Thursday, October 15, 2009

広島・長崎五輪とオバマ大統領のノーベル平和賞

▼2016年の五輪は南米初となるリオデジャネイロに決まり東京は落選してしまった。再挑戦が不確かな中、秋葉広島市長と田上長崎市長は11日、広島市役所で記者会見し、2020年夏季五輪について被爆した両市による共同開催を柱に招致する意向を正式に表明した。
▼ 両市は開催と重なる20年までの核兵器廃絶を目指しており「平和の祭典」としての五輪開催をアピールすることで、被爆地の悲願だった核兵器廃絶の流れに弾みを付けたい考えだ。
▼これに先立つ9日、ノルウェーのノーベル賞委員会が2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に授与すると発表した。授賞理由は国際協調主義や気候変動問題での建設的役割があるが、特に「核兵器なき世界」の実現に向けたオバマ氏の構想と努力を特に高く評価した上での平和賞という。
▼広島・長崎の五輪立候補もオバマ氏のノーベル平和賞もまったく別のところで決められたのだろうが、核廃絶は機運の高まりだけでなく世界的な流れとなったようだ。
▼核兵器は米ソ冷戦時代の遺物だった。米国は冷戦終了後の1991年にブッシュ・シニア米大統領(当時)によって空母、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原潜などから核兵器がすべて撤去された。93年には核付き巡航ミサイルのトマホークも配備をやめた。使いもしないものに多大な管理、労力がかかるためだ。
▼日本では「非核三原則」の密約問題が顕在化しているが、現状では日本に核が「持ち込まれる」ことはない。14隻ある核弾道ミサイル装備の戦略原潜が日本に寄港することはまずないとされるからだ。
▼もちろん米国だけで約1万発、世界で約2万発の核弾頭があることには変わりない。具体成果はまだであるオバマ大統領に平和賞はおかしいという意見は強いが、もともとノーベル平和賞は政治的なものであり、オバマ大統領を「後押し」しようということだろう。広島・長崎五輪にしろ平和賞にしろ、我々自身が核廃絶を後押しするかどうかである。(た)

Thursday, October 01, 2009

鳩山首相が鮮烈国連デビュー

▼鮮烈国連デビューと言っていいだろう。鳩山首相が国連気候変動首脳会合で22日、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減すると表明、途上国への資金や省エネ技術の積極的供与を明示した「鳩山イニシアチブ」も提唱した。
▼数値に関しては実現をいぶかる向きもあるが、鳩山首相は戦後初の「理系」出身の首相である。「(日本)国民、企業の能力の高さを信頼している。産業革命以来続いた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることこそが、次の世代に対する責務だ」と訴えた。
▼たどたどしさはあるものの明瞭な発音の英語で演説する鳩山首相に、日本が初めて世界をリードする姿を感じた人も多いのではないだろうか。
▼ロシアはじめEUや途上国などの各国首脳から高い評価を受けたにも関わらず、米国の大手メディアがあまり大きく取り上げなかったところに、温暖化問題への取り組みにおいてリーダーとなれない米国の微妙な立場を表しているようだ。
▼24日には国連安全保障理事会が、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択した。
▼「核兵器のない世界」は日本が一貫して主張してきたことである。鳩山首相は「広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んで欲しい」と世界の指導者に呼び掛けた。北朝鮮の核問題に直面しながらも、唯一の被爆国として核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし非核三原則の堅持を表明した。
▼世界はオバマ米大統領が掲げた理想の実現へ向け踏み出した。今こそ日本は米国と共に、率先して「核兵器のない世界」実現に向け積極的に取り組む時だ。
▼すべての分野でリードする必要はない。日本が温暖化や核廃絶などでリードすることが「国際貢献」となる。(た)