Friday, April 28, 2006

辞任という責任の取り方

▼日本では、不祥事があったりすると何かにつけ責任者が辞任する。辞任すれば済むのかというくらい簡単に辞任することが多い。辞任しないとでも言おうものなら、権力にしがみつく醜悪な姿と映るのが常だ。
▼ところがこちらでは、強い辞任要求が出ても辞任しないくていいらしい。言うまでもなく、ラムズフェルド米国防長官のことである。
▼テレビに出演し口火を切ったのはジニ元中央軍司令官。米統合参謀本部の作戦部長を務めニューボールド元海兵隊中将はイラク戦争は「不必要だった」と断言し、イラク戦争はアルカイダから目をそらす結果を招いたと指摘して国防長官らの交代を要求するなど、少なくとも6人の退役将軍が明確に長官の辞任を求めた。
▼しかしラムズフェルド長官は「私は大統領のために仕事をしている」と述べ、辞任する考えがないことを表明。ブッシュ大統領は「私が決定者だ。何がベストかといえばラムズフェルド氏が長官にとどまることだ」とあらためて支持を確認した。
▼ブッシュ大統領は十一月の中間選挙を前にホワイトハウスのスタッフ刷新を断行したものの、二十四日発表のCNNの世論調査結果によると大統領の支持率は前月より4ポイント低い32%で過去最低を更新(不支持率は60%)、歴代大統領の最低水準である20%台が目前に迫る危機的状況となった。
▼戦争など国民の目を外に向けることによって国内の不人気を払拭する手法は、政治の常套手段である。強硬派のラムズフェルド長官を残し、中間選挙に勝つために対イラン戦争を断行といったことにならないように願いたいものだ。
(CAPITAL5月1日号より転載)

Thursday, April 13, 2006

「靖国」の政治問題化

▼民主党の新代表・小沢一郎氏が就任早々、さっそく政権奪取に向けて仕掛けた。首相の靖国神社参拝自体は賛成だが、「小泉さんのはだめだ。戦争を指導した人たちは靖国に本来祀(まつ)られるべきではない」とし、A級戦犯の分祀を「(私が)政権を取ったらすぐやる」とテレビ番組で述べたのだ。
▼これに対し小泉首相は「政府が言うべきことではない」と反論、次期、総理・総裁の声が高い安倍晋三官房長官も「政府が合祀(ごうし)取り消しを申し入れるのは憲法二〇条の信教の自由の侵害となり、政教分離の原則に反するのではないか。靖国神社が決定すべきで、政府が介入すべき事柄ではない」と、分祀論を明確に否定した。
▼首相はまた、「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよく分からない」と皮肉った。
▼首相の靖国神社参拝によって中・韓との首脳会談が中断している状況になっている。「靖国問題」は中国・韓国の外交カードとなっているとはしばしば指摘されるが、今度はこれが日本の政党間の対立軸の一つとなるのだろうか。
▼外交カードとしての靖国問題は「歴史認識」の問題であることは間違いないが、問題を複雑にしているのは、その根底に死生観、宗教観が横たわっているからだろう。その点では二大政党制下の米国の「中絶問題」や「同性愛問題」などに似たものを感じる。
▼白か黒かの単純な選択は二大政党制を押し進め、政権交代をやりやすくするだろうが、民主主義が安易な「踏み絵」にからめ取られる危険性もある。
(CAPITAL4月15日号より転載)