円の一方、同時期の法人3税による税収は208兆円も下がっている。
▼日本の会社のほとんどは中小零細、自営業である。民主党の子供手当や農家個別所得補償、高速道路無料化などは、単なるバラマキではなく、税金使途の効率化と所得再分配の改善でもあったはずだ。
▼日本は国民総生産(GDP)500兆円に占める輸出割合は15%ほどで、企業の設備投資と政府支出が25%、残り60%が個人消費だ。消費者が1割財布の紐を締めただけで消費税どころか、GDPの6%が消える計算になる。
▼増税で財政赤字を解決した国はひとつもない。GNPの2倍となった財政赤字を放っておいていいわけではないが、明日にでも破綻するわけではない。政府支出の無駄をなくしつつ、成長戦略を実現していくことが先決だろう。 (CAPITAL#110より転載)