Saturday, April 14, 2007

靖国神社A級戦犯合祀に国が関与か

▼東東条英機元首相らA級戦犯の靖国神社合祀は国際問題にまでなっているが、日本政府はこれまで「承知していない」との立場を取ってきた。
▼ところが、当時の厚生省が1958年頃から神社と協議を重ね、戦犯合祀を積極的に働き掛けていたことが、このほど国立国会図書館が公表した「新編 靖国神社問題資料集」で判明した。
▼資料によると、58年に厚生省は神社とA級を含めた戦犯合祀について議論。66年にはA級戦犯合祀のため名簿(祭神名票)を神社に送付、69年には神社側とA級戦犯について「合祀可」との見解を確認した。
▼安倍首相は「問題ない。合祀を行ったのは神社だ。(旧厚生省は)情報を求められ(資料を)提出したということではないか」と述べ、憲法の政教分離原則に抵触しないとの判断を示した。
▼だが、今回の内部資料は、国と靖国神社が一体となり、戦犯合祀に取り組んできたことを示している。国側が秘密裏に進めるよう積極的に働き掛けた様子すらかいま見える。
▼さぞや韓国や中国の反発は大きいかと思われたが、韓国の宋旻淳(ソンミンスン)外交通商相は麻生外相との会談の中で、「根本的解決にしっかり対応してほしい」とし、無宗教の国立追悼施設建設や分祀に対する期待感を表明するに留まった。訪日間際の中国の温家宝首相は「(日本の首相による靖国神社参拝は)中国人民の感情を著しく傷つけた。二度とないよう希望する」とけん制するに留めた。中韓とも小泉政権時代に冷えきった日本との関係改善を優先させたい意向がうかがえる。
▼だが、取り巻く状況が変われば新たな火種として火を吹く可能性がある。しかも今回の資料は70年以降については明らかにされていない(A級戦犯合祀は1978年)。海外からの批判があるからではなく、まずは憲法の政教分離原則に抵触しないのか、また当時の厚生省の引揚援護局にいた旧軍人グループの動きも含め、全容解明を日本政府は進めるべきではないのか。