Wednesday, July 12, 2006

ミサイル・ビジネス

▼北朝鮮が5日、ミサイル6発を日本海に発射した。うちひとつは長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の可能性が高い。
▼日本では経済制裁を強めるべきだ」とした人が80・7%に達するなど(共同通信社の電話世論調査)、北朝鮮の脅威が大々的にクローズアップされる。
▼北朝鮮の目的はミサイル発射で米国を二国間協議に引きずりだすことと、ミサイルビジネスの推進だと思われる。イランのミサイル関係者も北朝鮮入りしていたという。しかしテポドン2号の「実演販売」はあえなく失敗したようだ。
▼米国は、アラスカ州などに配備してある地上発射型迎撃ミサイルを「試験稼働状態」から「実戦稼働状態」へ切り替えていたらしい。だが、ブッシュ大統領は、ミサイル防衛システムで「迎撃できるチャンスはそれなりにあった」と述べているが、テポドン2号は展開していたイージス艦のレーダーにも映らなかったらしい。
▼こんなお粗末な結果であるに関わらず、日本ではミサイル防衛網(MD)が必要との声が高まり、額賀防衛庁長官は、憲法の範囲内で可能な敵基地攻撃の装備を検討すべきだとの考えまで表明した。
▼米国議会も共和党を中心に対北朝鮮圧力を強化する構えで、下院軍事委員会のハンター委員長(共和党)は、年間約百億ドル規模を予算計上し、ミサイル防衛の構築をより強力に推進する考えも示した。
▼ところが国際社会は、北朝鮮非難の声はあるもののトーンは低い。北朝鮮と関係の深い中国、ロシアのみならず、韓国政府も日米などが国連安全保障理事会に提出した制裁決議案について「ミサイル計画を食い止める効果があるのか」と疑問を呈した。
▼日本政府は「平壌宣言」に違反しているという判断だが、北朝鮮の今回のミサイル実験は国際法を犯したわけではない。お粗末なミサイルに大騒ぎしているのは日本とミサイル防衛網関係者のようだ。
▼ブッシュ米大統領は「米国には差し迫った脅威ではない」と判断、「現時点の戦略は中国が北朝鮮に対し六カ国協議に戻るよう説得することだ」としている。ミサイルより核問題の方が重大という考えだ。
▼イラクでの大量破壊兵器の間違いに懲りて、こんなミサイルでは脅威を煽ることはできないと判断したのだろうか、それとも現在のミサイル迎撃技術が使い物にならないことが分かったからなのだろうか。無謀なイラク侵攻を決断した人物とは思えない賢明さである。
(CAPITAL7月15日号(第15号)より)