Thursday, May 13, 2010

官房機密費とジャーナリズムの死

▼小渕内閣で官房長官を務めた自民党の野中広務元幹事長(84)が、長官在任中(98年7月から翌年10月)に内閣官房機密費を「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と講演会やインタビューで発言した。首相に1千万円、国会で野党工作などに当たる 自民党国対委員長や参院幹事長に各500万円程度のほか、政治評論家や野党議員らにも配っていたという。
▼野党対策をはじめ、外遊する議員への餞別代、飲み食い、女性問題の後始末に使われたなど、昔から噂はあった。注目すべきは政治評論家である。「(政治)評論をしておられる方々に盆暮れにお届け」と 明かしたことだ。これも過去、週刊誌などで取り上げられたことがあるが元官房長官から明言されたのは初めてだ。
▼「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と 言って受け取られる」「持っていって返し てきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と述べている。
▼官房機密費は「国の事業を円滑に遂行するために状況 に応じて機動的に使う経費」として、毎年約14億円が予算計上され、内閣情報調査室に使う2億円ほどを差し引いた残りの12億円余りを官房長官の裁量で使ってきた。使途は公表されず、領収書もない。
▼野中氏は「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」と述べている。お金をもらうことが何を意味するかは自明だ。有権者は歪んだ言論を受け取ってしまう。これはジャーナリズムの死を意味し、民主主義を毀損するものだ。貰った評論家は即刻名乗り出て返金し、言論活動停止、筆を折るべきだろう。

Sunday, May 02, 2010

「核密約」と普天間基地移転問題

▼ライシャワー元駐日米大使(在任1961?66年)の特別補佐官だったジョージ・パッカード氏とパッカード氏と話す機会があった。日本でいわゆる「核密約」が問題となっているが、氏は外交専門誌フォーリン・アフェアーズ3・4月号で、米軍が返還前の沖縄にあった核兵器を1966年、移動させ岩国基地沿岸で少なくとも3カ月間核兵器を保管していたと述べている。
▼氏は、これ以外の保管の事実は知らないとしつつ、核兵器を積んだ船が日本に寄港していたのは疑いようがないと示唆。その上で、「日本に核は必要だったと思う」と語った。当時冷戦はきわめて危険なものであり、ソ連や中国の脅威から日本を守る必要があった。「核密約は強く望まれたものではなかったが、当時の東アジアに必要だが日本が反核である中で、ベストの解決法であった」との認識を示した。
▼では普天間基地問題についてはどうか。ゲーツ国防長官が発足したばかりの鳩山政権に約束履行を迫ったのは「ばかげている」と一蹴。しかしそれにびっくりした鳩山首相がオバマ大統領に「トラスト・ミー」「5月までになんとかする」などと「言わなくてもいいことを言って、日米の信頼関係を損なった」と批判。冷戦の時代から大きく東アジアは変化しており、「開かれた場であらゆる可能性と選択肢を検討すべき」と語った。
▼サイパン島など14の島からなる北マリアナ連邦の上院議会(9議員)が16日、国防総省と日本国政府に対し、米軍普天間飛行場の移設先の最適地として北マリアナを検討するよう求める誘致決議を全会一致で可 決した。米軍の準機関紙である「スター・アンド・ストライプス紙」は21日付で、これに好意的な内容の記事を掲載している。こういった選択肢をほとんどの日本のメディアが取り上げないのは何故だろうか。