Friday, May 16, 2008

死刑制度

▼「もし死刑にできないなら、今すぐ犯人を社会に戻してほしい。自分の手で殺します」
▼これは、山口県光市で99年、当時18歳と1か月だった元少年(27)に妻子を殺害された会社員本村洋さん(32)の言葉である。
▼本村さんは、犯罪被害者の権利実現を目指す運動を開始、死刑存置派の先頭に立った。一方で、死刑反対論者として知られる安田好弘弁護士が主任弁護士になったことから、光市母子殺人事件は死刑の是非を巡って論議を呼ぶ裁判ともなった。そして先月22日の差し戻し控訴審で、広島高裁は一審の求刑通り、元少年に死刑の判決を言い渡した。
▼死刑制度は犯罪抑止力にならなく、残虐な報復行為、国家による殺人だいう声は強く、死刑制度廃止は世界的な流れである。91カ国が完全廃止、135カ国が事実上の廃止で、過去10年間に死刑執行をした国は61カ国である。
▼06年でもっとも死刑が多かったのは中国で1010人(実際は8千人とも)、以下イラン177人、パキスタン82人と続き、米国は6位の53人、日本は4人だった。先進国・民主主義国で廃止していないのは米国(州によっては廃止)と日本くらいである。
▼米国では昨年12月にニュージャージー州が死刑を廃止し、廃止州は13州になった。昨年9月には薬物注射による死刑が憲法で禁じた残虐な刑罰に当たるかどうかの審理を連邦最高裁が開始、死刑制度のある州は執行を見合わせていた。しかしながら連邦最高裁が先月、違憲性を認めない判断を示したのを受け、ジョージア州が6日、死刑を執行した。
▼国連人権理事会で9日、対日作業部会が開かれ、最近になって死刑の執行、判決例が多くなっている日本に対し、フランス、オランダなど10カ国以上が死刑の廃止を求めた。日本では09年5月までに裁判員制度が始まる。一般市民が他者に対し死刑を下すかどうかを判断する日がすぐそこまできている。
(武)

Thursday, May 01, 2008

五輪聖火リレー騒動

▼26日、長野市内を駆け抜けた北京五輪の聖火リレー。大勢の警察官に取り囲まれて走った聖火ランナーたちに笑顔はほとんどなかった。
▼沿道は全国から集まった中国人留学生らが振る中国国旗とチベットの旗でぎっしり。「中国頑張れ!」の歓声と「チベットに自由を」という叫び声が同時に飛び交った。
▼ランナーのタレント萩本欽一さんがJR長野駅前を通過した時、沿道から発煙筒のようなものが投げ込まれた。「おばあちゃんや子供とハイタッチをしようと思っていたのに、できなかった。悔しかった」と萩本さん。
▼最終ランナーを務めた北京五輪マラソン代表の野口みずき選手は「政治が絡んで残念」と述べた。長野県警はトマトを投げ付けるなどしてリレーを妨害したとして、威力業務妨害容疑などで6人を逮捕した。
▼抗議行動を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のメナール事務局長は、抗議行動を容認した日本政府の民主的な対応を称賛した。「日本人は他のどの民主主義国よりもうまくやった」。元左翼活動家のメナール氏は派手なパフォーマンスと信念の強さは誰にも負けない。
▼一方、中国国営通信の新華社も「沿道の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」と伝え、聖火リレーを評価した。中国当局がチベットに弾圧を加えたのは、昨年9月に「チベット青年会議」が「実力闘争路線」を決定したことをつかみ、一気に独立分子を叩くためだったと言われている。かつてはCIAの援助もあったダライ・ラマ14世だが、今は「高度な自治」と「非暴力」を唱えるノーベル平和賞受賞者である。
▼聖火リレーを始めたのはナチス・ドイツだというのは皮肉だが、ドイツやメキシコ、ソ連など、五輪を開催した独裁国家は10年以内に崩壊し民主化している。さて、中国の共産党独裁はどうなるだろうか。(武)