▼年頭の1月4日、ウォールストリートジャーナル紙にニクソン、フォード両政権のキッシンジャー元国務長官、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長の4人の連名による「核兵器のない世界」と題する論文が掲載された。
▼論文は、北朝鮮とイランの核開発はもとより、テロリストに核兵器渡る危険がある現在、冷戦時代の戦略となっていた核抑止力に依存することは、「ますます危険で、ますます有効でなくなっている」と警告、核兵器廃絶のために「核保有国の指導者が努力を強め、核兵器のない世界という目標を共同の事業とすること」を提言している。
▼核の恐怖の均衡下にあった冷戦時代に世界戦略を立案、推進してきたキッシンジャー及びシュルツ元国務長官らがこうした見解を述べた意義は大きい。
▼ペリー元国防長官はクリントン政権では核開発阻止のためには空爆も辞さないと主張してきた強硬派でもあった。このままでは2010年までに核戦争が起きると数年前より警告してきた。
▼論文では「核兵器のない世界というビジョンと、その実現に向けた現実的措置を改めて主張することは、米国の倫理的な伝統とも両立する」とし、米国が世界をリードして核兵器廃絶に向けた行動を取るよう進言している。
▼北朝鮮との六カ国協議は前進したが、イランはウラン濃縮を止めないと改めて宣言した。先制核使用も辞さず、小型核開発に熱心なブッシュ政権はこの進言をどう受けとめたか。
▼日本では昨年「核武装論議」が起きたが、唯一の被爆国である日本が核武装したら核不拡散条約(NPT)体制が完全に崩壊することが分かっての核論議だったのだろうか? 核武装をしたがっている国は、一説では実に30か国ほどにのぼっているということを忘れてはならない。(CAPITAL07年2月15日号より)