▼チベット自治区ラサの暴動は中国国営通信の新華社の報道では死者十九人としているが、インド北部ダラムサラのチベット亡命政府は二十四日、百三十人と発表した。
▼負傷者や逮捕者数でも大きな隔たりがあり、一体、どっちを信じればいいのか。第三者的なメディアの報道が望まれるが、中国当局は海外メディアを退去させ、取材を拒否している。
▼中国内ではインターネットも制限されている。ユーチューブにアップされていた警官隊が市民を追い回す映像はカットされた。一方で、中国テレビでは漢族の店を襲うチベット人の様子が映像で何度も流されたという。
▼人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」(本部ロンドン)には、何者からか二分おきに電話がかかってきた。学生組織「スチューデント・フォー・ア・フリー・チベット」(本部ニューヨーク)の幹部にも同じような電話があり、同じく中国語で罵倒してきたという。さらに電子メールでコンピューター・ウイルスも送られてきた。
▼チベット関係の団体だけでなく、現地からの報道を続けているAFPもウイルス攻撃を受けた。「一部の暴徒の仕業」と主張する中国当局だが、これをそのまま鵜飲みにする人はいないだろう。
▼虐殺の続くダルフールで中国がスーダン政府を事実上支援している問題で、北京五輪の大手スポンサーの会議が四月に行われるが、新たにチベット問題が議題にあがるという。企業イメージが損なわれるとの懸念の声も出てきている。
▼とはいえ、五輪ボイコットは世界経済の足を引っぱりかねないため大きな声とはなっていない。ボイコットしたからといって何かが解決するわけでもないだろう。しかし、フランスのサルコジ大統領は二十五日、北京五輪ボイコットについて「あらゆる選択肢が開かれている」と述べた。状況によってはフランスが開会式に参加しないこともあり得ると明らかにした。(武)