Wednesday, March 29, 2006

破産法という名のセーフティーネット

▼破産関連の調査会社ランドクイスト・コンサルティングによると、米国の昨年1年間の自己破産の申請件数は204万3535件。前の年より31%増、49万568件も増えた。実に53世帯に1世帯の割合で米家計が破産申請した計算になるという。
▼破産申請が急激に増えた大きな原因のひとつは、昨年10月の破産法改正を前に駆け込み申請が急増したためとされるが、日本の感覚からするとやはり驚く。
▼米国は昨年、個人貯蓄率がマイナス0・5%となった。1933年の大恐慌以来、72年ぶりのマイナスだ。なるほど米国人はクレジットカードを使い過ぎて破産する人が多いのだろうか?
▼1983年から89年の間の南カリフォルニアで申請された自己破産について調べたジョージ・コーセン弁護士によれば、自己破産の大きな原因は医療費と離婚だった。クレジットカード破産は破産者全体のわずか1%以下。「あれは本当に神話なのです」とコーセン弁護士。
▼また、ハーバード医科大学のデビッド・ヒメルスタイン医師らが行った最近の調査でも、米国内で破産した人のおよそ半数が医療費の高騰が原因で破産していたことが分かった。
▼米国の破産法は弱者救済のセーフティネットという側面が大変強いのである。しかし、27年ぶりの破産法改正で、たとえば申請後5年間で6000ドルを返す能力のある者は債務免除を申し立てる破産法第7条の申請が出来なくなった。
▼強力なロビイング活動を展開し、改正法案を押し進めたのはもちろんカード会社である。手厚い社会保障がない分、個人破産や倒産しても何度でもやり直すことの出来た米国も変わりつつあるのだろうか。
(CAPITAL4月1日号より転載)

Wednesday, March 08, 2006

自動車王国の終焉

▼自動車といえば米国を支えてきた基幹産業である。自動車を誰が発明したかは論議のあるところだが、自動車を一般庶民のものにし、ライフスタイルを大きく変えたいわゆるモータリーゼーションの波を起こしてきたのは米国である。
▼米国は鉄道すらも駆逐する勢いで車社会を作り上げてきた。1万以上のパーツからなる自動車は関連分野が鉄鋼から石油業界まで及び、20世紀の経済発展は自動車なしには語れない。
▼その自動車の世界最大の会社ゼネラル・モーターズ(GM)が経営不振で喘いでいる。GMは北米での販売不振などから業績低迷が長期化、大規模な工場閉鎖や人員削減による再建策を打ち出しているが、来年には販売台数でトヨタに抜かれるのは確実という。世界最大級の大企業の行く末を危ぶむ声は日増しに高まっている。
▼GMは利益率の低いからと小型車開発を怠ってきたとよく指摘される。目先の利益を優先させ、大型のSUVや高級車ばかりに力を入れてきた。小型車戦略はスズキとの提携でという方針だったが、ここにきてスズキ株も売却する。
▼もうひとつの米大手自動車会社、フォード・モーターも経営が低迷している。原因はGMとほぼ同じと言われるが、両社が苦しんでいることに医療保険や年金負担があげられる。
▼ブッシュ大統領は「(従業員や退職者との)約束を守るかどうかは企業次第だ」と述べ、政府による救済に否定的な認識を示した。ほとんどの国では医療や年金は国の事業である。
▼また「私は自由貿易主義者だ」とした上で「市場開放がこの国にとって非常に重要」と重ねて指摘し、日本車の輸入規制などを事実上否定した。
▼クリントン政権と比べずいぶん冷たい対応であるが、主張に一貫性はある。GMやフォードに日産を再生させたカルロス・ゴーンのような人物が現れるだろうか。(西)
(CAPITAL第7号より)