Monday, December 17, 2007

民主主義の証

▼来年行われる米大統領選の候補者は全国的な知名度からいって共和党はジュリアーニ元ニューヨーク市長、民主党はヒラリー・クリントン上院議員でほぼ決まりだろうと思われていたのが、どうも様子が違っている。
▼年明け早々、最初に次期大統領選の党員集会が開かれるアイオワ州の地元紙が12月2日伝えた同州の最新世論調査によれば、共和党はハッカビー前アーカンソー州知事、民主党はオバマ上院議員がそれぞれトップに立った。
▼11月28日にフロリダで行われた共和党候補による討論会では、ロムニー前マサチューセッツ州知事がジュリアーニ氏の中絶や同性愛の権利容認に加え、移民政策を攻撃。特にジュリアーニ氏が市長時代に不法移民の子供の教育を認めたことなどを非難し、「不法移民には、法律を守る市民以上の特権を与えてはならない」と訴えた。
▼ところが、これに異論を唱えたのがハッカビー前アーカンソー州知事だ。「親のしたことで子供を罰するような国」にすべきではないと言い切り、注目を浴びた。
▼アイオワ州でトップだったロムニー氏は最近の調査で牧師出身のハッカビー氏に逆転された。ロムニー氏が信仰するモルモン教を「カルト宗教の一種」と嫌うキリスト教右派の支持がハッカビー氏に流れたためとみられる。
▼泡沫候補だと思われてきたハッカビー氏が躍進してきた。オバマ氏もここまで人気が高まるとは思われていなかった。
▼ビル・クリントン元大統領も出馬当初は元アーカンソー州という小さい州の知事に過ぎず、あまり注目されなかった。米大統領選は予断を許さないが、それが民主主義の証なのかも知れない。

Saturday, December 01, 2007

パニック2008?

▼依然としてサブプライムローン問題に端を発する金融不安が続き、不況突入の懸念が消えない。米連邦準備制度理事会(FRB)は二十日、〇八年の米実質成長率は前年比1・8〜2・5%と予想、七月に発表した2・5〜2・75%との予想を大幅に下方修正した。
▼クリスマス商戦は年間消費の二割を占める。消費の行方を占うクリスマス商戦の幕開けである感謝祭翌日の通称「ブラックフライデー」は問題になることなく過ぎた。だがこれはウォルマートや大手電気店などが今年は特別にクリスマスセールを前倒し、11月初めから開始したために過ぎない。
▼なにより、当初一千億ドルと言われたサブプライムの関連損失が実は一兆ドルではないかとも囁かれているのだ。リーマン・ブラザース、シティグループ、メリルリンチなどの本決算がこれから控えている。八七年の株価暴落、ブラックマンデーの再来もないとは言い切れない。
▼利下げはもうないと言われていたが、年内にもう一段の利下げをしないと不況に突入するという声もある。だが利下げによるドルの下落は信用不安となり、中東諸国などのドルペッグの見直しにつながりかねない。基軸通貨としてのドルの地位をなくす可能性すらある。
▼米シンクタンク「トレンド・リサーチ・インスティテュート」のジェラルド・セレンテ所長は、ドルの価値は十分の1まで下がり、金相場が1オンス二千ドルにまで高騰するかもしれない」という予測までしている。
▼英オブザーバー紙のコラムリスト、ウィル・ハットン氏によれば、現下の金融危機は三十年に一度の大規模なもので、市場原理を重視する英米中心の自由主義経済の時代は終焉を迎えるだろうとのことである。(CAPITAL#48号より転載)