▼村上ファンドの村上世彰前代表逮捕は日本では号外も出るニュースとなった。「出る杭は打たれる」「天罰が下る」といった言葉がインターネットやスポーツ紙などを賑わした。ホリエモン逮捕に続く「アブク銭集団」退治に庶民は溜飲を下げたというところか。
▼村上ファンドの敵対的投資スタイルは、米国では既に「過去のもの」で、企業と協力しながらリストラなどによって企業価値を高める「友好型」が主流だ。また半ば公然の日本と違い「インサイダー取引」には厳しく、あのマーサ・スチュワートすら堀に入ったくらいだ。
▼そんな米国だが、9日付のニューヨーク・タイムズは村上逮捕に意外な反応を見せた。「日本はいまだに古い統制組織として振る舞い、(村上容疑者という)起業家を威嚇することで、社会で波風を立てる人間を罰している」と批判的な見方を示したのだ。
▼景気低迷期にはもてはやされた村上ファンドだったが、日本の景気回復に伴い、伝統的な日本経済界が自信を取り戻すと、一斉に背を向けたというわけだ。
▼インサイダー取引での摘発は日本では珍しい。村上逮捕に踏み切ったのは、検察と全面対決しようとする堀江貴文被告を追い込むだめだというのは間違いないだろう。
▼東京地検は世相を見て動いているとよく指摘されるが、今回そのメッセージは「格差社会などとぼやいてないで地道に働け」ということなのだろうか。
▼実は伝統的な日本経済界こそが、景気低迷期に「格差社会」を作ってしまったのである。村上や堀江はむしろ、それらに一石を投じた面があることを指摘しておきたい。
(CAPITAL6月15日号より転載)