Wednesday, May 23, 2007

ブッシュ政権最後の花

▼ニューズウィーク誌(電子版)の最新世論調査結果によると、ブッシュ大統領の支持率は28%で同誌の調査で過去最低を記録した。これは1979年にテヘランの米大使館人質事件が起きたときのカーター大統領(当時)の支持率と同じだという。
▼ブッシュ大統領は今月頭にイラク駐留米軍の撤退を来年3月末までに完了させるという民主党主導の戦費支出法案に対し拒否権を行使した。イラク政策での拒否権行使は初めてで、9・11テロ以降、一丸となってアフガン、イラク戦争と邁進してきた米国の強硬な外交政策は終わりの兆しを見せている。
▼イラク開戦については、米中央情報局(CIA)のテネット元長官は先頃発売されたの自著「嵐の真ん中で」の中で、当初よりフセイン政権とアルカイダの関係は見つからなく、大量破壊兵器の確証もなかったことを暴露。もともとチェイニー副大統領が、9・11テロの発生前の2001年1月の政権発足時からイラク攻撃を計画していたことも明らかにした。
▼9日にはイラク開戦に踏み切った「盟友」ブレア英首相が退陣表明。開戦時から大統領を支持した主要国のリーダーのうち残っているのはオーストラリアのハワード首相だけとなり、イラク復興の「有志連合」の結束も弱まりつつある。
▼だが、一方で核開発阻止を理由としたイランへの空爆も計画が進んでいるされる。21世紀の世界にあって、戦争という方法はゲリラやテロの横行を見れば分かる通り、それで決着するとは言えなくなってきているにも関わらず、力への過信は根強い。
▼すでにレームダック(死に体)状態のブッシュ政権だが、中国の胡錦濤国家主席がブッシュ大統領を来年の北京五輪開会式に招待、首脳会談の可能性も検討しているという。平和の祭典五輪での米中首脳会談で、ブッシュ政権の最後の花が咲くだろうか。

Sunday, May 13, 2007

銃規制と米国社会

▼バージニア工科大学で犯人も含め33人死亡という銃撃による惨劇が起きた。一人の若者によって数時間で行われたため大事件となったが、米国は毎日平均33人が銃で死んでいる国である。日本の銃による年間死亡総数平均39人に比較すると驚くべき数字である。
▼そして今回も米国では銃規制の声は小さい。「他の学生も銃を持っていれば32人も殺される前に犯人を射殺できた」(FOXニュース)という声があったくらいだ。米国の異常性を物語る。
▼銃規制が進まないことが議論されると、決まって武器所有の権利を定めている米憲法修正第二条と、全米ライフル協会(NRA)の存在があげられるが、もともと米国人の多くが武器がないと安心して住めないと脅えている現状があるのだという。すでに銃が広く行き渡っているためだ。
▼2億丁の銃が出回り、毎年1万人以上が銃で殺され、自殺や事故を含めれば3万人以上が亡くなる米国。交通事故で年間4万人が亡くなるが、車をなくせという声がないのと同じく、ここまで浸透してしまった銃の規制は不可能なのか。
▼だが、米国では科学的検証と世論の高まりによって、30年前だったら考えられなかったような禁煙条例が全米に広がった例もある。喫煙と銃は個人の権利と死因という点で共通するものがある。
▼来年の大統領選に向け、民主党の候補を目指すヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員のいずれも銃規制に積極的。共和党の候補でもジュリアーニ前ニューヨーク市長も一定の規制は必要との認識だ。銃規制は、これに反対だったブッシュ政権が終われば、銃規制に肯定的な民主党が上下院とも多数派でもあることから、大きく前進する可能性がある。
▼世界を見渡せば年間の死者が3万9千人に達するブラジルなど米国以上に銃による死者を出している国もある。人口比率ではベネズエラがもっとも高い(中東などの紛争地域を除く)。
▼銃規制をすればそれで済む問題ではないのも事実だ。カナダと米国の銃の普及率は同程度だが、カナダの銃による死者は10分の1以下という。
▼組織と個人ではあるが、ある種の「逆恨み」によって「アメリカ人」を大量に殺害した9・11テロをどこか想起してしまったのは私だけだろうか。銃の規制と共に、米国社会の病理を見つめ、これを改善していく方法も求められている。