Monday, December 21, 2009

太った猫は恩返ししない?

▼「太った猫の銀行員を助けるために選挙を戦ったわけじゃない」。オバマ米大統領が13日放映のCBSテレビとのインタビューで怒気を含んだ声で語った。太った猫とは俗語で、金持ちを指す。
▼発言は、公的資金による救済を受けた銀行の一部が、幹部らの高額ボー ナスを復活させる動きを見せていることに対してのものだ。
▼ウォール街は株高を背景に業績が回復し、公的資金を返済が進んでいる。半国有化されていた金融大手シティグループが14日、金融危機時に注入を受けた公的資金200億ドルを返済することで米政府と合意、政府は半年から1年後をめどに保有するシティ株をすべて売却、同社は政府管理下から完全に脱する。米銀大手ウェルズ・ファーゴも同日、普通株の新規発行などを通じて資金を調達し、公的資金250億ドルを全額返済すると発表した。
▼これで米大手金融機関上位6社が公的支援から脱することが決まり、金融健全化への取り組みは大きな節目を迎えた。
▼高給復活はこうしたことを背景にしているわけだが、大統領は「米国が数十年に一度の不況を経験し、その原因をつくった人たちが1千万から2千万ドル(約8億9千万〜約17億8千万円)のボーナスを受け取るのか」「ウォール街の人々は、まだ分かっていない」と批判した。

▼さらに「一番頭にくるのは、納税者の助け(公的資金)の恩恵を受けた銀行が、議会で金融規制改革に反対して戦っていることだ」と強調した。金融業界は高い報酬でロイビスを雇い、規制改革を骨抜きにしようと躍起である。
▼米国の失業率は10%に達している。日本同様、米国の雇用の主要な担い手は中小企業である。中小への貸し出しが一向に回復しない現状に対しに、大統領は強いいらだち示した。
▼14日には、ホワイトハウスでウォール街の大手金融機関の首脳を呼び、中小企業向けの融資を拡大するよう要求した。「昨年、米銀は納税者から並々ならぬ支援を受けた。その結果、回復した彼らに、米経済を建て直すため並々ならぬ取り組みを期待している」と大統領。
▼だが、金融機関の首脳らは、貸し出しが増えない原因について、借り手の需要低迷と当局の監督強化にあると訴えた。自分たちに責任はないと言わんばかりだ。
▼納税者から助けてもらっておいて、業績回復すれば、もうその恩は忘れ、自分の懐だけを潤すのがウォール街ということか。(た)

Sunday, December 06, 2009

流行語大賞は「政権交代」よりも「事業仕分け」?

▼今年流行した言葉を決める「ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)がこのほど発表され、「政権交代」(鳩山由紀夫首相)が年間大賞に決定した。
▼まったく妥当なところだろう。ベスト10はこども店長(子役、加藤清史郎)▽新型インフルエンザ(厚生労働省医系技官、木村盛世)▽草食男子(タレントの小池徹平、コラムニストの深沢真紀)▽脱官僚(みんなの党、渡辺喜美代表)▽ファストファッション(タレント、益若つばさ)▽ぼやき(前楽天監督の野村克也)▽歴女(レキジョ)となった。(50音順、敬称略)
▼「脱官僚」など政治絡みのものが多いのが今年の特徴だろう。11月後半に行われた「事業仕分け」は急遽入った格好で、作家の藤本義一さんやタレントのやくみつるさんら5人の選考委員は国民の関心の高さを考慮したに違いない。鳩山首相も「政権交代よりも事業仕分けだね」と述べた。なお、首相が提唱する「友愛」については、(96年に)「取っているので、もう結構です」と答えている。
▼事業仕分けは、過去最高の95兆円超に膨らんだ2010年度概算要求の無駄を洗い出す延べ9日間の作業。「『無駄』の基準がよく分からない。ルールなきショー」(言論NPOの工藤泰志代表)などの声もあり、「科学技術予算を減らすのは論外」(野依良治)などノーベル賞受賞者らから強い批判を浴びたりもした。一般傍聴者は初日の11日の400人から日を追うごとに増加し、終盤は初日の4倍以上の1745人が詰めかけた。
▼共同通信の集計では「廃止」「凍結」「半減」などによる圧縮額は約7500億円。国庫返納を求めた独立行政法人の基金など約1兆400億円の「埋蔵金」発掘と合わせると約1兆8000億円を捻出できる計算になる。共同通信社が11月28、29両日に行った全国電話世論調査によると、事業仕分けについて「評価する」が77・3%だった。