Friday, June 29, 2007

朝鮮半島の南北統一と投機筋

▼米国はマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮の資金送金問題を、米連邦準備銀行を経由させる超法規的措置で決着、ヒル国務次官補が北朝鮮を訪問した。
▼これに対しワシントン・ポスト紙は24日、ヒル国務次官補の訪朝について「米国は次々と北朝鮮に譲歩している」と批判した。北朝鮮が核放棄に向けた具体的な措置はまだ何も取っていないだから無理もない。
▼だが国際原子力機関(IAEA)実務代表団は平壌入り、寧辺の核施設稼働停止など2月の合意に基づく「初期段階措置」と次の段階の核施設「無能力化」に向け、北朝鮮との協議が始まった。
▼米国にとって北朝鮮の核やミサイルはそれほどの脅威ではない。しかし、核ミサイルがイランに流れるとなると話は別だ。イスラエルは本当に危なくなる。いわゆる「レッドライン」であるが、逆にそれさえ守られれば譲歩もする。
▼今回の6カ国協議が再開されるとすぐ、国際金融市場で北朝鮮の不良債権約4千億ウォン(約500億円)の取引が頻繁化、最近では米国や日本の投資家が買っているという。この債券は北朝鮮の債務不履行となった負債の一部を97年にBNPパリバ証券が証券に転換したものでスイス・フランやドイツ・マルク建て。額面1ドル当たり10セント未満の捨値だったのが20セント近くまで上昇しているという。
▼満期は2010年。南北統一がなされれば、韓国政府が肩代わりし額面払いをする可能性があり、ぼろ儲けになる。これに似た例として、過去にはベトナム債券の例があり、次にはキューバが控えていると言われる。
▼投資会社ゴールドマンサックスは2005年の段階で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続く経済発展地域として11の国(Next11)を挙げているが、その一つに、北でも南でもなく朝鮮(Korea)とある。気の早い投機筋では南北統一は織り込み済みなのだ。

Wednesday, June 13, 2007

ミサイル防衛(MD)と米露冷戦

▼冷戦は終わっていなかったのだろうか。ブッシュ米大統領が欧州七カ国歴訪を終えた。欧州にミサイル防衛(MD)を広める旅だったと言ってよいが、危うくロシアと衝突しそうになった。
▼米国は、チェコとポーランドに配備するMDについて「対ロシアではなく、対北朝鮮・イランだ」と再三にわたり主張してきた。だが、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は4日、「イランのミサイルは欧州に届かない。今年一番のジョークだ」と皮肉った。北朝鮮のミサイルが欧州に届くのを信じる者も皆無だ。
▼ブッシュ米大統領は7日、ドイツでプーチン露大統領と会談。プーチン大統領は、レーダー施設建設予定地をチェコから旧ソ連・中央アジアのアゼルバイジャンに変更、代替施設とすることを提案した。
▼なるほどアゼルバイジャンはイランのすぐ北だ。イランのミサイルが対象であれば、こんなに適切な場所もないだろう。これを拒否すれば、ミサイル防衛は対北朝鮮・イランという主張が嘘だということになってしまう。ブッシュ大統領は仕方なく評価し、両首脳は協議継続で合意した。
▼ロシアは、エリツィン大統領時代に米国の言う事を聞いたばかりに悲惨な経済状態となったことを忘れてはいない。石油会社を国有化し、資源大国として復活しつつある。これに対し米国は影で封じ込め政策を画策してきたとされる。03年のグルジアでバラ革命、04年のウクライナ・オレンジ革命、05年キルギス・チューリップ革命。これら旧ソ連諸国での動きは米国の後ろ盾があったと目されている。
▼欧州のミサイル防衛(MD)計画が対ロシア戦略であることは明白だろう。ブッシュ米大統領は5日、チェコのプラハで演説し、ロシア(中国もだが)との間に「大きな不一致」があるとの見解を表明し、ロシアは「国民主権を約束した改革が脱線している」と明言した。新たな米露冷戦が始まっている。